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それはどの避暑地の出来事だったのか Theme from "A Summer Place"巡り後編
 
『避暑地の出来事』という映画は曰く言い難い出来で、あの時代のムードや、文芸映画のゆったりしたテンポになれていない人だと、もはや古めかしくて、最後までたどり着くのは苦痛だろうと思います。

昔見たときに理解していなかったのは、舞台がメインのとある島だということです。東部、しかもメインですから、堅苦しい話になったのも当然です(メインの避暑地でどうこうという話を昔読んだなあと思い、必死で記憶をまさぐった。アンドルー・ワイエスの息子の回想に、メインの海岸で父親とボートに乗る話が出てきたのだったと思う。ワイエスの息子はデュポンにつとめ、ペット・ボトルを発明した)。

これがマリブかなんかだったら、そこらじゅうにサーファーがあふれちゃって、悲恋を成立させるのは困難になり、beach party tonight!とノリノリのほうへ傾きます。わたしの場合、悲恋(いや『避暑地の出来事』はハッピーエンドだが)より、ノーテンキのほうがずっと好きなので、映画のほうはほうっておいて、音楽をやろう、と相成りました。

字ばかりだとうっとうしいので、絵のつもりでクリップを貼りつけます。

Les Baxter - Theme from "A Summer Place"


しいていうと、『避暑地の出来事』は石坂洋次郎の『陽のあたる坂道』をいくぶんか連想させるところがあります。いえ、田坂具隆監督の映画『陽のあたる坂道』ではなく、小説のほうです。

原作と映画の決定的な違いは、原作には大人たちの昔日の恋の熾き火が全編に揺曳していることです。映画はこの部分を登場人物ごとカットして、話を簡略化しています。

いや、田坂具隆の映画は、あれはあれでけっこうだと思うのですが、いまになると、若い世代の話は平板で興趣がわかず、大人たちの数十年におよぶ恋の歴史のほうが、ずっとアクチュアリティーをもってわれわれに迫ってきます。石坂洋次郎『陽のあたる坂道』は、若い世代の話で終始する小説であれば、とっくに昭和のスーヴェニアになっていたでしょうが、大人たちの話を描いておいたおかげで、いまも読むに値する長篇になっています。

この曲のヴォーカル・カヴァーはあまり好まないのですが、それも人によりけり、この人なら、ほとんどなんだってオーケイです。

Julie London - Theme from "A Summer Place"


てなことはさておき、『避暑地の出来事は』は、かつてメインのある島の、有閑階級相手のリゾートホテルで働いていた男が、功成り名を遂げ、妻と娘をともなって島を再訪するところからはじまります。この娘がサンドラ・ディー。

島には、かつて男が恋した女が、ホテルの主と結婚して暮らしています。夫妻には息子がいて、これをトロイ・ドナヒューが演じています。

この若い世代が恋に落ちたことから、二組の夫婦が対立し(1950年代の東部だから、階級対立のニュアンスも強い)、結局、ともに家庭崩壊となり、昔、惹かれあったどうしが二十年の歳月を経て結ばれ、いっぽう、引き裂かれた若い世代の恋の行方はいかに、といった展開になります。

ここで『陽のあたる坂道』にくらべて興趣薄く感じられるのは、大人たちの恋が紋切り型で、たんに若き日の恋第二章といった話の運びになっていることです。大人のパースペクティヴがなく、ただ未完の章を終わらせただけなのです。

物語としては、それでは味が出ません。大人は若者とは異なる価値観をもっているもので、まして二十年前の恋が、中間の二十年間を飛ばして、そのまま接続するなどというのは、リアリティーがありません。そして、二人が遠回りした二十年間は、ものの見事に無価値な虚無に投げ捨てられます。

そんな人生はないでしょう。二十年の歳月は、われわれに少なくとも価値の基盤のシフトを強います。その点が気に入らず、映画には踏み込まずに、音楽に終始しているのです。

◆ スパニッシュ、エレクトリック、ペダル・スティール ◆◆
こういう風にヴァージョン棚卸しをやると、どうしても地が出て、ギターものへと視線が向かってしまいます。前回は、ハワード・ロバーツ、トーネイドーズ、ドゥエイン・エディーのヴァージョンをかけましたが、ギターものははまだいいのがあります。

Los Indios Tabajaras - Theme from "A Summer Place"


スパニッシュ・ギターと書いたものの、ほんとうにそうかどうかなんともいえないところです。デル・ヴェッキオでしたっけ? ロス・インディオス・タバハラスは、リゾネイター・ギターも使ったということで、なんとなく、そういう響きのように聞こえるところもあります。

同じギターとはいいながら、タバハラスとはまったく異なるサウンドと方向性のものを。

Al Caiola - Theme from "A Summer Place"


子どものときは、アル・カイオラのギターというのは退屈だと感じました。しかし、こういうところに年があらわれると思うのですが、十数年まえからカイオラ贔屓になりました。ピッキングと運指がきれいで、音の出がいいからです。指が速く動くことに興味がなくなり、どう動かすかのほうに関心が移った結果です。はっきりいって、爺趣味。

ギタリストと浜の真砂が尽きることはありません。この人も避暑地の出来事をカヴァーしています。

Chet Atkins - Theme from "A Summer Place"


手元のものはチェット・アトキンズ単独名義なのですが、このクリップはフロイド・クレイマーとの共演となっています。ピアノはそれほど活躍しませんが。

つづいて、ペダル・スティールによるものを。

Santo & Johnny - Theme from "A Summer Place"


ペダル・スティールといっても、サント&ジョニーのものは音が歪んでいて、カントリーやハワイアンに向いているようには感じません。しかし、商売である以上、たちどころにわかる特徴はなによりも重要で、自縄自縛の気なきにしもあらずですが、ほかにやりようはなかったでしょう。

『避暑地の出来事』のOSTに収められた、このメロディーの変奏曲のなかには、ペダル・スティールをリード楽器に使ったものもあります。

サンプル Max Steiner "Reunion"(アップ完了。聴けるようになりました。8月14日7時)

◆ オーケストラ ◆◆
前回はヘンリー・マンシーニ盤、今回はレス・バクスター盤と、オーケストラによるカヴァーもすでに見ていますが、もうひとつだけ貼りつけます。

Billy May - Theme from "A Summer Place"


ビリー・メイはどちらかというと管のアレンジャーで、ビッグバンド・スタイルのアレンジを多数手がけています。たとえば、フランク・シナトラとデューク・エリントン・オーケストラの共演盤のアレンジに、彼の技術とスタイルは明快に記録されています。

この避暑地の出来事のテーマも、管が活躍するわけではなく、メロディー、カウンターメロディー、ともに弦でありながら、大甘にならないところは、ほとんど本能といえるのではないかと感じます。この譜面で管を鳴らしたらどうか、などとくだらないことを考えました。

それはともかく、トランペットが終わって、弦が戻ってくるときの転調というか、メロディーの改変はなかなかけっこうで、ほどよい目覚ましになっています。

どういうわけか、わが家にはこの曲のラテン・アレンジはほとんどありません。わずかに、このボンゴ・プレイヤー、ジャック・コスタンゾーのヴァージョンがあるのみです。

サンプル Jack Costanzo "Theme from a 'Summer Place'"

ラテン・アレンジだって悪くないのですが、やはり、この曲のメロディーの甘さを強調したアレンジをリスナーが好むと、多くのアーティスト、アレンジャーが想定しているのでしょう、こういう方向のものはほかに知りません。

最後にパーシー・フェイスにもどって、テレビ・ライヴ・ヴァージョンを。これは以前にも貼りつけたことがあるのですが、とうの昔に削除され、その後にアップされたものも削除され、またアップされたものです。いや正確に何度目かは知りませんが、どうせまたすぐに削除されるでしょうし、どうせまたすぐに再アップされるでしょう。人生とはかくも無駄の多いものなのでした。




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by songsf4s | 2011-08-13 23:53 | 夏の歌