映画音楽を検索していると、しばしば勘違いに出くわしてムッとなります。
オリジナル・サウンドトラック、または、サウンドトラック、またはOSTというのは、映画でじっさいに流れたものか、または盤リリースのために公式に再録音されたものをいいます。
それ以外の映画音楽、つまり、映画のテーマ曲や挿入曲をカヴァーしたものは、「film music」です。original soundtrackとfilm musicはまったく異なるものなので、厳密に区別してくれないと困るのですが、ウェブ上では、ただのカヴァーにすぎないものも、しばしばサウンドトラックと表現されています。ブログやフォーラムでもそうですが、とくにユーチューブはこの傾向がひどくて、検索に手間取ることしばしばです。
◆ テーマではないテーマ ◆◆
例によって季節ものをやろうと思います。本日は『避暑地の出来事』の挿入曲、Theme from "A Summer Place"を並べてみます。
映画『避暑地の出来事』挿入曲であるマックス・スタイナー作の曲(パーシー・フェイスがTheme from "A Summer Place"にタイトルを変更したらしい)については、以前、パーシー・フェイス篇とレターメン篇の二度に分けて書いています。

しかし、あのころはクリップを貼りつけられなかったので、音なしでしたし、その後、さらにいくつかヴァージョンを聴いたので、今日はそのあたりを並べてみようかと思います。
まず、オリジナル・サウンド・トラックから、と思ったのですが、いきなりつまずきました。ユーチューブにはOSTのクリップはたったひとつしかなく、しかも、それはエンベッド不可で、ここに貼りつけられなかったのです。
かわりに予告編を貼りつけます。
A Summer Place trailer
じつは、『避暑地の出来事』のオープニング・タイトルで流れる、Main Titleという曲は、パーシー・フェイスがヒットさせたTheme from "A Summer Place"とは異なるものです。
パーシー・フェイスがカヴァーした曲は、映画のなかでは数種の変奏曲として流れます。OST盤では、変奏曲ごとにタイトルが異なっているのですが、Theme from "A Summer Place"というタイトルのものはありません。
どうであれ、おおもとはどういうアレンジ、サウンドだったのかということは確認しておいたほうがいいので、サンプルをアップしました。
サンプル Max Steiner "Bright Dreams-The Garden"
これはパーシー・フェイスがカヴァーしたメロディーが最初に出てきたときのタイトルで、トロイ・ドナヒューとサンドラ・ディーが恋に落ち、語らうときに流れます。このあとも、同じメロディーが流れるのは、おおむね二人の場面なので、Love Themeというタイトルをつけてもいいくらいです。
つづいて、パーシー・フェイスのカヴァーを。
Percy Faith - Theme from "A Summer Place"
このヴァージョンについては、すでに書くべきことは書きましたし、耳タコの王者みたいな曲なので、とくにいうべきことはありません。テーマではない曲をカヴァーするときに、テーマというタイトルをつけることになった経緯がちょっと気になるだけです。
つづいて、以前、この曲を取り上げたときに賞賛したヴァージョン。プロデューサーはもちろんジョー・ミーク。
The Tornados - Theme from "A Summer Place"
昔の記事でも書きましたが、パーシー・フェイスがあそこまでやってしまうと、オーケストラものはもうあまりやりようがなく、興味はコンボによるカヴァーへと移ってしまうのです。
どれくらいやりようがないかというと、これくらいにやりようがないのです。ヘンリー・マンシーニのカヴァー。
パーシー・フェイスとどこかがちがうのだ、と考え込んでしまいます。ヘンリー・マンシーニともあろう人が、なにをやってんだと怒鳴りつけたくなります。
オーケストラものでいいと思うものもあることはあるのですが、ユーチューブにはクリップがないので、次回にでもサンプルをあげることにして、今日は微妙なオーケストラもの、名前はオーケストラになっているけれど、そう呼ぶのはためらうタイプのものを。
Love Unlimited Orchestra - Theme from "A Summer Place"
ディスコ・アレンジといえばそうなのですが、バリー・ホワイトのラヴ・アンリミティッド・オーケストラはけっこう好みでした。じっさい、この曲のドラムも、露骨なディスコ・ビートはあまり使っていません。まあ、途中でハイハットが裏拍になり、いかにもディスコというパターンが登場しますが。
ユーチューブを検索していて、だんだんうんざりしてきました。わたしがいいと思うヴァージョンはあまり見つからないのに、パーシー・フェイスは何十種類もあり、世をはかなんでしまうような状態です。
あまりの愚鈍さに腹が立ってきたので、予定を変更して、もうひとつサンプルをアップします。
サンプル Howard Roberts "Theme from 'A Summer Place'"
メンバーは、ハワード・ロバーツ=ギター、ヘンリー・ケイン=オルガン、チャック・バーグホーファー=ベース、ラリー・バンカー=ドラムズ、です。しかし、じっさいにはアコースティック・リズムも入っていて、そのプレイヤーの名前がありません。2オン1のもう一方のアルバムとパーソネルが入れ替わったのだとしたら、ビル・ピットマンということになりそうです。

文章では、なによりもクリシェを避けることが重要ですが、音楽や映画や美術などでもそれは同じだと思います。他人の真似なんかなんの意味もないし、そもそもやっている当人が退屈で死にたくなると思うのですが、世の中、クリシェがあふれています。
避暑地の出来事もクリシェだらけなので、多少ともプライドのある人は、やはりひねりをくわえようと努力しています。ハワード・ロバーツのヴァージョンは、コンボによるカヴァーでは、トーネイドーズと並んで好ましい出来だと思います。
もうひとつギターものをいきます。ジャズ・ギタリストとはぜんぜんアプローチがちがいます。いや、この人はポップ/ロック系のなかでも変わり種で、ひとり一ジャンルみたいなものですが。
Duane Eddy - Theme from "A Summer Place"
アレンジ、楽器編成には工夫がありませんが、リード楽器がエディーのトワンギー・ギターというだけで十分に変なので、あとはノーマルにしておいた、といったところでしょうか。これ、いわゆるひとつの好意的解釈というヤツ。
一回でちょいちょいと思ったのですが、書いている途中で、これはダメだ、一回では終わらないと腹をくくりました。まだ悪くないヴァージョンが残っているので、もう一回、避暑地に行くことにします。
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ハワード・ロバーツ
Whatevers Fair: All Time Great Instrumental Hits

トーネイドーズ
Ridin' The Wind : the Anthlogy

パーシー・フェイス
Theme From a Summer Place
