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Surf'n'Rod WITHOUT (or mistakingly WITH) Hal Blaine Vol. 2
 
サーフ・ミュージックの定義を見つけないとやりにくくて仕方ないのですが、しかし、結局、これは無意味のような気もします。

前回、ライノのカウアバンガ・ザ・サーフ・ボックスがファイアボールズのBulldogではじまっているのは違和感があると書きました。べつのサーフ・アンソロジーには、この曲が収録されていて、うーん、どうかなあ、と首を傾げました。

The Ventures - Lullaby of the Leaves


むろん、この曲が悪いというのではありません。コア・レッキング・クルーただいま形成中という雰囲気で、けっこうなプレイだと思います。しかし、これがサーフ・ミュージック(ないしはホットロッド)かというと、わたしはそういう風には感じません。

そのサーフ・アンソロジーの編集者がいいたいのは、ヴェンチャーズの「木の葉の子守歌」(と当時買ったベスト盤には書いてあった)は、サーフ・ミュージックの形成に強い影響を与えた先駆的トラックである、ということなのでしょうが、それだったら、ほかにもっと適切なものがあるだろうと思います。でも、そう思うのはわたしであって、ほかの人はそう思わないから、このトラックが選ばれたのでしょう。

これはどうなんだろうか、と自問し、まあ、入れちゃっていいんじゃないか、と感じるのはこの曲。

The Pyramids - Penetration


リヴァーブのせいでしょうか、こちらはサーフ&ロッド的な響きがあると感じますし、それは多くの人が共有する感覚だから、このトラックがしばしばサーフ・アンソロジーに再録されているのでしょう。しかし、この時期はみんなこんなものとはいえ、下手ですなあ。

もうひとつ、有名な曲のオリジナルをいってみます。

The Chantays - Pipeline


このオリジナルにたどり着いたときは、なんだ、この程度か、と思いました。そのときの印象にくらべれば(ほかに山ほどゴミ・サーフを聴いたせいで)、いまでは、下手というより、プロデューシングがなっていないのだ、というほうに認識がシフトしましたが、でも、一言でいえばやっぱり「この程度かよ」なのです。

われわれ日本男児は、シャンテイズは無視し、ヴェンチャーズを支持しました。

The Ventures - Pipeline


とくになにかを付け加えたりはしていないのに、シャンテイズのオリジナルよりずっと立体的なサウンドで、格がまったく違うことがわかります。それは抑揚のコントロール、タイム、ディテールをおろそかにしないミュージシャンシップ、といったものがもたらした違いでしょう。

だれもインプロヴをするわけではなく、定められたことをきちんと弾いているだけの、きわめてアノニマスなプレイで、だれとも判断はつきませんが、この懐の大きさは、「The Ventures in Japan」でプレイしている、全員、タイムが微妙に早い(テープの回転速度をいじってスピードアップし、うまく聞こえるように細工したことは有名だが、そういう意味ではなく、プレイのタイムをいっている)、寸詰まりグルーヴのバンドとはまったく異なっていることだけはわかります。

では、こちらのグループはどうでしょうか。

The Astronauts - Baja


アストロノウツについては、ライノのカウアバンガでも、あとなんだったか、他のソースでも、パーソネルはアストロノウツのメンバーしか書いてありません。

しかし、ハリウッドというか、アメリカ音楽家組合(AFM)LA支部(Local 47)のように、半世紀も書類を保存しているのは特別で、NYなど、コントラクト・シートを見たことがありません。

アリゾナ州フィーニクスのAFM支部が、アストロノウツのコントラクト・シートを保存してあり、カリフォルニアのレコード会社(ライノはサンタモニカだったような)のだれかがそこまでいって、きちんと書類を確認した可能性は、コストから考えて低いでしょう。つまり、調べもせずに、アストロノウツは自分たちでプレイしたと書いているのではないかと疑っています。

わたしは小学校六年だったと思いますが、テレビでアストロノウツのライヴを見て、ゲラゲラ笑いました。まるで弾けないのです。いや、まあ、そんな子どものころの印象はあてにならないのは認めますがね。

十数年前、そのことをいったら、畏友、オオノさんが、昔、来日したアストロノウツの日本録音を担当した、日本ビクターのディレクターが、まったく弾けないのに呆れて、匙を投げたということを書いていた、と教えてくださいました。そして、問題の日本録音のシングルというのを聴かせてもらい、小学校のときに聴いたバンドに間違いないと、馬鹿笑いしました。まったくデタラメなプレイです。

スタジオ録音はきれいにやっているけれど、ライヴはガタガタ、というのは、まだ嘘で糊塗できる余地がいくぶんかあります。しかし、スタジオ録音どうしを比較したら、すべては白日の下です。

結論。上掲Bajaでプレイしたバンドと、日本に来てビクターのディレクターを呆然とさせたバンドは異なります。Bajaは、スーパープレイなし、定められたことを丁寧に弾いているだけですが、だれも突っ込んだり、遅れたりといった子どもっぽいミス(それこそが日本に来たアストロノウツの特徴だった)はしていません。

なにしろ、アリゾナ州フィーニクスなんていうところについては、たいしたことは知られていないので、このあたりを追求するのは非常に困難ですが、初期アストロノウツのプロデューサー、リー・ヘイズルウッドの右腕だった人物は、ギタリストとしてよく知られています。セッション・プレイヤーとしての彼、アルヴィン・ケイシーの代表作はこれ。

フランク&ナンシー・シナトラ Somethin' Stupid


ジミー・ボーウェンとリー・ヘイズルウッドの共同プロデュース、エンジニアはエディー・ブラケット、ドラムズはハル・ブレインです。

ブラケットはこのプロジェクトのために、冗談半分で、Producer: Jimmy BowenおよびProducer: Lee Hazlewoodという名札をつくって二人の前に置き、さらに、それぞれ個別にトークバック・マイクロフォンを設置したそうです。ボーウェンだったか、映画を作っておけばよかった、と回顧しています。

サーフ&ブレイン・シリーズでも一曲、アル・ケイシーのサーフ・アルバムからのトラックを入れておきましたが、こんどはシングル盤で、ドラムはハルではありません。

Al Casey - Surfin' Hootenany


歌っているのは、名前はどうであれ、実体はブロッサムズです。後半、彼女らの紹介で、つぎつぎに有名アーティストが登場します。まずディック・デイル、これはそれっぽく、つづいてヴェンチャーズ、これはぜんぜん赤の他人、最後はドゥエイン・エディー、もちろん、アル・ケイシーは、エディーの録音でセカンド・ギターをプレイしたので、そっくりにやっています。

地方都市ではスタジオ・タイムも安価なのでしょうが、それでも、こういう人がいたのだから、アストロノウツのようなぜんぜん弾けない素人のギターいじりなんか、リーははじめから勘定に入れていなかったでしょう。

アル・ケイシーのプレイをもうひとついきます。これは4ビートで、サーフ・ミュージックとして録音されたものではないのですが、どちらにでも聞こえるのではないかと思います。

Al Casey - The Hucklebuck


リヴァーブのあるなしはやはり印象を左右しますが、さりながら、リヴァーブがないとサーフ・ミュージックにはならない、ともいえません。このThe Hucklebuckあたりは、サーフ&ロッド・アンソロジーに入っていたら、とくに違和感なしに通り過ぎてしまうでしょう。

なんだかんだいいつつ、やっぱり素人のプレイはつらい、プロは控えめにプレイしてもグッド・フィーリンを生み出す、という話でした。

次回もいちおうハル・ブレイン抜きのサーフ&ロッドの予定ですが、今日、ちょっと聴いたプロコール・ハルムのボックスのことか、はたまたNow Listeningか、そのあたりに逸れる可能性もあります。


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ヴェンチャーズ
プレミアム・ツイン・ベスト ダイアモンド・ヘッド~ベンチャーズ・ベスト

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ピラミッズ(MP3ダウンロード)
Penetration! The Best Of The Pyramids
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アストロノウツ
Surfin' With The Astronauts/Everything Is A-OK! [2-on-1 CD]
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ナンシー・シナトラ
Sugar
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アル・ケイシー
Surfin Hootenanny
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ライノ・ロック・インストゥルメンタル・アンソロジー
Rock Instrumental Classics 5: Surf
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ライノ・レコード カウアバンガ・ザ・サーフ・ボックス(中古)
Cowabunga: Surf Box
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by songsf4s | 2011-08-02 23:50 | サーフ・ミュージック