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増補ハル・ブレイン・ディスコグラフィー読解 その2 The Everly Brothers
 
ハル・ブレインがエヴァリー・ブラザーズのトラックでプレイしたことは、あちこちに書かれていて、その事実だけはわたしもずっと以前から知っていました。

そして、ベア・ファミリーの巨大ボックスなどにはパーソネルも書かれているようで、そういうものをお持ちの方は、どのトラックでハルがプレイしたかご存知なのだろうと思います。

だから、今回の拡張ディスコグラフィーに記載された曲でハルがプレイしたことは周知の事実なのかもしれません。でも、わたしははじめてどの曲でプレイしたかという具体的なことを知りました。

まずは、いわれなくたって、これだけはわかってもおかしくなかったはずだ、という一曲。エヴァリーズ最後のトップ40ヒット(だったと思うが)。

エヴァリー・ブラザーズ Bowling Green


皆様にはまったくどうでもいいことですが、かつてビルボード・トップ40完全コレクションをやっていたころ、エヴァリーズはこの曲だけなかなか手に入らず、長いあいだイライラの種だったことは、忘れられません。

だから、まじめに聴いた(大量に買っていると、針飛びがないことを確認するだけで、それきり忘れてしまう盤が多いのは皆様の多くもご存知でしょう)のですが、百パーセント全開のハル・ブレインというわけでもなく、ハルがやったエヴァリーズのトラックのひとつがこれだと、あらかじめ予見していたわけではありませんでした。

しかし、云われてみると、これは推測していてしかるべきだったと思います。ちゃんとヒントがあったのです。Bowling Greenのパターンは、以下の曲で使ったパターンのヴァリエーションだったからです。

サム・クック Another Saturday Night


ハル・ブレインがいかに独創的で風変わりなドラマーだったかが如実にあらわれた曲です。この曲でのハルは、多くのフィルインの尻尾で、ヒットではなく、ロールを使っています。パンと強くヒットして一打で止めるのではなく、手首でスティックの跳ね返りを押さえ込んで(ほとんどは)タムタムのヘッドの上でスティックのティップを「転がし」ているのです。

音質が最悪で、フィルインの尻尾が聴き取れませんが、つぎの曲でも何度か同じパターンを使っています。

ボビー・ソックス&ザ・ブルージーンズ Dr. Kaplan's Office


どちらもよく知っている曲ではあるし、こんな奇妙なことをやったドラマーはハル・ブレインしかいないのだから、エヴァリーズのどこにハルがいるのだろうと思ったとき、このパターンを手がかりに、推測できていても不思議はなかったと思います。まあ、わからないときはわからない、ということです。

わたしはエヴァリーズのファンなのですが、WB移籍後の彼らの盤は納得のいかないものが多く、後追いのリスナーとしては、やっぱり時代の変化に押し流されたのだなと思います。Bowling Greenもそれなりにいい曲ですし、ハル・ブレインやクルーもグッド・フィーリンをつくりだしていますが、エヴァリーズを特別な存在にしていたなにものかはすでに失われていたことを痛感します。腐っても鯛の底力、巨大な人気の惰性だけでチャートをよじのぼり、力尽きてしまったのでしょう。

ハル・ブレインは今回の拡張ではエヴァリーズのトラックをたくさんリストアップしているので、もう少し並べてみます。

エヴァリーズ A Voice Within


うーむ。いや、これだってエヴァリーズじゃないと思えば悪くないトラックだと思います。でもやはり、なんだって、エヴァリーズがフォー・トップスみたいなコーラスを使うんだよ、とがっかりしてしまいます。

ハルは暴れませんし、楽曲としてエヴァリーズがシングル・カットできるようなタイプではありませんが、ドンとフィルの声には、やはりこういうもののほうがいいのではないでしょうか。エヴァリーズ、Born to Lose



エヴァリーズの最大の魅力はドンとフィルの声のブレンドがすばらしいことで、いっしょに歌ってナンボなのに、別々に歌っては、価値半減です。

いや、ビートルズについても同じことを感じたのですけれどね。ご存知のように、ビートルズとはつまり「ジョン&ポール・エヴァリー兄弟」だったわけで、二人がいっしょに歌ってナンボだったのに、Revolverあたりから家庭内離婚状態になってしまったのが、結局、音楽的な命取りになったと思います。

閑話休題。Born to Loseはエディー・アーノルドの曲ですが、彼のヴァージョンはクリップが見つかりませんでした。ジョニー・キャッシュ、マーティー・ロビンズ、レイ・チャールズ、ジーン・ピットニーなどのヴァージョンがありましたが、ここでは割愛します。

◆ ハル・ブレイン、エヴァリーズを語る ◆◆
数多くの曲が並び、それなりにコメントが付されているのですが、拾っておくべき事実はそれほどたくさんありません。

まず、エヴァリーズのハリウッド・セッションでは、多くの場合、ビリー・ストレンジがアレンジをした、と云っています。ビリー・ストレンジのルーツはカントリーなので、エヴァリーズのアレンジャーとしては適任だったでしょう。

また、スタジオはサンタモニカ・ブルヴァードにあった、レイディオ・レコーダーだったそうです。ハルは「エルヴィスのレコーディングをしたスタジオ」といっていますが、リック・ネルソンのホームグラウンドでもありました。

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レイディオ・レコーダーのエルヴィス・プレスリー

のちにエヴァリーズは分裂して、ドンとフィルのそれぞれがソロ・シンガーになるわけですが、ハルは、スタジオで兄弟が大喧嘩をしたのを何度か目撃したといっています。兄弟がうまくやるのはふつうでもむずかしいのに、協力して同じ仕事をするというのは、はじめから強いストレスのかかる状況です。エヴァリーズはよくもったほうでしょう。そう考えると、マイク・ラヴという共通の敵がいたことは、ウィルソン兄弟にとってはいいことだったような気がしてきました。

ビリー・ストレンジのアレンジの基本方針は、装飾は控えめにし、ドンとフィルの声を生かす、ということだったのでしょうが、なかにはいかにもハリウッドらしいトラック、ナッシュヴィルにはぜったいに聴こえないものもあります。

サンプル The Everly Brothers "Just One Time"

これまた、ハル・ブレインしかやり手がいないだろうという、変なパターンのドラミングです。ハルを聴いていると、思わず頬がゆるんだり、あるいは、大笑いすることがあるのですが、これも笑ってしまいます。

この曲はギターもうまくて、おお、です。ひとりじゃなくて、複数のギタリストが攻め込んでくるところが、いかにもハリウッドらしいところです。だれでしょうねえ。ビリー・ストレンジ御大みずからリードをとった? いや、グレン・キャンベルかジョー・メイフィスあたりかもしれません。

最後にもう一曲、エヴァリーズらしいメランコリックなカントリー・チューンを。

エヴァリーズ (Why Am I) Chained to a Memory



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エヴァリー・ブラザーズ(Born To Lose、Just One Time、I'm So Lonesome I Could Cry収録)
Sing Great Country Hits / Gone Gone Gone
Sing Great Country Hits / Gone Gone Gone


エヴァリー・ブラザーズ(Bowling Green、A Voice Withinを収録)
Sing
Sing


エヴァリー・ブラザーズ(2CD WB Best) Bowling Green収録
Walk Right Back: The Everly Brothers On Warner Brothers, 1960-1969
Walk Right Back: The Everly Brothers On Warner Brothers, 1960-1969
by songsf4s | 2011-07-15 23:50 | ドラマー特集