人気ブログランキング |
増補ハル・ブレイン・ディスコグラフィー読解 その1 The BuckinghamsとSpanky & Our Gang
 
ラロ・シフリン・フィルモグラフィーをたった二本で終える気は毛頭ないのですが、いかんせん、つぎの映画を見る時間(ないしは気力)がないため、やむをえず前回もべつのことを書き、本日もまたちょっとだけ耳を使えばすむ話題でつなぐことにします。

◆ スパンキー&アワー・ギャング ◆◆
先日、オフィシャル・ハル・ブレイン・ウェブサイトの新しいディスコグラフィーにふれました。いずれ、詳細に検討したいと思いますが、ラロ・シフリンの準備ができるまで、何曲か、新たにリストアップされた曲を聴いてみることにします。

まずはスパンキー&アワー・ギャングです。どういうコンテクストで出てきたのか忘れてしまったのですが、たしかTonieさんが、どこかでハルのクレジットを見つけたのではなかったでしたっけ? どういう経緯であったにしても、まえまえから疑っていたスパンキー&アワー・ギャングでもハルがプレイしたということは、いちおうすでに確認済みでしたが、今回、ハル自身の側から具体的にトラック名が出てきて、推測はコンファームされました。

スパンキー&アワー・ギャング I'd Like to Get to Know You


なかなか涼しげなサウンドで、いまの季節にはとくによろしいようで。スパンキー&アワー・ギャングは、当初、NYで録音していたのではないかと推測しています。デビュー・アルバムのプロデューサーがジェリー・ロスで、ロスはNYベースで仕事をしていたからです。

ハルは、自分がプレイしたのはロッカーばかりだったので、ブラシを使う機会は多くなかった、そのなかで、この曲でのブラシのプレイはすごく楽しかった、とコメントしています(ブラシとスティックの両方の音がしているが、ハル自身によるダブルなのだろう)。いや、ハルはブラシのプレイでも天性のイノヴェイターぶりを発揮したとわたしは考えていますが、ご本尊としては、もっとブラシのプレイをしたかったのでしょう。

データなしでスパンキー&アワー・ギャングのベスト盤の音だけを聴いていると、ハルに聴こえるものがいくつかあり、途中からはハリウッド録音なのだろうと考えていました。新しい拡張ディスコグラフィーでは、ハルはセカンド・アルバムの曲をあげているし、前回、ハル=アワー・ギャングの検討をしたときも、セカンドからではないかと推測したので、これでなんの疑いもなく百パーセントの確定です。

今回のリストにはありませんが、以前の検討で、ここからはハルだろうと考えた曲。

スパンキー&アワー・ギャング Sunday Mornin'


どちらのクリップもあまり音質がよくないので、ドラマーの聞き分けをするには不都合です(最初にあげたI'd Like to Get to Know Youでは、ブラシの音がただのホワイトノイズのように聞こえてしまう)。お持ちの方はご自分の盤をお聴きになっていただければと思います。ドラムを聴く場合、たとえば、スティックの尖端がスネアのヘッドをヒットする瞬間の微妙なタイミングは、音質が悪いと把握できません。

いや、むろん、ハル・ブレインかジム・ゴードンかが判断しにくくなる、といったレベルのことであって、ハル・ブレインとチャーリー・ワッツを間違えるなどということは、低音質でも起こりませんが!

ハル・ブレインが自分のディスコグラフィーにあげているのに、なぜ聞き分けだなどというかというと、ハルのメモや記憶にもときおりミスがあるので、いちおうの検証は必要だからです。また、パーカッションをプレイしたものもリストアップされるので、トラップがハルなのかどうかを確認する必要もあります。

ハル・ブレインはもう一曲、スパンキー&アワー・ギャングの曲を上げています。ハルのプレイは文句なし、楽曲の出来もよいので、これはサンプルにしました。LPリップですが、ノイジーではないのでご安心を。

サンプル Spanky & Our Gang "Medley: Anything You Choose/And She's Mine"

メドレーの後半、And She's Mineのベースは、キャロル・ケイやジョー・オズボーンのような感じがしません。ひょっとしたら「第三の男」(といっても赤木圭一郎ではない)、ラリー・ネクテル?

◆ ビーチボーイズのコントラクターたち ◆◆
つぎは以前からハル・ブレインの参加がわかっていたものですが、今回の拡張ディスコグラフィーでは、コメントに興味深いことが書かれていたので、クリップを貼り付けます。

ビーチボーイズ Barbara Ann


この一連のPartyセッションでは、ジョー・オズボーンがフェンダー・ベースを、ハル・ブレインがパーカッションをプレイしたことは以前からわかっていました。この曲ではタンバリンでしょうから、ハルのプレイがどうのこうのというトラックではありません(他の曲ではボンゴをやっていて、これは「さすがはハル・ブレイン」と瞠目するが)。

ほう、と思ったのは、この曲のことではなく、そこに付されたハルのコメントのほうです。

「(The Beach Boys were) usually contracted by Steve Douglas and later Hal Blaine and later Dianne Revell」

「ビーチボーイズに関しては、多くの場合、スティーヴ・ダグラスがコントラクターをつとめたが、のちにはハル・ブレインが、さらに後年になると、ダイアン・ラヴェルがおこなった」(Revellではなく、正しくはRovell)

ひどく専門的話題で恐縮ですが、ビーチボーイズのコントラクトをしていたのはだれか、なんてことを明らかにした記述ははじめて見ました。わたしはスターには関心がなく、プレイとサウンドとそれを支えたシステムの研究をしています。わたしのような人間にとっては、こういう事実を押さえておくことがなによりも重要なのです(あるセッションのメンバーは、プロデューサーの注文に配慮しつつ、コントラクターが決める)。あのダイアンがコントラクターをやっていたなんてはじめて知りました。

つぎの曲はダイアン・ラヴェルのことを歌ったものといわれています。いや、真偽のほどはなんともいえませんが。

ビーチボーイズ My Diane


このころになると、ハル・ブレインはあまりビーチボーイズの仕事はしなくなっていたと思っていましたが、この曲はハルかもしれないと感じます。

◆ バッキンガムズ ◆◆
1998年だったと思うのですが、メールでキャロル・ケイさんにいろいろなお話を伺いました。モータウンの話題が多かったのですが、わたしが彼女にメールを送ったのは、ハル・ブレインの回想記のディスコグラフィーで言及された以外に、クルーが影武者をやったバンドとしてはどういうものがあったのかを知りたかったからです。

ハーパーズ・ビザールはスタジオではプレイしなかったのではないか、というわたしの疑いは、彼女によって全面的にコンファームされました。ドラムはハル・ブレイン、ベースはキャロル・ケイ、ギターはトミー・テデスコというのがレギュラーだった、というのです。

つぎに質問したのは、たしか、このバンドのことだったと思います。

バッキンガムズ Don't You Care


彼女からは、セカンド以後、ほとんどのシングルでわたしがベースをプレイした、という回答がとどきました。セカンド・シングルとは、すなわち、上記のDon't You Careです。

ベースがキャロル・ケイなら、では、ドラムはハル・ブレインか、というと、わたしにはそうは聴こえませんでした。ハルにしては、タイムが少し早すぎると感じますし、そもそもこの曲がハルのプレイだったら、回想記のトップテン・ヒッツ・ディスコグラフィーにあげられていてしかるべきです(もっとも、あのディスコグラフィーから抜け落ちた曲をいくつか確認しているが)。彼女もドラマーがだれだったかまでは記憶していなくて、この件はそこで行き止まりとなりました。

ただし、当時も、この曲は他のシングルでプレイしたタイムがすこし早いドラマーより微妙に遅いので、ハル・ブレインの可能性が高いと考えていました。

バッキンガムズ Mercy, Mercy, Mercy


いま聴きなおしても、これが丁半博打なら、やはりハル・ブレインであるというほうに札を張ります。

そして、今回の拡張ディスコグラフィーでは、ついにハル・ブレインの側から、バッキンガムズの名前があがりました。

バッキンガムズ Just Because I've Fallen Down/Any Place In Here/Any Place In Here-Reprise


細かいことをいうと、ハルが言及しているのは、Any Place In Hereだけで、このクリップでつながって出てくる他のトラックには言及していません。Just Because I've Fallen Downは、最初はハルのような気もしましたが、だんだん違うような気がしてきて、これについてはとりあえず判断保留です。ハルのことを離れても、ストップタイムのギター・アンサンブルがすごくチャーミングです。パーソネルを知りたいものです。

この曲が収録されたバッキンガムズのPortraitsというアルバムは、時代を反映した、いわゆる「ペパーズの息子」で、ちょっとばかりビートルズの真似事をしています。サウンド・イフェクトの多用もペパーズの息子の特徴のひとつでした。

バッキンガムズのプロデューサーは、ジェイムズ・ウィリアム・グェルシーオです。グェルシーオの名が最初に歴史に記録されるのは、チャド&ジェレミーのツアー・バンドにベース・プレイヤーとして加わったときのことで、つぎにチャド&ジェレミーのためにこの曲を書いたことで名前が残ることになります。

チャド&ジェレミー Distant Shores


たまたまというか、必然的に、というか、この曲のドラマーもハル・ブレインです。確証はありませんが、ベースはキャロル・ケイとわたしは考えています。タイムといい、ルートから離れるときのラインの作り方といい、いかにもCKスタイルと感じます。

バッキンガムズについては、ハルはとんでもない勘違いをしていて、要するに、ほとんど記憶に残らない程度のかかわりでしかなかったのだろうと思います。したがって、Don't You Careなどでプレイした微妙にタイムの早いドラマーは依然、未詳と考えています。

夏の夜、涼しい風が吹いたりすると、無性に昔の歌が聴きたくなるものですが、今夜はビーチボーイズをあれこれ聴きたくなりました。次回はただなんとなくビーチボーイズのトラックを並べるなんていうのをやってみましょうか。


Click and follow Songs for 4 Seasons/metalside on Twitter
metalsideをフォローしましょう


スパンキー&アワー・ギャング(ボックス)
Complete Mercury Recordings
Complete Mercury Recordings


ビーチボーイズ(Barbara Annを収録)
Party / Stack-O-Tracks
Party / Stack-O-Tracks


ビーチボーイズ(My Dianeを収録)
M.I.U.アルバム(紙ジャケット仕様)
M.I.U.アルバム(紙ジャケット仕様)


バッキンガムズ(Mercy, Mercy, MercyおよびDon't You Careを収録)
Mercy Mercy Mercy: A Collection
Mercy Mercy Mercy: A Collection


チャド&ジェレミー
Very Best of Chad & Jeremy
Very Best of Chad & Jeremy
by songsf4s | 2011-07-14 23:25 | ドラマー特集