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ラロ・シフリン・フィルモグラフィー2 ヘンリー・レヴィン監督『サイレンサー殺人部隊』後篇
 
ハル・ブレインのオフィシャル・サイトは、いつも工事中のようで落ち着きがなく、そのわりにはあまり新しいデータも出てこなくて、めったに行くことはありませんでした。

しかし、一昨日、検索していてたまたま飛び込んだら、ディスコグラフィーが一新され、いままではリストアップされていなかったアルバム・トラックなどが大量に追加されたばかりでなく、多くのトラックにハルのコメントも付されていました。

もちろん、いずれ当家でも新規のトラックや新発見の事実についてはまとめて取り上げるつもりですが、それは先のことになるかもしれないので、とりあえず、更新されたことをお知らせしておきます。

◆ King of No Marrying Kind ◆◆
前回の最後に、ギター入りのインスト・ヴァージョンをあげておいた、ラロ・シフリンとハワード・グリーンフィールド(長年にわたってニール・セダカの共作者だった)作のI'm Not the Marring Kindには、ディーン・マーティン自身によるヴォーカル・ヴァージョンもあります。



いかにもディノにふさわしく、また(当然ながら)マット・ヘルムにもふさわしいテイラー・メイドの曲で、わたしのようなディーン・マーティン・ファンはニコニコしてしまいます。この曲のストゥールに坐ったのもハル・ブレインだということは、後半のハード・ヒットでわかります。

歌詞があるとそうでもないのですが、インスト・ヴァージョンを聴いていると、ディノがよく歌ったべつの曲と混同してしまいます。その曲を、ディノと作者ロジャー・ミラーとの共演でどうぞ。

ディーン・マーティン&ロジャー・ミラー King of the Road


いや、似ているからどうだというわけでもないのですが、映画のなかで最初にカー・ラジオからインスト・ヴァージョンが流れてきたとき、これは知っているな、ディノがよく歌っていた曲だ、とまでは思ったのですが、なかなかアイデンティファイできず、やっとのことで、「わかった、ロジャー・ミラーのKing of the Roadだ」てえんで、正解にたどり着いた気になったら、あにはからんや、違う曲だったものだから、まぎらわしいことするな! とクレイジー・キャッツになってしまったという、それだけのことです。

◆ ダンス・チューン ◆◆
『サイレンサー殺人部隊』はあまりクリップがなく、またしてもフランス語吹き替え版を貼りつけます。

敵のアジトに乗り込んだものの、敵方のボス、カール・マルデンがアン=マーグレットにブローチ型の爆弾を送ったことを知ったディノは、例の鉄頭男に邪魔されながらも、ホヴァー・クラフトを駆って、ヒロインを救いに行きます。アン=マーグレットが妙なドレスを着ている理由は最後にわかります。そのあとのラットパック楽屋落ちはたいしたことありませんが。

フランス語版サイレンサー殺人部隊パート2


子どものころ、ホヴァークラフトが好きで、一度乗ってみたいと思っていました。このシークェンスはホヴァークラフトの特性を生かして、海から陸に乗り上げ、アン=マーグレットがいるクラブ(いや、昔だからディスコテークか)まで行ってしまうのがなかなか愉快です。ただし、じっさいに陸を走るのはほんのちょっとで、あとはおそらくトラックに載せたキャメラから撮ったのでしょう。

ダンス・シークェンスなので、音楽もシンプルで、楽曲の出来がどうこうというようなものではなく、ハル・ブレインを中心としたプレイヤーたちの技量に全面的に依存しているという印象です。でも、それも音楽のひとつのありようですから。

◆ ラウンジ2種、南米風および南仏風 ◆◆
以前、べつのブログでエルヴィス映画見直しというのをやったとき、「エルヴィス映画見直し Mexico by Elvis Presley (映画『アカプルコの海』より その3)」という記事で、エルヴィスはメキシコ・ロケに行かず、彼の出演シーンはすべてハリウッドのスタジオで撮影されたように見える、それがこの映画の大きな欠点になっている、といった趣旨のことを書きました。

昔の映画では、そういうのはごく普通のことだったので、責めるつもりはありませんが、ディノも、この映画ではフランス・ロケに行かなかったのではないでしょうか。屋外のシーンはスタジオ・ロットでもかまわないようなものばかりで、いかにもフランスらしい風景のなかには、ディノの姿はありません。

小津安二郎はスクリーン・プロセスが大嫌いで、そんなことをするぐらいなら、そのシーンをカットするといっていましたが、じっさい、昔の映画はじつにスクリーン・プロセスが多く、それでリアリティーが損なわれることがしばしばありました。車のシーンにはほとんどスクリーン・プロセスを使わなかったジャン・ベッケルの『黄金の男』は、あの時代にあってはきわめて異例だったのです。

そういう時代だからしかたない、とは思うものの、『オーシャンと十一人の仲間』のレベルで気合を入れてくれれば、もう少し、いま見ても楽しいものになったのではないかと思います。まあ、オーシャンの撮影は、いわば彼らのホームグラウンドであるラス・ヴェガス、『サイレンサー殺人部隊』はリヴィエラなので、同列に論じるわけにはいきませんが、スターがヨーロッパまで行って撮っている映画だってたくさんあるのだから(アフリカまで行ったのだってある!)、ちゃんとやってほしかったと思います。

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記事を書く前に、先回りしてbox.netにアップしておいたサンプルが残っているので、最後にそれを貼りつけておきます。タイプはやや異なりますが、大きく云えばどちらもラウンジ・ミュージックです。

サンプル Lalo Schifrin "Double Feature"

ボサ・ノヴァ風で暑い季節にはもってこいのサウンドです。好きこそものの上手なれ、なんて云っては失礼ですが、ラロ・シフリンはどこかにフルートを入れずにはいられない人なので、フルートの使い方はさすがにうまいものです。同じ楽器によるアンサンブルというのは、ギターの場合で明瞭なように、おおいに魅力のあるものですが、フルートという楽器も、単独の場合より、このように複数のアンサンブルにしたときに最大限に美質が発揮されると感じます。

サンプル Lalo Schifrin "Frozen Dominique"

上述のように、この映画のおもな舞台はフランスなので、こんどはアコーディオンをリード楽器に使ったバラッドです。映画音楽をやる人はおおむねヴァーサティリティーに富んでいるものですが、ラロ・シフリンもじつに多様な技を繰り出してきます。まあ、複数のオーケストレイターがついていて、それぞれの得意分野のアレンジをやった、という可能性もありますが。

◆ まぎらわしいもの2 ◆◆
いま、忘れものに気づき、急いで補足。『サイレンサー殺人部隊』のテーマ曲には、前々回、サンプルにした「Iron Head」のような、ギター・インスト版変奏曲はあるのですが、これをカヴァーしたインスト・バンドは見当たりません。

ただし、ひとつだけ、カヴァーと云ってはいないものの、無関係とも思えない曲があります。メロディー・ラインがよく似ているのです。そして、ギター・インストです。

サンプル Billy Strange "Spanish Spy"

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ここまで似ていると、十分に盗作圏内なので、ラロ・シフリンとなにか話し合いがあったうえでやっているのではないかと推測します。もっとも可能性が高いのは、ビリー・ストレンジも『サイレンサー殺人部隊』のスコアになんらかの形で関与し、とりわけIron Headの録音では、アレンジャーand/orリード・ギタリストをつとめた、なんて線です。どちらもドラマーはハル・ブレインだし、って、これは無関係。

以上、映画としては、わたしのように、このてのまがい物007のキッチュな味を愛している人間には面白いけれど、ふつうの人は苦笑するような出来です。しかし、音楽の水準は高く、まだOSTがCD化されていないのは不当です。マット・ヘルム・シリーズをひとまとめにしてリリースしてほしいものです。


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by songsf4s | 2011-07-11 23:52 | 映画・TV音楽