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ラロ・シフリン・フィルモグラフィー1 ピーター・イエイツ監督『ブリット』前篇
 
そんな大見得きって大丈夫かと自分に問うと、あまり大丈夫でもないかな、という頼りないこたえが返ってきましたが、以前からずっとやろうと思っていた、ラロ・シフリンの映画スコアの跡づけにとりかかろうと思います。

本来、そういうことをやるときは、ほぼ全作品を見なおし、聴きなおし、全体の構図をつかみ、しかるのちに細部の位置づけをおこなうべきなのだろうと思います。でも、そういうことをいっていると、いつまでもとりかかれないので、事前の再見は抜きで進めます。

予断もなし、といいたいところですが、そもそも、予断があるからラロ・シフリンがスコアを書いた映画を数本見直してみようと思ったのです。60年代終わりに起きた、オーケストラ・スコアからのテイクオフ、ジャズ・ニュアンスの強い8ビート・スコア誕生の最大の原動力となったのは、ラロ・シフリンではないか、という予断です。

記憶をたどると、どうも、そんな気がしてきたので、じっさいにそうなのかどうかをたしかめようというのが、この「ラロ・シフリン・フィルモグラフィー」シリーズの目的です。

◆ プレリュード ◆◆
ラロ・シフリンのキャリアを見渡し、あと知恵で考えて、最初に重要なのはどの曲かというと、なんといっても『スパイ大作戦』のテーマです。この曲については、「Mission Impossible by Lalo Schifrin」という記事で詳細に検討しているので、ここでは細かいことを略させていただきます。

トム・クルーズ主演による本編のほうでも、テレビ・シリーズと同じ曲が使われているので、お客さんのどなたもよくご承知でしょうが、いちおう、クリップだけ貼りつけておくことにします。

スパイ大作戦


5拍子、5度の半音下(フラッティッド・フィフス)の多用、というジャズ的要素が濃厚な曲なのですが、レンディションないしはサウンドの感触は、ロック/ファンク的で、これがターニング・ポイントでなくてなんだというのだ、という音です。

その背景には、ドラム=アール・パーマー、ベース=キャロル・ケイという、8ビートの分野のエース・プレイヤーの参加がありますが、ラロ・シフリンも、後年の言葉でいうなら、ジャズ・ロックないしはフュージョン的な、折衷的サウンドを目指してアレンジ、コンダクトしたのだろうと思います。その意図に沿って、ジャズ・プレイヤーとして出発し、ポップやR&Bの分野でエースとして活躍していたアール・パーマーとキャロル・ケイが選ばれたのではないでしょうか。

◆ タイトル・シークェンス ◆◆
『スパイ大作戦』の翌々年、1968年公開の『ブリット』は、映画としても大きな転回点になった作品ですが、子どものわたしは音楽にもおおいに惹かれました。改めて聴きなおしても、ちょっとしたものでした。

『ブリット』オープニング・タイトル


アクション映画というのはこういう風にはじまってほしい、といいたくなる、わたしがもっとも好むタイプのオープニング・シークェンスの絵と音の組み合わせです。

あの時代のタイトルのつくり方を知らないと、ニュアンスがおわかりにならないかもしれませんが、文字の扱いも、60年代前半の典型的なスタイルとは異なり、シンプルで渋い方向へとシフトしていて、歴史に残る映画というのは、やはり「いいぞ!」という雰囲気を濃厚に漂わせて登場するのだな、と感心しました。

アメリカ議会図書館のJazz on the Screenデータベース(毎度、お世話になっている三河のOさんが教えてくださった)によると、この映画の録音には以下のプレイヤーが参加しているそうです。

Inc: Bud Brisbois, trumpet; Milt Bernhart, trombone; Bud Shank, flute; Plas Johnson, tenor sax; Howard Roberts, guitar; Michael Melvoin, piano; Ray Brown, Bill Plummer, Max Bennett, Carol Kaye, acoustic double bass; Stan Levey, Larry Bunker, Earl Palmer, drums.

テーマに関しては、フェンダーベースは一小節でキャロル・ケイとわかるサウンドとプレイです。『スパイ大作戦』のコンビでドラムもアール・パーマーといいたくなりますが、あまりアールらしいサウンドには聞こえません。ラリー・バンカーないしはスタン・リーヴィーではないでしょうか。

台詞が入ったところで、ベースだけになりますが、ここはフェンダーではなく、アップライトです。レイ・ブラウンのプレイでしょうか。この曲のほかの箇所はフェンダーのみであって、アップライトと重ねているようには聞こえませんが、このあたりは微妙なので、ハリウッドのポップ系セッションでは広くおこなわれていたように、二本のベースを重ねた可能性もあると思います。

このメンバーは、ジャズ系とポップ系の混成部隊といえなくもありませんが、管のプレイヤーはもともと分野を問わずに仕事をするものですし、リズム・セクションも、60年代中期以降のハリウッドでは、両方の分野でプレイする人のほうが多かったくらいです。

『ブリット』フル パート1


あるいは、ひょっとしたら、作曲者、アレンジャーの明快なヴィジョンによって、トップ・ダウンでこういう音ができたわけではないのかもしれません。プレイヤーのほとんどが、分野を横断して仕事をしていたために、自然に折衷的なグルーヴが生まれた可能性だってあると思います。

議会図書館のデータベースには、リチャード・ハザードとジョージ・デル・バリオという二人のオーケストレイターがクレジットされています。この二人の譜面は、ノーマルなビッグバンド・スタイルで書かれていたのではないでしょうか。

しかし、いざ、録音がはじまり、音を出してみると、とりわけキャロル・ケイのせいで、ファンク色の強いものになったので、コンダクターであるラロ・シフリンがそれをそのまま生かすことにした、という可能性もあると感じました。

本日はテーマのみしか取り上げられなかったので、次回も『ブリット』をつづける予定です。


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by songsf4s | 2011-07-01 23:55 | 映画・TV音楽