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祝 オフィシャル・ゲーリー・チェスター・ウェブサイト誕生 その12 ジョン・デンヴァーとジム・クロウチ
 
ゲーリー・チェスターにドラムを学んだボブ・シアンチという人の本に、たしか、70年代に入ってチェスターは、セッション・ワークが少なくなり、ドラム教師のほうに重心を移したと書かれていました。

管ではプラズ・ジョンソン、ギターではトミー・テデスコのように、数十年にわたって第一線で活躍したプレイヤーがいますが、ドラムは時代の流れに足をとられる楽器で、どれほどすごいプレイヤーでも、ファースト・コールでいられる期間は十数年というところではないでしょうか。

階段を上ってスタジオに場所を得、長いツアーから解放されたのもつかの間、スタジオ・エースの座を若いプレイヤーに奪われたドラマーは、ふたたびツアーに出ることになります。アール・パーマーもハル・ブレインも、エースではなくなってからツアーで日本を訪れています。

トミー・テデスコは、自作の歌(!)で、何人かのプレイヤーの実名をあげ、俺は生き残ったといっていましたが、その曲(I Used to Be a Kingというようなタイトルだったと思う)のなかで「ハワード・ロバーツはギター教師になった」といっていました。つまり、第一線から退いたのだというニュアンスです。テデスコとしては、スタジオにいてこそ、という思いが強かったのでしょう。

ゲーリー・チェスターも、ハワード・ロバーツ同様、スタジオ・プレイヤーとしての仕事が減っていき、結局、教師になる道を選んだのでしょう。今日は、彼のプレイヤーとしての晩年の仕事を少々聴きます。

ハル・ブレインに引導を渡し、スタジオからツアー人生へと逆戻りさせた張本人であるジョン・デンヴァーは、初期はNYでゲーリー・チェスターのドラムで歌っていました。Sunshine on My ShoulderやCountry RoadやRocky Mountain Highといったヒット曲は、チェスターの時期に録音されていますが、ドラムは入っていないので、べつの曲をどうぞ。

ジョン・デンヴァー The Prisoners


いくらアコースティックな曲であっても、そこはやはり70年代の録音、50年代終わりや60年代はじめの「叩かせてもらえない」状態とはずいぶんちがいます。こういうタイプの曲でもスネアのハードヒットが当たり前になったことに、時代の違いが如実にあらわれています。

もうひとつ、アルバム・トラックを。

ジョン・デンヴァー Season Suite: Spring


ジョン・デンヴァーという人は、思いのほか、ドラマーを意識していたのかもしれません。ハリウッドに行って録音することにした動機の一部はハル・ブレインではないかという気がします。ざっとディスコグラフィーを見たかぎりでは、全盛期には、ダメなドラマーのアルバムはありません。

Annie's Songのアルバムから、ハル・ブレインやジム・ゴードンが参加し、やがて高いギャランティーを払ってハルをスタジオから引きずり出します。トラップにはすでにハーブ・ラヴェルがいたので、当初、ハルはパーカッションをプレイしました。じつにぜいたくなバンドです。

こういうツアー・バンドを組み、やがて、ロン・タットのいたエルヴィスのバンドを居抜きで継承するのだから、ドラマーの趣味が一貫しています。そういう人のアルバムは聴いていて飽きないものです。いえ、わたしはジョン・デンヴァーのファンではないので、知りはしません。聴いてみようかな、と思っただけです。

◆ Badder than bad bad Leroy Brown ◆◆
同じ時期に、いくぶんかサウンドに近似するものがあった(といっても、アコースティック・ギターを多用したところが似ているだけだが)ジム・クロウチも、しばしばゲーリー・チェスターをストゥールに迎えています。

ジム・クロウチ Bad Bad Leroy Brown


イントロから文句なしのグルーヴで、トラックに関するかぎり、間然とするところのない出来です。ジョン・デンヴァーは買ったことがありませんでしたが、この曲が収録されたジム・クロウチのアルバム、Life and Timesはリリース当時、以前、詳しく書いたことがある、1973年の「LP大密輸作戦」で買いました。

なんせ密輸品なので、邦貨にしてわずか750円程度と安いものだから、あまり面白くない数枚は友だちにあげてしまいました。その一枚がこれでした。いま聴いても、バンドには問題がなく、要するに歌が気に入らなかったのです。もっとスペシフィックにいえば、ジム・クロウチの発声スタイルが、じつに非ツボにはまり、これはあかんと思ったのでした。

とくに、Leroy Brownのときの発声は好みません。バンドはいいのに! チェスターも文句ありませんが、このベース(三人が併記されていて、だれだかわからないが)は、彼が組んだプレイヤーのなかでもっともタイムがいいのではないかと思います。ピアノもうまくて、ほんとうにみごとなバッキング・トラックです。

つぎの曲のほうが、チェスターはあまり聞かせどころがありませんが、歌い方としては容認できます。

ジム・クロウチ Operator


ギターがめっぽううまくて、惚れます。ドイツ系なのでしょうか、読めないのですが、Maury Muehleisenという人がリードのようです。このOperatorが収録されたサード・アルバム、You Don't Mess Around with Jimは、幸いにしてベースはひとりしか名前が挙がっていません。このトミー・ウェストというベースもけっこうなタイムです。

ちょうどこのころから、ラス・カンケルやジョン・グェランといったタイムの悪いドラマーがハリウッドのスタジオを闊歩するようになり、質の悪い音楽をたくさん生み出すようになりますが、いっぽうでNYではルネサンスがはじまっていたのだなと、今にして思います。

ジム・クロウチの5枚目のアルバムでは、リック・マロッタもプレイしていて、ハリウッドよりずっとマシです。まあ、スティーヴ・ガッドなんかラス・カンケルとおっつかっつで不快きわまりありませんが、マロッタのタイムは精確です。この時期、ジム・ゴードンかジム・ケルトナーを呼べなかったら、次善はマロッタでしょう。わたしだったら、この三人以外のドラマーではスタジオに入りません。

ドラムは、極論するならテクニックなどどうでもいい楽器です。だいじなのはグルーヴだけです。むろん、しばしばいいグルーヴとテクニックが同居することは、ジム・ゴードンやジム・ケルトナーを見れば明らかですが、でも、純理論的には、テクニックはなくてもオーケイ、グルーヴがダメならテクニックなどまったくの無意味なのです。タイムの悪いドラマーがめったやたらにスティックを振り回せる運動能力をもっているというのは、最悪の人格結合というべきでしょう。

ジャズのほうに多いのですが、小手先のテクニックにだけ着目して、名ドラマーなどというから、話がわからなくなるのであって、ドラムの根幹はリズムの表現にあります。チェスターはめったにテクニックを披瀝することはありませんが、スタジオ・エースになるためのもっとも重要な条件である、すぐれたタイムをもっていることが、ジョン・デンヴァーやジム・クロウチのトラックに刻み込まれています。

当時は、この曲がいちばん嫌な感じがしませんでした(変な表現で申し訳ないが、つまり、どれも好きではないなかで、これはあまり不快ではなかったにすぎないということ)。

ジム・クロウチ One Less Set of Footsteps


この曲もギターとベースがうまくて、ううむ、です。録音もけっこうで、やはり、NYが長い低迷から脱したことがひしひしと感じられます。あたくしは、あのころ、NY産の音楽にはあまり興味がなかったのですが。

ジム・クロウチ I'll Have to Say I Love You in a Song


この曲も、喉の奥で声がつぶれた瞬間の発声がやはり苦手ですが、でも、トラックはすばらしいの一言。年をとって、こういうドラム・サウンドとプレイが好きになりました。子どものころならそんなことは考えませんでしたが、いまなら、スネアはこういう風に鳴らしたいと思います。

ベースのタイムとチェスターのキックのタイムも、きれいなマッチングで、こういう風にプレイできたら楽しいだろうと思います。羽織の裏地に凝るような、地味なうまさにうなりました。こういう風に感じるのは年をとったおかげだなあ、とがっかりしつつ、今回はおしまい。


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ジョン・デンヴァー
Rocky Mountain High
Rocky Mountain High


ジム・クロウチ
Bad, Bad Leroy Brown -The Definitive Collection
Bad, Bad Leroy Brown -The Definitive Collection
by songsf4s | 2011-06-29 23:25 | ドラマー特集