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祝 オフィシャル・ゲーリー・チェスター・ウェブサイト誕生 その6 リーバー&ストーラー篇
 
プレイヤーをセッションに手配するのは、「コントラクター」といわれる人々です。コントラクターには専業の人もいれば、プレイヤーが兼務する場合もあったようです。

AFM(American Federation of Musicians=アメリカ音楽家組合)の伝票を見ると、どうやら、コントラクターは、プレイヤーの1スケールと同じ料金をとったようです。スケールというのは、組合が定めた金額の一単位で、インターヴァルはわかりませんが、ときおり更新されて、実額が変わりました。60年代中期のハリウッドの場合、1スケールは50ドル前後だったと思われます。

プレイヤーは3時間セッションを一回するたびに、最低限1スケールのギャランティーを得ます。売れっ子になると、ダブル・スケール、トリプル・スケールというケースもあったようです。つまり、仮に1スケールが50ドルなら、ダブルでは3時間で100ドル、トリプルなら150ドルのギャランティーということです。

仮にトリプル・スケールの人がコントラクターを兼務すると、1スケールプラスされて4スケールになります。また、たとえばギター・プレイヤーが、オーヴァーダブ・セッションでパーカッションをプレイすると、規定によって1スケール加えられました。

ハル・ブレインは、トミー・テデスコと、一回のセッションでどれだけのスケールを得られるか競争したことがあると回想しています。いろいろな楽器をやれば、スケールはどんどん増えていくからです。

あるアーティスト、プロデューサー、アレンジャーが、特定のプレイヤーと組むのは珍しくないことに思われますが、これは結果と考えたほうがいいようです。コントラクターにはそれぞれ得意先があり、特定のプロデューサーの仕事を請け負うから、ということのようです。

とはいえ、プロデューサーにも好みがあるので、当然、コントラクターに注文をつけることがあり、プロデューサーの要求とコントラクターの考えの総和として、あるセッションのメンバーが決定した、と考えるのが、もっともニュートラルといえるでしょう。

◆ コースターズ ◆◆
「ロックンロールを作った」とまで評されたこともある、ジェリー・リーバーとマイク・ストーラーというソングライター/プロデューサー・チームが「われわれのドラマー」と考えていたのは、ゲーリー・チェスターだったようです。リーバー&ストーラーがプロデュースした盤では、しばしばチェスターの名前が登場します。

それではまず、リーバー&ストーラーといっしょにLAからNYに移ってきたグループの曲を。

コースターズ Little Egypt


コースターズは本来、ウェストコースターズという意味で、ロビンズと名乗っていた時代と、コースターズへと名前が変わった直後は、ハリウッドで録音していました。初期のヒット、Down in Mexicoでは、バーニー・ケッセルがリードを弾いています。Youngblood、Searchin'などもハリウッド録音です。

後期のヒット、Poison Ivy、Three Cool Cats(デッカのオーディションでは、ジョージ・ハリソンがリードで、この曲も録音されたのはご存知のとおり)などはNY録音ですが、パーソネルは不明です。ライノの二枚組アンソロジーでは、リーバーとストーラーの記憶に頼ってパーソネルを復元していましたが、チェスターのディスコグラフィーでは、そのうち、ほんの一握りしかリストアップされていません。ご本人はとうの昔に亡くなっているので、資料による裏づけのないものは採用できなかったのでしょう。

リトル・エジプトというのは実在のベリー・ダンサーのステージ・ネームで、あまりにも有名になったために、偽者がたくさん生まれたのだそうですが、この歌詞で歌われているのも本物のほうではなく、偽者のひとりという想定でしょう。

ジェリー・リーバーの歌詞にはしばしばサゲがありますが、この曲では、語り手はダンスに幻惑されてリトル・エジプトと結婚してしまい、結局、いまでは彼女はただの主婦になっている、という、Big Bad Bill Is Sweet William Nowと同じパターンにもっていっています。

一曲だけ、Little Egyptのカヴァーをあげておきます。

エルヴィス・プレスリー Little Egypt


映画『Roustabout』からのシーンで、こちらのドラマーはハル・ブレインです。エルヴィスのものは、映画としては困ったものが多いのですが、歌のシーンはやはり魅力的なものがあり、ミュージック・ヴィデオだと思えば楽しめるものが少なからずあります。

◆ ドリフターズ ◆◆
リーバー&ストーラーといえばドリフターズ、という印象をもっていますが、ゲーリー・チェスターのディスコグラフィーにあるドリフターズのトラックで、リーバーとストーラーがプロデュースしたものは、いずれも地味なプレイで、ドラマーの代表作にあげるわけにはいかないようなものばかりです。

そうしたメトロノーム的プレイの曲ですが、とにかくどうぞ。ドク・ポーマス&モート・シューマン作。

ドリフターズ I Count the Tears


もうひとつ同じ時期のものを。バート・バカラック&ボブ・ヒリアード作。

ドリフターズ Please Stay


ドリフターズのヒットのなかでもとくに好きな曲のひとつですが、ドラミングは地味の極致。「お仕事」です。

同じリーバー&ストーラーがプロデュースしていたブラック・コーラス・グループではあるものの、コースターズがR&Bテイストを濃厚にもっているのに対し、ドリフターズはきわめてポップ寄りで、それがドラミングにも反映されたと感じます。前者はリーバー&ストーラーが自分たちで曲を書いたのに対し、後者はジェリー・ゴーフィンとキャロル・キング、ドク・ポーマスとモート・シューマンといったポップ系のソングライターの曲を歌っていることにもそれがあらわれています。

やはりチェスターは活躍しませんが、かぎりなく白に近い黒の極めつけをいってみます。日本でもまったくべつのニュアンスでよく歌われた曲です。

ドリフターズ Save the Last Dance for Me


作者はドク・ポーマスとモート・シューマン。後者はのちにフランスに渡ってシャンソンを歌い、日本では「モルト・シュルマン」などと表記されることになりますが、こういう曲を書いていたのだから、それも当然だな、です。

◆ ベン・E・キング ◆◆
ドリフターズの二代目(という勘定でいいのかどうか自信がないが)リード・テナーだったベニー・キングは、独立してからも、やはりリーバー&ストーラーと組んで大ヒットを生みます。

そして、因果なことに、ゲーリー・チェスターは、引きつづき、じっと我慢の子のメトロノーム役をつづけるハメになります。

ベニー・キング Stand by Me


ハル・ブレインは、パーカッションの仕事もディスコグラフィーにあげていて、ときおり腑分けに苦しんでしまいますが、チェスターのディスコグラフィーにもいくつかパーカッションのトラックが入っています。これもそうでしょう。トラップ・ドラムの音は聞こえません。ギロかトライアングルか、そのあたりをプレイしたのではないでしょうか。でも、プレイヤーにとって、大ヒット曲にかかわっておくのは重要なことで、そういう意味ではこの曲も「代表作」というべきかもしれません。

また似たようなパターンですが。

ベニー・キング Spanish Harlem


ミューティッド・トライアングルか、他のラテン・パーカッションか、判断はできませんが、この曲もまたチェスターがプレイしたのはトラップ・ドラムではないでしょう。

「ドラミング」とはいえませんが、ロックバンドのドラムセットの向こうに坐っている芸能人ではなく、ほんもののプロのドラマーの日常が、こうした楽曲にうかがえます。

◆ I used to drink, I used to smoke ◆◆
「ヘッド・アレンジ」で組み上げた曲の並びはすべて消化したのですが、パーカッションのトラックが二つでおしまいというのは、なんだかしまらないので、ちゃんとトラップ・ドラムのプレイで締めくくりたいと思います。

かぎりなく白に近い黒ではブラシやパーカッションのプレイですが、かぎりなく黒に近い黒の曲では、ストレートなドラミングが聴けます。そして、そういうときは、年少のソングライターたちの曲ではなく、自分たちで書くのがリーバー&ストーラーのやり方でした。

ラヴァーン・ベイカー Saved


モータウンのサウンドは黒人のものだなどというデトロイト・ショーヴィニストがいますが、こういう白人スタッフによるかぎりなく黒に近いサウンドは、やっぱりああいう人たちにはお気に召さないのでしょうな。

わたしの趣味からすると、ちょっと黒すぎるのですが、しかし、こういうグリージーなサウンドも、たまには悪くないと思います。

ただ、しいていうなら、このグルーヴは北部的、都会的であって、南部のプレイヤーにいわせればスリックすぎるかもしれません。早すぎたり不安定だったりするのは生理的に気色が悪いので、わたしはこれくらいのタイムのほうが好きですが。

いま、ゲーリー・チェスターのディスコグラフィーをつらつら眺めてみましたが、まだ二回や三回はやるだけの材料があるようです。


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by songsf4s | 2011-06-21 23:32 | ドラマー特集