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祝 オフィシャル・ゲーリー・チェスター・ウェブサイト誕生 その5 ブリル・ビルディング周辺
 
時間のないときに、ブリル・ビルディング・サウンドなどという大きなものを持ち上げると、ぎっくり腰になる恐れがありますが、ほかのことの準備をする時間もないので、「ブリル・ビル」を既定の事実としてブラック・ボックス化し、中身には踏み込まずにやります。

つまり、「世間でいわれるブリル・ビル」の概念にしたがう、という意味です。ドク・ポーマスがいっていた、じっさいにブリル・ビルに部屋をもっていたのは、旧弊な、いわゆる「ティン・パン・アリー」のソングライターたちのほうであり、世に「ブリル・ビルのソングライターたち」といわれる人々は、ブリル・ビルにはオフィスをもっていなかった、という話はとりあえず棚に上げます。

さて、だれを代表にもってくるか、となると、当然、アル・ネヴィンズとドン・カーシュナーのオールドン・ミュージックのライターたちとなるわけで、そのなかで、ゲーリー・チェスターがプレイしたトラックとして、比較的初期のものをまずいきます。バリー・マンとシンシア・ワイル作。

トニー・オーランド Bless You


1961年の歌伴というと、こんなものなのだろうと思います。基本的にはしっかりタイムをキープすることがドラマーの仕事だったわけで、歌伴で派手なドラミングをするなどということをはじめたのはハル・ブレインなのだとわたしは考えています。61年のハルはまだスタジオ世界の暗い底辺を這いまわって仕事を拾っていたわけで、これが「夜明け前」のサウンドでしょう。

つぎは、同じトニー・オーランドの同じ時期の曲ですが、作者はブリル・ビルのライターとはいいにくいボビー・ダーリン、彼自身の歌で大ヒットした曲のカヴァーです。

トニー・オーランド Dream Lover


こちらのほうは、ちょっと楽しめるドラミングです。前回も書きましたが、やはりそこはかとなくアール・パーマーを思い起こします。

ボビー・ダーリンのハリウッド録音ではしばしばアール・パーマーがストゥールに坐ったから、ということとは関係なく、たんにオリジナルだからというだけの意味で、彼のDream Loverも貼り付けておきます。Mack the Knifeはもちろん論外ですが、Splish Splashとくらべても、わたしはこちらのほうが好きです。彼の代表作でしょう。

ボビー・ダーリン Dream Lover


じっさい、これはあまりアール・パーマーの雰囲気がない、というか、ハリウッドらしくも聞こえません。アトランティック・ディスコグラフィーというサイトで見ても、録音場所、パーソネル、ともに記載がありません。ハリウッドは、というか、ローカル47(アメリカ音楽家組合ロサンジェルス支部)は、比較的書類をきちんと保存していますが、NYはまるでなっていなくて、あとから記録を調べてもなにも出てこないことが多いようです。この曲もNY録音ではないでしょうか。

ドーン以前(英語で書くとbefore Dawn「夜明け前」になるのであった!)のソロ時代のトニー・オーランドの代表作というと、ジェリー・ゴーフィンとキャロル・キングのHalfway to Paradiseもあげたくなりますが、ゲーリー・チェスターがこの曲でプレイしたかどうかはわかりません。ディスコグラフィーにはリストアップされていませんし、ブラシのプレイなので、ブラインドで判断するのも困難です。

◆ シフォーンズとフレディー・スコット ◆◆
つぎは、ジョージ・ハリソンが盗作で訴えられることになった曲。

シフォーンズ He's So Fine


チェスターがあおっているのですが、他のメンバーがヘボで、チェスターのグルーヴに乗っていくことができない、という雰囲気の、ちょっといらつくトラックです。ベースも、ピアノも、いやになるような鈍くささ。チェスターの派手なフィルインでブリッジに入るところはいいのですが、その直後に勢いがなくなってしまいます。ブリッジからの出口のほうは少しマシなグルーヴですが。

一説によると、He's So Fineのピアノはキャロル・キングだそうで、じゃーしょーがねーな、です。同じシフォーンズのOne Fine Dayで出鱈目なタイムのプレイをして、あまりのひどさゆえに、一度聴いたら忘れられず、かえってヒットの要因になったってくらいのことをしでかした人ですから。

シフォーンズ One Fine Day


これだけタイムを揺らすのは、やれといわれても、おいそれとできることではありません。チャーリー・ワッツのドラミングを聴いているようで、船酔いを起こしそうです。にもかかわらず、あるいはそれゆえに、これがフックになっちゃたというのだから、やはりチャートは恐るべき魔界、なにが幸いするかわかったものではありません。

つぎはジェリー・ゴーフィンとキャロル・キングの曲ですが、このチームとしてはちょっと紫外領域に踏み込んだブルージーな味わいがあり、バリー・マンとシンシア・ワイルが書きそうなムードの曲です。

フレディー・スコット Hey Girl


プロデューサーがだれか知らないのですが、やはりジェリー・ゴーフィンとキャロル・キングでしょうか。みごとなサウンドで、全体の音像までふくめた総合的なレベルでは、このチームのもっとも好きな曲です。コード進行もちょっとだけ変則的で、いいチェンジアップになっています。

しかし、ドラマーとしては、もう少し見せ場を作りたいところでしょう。歌伴はお仕事だから、としかいいようがありません。ただ、少し視野を広げてみると、これは結局、NYがハリウッドに敗れる最初の兆候だったのかもしれないと感じます。ビートの弱さこそがNYの最大の弱点でした。それはドラマーの責任というより、ベンチのセンスが時代からズレていったためでしょう。この曲は1963年のリリース、そろそろドラムを前に出したサウンドが好まれはじめる時期です。

だれでも思うことでしょうが、Hey Girlは、ライチャウス・ブラザーズのような雰囲気の楽曲であり、サウンドです。ライチャウスの二人もそう考えたようです。

ライチャウス・ブラザーズ Hey Girl


ハリウッド音楽の本質はやはりビートだった、と我田引水をしそうになります。ライチャウスのドラマーは主としてアール・パーマーでした。この曲もアールのプレイのように聞こえます。

もはや、ゲーリー・チェスターとは関係がありませんが、過去の音楽の遺産、とりわけ60年代前半のNY産ポップ・チューンの歴史の上に自分の音楽を作ったと思われる人のカヴァーを最後に置いておきます。

ビリー・ジョエル Hey Girl


これも例のリバティー・デヴィートーというドラマー(どの記事だったか、以前、ラスカルズのディノ・ダネリとの対談をご紹介した)のプレイでしょうか。なかなかけっこうなバックビートです。

次回は、またしてもメトロノーム化したチェスターで、すこしリーバー&ストーラーの曲を聴いてみようと思っています。


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トニー・オーランド
Halfway to Paradise: The Complete Epic Masters
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ボビー・ダーリン
Splish Splash: Best of Bobby Darin 1
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シフォーンズ
Sweet Talkin Girls: The Best of
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フレディー・スコット
Hey Girl: Sings Sings & Sings
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by songsf4s | 2011-06-20 23:56 | ドラマー特集