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ここに幸あり、どこにあり──再びポール・マークのエキゾティカ・ジャポネ
 
前回、つぎはトミー・テデスコの続きをやるようなことを書きましたが、例によって気が変わり、今回はエキゾティカ・シリーズの続きをやります。

『紳士は金髪がお好き』も途中になっているし、いろいろなものが宙ぶらりんですが、だいたい、フィクションとちがって、現実世界は万事つねに宙ぶらりんなものだから、しかたがないのです(と居直る)。どのほつれ糸も、思い出したように結びなおすときがあるかもしれません。

◆ エキゾティカの灰色領域 ◆◆
先週、「To Ryan Seとは俺のことかと「通りゃんせ」いい──ポール・マークのエキゾティカ・ジャポネ」という記事を書き、ポール・マークのアルバム、East to Westに収録されたAizu Ban Dai San、すなわち、「会津磐梯山」をサンプルにしました。

今日、box.netアカウントをチェックしたら、この曲にアクセスが集まっていて、驚きました。さんざん調べてもキャリアがさっぱりわからないぐらいなので、ポール・マークという名前で聴かれているとは思えません。なにかべつの理由によるのでしょう。

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会津だから聴かれているだけで、それ以上の意味はないのかも知れず、だとしたら、ほかの曲をアップしても意味はないでしょうが、会津磐梯山をお聴きになった方の半分ぐらいは関心をもたれるかもしれないので、同じアルバムEast to Westから、もう一曲どうぞ。

サンプル Paul Mark "Kokoni Sachiari" (ここに幸あり)

とくにアレンジがすぐれているとか、興味深いということではなく、楽曲として好きだという理由で選びました。こういうオルガンのサウンドは、すぐに陳腐化するのですが、この時点では、まだ新鮮だったのだろうと想像します。

オリジナルの映画ヴァージョンかどうかは不明ですが、ユーチューブにあったものでは最古と思われるものを貼り付けておきます。

大津美子 ここに幸あり


この曲を主題歌とした同題の松竹映画は昭和31年の封切だそうです。いかにもあの時代を感じさせる音で、イントロを聴いていると、小津映画がはじまりそうな気分になってきます。

「ここに幸あり」は、海外の日本人、ないしは日系人のあいだで人気があったのか、ほかにもアメリカ種の録音があります。

サンプル Spanky Iwamoto "Koko ni Sachi Ari"

スパンキー・イワモトというシンガーについてはまったく知識がないのですが、ハワイの日系二世なのでしょう。このあと、70年代にハワイでは英語詞による「ここに幸あり」がヒットし(Here Is My Happinessという英訳題はそのときのものか)、そのせいもあって、いまでも人気のある曲だそうです。

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アメリカ人が日本の曲をプレイするのは、エキゾティカといって差し支えないと思うのですが、ハワイ生まれとはいえ、日本人がカヴァーするのは、どういったものかな、と戸惑います。まあ、考えはじめるとよくわからなくなるところが、エキゾティカとその周辺音楽を追求する楽しみのだいじな一部なのですが。

さて、時間切れになりつつあるので、あれこれゴタクを並べずに、もう一曲、サンプルを貼り付けようと思います。先日、ポール・マーク盤をご紹介したAizu Ban Dai Sanの、またべつのアメリカ産カヴァーです。

サンプル All-Star Orchestra "Aizu Ban Dai San"

ポール・マーク同様、こちらもバイオを発見できませんでした。ルンバと注記が入っているように、ストレートなラテン・アレンジで、なにやら、妙にしっくり感じます。こういうセンスは、わたしが子供のころの日本の音楽には偏在していました。小林旭の民謡などは、その時代の気分のあらわれでしょう。

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このオール・スター・オーケストラのヴァージョンが、日本のラテン音楽ブームを意識していたとは考えられず、やはり、これは同時代的な「気分」の結果と考えるべきでしょう。アメリカが経験したラテン・ブームを、日本が追いかけたのであり、その結果、たとえば、日活映画のナイトクラブのシーンでは、かならずラテンが流れるパターンができあがったのです。

今日も予定した曲の半分しかご紹介できず、この項も『紳士は金髪がお好き』や「Remembering Tommy Tedesco」同様、さらに延長させていただきます。といっても、次回はどの続きをやるか、まだわかりません。


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ポール・マーク&ヒズ・オーケストラ(MP3)
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by songsf4s | 2011-05-19 23:59 | Exotica