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まだ原発マッチポイントがつづく夜もロックンロール5
 
今日も一日二回発行、ここから夕刊に入ります。

もっと早く復帰のつもりでしたが、3.11以来、カメラがほったらかしで、メモリーが半分ほど埋まってしまったため、停電から回復後、全部吸い出し、整理していました。

こう、なんというか、3.11以後、頭の働きが早くなったり、遅くなったり、不整脈のような状態にあるのを感じます。いまは遅くて、なにも音楽が出てこず、あらあら、ついに枯渇か、です。

このあいだながながとやった、ゴールド・スター・スタジオの黄金の遺産特集は、リアルで存じ上げているMann-iaさんの「Gold Star Studio録音音源のbest 'bout'というと、鶴岡さんにとっては誰のどんな曲になりましょうか?」というコメントに対する反応として書いたものです。

毎夜毎夜の定期便、今夜はちょっと嫌な揺れが2回でした。

気を取り直して、ゴールド・スターの話に戻ります。わたしのバラマキ選曲を見て、Mann-iaさんは、設問をもう少し絞り込まれました。以下、Mann-iaさんのコメントを抜書き。

それでも、「楽曲・演奏・アレンジなどが水準以上、
なおかつスタジオ特性の顕著なものは?」と、
精確にお尋ねすべきであったのかな、とも思います。
あるいは、「"Waking In The Rain"は、彼らが挙げるように、
他の(Mann-Weilの)レコーディング・ソースに抜きん出て、
echo chamberの効果をより強く感じられますか?」と、
絞り込んでお訊きすべきだったのかもしれません。


Walkin' in the Rainについては、コメントへのレスにも書きましたが、そもそも、昔から嫌いで、めったに聴かないため、記憶に残っていません。雷鳴がリアルですごい、とゴールド・スター・スタジオのエンジニア、ラリー・レヴィンの技術を賞賛するにとどめておきます。サウンドについては、ハル・ブレインがつまらなそうに、スティックのティップだけで叩いている、聴いているほうも退屈する、といったところです。躍動感のないハルなんて、聴かないほうがいいでしょう。

ゴールド・スターがフィル・スペクターのフランチャイズとなり、その結果、多くのプロデューサーをひきつけることになった最大のアトラクションは、拡張の際に2本増設され、合計で4本を直列で利用できるようになったといわれる(確実な典拠なし)EMI製のプレート・エコー(下水道菅のようなものの内部に鉄板をぶら下げてあり、このなかに音を通すと、鉄板が共鳴する)です。

キャロル・ケイさんが書いていらしたことですが、すごく狭いスタジオで、拡張したとはいえ、エコーを増設するほどの余裕はなく、エコー・チャンバーの一本は婦人用トイレに食い込んでインストールされたそうです。エコーをよけなければ用を足せなかった、と(笑)。

さて本題。このエコーがもっとも印象的に使われ、なおかつ、音楽総体として好ましいものはなにか? 三曲あげたいと思います。ひとつはすでに貼りつけたものです。



ほんとうはできるだけいい環境で、馬鹿でかい音で聴いて判断していただきたいのですが、わたしがそういう環境でスペクターのカタログを片端から聴いた(もちろんアナログ、真空管アンプ)ときに、ドッヒャー、なんだこれは、とひっくり返ったのはこの曲。クリスタルズのSanta Claus Is Coming to Town



当家の長年のお客様ならすでにおわかりでしょうが、わたしがここで問題にしているのは、ハル・ブレインのプレイとサウンドです。ゴールド・スターのスタジオAという箱と4連プレート・エコーを「鳴らす」ことができたのは、ハル・ブレインただひとりかもしれない、と思うときがあります。

ハルがどれほどゴールド・スターのプレート・エコーと相性がよかったかは、つぎのトラッキング・セッションにおける、「ドライな」(エコーがない)サウンドをお聞きになればわかります。



というように、ハル・ブレインの技術はドライなほうがよく伝わりますが、あの神話的な「サンダラス・サウンド」ではなく、いたって下世話な「そこにある音」に聞こえます。

ご存知でしょうが、わたしは「天才」と「傑作」を準禁句にしています。でも、この人だけはなあ、というのが何人かいます。フィル・スペクターもそのひとりです。素人衆とは異なり、職業的訓練の結果として、わたしは慎重に言葉を選ぶ傾向があるのですが、そうじゃなければ、いつだって「天才フィル・スペクター」の「大傑作」などとアホないい方を平気で使っただろうと思います。

でも、彼には「肉体」はありませんでした。音楽は最終的に肉体の躍動を必要とします。スペクターがいくら夢想しても、それをじっさいの波動として表現しうる圧倒的な肉体と技術の持ち主が必要だったのです。

鉄板エコーを四つつなげたらどうだろうと思ったエンジニア兼経営者もすごいし、これは使える、これで俺の音が作れると思ったプロデューサーも、不世出の名匠です。でも、ハル・ブレインという、カリフォルニアを体現するようなキャラクターと、圧倒的な腕力、脚力、そして音楽的センスをもったドラマーがこのコンビネーションに加わることによって、はじめて「あの音」が誕生しました。

もう一曲、ハル・ブレイン、フィル・スペクター、ラリー・レヴィン、ゴールド・スター・スタジオという組み合わせだけにできる圧倒的なサウンドを聴きます。



フィル・スペクターは、ハル・ブレインに、いつか、フェイドアウトだけを集めたアルバムを作ろう、といったそうです。じっさいにそういうものを作りたいという意味ではなく、ハルのフェイド・アウトが大好きだったという、彼の賞賛の念を、ジョークとして表現したのでしょう。

いろいろ貼り付けましたが、エコーの残響がどうだといったことは、一定以上のシステムで、それなりの音量で鳴らさないとわかりません。はっきりいって、ユーチューブのクリップなんかをPCスピーカーで鳴らしてもわかりはしません。ご自分の盤を聴きなおして確認していただけたらと思います。

もう少し補足説明があるのですが、本日は力尽きました。
by songsf4s | 2011-03-17 21:55