(2月23日朝 空リンクを修正しました。どうも失礼しました。)
つぎは再度フランスか、はたまたドイツかと思ったのですが、書くことがあまりない曲ばかりで苦慮しているうちに、連想が迷走しはじめ、60年代終わりの曲が束になって頭のなかを駈け巡りはじめました。
今日は、その混沌のなかから、あの曲は好きだったなあ、とつくづくと懐かしいグレイプフルーツのElevatorにしました。またイギリスに戻るのは本意ではなかったのですが、音楽は乗り、気分が乗れば、そっちへと。
グレイプフルーツ Elevator
厳密に云うと、このシリーズの定義からははずれるのですが、ビルボードにチャートインしたといってもバブリング・アンダー・チャート(101位以下)ですから、まけといてください。いや、日本ではヒットしたとは云いがたいし、ひょっとしたらイギリスでもヒットとまではいかなかったかもしれませんが!
◆ プロト・パワー・ポップ ◆◆
わたしはこの手の、ビートの強い、アップテンポのポップ・チューンというものに固着があります。その固着の原点はホリーズのような気がします。いやまあ、それをいうなら、やはりおおもとはビートルズですが、ここではよりスペシフィックにいっているわけでして。
ホリーズ Look Through Any Window
後年、ナックのMy Sharonaがヒットしたとき、「パワー・ポップ」という言葉が使われましたが、ホリーズは元祖パワー・ポップでした。ホリーズ・ファンの中学生は成人してもまだパワー・ポップが好きでした。
ラズベリーズ Go All the Way/I Wanna Be with You スタジオ・ライヴ
年をとってああだこうだと理屈をこねるようになりましたが、わたしの三つ子の魂はこのあたりのシンプル&ストレートフォーワードな、4ピースのギター・バンドにあります。ドラムをぶっ叩きながら、オウ、アイ・ウォナ・ビー・ウィズ・ユーなんて叫ぶのはすごく気持いいにちがいありません。
ラズベリーズは「堕落したフー」といった趣のグループで、ドラムが前に出るのに、そのくせ曲はメロディックという、ありそうでいて、じつはあまりないタイプのバンドでした。やはりビートルズをワーキング・モデルにして、よりハード・ドライヴィングな方向付けをしたのでしょう。エリック・カーメンもこの時点ではけっこうバリバリで、後年のAll by Myselfのようなオカマっぽさはありませんでした。
エリック・カーメン、オカマ化への最初の一歩はこの曲だったかもしれません。
ラズベリーズ Baby Let's Pretend
とはいえ、わたしがラズベリーズのドラマーだったら、この曲も喜んでプレイします。これくらいのテンポで、いろいろなフィルインを入れるのは楽しいにちがいありません。もちろん、ブーム・マイクでウーアー・コーラスにも参加します。断じて歌います。ドラムを叩きながらリードというのは好きではありませんが(カーマイン・アピースとか。Be My Babyなんか歌うなよ!)、ウーアー・コーラスは楽しいに違いありません。
それにしても、このドラマー、スタジオ録音ではタイムが安定しているのに、ライヴになると、フィルインはミス連発だし、突っ込んでいるところもありますなあ。いや、影武者ではないだろうと思うのですが……。スタジオ録音のほうを聴いてみますか? こっちなら、このドラマー、わがフェイヴァリット・プレイヤーに算入するんですがねえ。
サンプル Tha Raspberries "I Wanna Be with You"
いやあ、自分でやるなら、こういうのがいちばん好き! できれば、ディノ・ダネリみたいに、イントロでスティック・トワーリングをやりたいところです。
ディノ・ダネリのスティック・トワーリング
ヤング・ラスカルズ Good Lovin'
わっはっは。叩きまくっていますなあ。ときおり、アクセントとして、左手でハイハットをシバくところが無茶苦茶クール。惚れ直します。プレスコではなく、本チャンのスタジオ・ライヴに思えるのですが(ダネリの動きでわかる)、マイクもあたっていないドラムの音ばかりが聞こえるキッカイさ! 手も足も目いっぱい使う人だから、オープン・マイクが拾ってしまう音だけで十分なのでしょうか。
ラスカルズもプロト・パワー・ポップ・グループといえるかもしれませんが、そちらの文脈でいうと、ギターがダメダメなのが弱いと感じます。ドラムと一緒にギターもドライヴしないと、パワー・ポップの風味が出ません。ラスカルズはホワイト・ポップR&B、あたりではないでしょうか。
パワー・ポップと書いているうちに、そうか、と思うところがありましたが、それは最後にまわします。
◆ グレイプフルーツはリンゴではない ◆◆
グレイプフルーツに話を戻します。すでにツイッターで書いたことですが、わたしはずいぶん記憶違いをしていて、あらら、と思いました。
ひとつは、グレイプフルーツの名付け親のこと。小野洋子が命名したのだと思っていたのですが、調べると、小野洋子の本のタイトルを借用して、ジョン・レノンが命名したのだそうです。うん、そういわれれば、そうだったような……。
もうひとつ、グレイプフルーツはアップル・レコードのアーティストだと思っていたのですが、左にあらず、RCAとEquinoxから45回転盤がリリースされたそうです。証拠写真をそろえたブログをご覧あれ。
ツイッターでそんなことをぶつぶついっていたら、Sさんが資料を調べてくださり、「日本ではVictorレーベルで「いとしのデライラ」「エレベーター」、RCAで「ディープ・ウォーター」、Statesideで「カモン・マリアンヌ」「ラウンド・ゴーイング・ラウンド」と出たようです」と知らせてくださいました。どうもありがとうございました>Sさん。
ということで、グレイプフルーツのデビュー曲でも聴いてみますか。
グレイプフルーツ Dear Delilah
わたしはこういう曲を連想します。いや、ちがうだろ、というご意見もございましょうが。
タイガース 花の首飾り
サイケデリック時代には、ストリングスを使ったバラッドもけっこうありましたなあ。「ビューティフル・サイケ・ポップ」とでもいいましょうか。むろん、これまたビートルズが敷いた路線に乗っているわけですが。
◆ 「ハード・ポップ宣言」とかいって ◆◆
ソフトロックという日本語英語が嫌いです。ロックンロールはドラムをぶっ叩いてナンボの音楽であり、ソフトというのは、トニー・ベネットみたいなもののことです。それをリトル・リチャードやエルヴィス・プレスリーを始祖に持つ音楽であるロックンロールとつなげて、概念を混乱させないでほしいものです。
アメリカ人がいうSunshine Popのほうが、石っころという言葉が使われていないだけまだマシです。これなら、ロックンロール・スピリットの欠如したヘナチョコ音楽に使っても概念衝突を起こしませんし、リトル・リチャードやエルヴィスははじめから除外していることも明白です。意味のわからない造語は大嫌いですが、サンシャイン・ポップなら、見た瞬間にイメージがわきます。たとえば、ラスカルズのBeautiful Morningが聞えてくるわけですよ。
ラスカルズ Beautiful Morning
じゃあ、わたしは「ハード・ロック」が好きなのか、というと、これまたノーです。「ハード・ロック」が、たとえば、ディープ・パープルやカクタス(わっはっは)を指すのなら、ですがね。
となると必然的に「パワー・ポップ」か、ですが、ナックのMy Sharonaを思い浮かべると、あれはメロディックとはいえず、どちらかというと、腰砕けハード・ロックという手触りでした。
ナック My Sharona
そもそも、70年代終わりの音楽なんか、わたしは好きではありませんでした。この時期、いいと思ったロック系の曲は(あろうことか)ゼップのFool in the Rainぐらいです。
レッド・ゼッペリン
この曲のジョン・ボーナムのプレイには興奮しました。ドラム好きなら、だれだって、このノリの複雑な味わいに、おや、と思うでしょう。ほかのことはほうっておくとして(つまり、嫌いないしは無関心だと婉曲にいったのだが)、ボーナムはやっぱりいいドラマーでした。はじめてGood Times Bad Timesを聴いたときは、子どもだからひっくり返りましたよ。
で、グレイプフルーツにはじまって、「わがホームグラウンド」の音楽をあれこれ聴いているうちに思ったのです。ヨーロッパのローカル・ヒットというテーマより、「ハード・ポップ」なんてテーマのほうが楽しいのではないだろうか、とね。
ということで、今回はどんどん脱線して、あちこちにジャンプしてみました。いずれやるかもしれない「ハード・ポップ」シリーズの序曲のつもりです。
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グレイプフルーツ
Around Grapefruit
グレイプフルーツ BBC音源
アラウンド・ザ・BBC
ホリーズ
ベスト・オブ・ホリーズ(紙ジャケット仕様)
ラズベリーズ
Greatest
ヤング・ラスカルズ デビュー盤
Young Rascals
ラスカルズ ベスト盤
Very Best of
ナック
Best of
レッド・ゼッペリン
イン・スルー・ジ・アウト・ドア(紙ジャケット)