このところお客さんが多いのに、わたしのほうは書く気力に満ちているとはいえず、ツイッターでちょっと書いてしまうと、もう十分という気になってしまいます。
近ごろ見た映画も、聴いた音楽も、だいたいツイッターのほうに、その場で書いてしまうので、それでいわば「ガス抜き」になり、もう書くのが面倒になってしまう、という傾向があります。
しかし、明日は時間がとれず、今日更新しておかないとまずいだろうと思い、すでにツイッターでとりあげ、書くべきことは書いてしまったのですが、当家のお客さんの数より、ツイッターでわたしをフォローなさっている方はずっと少ないので、わたしをフォローなさっている方にはご容赦を願うことにして、フランク・シナトラ主演の『トニー・ローム』について再度駄言を弄させていただきます。
◆ ナンシーと彼女のドラマー ◆◆
たとえば『オーシャンと十一人の仲間』だとか『クイーン・メリー号襲撃』だとか『上流社会』だとか『波も涙もあたたかい』だとか、シナトラの映画はかなり見ているのですが、60年代のものはあまり見ていないので、まとめて見てみようと思い立ちました。
あまりアクションが向いているとは思えないのですが、フランク・シナトラも私立探偵ものをやっています。この「トニー・ローム」シリーズは二本つくられていますが、今回はまず第一作目の『トニー・ローム』です。
映画Tony Rome パート1
開巻いきなり、ハル・ブレイン丸出しのキック・ドラムが鳴り響き、オッと、となります。ナンシー・シナトラ歌うトニー・ロームのテーマです。
ナンシー・シナトラ Tony Rome
いやはや、ハル・ブレインという人は、しばしばハル・ブレイン丸出しのプレイをするのですが、これほど露骨にハル・ブレインしていると、やはり大笑いしてしまいます。気持よくタムタムを叩きまくっていて、ハル・ブレインはやっぱりこうでなくちゃな、です。
音楽関係のクレジットはやや複雑です。
ということで、主題歌はナンシー・シナトラだから、彼女の「座付きソングライター」であるリー・ヘイズルウッドが書いていますが、スコアは「シナトラのアレンジャー」であるビリー・メイが書いています。さらに、まだ駆け出しだったランディー・ニューマンも一曲提供していますが、このあたりはどういう経緯でそうなったかは寡聞にして知りません。
まだ7のほうに音声トラックだけを切り出すソフトウェアを入れていないため、今日はスコアの切り出しはしません。できれば、次回にやってみようと思います。2000にもどってやったほうが早そうですが!
いずれにしても、スコアを細かく検討したわけではないので、切り出しの環境が整っていても、今日は無理なのですが。それで終わりでは愛想がないような気もするので、高音質のTony Romeをサンプルにしました。
サンプル Nancy Sinatra "Tony Rome"
◆ ダーティー・ビジネス ◆◆
私立探偵ものというのは、小説でも映画でも、台詞がひとつの魅力になることが多いものです。『トニー・ローム』は、フランク・シナトラに派手なアクションをさせられない欠点を、台詞で補うような形になっていて、何度かけらけら笑いました。
以下はフランク・シナトラとジル・セイント・ジョンの会話。
"I never met a private detective before. Kind of a dirty business, isn't it?"
"Maybe. Only thing worse is the people who hire them."
"How'd you get into it?"
"Well, there's a compulsion among the lower classes to get money to eat once in a while. Maybe you heard the rumor about it."
"All right. So I'm rich. Why get mad at me?"
"Because it's not nice manners to tell a man who's in a dirty business that he's in the dirty business."
「探偵さんなんてはじめて会ったわ。ちょっと汚いお仕事なんでしょ?」
「かもしれない。探偵より汚いのは探偵の雇い主だけだ」
「どうしてそんなお仕事をはじめたの」
「下層階級の人間は、ときおりなにか食べるために金を手に入れようという抑えがたい衝動に駆られることがあるものでね。きみもそういう話を小耳に挟んだことがあるかもしれないけれど」
「わかったわよ。そう、あたしは金持ちよ。だからってそんなに怒らなくてもいいでしょ」
「汚い仕事をしている人間に向かって、汚い仕事をしているのね、なんていうのは礼儀正しいこととはいえないじゃないか」
◆ It took me tree ◆◆
もうひとついきましょうか。同じくフランク・シナトラとジル・セイント・ジョンの会話。今度はもう少し親しくなってからの、ナイタリーでの会話です。
"You weren't very choosy, were you?"
"Women can't afford to be. I learned that early. I started out wanting to marry a man...who was handsome, rich and witty. I got all of it. It took me three husbands to do it."
「きみはあまりえり好みしないんだな」
「女はそんな贅沢をいってられないの。若いころに思い知ったわ。最初はね、ハンサムで、お金持ちで、話の面白い人と結婚したかったの。三つとも全部かなったわよ。三人の男が必要だったけどね」
余談。ジル・セイント・ジョンのほかに、ハードボイルドもののおきまり、金持のわがまま娘も登場します。これが『ロリータ』のSue Lyon。このスペルを見れば、ふつう、だれだって「スー・ライアン」または「ライオン」と読むはずですが、映画輸入会社は特殊な美学をもっているので、『ロリータ』では「スー・リオン」と表記されました。
ということで、「ライアン」なのだという証拠を貼り付けます。日本でいえば「私は誰でしょう」みたいなテレビ番組(いや、「笑っていいとも」でもそんなコーナーがかつてあったけれど)にスー・ライアンが出演したときのクリップです。
スー・ライアン
ユーチューブには比較的最近のスー・リオン=ライアンのインタヴューがあるのですが、なかなか知的な女性だということがわかりました。彼女が女優として成功しなかった理由が語られています。
スー・リオン=ライアン・インタヴュー
次回は、がんばって、ビリー・メイのスコアを切り出す予定です。
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ナンシー・シナトラ
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