人気ブログランキング |
アル・クーパーのポップ・カヴァーとオリジナル ブラッド・スウェット&ティアーズ篇2

前回のMorning Gloryは、スティーヴ・カーツのようなトンチキにしては、ずいぶん渋い曲を選んだものだと不思議に思い、アル・クーパー自伝をぱらぱらやりました。

書いてありました。カーツの分として(Meagan's Gypsy Eyesのほかに)もう一曲必要で、アル・クーパーがティム・バックリーを聴かせ、カーツが気に入ったので、アレンジもアルが書いたそうです。キャリア全体を見渡して、わたしはアル・クーパーの選曲の才能を信頼しているので、やっぱりな、それなら筋が通ると納得しました。カーツにはティム・バックリーに目をつけるセンスはありません。

◆ 暴君対暗殺者 ◆◆
「アル・クーパーの」といいながら、前回のMorning Gloryのリード・ヴォーカルはスティーヴ・カーツという羊頭狗肉でしたが、今回は大丈夫、正真正銘、アル・クーパーのカヴァーです。

しかし、このWithout Herについては、以前、詳述していて、いまさら書き加えるべきことはとくにありません。当然ですが、ギターはカーツではなく、アル・ゴーゴーニがプレイしています。考えてみると、ゴーゴーニに交代することをよくカーツが納得したものです。

f0147840_21464422.jpg
アル・ゴーゴーニ(右)とトレイド・マーティン

のちの内紛、アル・クーパー追放は、案外、こんなところに胚胎していたのかもしれません。アル・クーパー排斥の先頭に立ったのはスティーヴ・カーツとボビー・コロンビーだそうです。アルはその直前に、カーツのギターが進歩しないので首を切ろうとして、逆襲にあったようです。音楽の才能はゼロ付近だけど、政治の才能はあったのね>カーツ。

決定的な敗因は、バンドの顧問弁護士がカーツの兄弟だったことです。まったく、マヌケなことをやったものです。のちにどこでもそうなりますが、だれがバンド名を持っているか、はじめにはっきりしておくべきだったのです。マイケル・クラークにバーズの名前を盗まれたロジャー・マギンも大マヌケですが、アル・クーパーもいい勝負です。

f0147840_21492162.jpg
ブルーズ・プロジェクト。真ん中がスティーヴ・カーツ、その左、ブルーのシャツがアンディー・カルブ。そのうしろにアル・クーパー。アンディー・カルブは走ったり、チューニングが狂ったまま弾いたりしたが、ときおりすばらしいフレーズが飛び出した。タイムは訓練で矯正できるが、無能は矯正できない。アンディー・カルブにしておけばよかったのに!

いや、もっと大きな間違いは、メンバーを選ぶ段階でカーツでかまわないと思ったことです。ギタリストなんて掃いて捨てるほどいるのに、よりによってわたしより下手なプレイヤーを選んだのが、そもそもの間違いだったのです。アンディー・カルブのようなプレイヤーがいては自分の出番がない、カーツなら下手だから、リードは俺がとると出しゃばってもオーケイだ、なんてスケベ根性だったのではないでしょうか。それ以外にカーツにギターをもたせる理由を想像できません。

◆ アル・クーパー盤ほか、各種ヴァージョン詰め合わせ ◆◆
それではBS&T盤のサンプルから。

サンプル Blood Sweat & Tears "Without Her"

オリジナルはニルソンですが、サンプルに行く前にYouTubeのクリップを。

ニルソン Without Her スタジオ・ライヴ/ギター・ヴァージョン


さらにクリップを。

リック・ネルソン Without Her


リックのヴァージョンがあるとは知りませんでした。今回知ったヴァージョンのなかでベスト。もっていないので、欲しくなりました。やっぱりリックはいい声をしています。

グレン・キャンベル Without Her


ジャック・ジョーンズもカヴァーしているとは知りませんでした。弦の扱いのムードなどはニルソン盤を踏襲しています。

ジャック・ジョーンズ Without Her


BS&T盤をのぞけば、オリジナルからもっとも遠いカヴァー、ハーブ・アルパート盤。

ハーブ・アルパート&ザ・ティファナ・ブラス Without Her


ニルソン・トリビュートで録音された、ロバート・ラムとカール・ウィルソンともうひとり知らないシンガーのトリオ。比較的近年のものなので、とくに面白くはありませんが、ビーチカゴ・サブセットという趣の組み合わせが可笑しいので貼りつけておきます。

ロバート・ラム、カール・ウィルソン他 Without Her


◆ ニルソン盤 ◆◆
ニルソンのWithout Herは、ミックスのヴァリエーションを無視していえば、2種類あります。オリジナルとAerial Pandemonium Balletに収録された別テイクです。別テイクのほうは、ニルソンのヴォーカルを重ねていて、このほうがずっと面白いので、サンプルはそちらを。

サンプル Nilsson "Without Her" (remix ver.)

妙なものだと思いますが、アル・クーパーはニルソン盤Without Herのアレンジが気に入っていたようです。にもかかわらず、というか、だからこそ、というべきかもしれませんが、BS&T盤Without Herのアレンジは、ニルソン盤とはおよそ似ても似つかないものになっています。アレンジャーの、同業アレンジャーに対する敬意の表明のように感じます。

f0147840_2223788.jpg

ひるがえって、それ以外の盤はちょっと情けない状態です。譜面を盗んだとまではいえませんが、アル・クーパーが「バロックなストリングス」といっている弦のムードは、ほとんどのカヴァー・ヴァージョンが利用しています。盗み盗まれ切磋琢磨の業界かもしれませんが、プライドはないのか、といいたくなります。

そもそも、アレンジによって楽曲に異なった相貌をあたえることこそ、音楽の快楽の根源にあるもののはずで(つまり表現の問題をいっているのだ)、それを放棄するシンガー、プロデューサー、アレンジャーというのはいったいなんなのだ、という強い疑問を感じます。

f0147840_2225597.jpg

アル・クーパーのアレンジを先に聴き、あとからニルソンのオリジナルを聴いたわたしは、おおいに驚きました。そのときも、そしていまも依然として、Without Herは、アル・クーパーのアレンジ、サウンド・メイキングがベストだと確信しています。

あとは、ニルソンのリミックス・ヴァージョンとリック・ネルソンがあれば、Without Herは十分でしょう。


metalsideをフォローしましょう


ブラッド・スウェット&ティアーズ
Child Is Father to the Man (Exp)
Child Is Father to the Man (Exp)


アル・クーパー自伝増補改訂版
Backstage Passes & Backstabbing Bastards: Memoirs of a Rock 'n' Roll Survivor
Backstage Passes & Backstabbing Bastards: Memoirs of a Rock 'n' Roll Survivor


ニルソン Pandemonium
Aerial Ballet/Pandemonium Shadow Show/Aerial Pandemonium Ballet
Pandemonium


リック・ネルソン
Another Side of Rick / Perspective
Another Side of Rick / Perspective


by songsf4s | 2010-11-27 23:54