人気ブログランキング |
成瀬巳喜男監督『めし』(東宝映画、1951年) その5 補足 大阪ロケ、早坂文雄のスコア

『めし』の「その1」に書いたように、この映画の前半は大阪が舞台になっています。

原節子と上原謙の夫婦は横浜(川崎?)と世田谷に実家があり、関東から移ってきたという設定ですが、原作を読んでいないので、この設定の意図ははかりかねます。妻を遠い実家に戻らせたい、ただし、妻の実家から遠くないところに夫の実家もおきたい、となると、大都市間の移動であるほうが都合がいい、といったあたりでしょうか。

f0147840_203911100.jpg
本文に関係ないが、もう一枚猫の写真をあげておく。ついでによけいな話だが、昔の流しは石だった。同潤会江戸川アパートメントのような、ウルトラモダンでも、当時の写真を見ると石の流し。一軒家の台所は一段下がって土間よりちょっと高い板の間か、土間そのものだった。あれはなぜなのだろう? 水の供給方法の問題だろうか。

二人の故郷を田舎にし、結婚してから東京なり大阪なりに出てきたという設定でも不都合はないようですが、実家が都会にあるほうが、家が狭くて身の置きどころがない感じを強調できるかもしれません。

とくに、西と東の考え方の相違などというものは描写されないので、どこにお住まいの方も気になさらないでください。そういう意図ははじめからない映画なのです。

◆ 阪堺線沿線? ◆◆
わたしは南関東に生まれ育ったので、関西には土地鑑がなく、今回は調べて書くだけなので、信用しないでいただきたいと、はじめにご注意申し上げておきます。ちゃうでえ、ということであれば、どんどんコメントに書き込んでください。

タイトルからオープニングまでを、原節子のナレーション入りで(というか、たとえナレーションをとりたくてもとれないのだが)サンプルにしました。

サンプル 早坂文雄「メイン・タイトル~朝食」

この音楽とナレーションに乗って登場するのは、上原謙と原節子の夫婦が住む土地で、「その1」にも引用したように、「大阪市の南のはずれ、地図の上では市内ということになっているが、まるで郊外のような寂しい小さな電車の停留所」の界隈です。

f0147840_2042976.jpg

f0147840_2042322.jpg

f0147840_0292934.jpg

f0147840_20443285.jpg

f0147840_2045533.jpg

「停留所」といっているぐらいで、関東でいえば都電荒川線か江ノ電のような、路面電車と懸隔のない小規模な鉄道の「駅」が映ります。都電荒川線に似た路線というと、阪堺線だそうで、そのどこかの駅だろうと思いますが、わたしにはそれ以上のことはわかりません。阪堺電車のサイトから路線図を頂戴してきました。

f0147840_2049748.jpg

阪堺線はその名の通り、大阪と堺を結んでいるので、映画のナレーションにしたがえば、このうち、大阪側のどれかの駅に設定されているのでしょう。

駅からの道筋らしきものも映りますが、夫婦が住む、道路からちょっと下がった路地の一帯はオープン・セットです。砧撮影所でしょう。

f0147840_20444411.jpg

f0147840_20445385.jpg

f0147840_20471091.jpg
以上三葉はいずれもオープン・セット。この朝の光景は寸分違わぬタイミングで二度繰り返される。「気いつけていきや」といわれた子どもは二度とも階段を上がったところでコケ、お母さんが家に戻ろうとすると向かいの主人が出てきて挨拶、あとからその家の奥さんが走ってきて、階段のところで忘れた弁当を手渡す。成瀬巳喜男らしい控えめなユーモア。

◆ 大阪観光 ◆◆
東京から姪がやってきたので、上原謙はバスで大阪見物に連れて行くことにします。小津安二郎の『東京物語』では当然、笠智衆、東山千栄子は、次男の嫁の原節子に連れられて「はとバス」で市内を観光しましたが、大阪では、どの会社のバスと自動的には決められないようです。

f0147840_211101.jpg
梅田の駅前、でよろしいあるか?>大阪ネイティヴ諸兄姉。

f0147840_2112066.jpg

f0147840_2112748.jpg
バスガイドもそういっているが、これだけは云われなくてもわかる大阪証券取引所。

f0147840_2113578.jpg
北浜の株屋町。

f0147840_2114465.jpg

グーグル・マップ 大阪中之島周辺

この地図を見ると、スクリーン・ショットのように、渡りながら北浜の証券取引所が見える、という条件に合うのは天神橋以外にはなさそうです。いや、現在では高速道路が邪魔で、北浜はよく見えないでしょうけれど。

f0147840_2115254.jpg

f0147840_2115766.jpg

f0147840_212521.jpg

f0147840_2121322.jpg

このあと、大坂城見物までは団体バス観光のようです。「大坂城第二の大石」といっているので、どのあたりか、大阪の方はおわかりでしょう。「天下普請」なんて規模になると、どこでも大石の確保には苦労するようで、金もかかれば、人死にも出ます。

昼食は「まむし」です。

f0147840_2133242.jpg

f0147840_213424.jpg

f0147840_2135096.jpg

鰻が蛇に似ているからかと思いましたが、「まぶし」の転訛だそうです。めしに鰻をまぶして「まぶしめし」、それが転じて「まむしめし」。大阪では「のせる」ことを「まぶす」というのでしょうか。知っているようで、やっぱり外国語、細かいニュアンスまではわかりません!

◆ 大阪デート ◆◆
上原謙と原節子の夫婦の近所に「谷口さん」(浦辺粂子)という人がいて、猫の面倒を見てくれたりすることはすでに書きました。その家の息子(大泉滉)が島崎雪子を誘ってデートのようなことをする場面があります。ここは有名なところしか行かないようで、大阪の方は一目でわかるのではないでしょうか。

f0147840_2314415.jpg

f0147840_2315392.jpg

f0147840_2312698.jpg

出かけるときに、大泉滉が「とりあえず難波のほうに」といっているのですが、そういう表現の場合、どのあたりに行くのやら。心斎橋の周辺ということでいいのでしょうかね。東京で云うと、とりあえず有楽町、なんてんで出かけて、銀座から日本橋のほうをぶらぶらするとか、そんな感じで?

f0147840_232583.jpg

f0147840_2321517.jpg

f0147840_2322459.jpg

f0147840_2323282.jpg

f0147840_2323989.jpg

f0147840_2325482.jpg

f0147840_2331092.jpg

どのあたりなのでしょうか。新世界でいいんですかね。通天閣のあたりとか。当てずっぽうを並べてもしかたありませんね。「成瀬巳喜男監督 めし ロケ地」なんてキーワードで検索なさるといいでしょう。当家も引っかかってしまいますがね!

以上で『めし』はおしまいです。ちょっと音楽をはさんで、そのあとは、さらに成瀬巳喜男の、五尺の身さえ置きどころがなく、一日とて生き難い映画をつづけるつもりです。

f0147840_2355381.jpg



metalsideをフォローしましょう



めし [DVD]
めし [DVD]


by songsf4s | 2010-10-07 23:54 | 映画・TV音楽