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Lullaby in Ragtime by Nilssonおよび映画『5つの銅貨』
タイトル
Lullaby in Ragtime
アーティスト
Nilsson
ライター
Sylvia Fine
収録アルバム
A Little Touch of Schmilsson in the Night
リリース年
1973年
他のヴァージョン
Danny Kaye
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2007年秋の「Harvest Moonの歌」でLullaby in Ragtimeを取り上げたときは、この曲の初出である映画『5つの銅貨』を再見せずに書きました。今回は映画を見直してみました。

◆ The Music Goes Round and Round (Again) ◆◆
映画The Five Penniesは、秀作というわけではありませんが、昔の映画らしいのどかさがあるのは、わたしのような人間には好ましく感じられます。でも、それですむなら、現代の映画があのように派手派手しく、騒々しく、トゲトゲしく、忙しくはなっていないはずで、多数派には興味のないスタイルでしょう。現代のハリウッド映画の正反対のような、静かで、穏やかで、ゆっくりした映画です。

ミュージシャンを主人公とした音楽映画なので、唄のシーンにはおおいに気に入ったものもありました。ベストは、ダニー・ケイと子役の女の子(スーザン・ゴードン)がデュエットする、The Music Goes Round and Roundのシーンです(ご興味のある方は前回の「『唄の世の中』The Music Goes Round and Round by 岸井明」も併せてどうぞ)。

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このトラック、すばらしいのに、YouTubeにはクリップがないので、サンプルにしました。LPリップですが、ノイジーではないのでご安心を。また、今回から別ウィンドウまたは別タブで開くようにしましたので、左クリックでも大丈夫です。

サンプル Danny Kaye with Susan Gordon "The Music Goes Round and Round" (from the film "The Five Pennies")

子役の女の子はじつに可愛らしく、唄も愛嬌があって、みごとなものです(もちろん、声だけスタンドインということは十分にありうるが)。昔から子どもと動物にはかなわないといいますが(わたしは成瀬巳喜男の『めし』を見ていても、原節子より仔猫のユリちゃんのほうが気になったりする!)、まさにそういう感じで、ダニー・ケイは引き立て役です。

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それから、この曲の変な歌詞の意味も、このシーンでの絵解きの通りなのかもしれません。「第1のヴァルヴを押すと、音楽が流れて廻りだす」(I push the first valve down/The music goes down and around)なんていわれると、ビア樽みたいなものから音楽がこぼれ出す容子をイメージしてしまいますが、トランペット(映画の主役であるレッド・ニコルズの場合はコルネット)の「ヴァルヴ」だというなら、なるほど、そうか、です。セカンド・ヴァースでは「真ん中のヴァルヴ」といっているので、ふつうには三つあると想定でき、コルネットやトランペットのヴァルヴの数と矛盾しません。

◆ コードが合えば ◆◆
さて、この映画のためにダニー・ケイ夫人のシルヴィア・ファインが書いたLullaby in Ragtimeです。

Lullaby in Ragtimeのオリジナル記事にも書きましたが、ラグタイムというのは、通常、テンポが速いのです。それなのにニルソンはスロウにアレンジしていて、元はもっとずっと速かったのではないかと思い、それを確認したかったのです。



『5つの銅貨』という映画は、コルネット・プレイヤーのレッド・ニコルズ一家の物語を脚色したものです。レッド・ニコルズ(映画ではダニー・ケイが演じる)は一時期人気を博したのですが、娘がポリオに罹ってしまい、そばにいっしょにいるために、ツアーの多いミュージシャンをやめてふつうの仕事につき、やがて娘が成長し……といった話です。

Lullaby in Ragtimeが出てくるのは、生まれたばかりの娘をつれてツアーに出ていて、ツアーバスのなかでプレイする亭主に、嫁さんが、赤ちゃんが起きちゃうでしょ、と文句を云うものだから、じゃあ、しずかーにやろう、というシーンです。

ただし、ここではダニー・ケイの歌うLullaby in Ragtimeだけでなく、嫁さん(バーバラ・ベル・ゲディス)の歌うSleep Tightという曲も重ねています。

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ルイ・アームストロング以外にもミュージシャンが出演している。右からシェリー・マン(レッド・ニコルズのバンドのドラマー、デイヴ・タフ役)、ボビー・トゥループ(同じくピアニストのアーティー・シャット役)、二人おいてレイ・アンソニー(ジミー・ドーシー役)といったぐあい。ドラマーを演じるのがドラマーだと安心して見られるのがありがたい。ブラシの扱いなんかカッコいい! ボビー・トゥループも本職だが、ピアノを弾くシーンでも手は見えないし、歌うシーンもない。

和田誠監督の『快盗ルビイ』という映画で、小泉今日子と真田広之がインストゥルメンタル曲を聴いているところで、小泉今日子がそのコードに合わせてべつの曲を歌うというシーンがありました。和田誠のように音楽がわかっている人だけがこういうことを思いつくわけですが、ただし、あの映画を見たときも、これはどこかに元があったはずだ、どの映画だっけ、と思いました。『5つの銅貨』から思いついたのかもしれません。

余談。『快盗ルビイ』のテーマは和田誠作詞、大瀧詠一作曲でしたが、目の前で歌詞をズタズタにされて呆然とした、と作詞家が書いていて、笑ってしまいました。そういうタイプの作曲家もいるようですね! 和田誠は一柳彗にピアノを習った(師匠がだれでも当人の技術には関係ないが)というほどで、自分でも曲を書くのですが、やっぱり小泉今日子だから、ヒットさせたかったのでしょう。

このLullaby in RagtimeとSleep Tightの組み合わせはもう一回登場します。こんどはルイ・アームストロング、ダニー・ケイ、そして子役のスーザン・ゴードンの三人で、The Five Penniesも合わせて、三曲いっぺんに歌います。

Louis Armstrong, Danny Kaye & Susan Gordon - Sleep Tight/Lullaby in Ragtime/The Five Pennies


オープニング・クレジットにテューズデイ・ウェルドの名前があるのですが、見終わってから、どこに出てきたのだろう、と思いました。レッド・ニコルズの娘が成長してからが、テューズデイ・ウェルドなのだそうです。若すぎてわからなかったのです。

◆ ニルソンのLullaby in Ragtime ◆◆
ラグタイムの子守唄なのだから、オリジナルはやはりテンポが速くて軽い仕上がりなので、ニルソン盤ばかりが印象に残り、オリジナルのほうは記憶から消えても不思議はないと、映画を見て改めて思いました。

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A Little Touch of Schmilsson in the Nightセッションのアウトテイクを集めたCD、A Touch More Schmilsson in the Night。It's Only a Paper MoonやI'm Always Chasing Rainbowsなど、A Little Touch of Schmilsson in the Nightから外された曲がはじめて陽の目を見た。Lullaby in Ragtimeのオルタネート・テイクも収録されている。

オリジナルも悪くはありませんが、決定版はスロウダウンしたニルソン盤です。ニルソンが、ゴードン・ジェンキンズのすばらしいオーケストレーションつきで、このようなレンディションでカヴァーしたおかげで、Lullaby in Ragtimeはようやく「名曲」のレベルにたどりついたのです。

サンプル Nilsson "Lullaby in Ragtime"

こちらのヴァージョンについてはオリジナル記事で詳細に書いたので、とく書き加えるべきことはありません。今回はサンプルを追加しようと思っただけです。


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OST
The Five Pennies
The Five Pennies

DVD
The Five Pennies
The Five Pennies


A Little Touch of Schmilsson in the Night
A Little Touch of Schmilsson in the Night


As Time Goes By
(Schmilsson in the Nightにアウトテイクを加えたもの)
As Time Goes By
by songsf4s | 2010-09-30 23:55 | 映画・TV音楽