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サンプラー Blue Moon その5 by Bob Dylan
タイトル
Blue Moon
アーティスト
Bob Dylan
ライター
Lorenz Hart, Richard Rodgers
収録アルバム
Self Portrait
リリース年
1970年
他のヴァージョン
The Ventures, Julie London, the Marcels, Elvis Presley, Frank Sinatra, Bruce Johnston, Cliff Richard, Ten Tuff Guitars, Percy Faith, Paul Weston, Jimmy McGriff, Jorgen Ingmann, Santo & Johnny, Leroy Holmes, Sy Zentner, Sam Cooke, Nat King Cole, Django Reinhardt
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(お詫びと訂正 ポール・スミスのBlue Moonをアップしたつもりが、まちがってBlue Roomをアップしていました。すでに多くの方がまちがったファイルを試聴なさったあとで、お詫び申し上げます。正しいものと交換したので、よろしければ、このすばらしいトラックをお楽しみください。2010年9月24日午後11時半)

いやはや、暑い仲秋の名月ですが、予定通り、ギリギリでBlue Moon棚卸しを今晩で終えることにします。もう一回ぐらいはできそうなだけのヴァージョンがありますが、腹八分目にしておくほうが上品でしょう。

昔の記事を読み返して間違いを見つけるのは毎度のことですが、さっき、2007年のBlue Moon by the Marcelsを読み返して、ひどい間違いをしていたことに気づき、あわてて修正しました。あんまりひどい間違いなので、口をぬぐって、なかったことにしちゃいます。

ヴェンチャーズのギターについてもふれているのですが、これは現在とは考えがちがうものの、まあ、この程度の誤解はありがちなこととみなし、そのまま訂正せずにおきました。

◆ ボブ・ディラン盤 ◆◆
今日の看板は、オリジナル記事でも好みだと書いたボブ・ディラン盤です。動画があるかと思って検索したら、よそさんが4sharedにアップしたサンプルが引っかかったので、今回はそのまま拝借することにしました。

サンプル Bob Dylan "Blue Moon"

オリジナル記事にも書きましたが、Self Portraitほどファンや評論家に嫌われたディランのアルバムはあまりないでしょう。わたしはディラン・ファンでもなければ、評論家でもないから当然ですが、Self Portraitが大好きです。

Nashville Skyline、Self Portrait、DYLANという「歌うディラン」時代は面白かったのですが、その前後はそれほど好きではありません。つまり、歌手ディランはまだしも、ソングライター・ディランにはそれほど興味がなかったのです。やっぱりヴァースは三つぐらいが限度でしょう!

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Self Portraitはなぜあれほどひどいアルバムになったか、なんてことを必死で弁じ立てているサイトがあって、そもそも、これはアルバムにしようと思ったものではなく、たんなるウォーム・アップにすぎなかった、としています。

はて? それはないでしょう。これだけの録音をするには、ちょっとしたコストがかかります。一万ドルは堅いところです。ディラン自身やザ・バンドの連中のナッシュヴィル滞在費までいれたら、いくらになることやら。Self Portraitがダブル・アルバムなうえに、そのアウトテイクを集めたLPまであるわけで(さらに近年はそこにアウトテイクが加えられた)、LP三枚分のセッションをやってご覧なさいというのです。

f0147840_115644.jpg音楽的な面に目を向けるなら、このアレンジ、サウンドはなんのためなのか、ですよ。ウォーム・アップなら、3リズムぐらいで十分ですし、ギターの間奏なんか、はじめから無用です。あとからリリースすることになって、オーヴァーダブされた、なんて入れ方じゃないのは、耳のある人間にはわかります。Belle Isleなんか、ちゃんとギターの場所がつくってあるじゃないですか。

そもそも、たかがウォーム・アップのために、ナッシュヴィルまで行く人間がいるのか、それだけでも、うなずけない話です。ウォーム・アップ説は、Self Portraitを亡きものにしたい、ディラン・ショーヴィニストの陰謀でしょう。いいアルバムだ、と認めちゃったほうが、よほど楽だと思うのですが!

ともあれ、ディランのBlue Moonは、Self Portraitというディランとしては例外的な、きわめてウェル・メイドなアルバムのなかでも、とくにソフィスティケートされたトラックで、じつに気持のいい仕上がりです。やればできるじゃないか>ボビー。

◆ ジョー・オズボーン? ◆◆
Self Portraitの最近のクレジットを眺めたのですが、LPのころのパーソネルとはすこしちがうような気がしました。ドラマーが増えているような気がしますし、ジョー・オズボーンの名前はLPにはなかったと思います(わたしの勘違いかもしれないので、そうであるなら、乞ご指摘)。

どの記事だったか、Self Portraitのクレジットには、ハリウッドのエース・トランペッター、オリー・ミッチェルの名前があるので、ハリウッド録音(またはオーヴァーダブ)のトラックがあるのではないか、と書きましたが(オリー・ミッチェル・オフィシャル・サイトの顧客リストでも、ディランの名前を確認できる)、ジョー・オズボーンの名前まであるのでは、いよいよ疑問はふくれあがります。

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オフィシャル・サイトを見てはじめて知ったのだが、オリー・ミッチェルも回想記を出版した。直販のみかもしれないので、ご興味のある方はオフィシャル・サイトのほうをご覧あれ。

ジョー・オズボーンはいずれナッシュヴィルに引っ越しますが、それはもっとずっと後年のことです。70年代前半はまだハリウッドで忙しく働いていました。記憶している有名どころをあげるなら、カーペンターズはほとんどすべてオズボーンのプレイですし、ジョニー・リヴァーズやフィフス・ディメンションのヒット・シングルもあります。

それがSelf Portraitでプレイしたとなると、ハリウッド録音か、またはオリー・ミッチェルとともにナッシュヴィルに呼ばれたことになります。後者の可能性は低いと思います。わざわざ呼んだら、それだけの仕事をしてもらうことになりますが、Self Portraitには、いかにもオズボーンというプレイがあふれてはいません。ほんの一握りしかプレイしていないのではないでしょうか。そんなプレイヤーをアゴ足つきで呼ぶ馬鹿はいません。

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呼ばれるほうだって、ハリウッドで稼いでいる分の補償をつけてくれないかぎりは行けません。全盛期のジョー・オズボーンを数日買い切ってごらんなさいな、エラい金額になりますよ。そんなことをしなくたって、ナッシュヴィルにもいいプレイヤーはいます。だから、あとでささやかなオーヴァーダブをしたか、LAに立ち寄ったおりに軽いセッションをしたのでしょう。ディランはレッキング・クルーとは無縁と思っていましたが、オリー・ミッチェルについでジョー・オズボーンの名前が出てくるようでは、そのうちにハルの名前も出てきかねません!

◆ ポール・スミスの予見的サウンド ◆◆
もう一曲は4ビートのピアノ・インストにしました。といっても、ポール・スミスというピアノ・プレイヤーのリーダー・アルバムというだけの意味であり、ピアノを前面に押し立てた泥臭いサウンドではありません。リード楽器は木管やギターだったりするのです。

サンプル Paul Smith "Blue Moon"

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Paul Smith "Liquid Sounds" (1954)

Paul Smith - piano
Abe Most - clarinet
Julius Kinsler - flute/alto sax
Tony Rizzi - guitar
San Cheifetz - bass
Alvin Stoller/Irv Cottler - drums

このアルバムを聴こうと思った理由は、アルヴィン・ストーラーとアーヴ・コトラーという「『わたしの時代』より昔のハリウッドのレギュラー」である二人のエース・ドラマーを、同じコンテクストで比較できると思ったからです。ところが、トラック単位のクレジットはなく、どのトラックでどちらが叩いたかはわかりませんでした。どちらのプレイにせよ、やはりタイムがよく、いかにもセッション・ワークに適したタイプです。

トニー・リジーのギターは、手放しで賞賛するわけにはいきませんが、この耳タコの曲になんとか新鮮な感覚を与えようとしているところは、好ましく感じます。

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しかし、このトラックのなによりもいい点は、イントロからエンディングまで、きっちりとアレンジされ、インプロヴは最小限に抑えていることです。その意味で、4ビートとはいいながら、ポップ系インストゥルメンタルと同じ考え方でつくられているのです。

たとえば、ピアノとギターが、あるいは、フルートとギターが、あるいはクラリネットとピアノが、同じフレーズを弾くという、ブライアン・ウィルソン名づけるところの「第三の音」効果を最大限に活用したアレンジをしているわけで、レス・ポールとフィル・スペクターの中間にある「サウンド・オン・サウンド発展史のミッシング・リンク」とでもいいたくなるような先見的サウンド、60年代ハリウッド・ビート・ミュージック的方向性をもっています。

同じ4ビートでも、モダン・ジャズはぜったいにこういうことはしません。アレンジらしいアレンジもなく、たんにテーマだけがあって、あとは成り行きにまかせるのが彼らのやり方です。ポール・スミスのBlue Moonには、成り行きで出てきた音はほとんどありません。プレイヤーの自由裁量の入りこむ余地のあまりない、ほぼ完全な設計図をつくってから、それに沿ってプレイしているのです。

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これはジャズの行き方ではなく、ポップの行き方であり、わたしが好むのは、こういう考え抜かれたサウンドです。うーん、ディランじゃなくて、こちらを看板に立てるべきだったか!

本を読み、音楽を聴き、映画や絵画を見るのは、「セレンディピティー」=予期せぬ遭遇の連続ではありますが、それにしても、ポール・スミスのアルバムLiquid Soundsほどのセレンディピティーはそうはありません。なんでも聴いてみるものです。


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ボブ・ディラン
Self Portrait
Self Portrait


ポール・スミス
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by songsf4s | 2010-09-22 23:54 | Harvest Moonの歌