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サンプラー Blue Moon その3 by Julie London
タイトル
Blue Moon
アーティスト
Frank Sinatra
ライター
Lorenz Hart, Richard Rodgers
収録アルバム
Julie Is Her Name Vol.2
リリース年
1958年
他のヴァージョン
The Marcels, Elvis Presley, Frank Sinatra, Bob Dylan, the Ventures, Bruce Johnston, Cliff Richard, Ten Tuff Guitars, Percey Faith, Paul Weston, Jimmy McGriff, Jorgen Ingmann, Santo & Johnny, Leroy Holmes, Sy Zentner, Sam Cooke
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たまたま昨夜、『江分利満氏の優雅な生活』を途中まで見たのですが、今日は小林桂樹の訃報があって、こういうこともあるのだなあ、でした。

いまになってツイートするのではなかったと後悔しているのですが、同じことを繰り返すかもしれませんので、ツイッターでわたしをフォローなさっている方には、先にお詫びを申し上げておきます。

改めてフィルモグラフィーを見て、小林桂樹のキャリアの長さに驚きました。1942(昭和17)年のデビューだから、太平洋戦争中のことです。遺作が正確にはいつのものになったのか知りませんが(なんだかテレビではしじゅう見ていたような気がする)、本編の最後は2007年の『転校生』(大林作品のリメイク)のようですから、65年の映画俳優人生ということになります。これだけキャリアが長い人はそう多くはないでしょう。しかも、お年を召してからも、テレビでは主演作がたくさんあったのだから、すごいものです。

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小林桂樹という俳優の名前と顔を覚えたのは、「サラリーマン」シリーズか「社長」シリーズの一編でのことで、わたしと同世代以上の方は、依然として、あの謹厳実直サラリーマンをやった俳優としての印象が強いだろうと思います。

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大人になってから見たものでは、『椿三十郎』のとぼけた捕虜役で、へへえ、と思いました。黒澤明も小林桂樹も、コメディーの呼吸はみごとなもので、黒澤映画でいちばん好きなのは『椿三十郎』だというときに、頭に浮かべるシーンのひとつは、まわりからいわれる前にひとりで押し入れに戻る小林桂樹の姿です。

当家で過去に取り上げた小林桂樹出演作品は、残念ながら『日本のいちばん長い日』のみです。今夜はまだ追悼記事を書く準備ができていないので、近日中に、きちんと小林桂樹の映画を取り上げます。

◆ ジュリー・ロンドン ◆◆
さて、今夜もBlue Moonの棚卸しです。前回のフランク・シナトラ盤は、まさしくハリウッド音楽の精粋というべきサウンドでしたが、今夜のジュリー・ロンドンもまた、いかにもハリウッドらしいシンガーでした。

サンプル Julie London "Blue Moon"

ジュリー・ロンドンのBlue Moonは、1958年のアルバム、Julie Is Her Name Vol.2のオープナーです。Julie Is Her Nameのオリジナル(1955年)は、ヒット・シングルCry Me a Riverをフィーチャーしたもので、アルバムのほうも大ヒットとなり、生まれたばかりのリバティー・レコードを軌道に乗せるのに大きく貢献しました。

その続篇と名乗るのだから、当然、デビュー盤のムードを継承して、深夜、ラウンジでグラスを片手に歌う(というか、ジュリー・ロンドンの場合は「囁く」)ようなサウンドになっています。

オリジナルのJulie Is Her Nameでプレイしたのは、バーニー・ケッセル(ギター)とレイ・レザーウッド(アップライト・ベース)のたった二人でした(ボサ・ノヴァの歴史では、、アントニオ・カルロス・ジョビンはこのアルバムのバーニー・ケッセルのギター・プレイ、とくにコードワークに天啓を受けたとされている)。

その続篇を名乗るこのJulie Is Her Name Vol.2は、オリジナルと同じく夫君ボビー・トゥループのプロデュースで、メンバーは異なりますが、同じような編成で録音されています。続篇ではギターはハワード・ロバーツ、ベースはレッド・ミッチェルがプレイしました。これまた、たった二人とはいえ、一騎当千の精鋭です。

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オリジナルのJulie Is Her Nameは、この時点ではまだ伝説にはなっていなかったでしょうが、それでもやはり、ハワード・ロバーツはバーニー・ケッセルのプレイを意識せずにはいられなかったでしょう。じっさい、Blue Moonのコードワークはなかなかすばらしく(たとえば、without a dream in my heart, without a love of my ownのあたり)、思わずギターのほうに意識を引っ張られてしまいます。

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あんまり若すぎて、いわれないとだれだかわからないが、左はもちろんハワード・ロバーツ、右はなんとピート・ジョリー!

ハリウッドの歴史をたどってみると、バーニー・ケッセルとハワード・ロバーツは、「50年代のビリー・ストレンジとトミー・テデスコ」とでもいうべき活躍をしたことがわかります。いや、60年代はビリー&トミー以外にも多数のエースがいましたが、50年代については、バーニー・ケッセルかハワード・ロバーツがプレイした盤以外にはないのではないかと思うほど、独占的です。それが、Julie Is Her Nameのオリジナルと続篇のパーソネルにストレートに反映されたことになります。

フランク・シナトラのゴージャスなサウンドも、もちろんハリウッド音楽インフラストラクチャーが生みだしたものですが、ジュリー・ロンドンのBlue Moonのミニマリズムもまた、ハリウッドという環境の産物です。ウェスト・コースト・ジャズの遺産とハリウッドのスタジオ技術の両者がなくしては実現できなかったサウンドです。

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Julie Is Her Name Vol.2のスタジオやエンジニアは不明です。初期のリバティー・レコードはスタジオをもっていなかったので、独立スタジオを利用しています(自社スタジオができたあとも、それを嫌って、ユナイティッド・ウェスタンばかり使ったスナッフ・ギャレットのようなプロデューサーもいた)。

わかっている範囲でいうと、前述のようにギャレットがプロデュースした盤はユナイティッド・ウェスタン、ジュリー・ロンドン同様、リバティーを軌道に乗せるのに寄与したチップマンクス(というか、デイヴィッド・セヴィルというべきかもしれない)はゴールド・スター・スタジオで録音していました。エディー・コクランもゴールド・スターです。

ジュリー・ロンドンは、スナッフ・ギャレットがプロデュースしたアルバムでは当然ユナイティッド・ウェスタンだろうと想像できますが、ボビー・トゥループがプロデュースしたものはわかりません。ゴールド・スターや他の独立スタジオの可能性もあるでしょう。

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◆ パーシー・フェイス ◆◆
今日もまた、インストものをひとついきます。最初はジミー・マグリフのオルガン・インスト、つぎはヨルゲン・イングマンのギター・インストときたので、今回はオーケストラにしました。これまたハリウッド音楽の精粋、パーシー・フェイス・オーケストラのヴァージョンです。

サンプル Percy Faith & His Orchestra "Blue Moon"

シナトラのBlue Moonとは異なった意味で、これまたハリウッドならではのゴージャスなサウンドで、惚れ惚れします。この曲では管は使わず、弦楽器を華麗に使い分けています。とくに、あちこちに配された単独のヴァイオリンの使い方に技を感じます。

何度も書いていることですが、パーシー・フェイスも、ビリー・ヴォーンも、ヘンリー・マンシーニも、ツアーをしたものの、固定したメンバーがいて、そのままスタジオに入ったわけではありません。

もちろん、常連はいたでしょうが、基本的にはツアー単位でプレイヤーを雇います。そうしないと、ツアーをしないあいだも給料を払わなくてはならず、経営が立ちゆきません。

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リック・ネルソンは、1963年、ツアーが減ったために、たった四人しかいなかったバンドを維持できなくなり、全員がフリーランスになった結果、ジョー・オズボーンとジェイムズ・バートンのスタジオ・ワークが急激に増大しました。それを考えれば、30人編成のオーケストラを常時維持できるリーダーなど存在しえないということはおわかりでしょう。

したがって、ハリウッドのオーケストラというのは、しばしば似たようなメンバーで、同じ場所で録音されました。パーシー・フェイス・オーケストラとヘンリー・マンシーニ・オーケストラは、スタジオ録音に関するかぎり、たぶん「ほぼ同じバンド」だったといって大丈夫でしょう。そして、両者とも、同じスタジオ、ハリウッドのRCAで録音したと考えられます(マンシーニはほぼすべてRCAで録音したことがわかっている)。

それでも、両者のサウンドには明確な個性の違いがあらわれるのだから、面白いものです。アレンジというものがどれほど決定的な要素であるかを実感するには、同時期のヘンリー・マンシーニとパーシー・フェイスを聞き比べるにしくはないでしょう。


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Julie Is Her Name Vol 1 & 2
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彼女の名はジュリー Vol.2(紙ジャケット仕様)
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Very Best of Julie London
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パーシー・フェイス
Bouquet / Bouquet of Love
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by songsf4s | 2010-09-18 23:57 | Harvest Moonの歌