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ジョン・ミリアス監督『ビッグ・ウェンズデイ』(1978年) その3

ゲーリー・ビューシーという俳優が好きで、『ビッグ・ウェンズデイ』を見ているうちに、『ハートブルー』(意味不明。原題はPoint Break)という映画を思いだし、再見しました。キアヌ・リーヴズがFBIの捜査官に扮し、サーファー銀行強盗団に潜入するという話です。

ゲーリー・ビューシーもFBI捜査官の役ですが、サーフィンはしません。でも、なんとなく、『ビッグ・ウェンズデイ』を思わせるエンディングの映画で、ビューシーがキャストされたのは、いくぶんかそういう意味もあったのではないかと思います。もう一本、ビューシーの映画を見ましたが、そのことは次回の枕にでも。

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◆ Give me wheats, whites and wine ◆◆
映画も音楽も書物も、同じものでも年齢とともに受け取り方は変化していきますが、『ビッグ・ウェンズデイ』も、今回の再見(7、8回目か)ではまた大きく変化しました。

以前はアッパーな1962年の章が好きで、1965年以後はあまりうまくいっていない、バランスの悪い映画だと考えていました。バランスがよくないという印象は変わっていませんが、今回は、それでもかまわないではないか、どうせ人生はバランスのよくないものだ、と考えるようになりました。

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そもそも、62年についても、パーティーは長すぎてダレるし、メキシコのシークェンスにいたっては、なぜああいうものがあるのか理解できません。あえて想像力を働かせると、メキシコが登場した理由はドラッグではないでしょうか。

コースターズのDown in Mexicoや、リトル・フィートのWillin'のように、メキシコにドラッグを仕入れに行くことを暗示する曲というのはけっこうあるもので、わたしはそのことを想起しました。

リトル・フィート Willin'(スタジオ録音)


コースターズのDown in Mexicoは、YouTubeには聴いたことのない変に新しいヴァージョン(たぶん、後年の偽コースターズによる新録音)しかなかったので、サンプルをアップしておきました。

サンプル The Coasters "Down in Mexico"

いえ、どちらの曲も「示唆」しているにすぎず、ドラッグ・ソングだなんてことを明言してはいません。でも、ドラッグの取引を歌ったと考えると、すんなり解釈できるのです。

一見、意味不明、価値なしに思えるメキシコ・シークェンスが、わざわざ撮影され、切り捨てられずに残ったのはなぜかといえば、あれが当時のカリフォルニアの子どもたちの多くが経験した行動だからでしょう。波と女(三人のうち二人はガールフレンド同伴だが)とドラッグを求めてメキシコに行った、それがいかにもあの時代らしいとジョン・ミリアスは考えた、という風に捉えています。

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それでもやはり、不用のシークェンスに思えます。強いていうと、のちの転調に備えて、Cメイジャーのトーンから、マイナーとはいわないまでも、セヴンス・コードに移行し、アッパラパーの脳天気ではない暗い面も見せておいた、というあたりかもしれませんが。

1962年の最後は、夕暮れの桟橋のシーンです。彼らの乗るボードをつくっていた〈ベア〉(サム・メルヴィル)が、桟橋は収容された、立ち退かなくてはいけない、もうおまえたちのボードはつくれないといって、ジャックを相手に荒れます。もちろん、ひとつの時代が終わったことをあらわしています。

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◆ 独りで乗る波 ◆◆
つぎの章は「西の波、1965年秋」と出ます。「変化の波、たいていは独りで乗る波」というナレーションがこの章の輪郭を明瞭に描いています。

このナレーションのときの波、海の色は印象的です。南カリフォルニアを舞台にした映画とは思えないほど、陰鬱な海なのです。日活映画なら、雨続きで陰鬱な海を撮らざるをえなかったなどということもありうるかもしれませんが、ハリウッド映画ではそんなことはありえません。意識して、暗色の海を撮ったのです。

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いかにもブルース・サーティーズらしい画面作りであり、カリフォルニアの子どもたちにとっても、もはや人生はCメイジャーではなくなったことを、第2章のドラマがはじまる前に明瞭に提示しています。

ジャックはビーチの監視員をやっていて、監視ポストで召集令状を読みます。浮浪者がいたので、条例でその場所で寝ることは禁じられている、とハンドマイクで命じてから、それがマットだということに気づきます。

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マットは泥酔状態で、道路をふらふら歩きはじめます。やがて手にしたボロ布で、通行する車を相手に闘牛のようなことをはじめ、事故を引き起こしてしまいます。そして、ジャックに殴られ、出て行け、と命じられます。

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この段階では、マットがなぜ泥酔し、浮浪者のようなひどい身なりなのかは説明されません。それはつぎのシークェンスのテーマなのですが、むしろ、この映画全体のテーマというべきであり、簡単には片づけられないにもかかわらず、もはや時間的余裕がないため、次回へと先送りさせていただきます。


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by songsf4s | 2010-05-31 23:26 | 映画