人気ブログランキング |
ロベール・アンリコ監督『冒険者たち』(Les Aventuriers)その2
タイトル
Journal de bord
アーティスト
Francois de Roubaix
ライター
Francois de Roubaix
収録アルバム
Les Aventuriers OST
リリース年
1967年
f0147840_2343177.jpg

最近は恒例となった「検索キーワード・ランキング」、今月の中間結果は以下のとおりです。

f0147840_2203794.jpg

いつもながら、芦川いづみファンの方にはお礼申し上げます。いえ、どのキーワードを検索して当家にいらした方にもお礼を申し上げます。

今月のびっくりキーワードは「小林旭」です。こんなキーワードで検索して、当家にたどり着けるものだろうか、と思うのですが、ちゃんといらしているのだから、根気よく見ていけば出てくるのでしょうね。以前、「石原裕次郎」というキーワードがあったときも、無理だろうに、と驚きましたが、「小林旭」も二度とないような気がするので、まだランクされているうちに、急いでキャプチャーして記事にした次第です。

ともあれ、以前は、そのキーワードで当家にいらしても、ご不満であろうと思うことがよくあったのですが、今月は、どのキーワードについても、きちんとした記事をご用意していますよ、と胸を張れるものばかりで、気持のよい眺めです。

最近は検索経由のお客さんは減っているようで、ブックマークかRSSということが多いようですが、おひまなときには検索もご利用ください。近ごろ、しばしばキーワード・ランキングをご紹介しているのは、コメントをご利用にならない方がなにを思って当家にいらっしゃるのかをかいま見る、これが唯一の手段だからです。

f0147840_222161.jpg

◆ クレヴァーなリズム・アレンジ ◆◆
前回は半分眠っていて、だいじな曲のサンプルを、きちんとご紹介せずに、最後の行で放り出すようにしてしまいました。もう一度、やり直します。

「映画音楽」といったとき、わたしはまっさきにフランソワ・ド・ルーベが『冒険者たち』のために書いたテーマ、Journal de bordを思い浮かべます。わたしはロックンロール・キッドだったので、映画音楽を買うことはめったになかったのですが、『夜の大捜査線』とこの『冒険者たち』は、すぐにシングルを買いました。

サンプル Francois de Roubaix "Journal de bord"

f0147840_23584442.jpg

このJournal de bordという曲はふたつの異なったセグメントで構成されています。ピアノとオーケストラによる、ちょっとサスペンス味というか、切迫感のある部分と、口笛とギターのアルペジオによるリリカルなドラムレスの部分、という二系統のメロディー、サウンドが交互に出てくるのです。

いやもう、じつに面白い構成の曲です。リズムだけ見ていくと、ピアノ・セグメントはストリングスがずっと四分三連、ドラム(ブラシ)は四分の裏拍を叩きつづけています。この四分三連と四分の裏拍の組み合わせが、なんともいえない変てこりんな、いや、じつに新鮮なグルーヴを生んでいるのです。

f0147840_22255119.jpg
レコーディング中のアラン・ドロンとフランソワ・ド・ルーベ

あいだに挟まって出てくるリリカルな口笛セグメントは、ピアノ・セグメントとは大きく異なった味わいがあり、スロウ・ダウンしたような印象をあたえるのですが、じつはテンポはまったく変わっていません。ピアノ・セグメントに勢いをあたえている弦の四分三連とスネアの裏拍がなくなり、アップライト・ベースがストレートに四分の表拍を刻むだけの、しごくまっとうなリズムに変化しているだけなのです。

この二種のグルーヴが交互に出現する味わいたるや、じつに豊穣なるもので、アイスクリームにウェファース、焼きそばに青のり、柿の種にピーナツ、というくらいに、断じて切り離せない合金構造になっているのです。中学二年の子どもは、このJournal de bordを聴いて、大発見でもしたように興奮しました。

以下に、フランソワ・ド・ルーベを回顧するクリップを貼りつけておきます。ドラムを叩いている場面で、ほほう、と思いました。自分の曲の録音でプレイするタイプの作曲家なのかもしれません。しかも、ピアノなどではなく、ドラムを!

フランソワ・ド・ルーベ


◆ 独特のコード感覚 ◆◆
Journal de bordが面白いのは、リズム・アレンジ、グルーヴだけではありません。メロディーもコード進行もじつにたいしたもので、何度聴いても飽きがこず、つねに新鮮な感覚をもたらしてくれます。

子どものころから大好きだったくせに、面倒だからと、いままでコードをとったことがなかったのですが、記事にする以上、やむをえないので、いまちょっとギターでなぞってみました。

f0147840_22334012.jpg
フランソワ・ド・ルーベの写真に登場する楽器はギターばかりで、ピアノを弾いている写真はない。ギターで曲を書いていたのだろうか? そういうタイプではない楽曲が多いように感じるが、考えてみると、コード・ドリヴンな構造というのはギターを背景にしているのかもしれない。

やっぱり変なコード・チェンジですねえ。時間がないので、冒頭だけ弾いてみたのですが、いきなりCm-Am7という移行です。やっぱりなあ、普通じゃないと思ったぜ、でしたよ。ちょっと不確かですが、そのあとはAb-C-Em7-Dm7あたりだろうと思います。

ピアノ・セグメントは全体に変ですが、やはりCm-Am7が目を惹きます。こういう進行ってほかにあるのでしょうか。わたしの自前データベースには類似例がしまってありません。このAm7への移行のアブノーマリティーに似ているものがあるとしたら、SleepwalkのヴァースにおけるC-Am-Fm-Dm7という循環の、ぎょっとするようなAm-Fmの移行ぐらいでしょう。

このCm-Am7の箇所は、マイナーからメイジャーへの転調の感覚があります。たとえば、CmからCへといった転調のことをいっているのですが、ただし、それほど強いマイナー=メイジャー移行感覚はありません。微妙な転調感覚なのです。なぜそうなのかは、ギターでなぞってわかりました。

f0147840_22372568.jpg

Cmのマイナーたる所以は3度、すなわち「ミ」がフラットしていることです。これがフラットしなければ、メイジャーになります。Aのスケールでは、3度はCシャープ、マイナーの場合はこれがフラットしてCです。またAのスケールの5度はE、「ミ」です。

ギターを弾く方ならご存知のように、Am7はCの代用コードです。スケールのなかで何度の音がなににあたる、というのは、つまり、Am7はほとんどCメイジャーなのだということをいっただけです。だから、CmからAm7に移行すると、マイナーからメイジャーに転調した感覚が生まれるのです。

ただし、ストレートなCではなく、その代用コードであるAm7であるため、その感覚は強いものではなく、微妙なものなのです。フランソワ・ド・ルーベは、この微妙な感覚を利用してJournal de bordを書いたのだろうと想像します。

もちろん、そんな分析をしてから好きになったわけではありません。リズミカルな面でも、トーナルな面でも、変わっていると同時に、じつに繊細できれいなメロディーで、一聴、たちまち魅了されました。ただ、ふつうではない、という印象はどこからくるかといえば、冒頭のCm-Am7に代表されるように、イレギュラーなコード進行を使っているためなのだということです。

f0147840_22385399.jpg
編集中のロベール・アンリコとフランソワ・ド・ルーベ

こういうコードのセンスというのは、生来のものなのだと思います。訓練によって培ったものではないでしょう。当ブログでは、「傑作」と「天才」の二語は禁句にしているのですが、フランソワ・ド・ルーベについては、「天才」の一語が喉元まで迫り上がってきます。それほどまでに、Journal de bordは直感とイマジネーションが生んだ素晴らしい曲なのです。

今日はまだ映画のほうにぜんぜんふれていませんが、すでに時間切れ、話の後半は次回に。


metalsideをフォローしましょう



冒険者たち DVD
冒険者たち [DVD]
冒険者たち [DVD]


Les Aventuriers OST
Francois de Roubaix: Le Samourai; Les Aventuriers
Francois de Roubaix: Le Samourai; Les Aventuriers


by songsf4s | 2010-05-19 23:55 | 映画・TV音楽