ジム・ゴードン、ジム・ケルトナー、B・J・ウィルソン、ディノ・ダネリ、ソニー・ペイン、ハル・ブレイン

以下は枕のつもりで書きはじめたものですが、クリップを探しているうちにどんどん長くなってしまったので、そのままドラマーの記事にしてしまいました。ジム・ゴードンとB・J・ウィルソンとディノ・ダネリの話です。と書いたのですが、書き終わってみたら、やっぱりハル・ブレインが出てきました!

◆ BJから二人のジムへと ◆◆
寒い曲ばかり聴いているのも気が利かないので、昨日はジム・ゴードンを聴いていました。主としてジョニー・リヴァーズのL.A. Reggaeと、サウザー・ヒルマン・フューレイ・バンドの1枚目です(セカンドはジム・ゴードンではない。ジミーのドラミングをとったら、このグループにはなにも聴くべきものがなく、駄作というにも値しない、一曲も記憶できなかった、限りなく非存在に近いアルバム)。

元気が出てくると、いよいよもってドラムを聴こう、という気になって、つぎはB・J・ウィルソンへと進みました。プロコール・ハルムの曲としては、つまらないものの代表だと思いますが、このスタジオ・ライヴでのBJのドラミングは驚愕でした(念のためにいっておくと、スタジオ録音盤はこれほどすごくない)。

Power Failure


はじめてWhiskey Trainを聴いたときも、BJのカウベルにのけぞりましたが、Power Failureのカウベルにくらべれば、あんなのは初歩の初歩といいたくなります。なんたって、ずっと右手一本でやっているのですからね。

プロコール・ハルムの曲もすごいプレイが目白押しですが、BJのテクニックより、タイムの好ましさ(結局、重要なのはこちらのほうだと思う)がよくあらわれたのは、セッション・ワークでした。イントロまで含めた適切なクリップがないので、自分でアップしました。

サンプル Joe Cocker "With a Little Help from My Friends" (studio version with B.J. Wilson on drums)

イントロを切ってはいけない、というのは一聴明々白々でしょう。邪魔なヴォーカル抜きで、BJのスネアのタイムの特徴をハッキリと聴き取れる貴重な時間帯なのです。

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内田百閒の鰻の食べ方をご存知ですか? 鰻丼がきたら、邪魔なウナギをゴミ箱に捨て、残ったご飯をおいしくいただく、のだそうです。これ、ある意味で正しいのです。はるか昔、うちの親戚が鰻屋をやっていましてね、関東大震災のときに、タレを入れた瓶を背負って逃げたんだと亡父がいっていました。タレさえあればまた商売ができる、というのです。仕込みに時間がかかるので、タレを失えば無一文同然なのです。

f0147840_23273552.jpg音楽も「上もののヴォーカルはゴミ箱に捨て、残ったトラックだけをおいしくいただく」という風にいけばいいのだが、といつも思います。早く、マルチ・トラックをそのままリリースする時代になればいいですねえ。そうしたら、ヴォーカルはみんな消して、バックトラックだけを楽しんで余生を過ごせます。ろくでもないヴォーカルの影に、どれほど美しい音が秘められていることか!

盤をやめれば、トラックダウン以前のものをリリースするなんてごく簡単なことで、早くやれよ、です。もう2トラックの焼き直しは限界だから、つぎは3トラック、4トラック、8トラック、16トラック(「わたしの時代」はこのあたりで終わり)丸ごとリリースぐらいしか、二度売りのチャンスはないでしょうに。4トラック、8トラックが出たら、わたしは断じて買いますよ。いままで買ったものを全部買い直し、全部ミックスダウンを自分でやり直します。

話が脇に逸れましたが、BJがWith a Little Helpでどれほどすばらしいプレイをしたかは、グリーズ・バンドのライヴを聴けば、よりいっそう明瞭になります。耐えられないプレイなので、頭の30秒ほどでやめたほうがいい、と警告しておきます。

グリーズ・バンド


ジョー・コッカーのWith a Little Helpにはイヤになるほどヴァージョンがあります。代表的なのはウッドストック・ヴァージョンですが、不出来と思った記憶しかないので、ここではパス。

BJがプレイしただけでも十分にすごいのに、マッド・ドッグス&イングリッシュメン・ツアーでは、ジム・ゴードンとジム・ケルトナーがダブルで叩いています。わたしの好きなドラマーが三人もよってたかってもちあげるほどのシンガーじゃないのに。まったくツキのあるヤツにはかないません。かつてのダブルLPではオミットされた、このツアーでのWith a Little Helpをどうぞ。

ジム・ゴードン&ジム・ケルトナー(極楽ヴァージョン)


絶句ですな。

客席から見て、右側のセットがジム・ゴードン、左側がジム・ケルトナーです。したがって、冒頭、彼らの背中から狙ったショットでは、ゴードンは左に見えます。

ゴードンがこれほど多くのタムを使ったのは、この映像でしか見たことがありません。普通はタムタムとハイハットのあいだに、径の小さいハイ・ピッチ追加タムを一ないし二個おくだけです。もともとダブル・タムなので、最大で5タム構成がノーマルということになります。マッド・ドッグス&イングリッシュメン・ツアーはハル・ブレインがオクトプラス・セットを導入してから間もない時期なので、ハルのようにドカーンと並べてみたのかもしれません。

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ほかの曲では違うタイプの共同作業をしているのですが、この曲では、ギターにたとえれば、ゴードンが「リード・ドラム」、ケルトナー「リズム・ドラム」という役割分担です。つまり、派手なフィルインを叩きまくっているのはゴードン、ケルトナーはタイム・キーピングに徹しているのです(後年、彼は無数のダブル・ドラムをやるが、つねに「バックシート」を選んでいる)。

いやはや、このドラミングは驚きでした。ジム・ゴードンというのは、つねにクールにプレイするタイプだと思っていたのですが、この曲では火の玉ドラミングですからね。ド派手なフィルインは音だけ聴いても灼熱ですが、絵で見れば、完全に入りこんでいる表情です。それに対して、ジム・ケルトナーはどこまでいってもクール。人それぞれ、スタイルがちがうということでしょう。ライ・クーダーのツアーで見たケルトナーも、終始一貫「頭のぶれない」フォームでした。

どの曲も、過去の記事でふれているのですが、久しぶりに聴くと、やはりとまらなくなってしまうほどの魅力が彼らのプレイにはあります。

◆ ディノ・ダネリからソニー・ペイン、そしてハル・ブレイン ◆◆
ついでといってはなんですが、ディノ・ダネリについてちょっと。昨日、キムラさんがツイッターに、ブルドッグのアルバムを買ってきたと書いていたので、どうですか、ときいてしまいました。ブルドッグというのは、ラスカルズのディノ・ダネリとジーン・コーニッシュがいたバンドです。

f0147840_23333716.jpgキムラさんのご意見は、今ひとつ、ということでした。遅ればせながら、YouTubeで検索し、むさい犬どものクリップをかき分けて、Noという曲を聴きました。うーん。微妙ですねえ。ダネリのドラミングに興味があったのですが、微妙なのはその点です。60年代のバンドのドラマーとしては稀なことに、スタジオでプレイした人なので、やはりタイムはわるくありません。しかし、それだけでは、匿名的な、セッション・プレイヤー的プレイになってしまうわけで、このNoという曲には、ダネリらしい溌剌とした魅力はなく、精確なタイムだけが印象に残ります。だから悪い、とはいわないけれど、だから面白いともいえず、微妙というしかありません。

さらにはフォトメイカーなんてグループもありましたし、最近ではニュー・ラスカルズなんてものも、またしてもジーン・コーニッシュとやっているようです。わたしはニュー・ラスカルズのLove Is a Beautiful Thingのクリップを見てしまい、おおいに後悔しました。あれだけはやめたほうがいいですよ>皆様方。

それより面白かったのは、リバティー・デヴィートー(ビリー・ジョエルのドラマー)とディノ・ダネリの対談です。

ディノ・ダネリ談話その1


これは少なくとも10パートはあるようで、とんでもなく長いので、全部は見ていません。以前、当家でも記事にしたニューオーリンズのドラマーのことにもふれていますし、バディー・リッチ、ジーン・クルーパも出てきます。そのなかで、ディノ・ダネリの好みとは知らなかったのがソニー・ペイン。



ソニー・ペインはカウント・ベイシー・オーケストラのドラマーだった時期が長いのですが、ハル・ブレインの回想記では、たしか、ペインがNYに行ったおかげで、パティー・ペイジのドラマーのイスが空き、ハルに仕事がまわってきた、といった形で登場したと記憶しています。ハルがフィル・スペクターのHe's a Rebelでプレイするのは、パティー・ペイジのツアー・バンドにいたときです。

ついでにいえば、パティー・ペイジの旦那のチャールズ・オカーランが、エルヴィス映画の振り付けをしていて、彼の推薦でハル・ブレインは『ブルー・ハワイ』のスコアで大量のパーカッションをプレイし、映画そのものにも出演することになります。

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パティー・ペイジとハル・ブレイン

ハル・ブレインまで来れば、すごろくの上がり、本日はこれまで、です。木村威夫追悼の続きをやろうと、準備は整えたし、今日はそうなるはずだったのですが、あにはからんや、ドラマーの話になってしまいました。次回こそ、映画セットのなかへと。


マッド・ドッグス&イングリッシュメン・ツアーDVD(ジム・ゴードン&ジム・ケルトナー)
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With a Little Help from My Friends(B・J・ウィルソン)
With a Little Help from My Friends
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Hal Blaine and the Wrecking Crew: The Story of the World's Most Recorded Musician
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by songsf4s | 2010-04-19 20:07 | ドラマー特集