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ラウンジ春宵一刻

木村威夫追悼は二回やっただけで頓挫し、あれこれ野暮用に追われっぱなしです。今日はすこし時間があったのですが、忙しかった一週間のあいだにたまった用事を片づけたりしているうちに夜になっていました。

夕食後、必死に更新するという道もあったでしょうが、かわりに海岸の遊歩道を散歩してきました。まだ満開に近い桜はあるし、悪酔いしたか、はたまた心臓麻痺でも起こしたか、ベンチから転げ落ちて歩道に横たわる若者や、若い女のホームレスやら(近ごろ、何回か見ている。そういうこともめずらしくない国になってしまったらしい)、なんだかあれこれとことの多い散歩でした。

ともあれ、風はかすかで、いかにも春らしい暖かな宵の散歩でした。

◆ バディー・モロウのRib Joint ◆◆
ということで、あまり時間がないので、近ごろ聴いていたもののなかから、適当に選んでアップしてみました。

サンプル バディー・モロウのRib Joint

バディー・モロウはトロンボーン・プレイヤー、バンド・リーダーで、このRib Jointが収録されたアルバムNight Trainはシカゴのユニヴァーサル・レコーダーで録音されています(ユニヴァーサルについては後述)。

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Rib Joint単体では、ビッグバンドをバックにしたブルーズにしか思えないかもしれないので、このアルバム全体のムードを知ってもらうために、一曲目のMangosもサンプルにしました。

サンプル バディー・モロウのMangos

このMangosに代表されるように、ちょっとラテン味の混じったラウンジ・ミュージックというのがこのアルバムの支配的ムードです。ところが、Rib Jointだけ、あのようにやや尖鋭的なブルーズ・ギターがフィーチャーされているのです。そして、このアルバムのリリースは1957年なのです。

むむう。時期に配慮するなら、やや先鋭的どころか、きわめて先鋭的といえるような気がします。シカゴだから、だれか名前を知られたブルーズ・プレイヤーかもしれません。後年のロック系ギターのニュアンスがすでにたっぷりあって、B.B.キングあたりの古くさいスタイルとは明確に一線を画しているところが非常に魅力的なのですが、なによりも、ラウンジのアルバムに収録されているのが、じつに意外で、BGMとして流していて、ギョッとしました。

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◆ ウォーレン・バーカーの「京都メリーゴーラウンド」 ◆◆
バディー・モロウのNight Trainが録音されたシカゴのユニヴァーサルは、のちにハリウッドにユナイティッド・ウェスタン・レコーダーをつくるビル・パトナムが最初に設立したスタジオです。「歴史が作られた」重要なスタジオですし、アメリカ音楽史でもっとも重要なエンジニアを挙げるとしたら、多くの人がビル・パトナムを指名するでしょう。

バディー・モロウといっしょに流していた数枚のアルバムのなかに、ハリウッド・ベースのアレンジャー、ウォーレン・バーカーのアルバムA Musical Touch of Far Away Placesがありました。タイトルが示すとおり、エキゾティカ・アルバムです。やはり二曲アップしましょうか。

サンプル ウォーレン・バーカーのMalayan Nightbird
サンプル ウォーレン・バーカーのKyoto Merry-Go-Round

例によって、インチキな東洋趣味も横溢していますが、きっちりアレンジされているし、録音もちょっとしたもので、エキゾティカである以前に、趣味のよいオーケストラ・ミュージックになっています。

ジャケ写を検索していて、「Warner Bros.の贅沢なサウンドシステム」という文字が目に入ってしまいました。バーバンクにあるワーナーの映画スタジオ(音楽スタジオではない)にどれほどのシステムがあったのでしょうか。すんなりとは頷けない言葉です。

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ナット・キング・コールとビル・パトナム

ワーナー/リプリーズの盤の多くは、ビル・パトナムがシカゴのユニヴァーサル・レコーダーをたたんで、ハリウッドに進出してからつくった独立スタジオ、ユナイティッド・ウェスタン・レコーダーで録音されています。たとえば、フランク・シナトラは一時期、ビル・パトナムと個人的契約を結び、彼の録音ではパトナム自身が卓につくことになっていました。

もっとあとのリプリーズ盤、たとえばハーパーズ・ビザールを録音したのは、ユナイティッドでパトナムの薫陶を受けた、出藍の誉れ高き大エース、リー・ハーシュバーグです。

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ユナイティッド・ウェスタン・レコーダーのスタジオ1

ワーナー/リプリーズの質の高い録音を支えたのは、「バーバンクのワーナー・スタジオ」などではなく、ハリウッドのど真ん中、サンセット・ブルヴァードは6000番地にあったユナイティッド・ウェスタン・レコーダーです。「バーバンク・サウンド」と一部の人たちが呼ぶもののほとんどは、バーバンクから遠く離れたハリウッドで録音されています。バーバンクにあったのは、映画スタジオとワーナーの本社だけだということを念押ししておきます。
by songsf4s | 2010-04-10 23:57 | Exotica