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そして写真だけが残る(ことになるだろう) その5 柴田錬三郎作・横尾忠則挿絵『絵草紙 うろつき夜太』

前回の末尾で予告したとおり、今日は造本に凝りに凝った一作、柴田錬三郎の『うろつき夜太』です。といっても、柴錬の書いた部分はあれこれいうほどの出来ではなかったと記憶しています。いつもの柴錬とは違う、変な話でしたが、それだけのことにすぎず、どちらが面白いといったら、いつもの柴錬のほうがわたしの好みです。いつもの柴錬とは、『赤い影法師』だの、『剣は知っていた』だの、『江戸群盗伝』だの、『柴錬立川文庫』だの、そういった作品群のことです。

『うろつき夜太』が忘れがたいのは、横尾忠則のエディトリアル・デザインと全編にちりばめられたイラストレーションのおかげです。ただ「流した」だけのページというのは皆無、イラストが無数に配されているのみならず、見開き単位でどんどん組版デザインまで変わっていく、編集者とタイプセッターの悪夢が現実化したような本です。

この本については、これ以上とくにいうべきことはないようです。もともとは「週刊プレイボーイ」に連載されたものだそうで、わが家にある単行本は、その連載の版面をそのまま束ねただけのものと思われます。

ということで、あとは実物をご覧いただきます。これはまもなくオークションに出すので、スキャンしてノドを割る危険を冒すわけにはいかず、ただ本を開いて端のほうをべつの本で押さえて、デジカメで撮影したものです。ごく一部を除けば、見開きをそのまま収めています。

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表紙と帯。下の写真は背。


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写真からはわからないだろうが、ここは本文の文字色を細かく変化させている。ゲラに色指定を書き込む手間を考えると鬱病になりそう!

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上のページを拡大した。緑色のなかにところどころ赤い文字が散らしてある。補色にしたのは意図的なのだろうか? 赤緑色盲の人には色の変化はわからない!

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ひとつのデザインから二つの実体をつくった。こういう処理もうまい。上のモノクロの見開きと、下のカラーの見開きは並んで出てくる。

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以上の絵からもある程度読み取れるでしょうが、最後には、主人公うろつき夜太は、海を渡り、革命時代のフランスにたどりつきます。横尾忠則に刺激されて、柴錬としては精いっぱい飛翔してみたつもりなのでしょうが、結果から見れば、横尾忠則の土俵に引きずり込まれて、我を見失っただけに思えます。

いや、『赤い影法師』を書いた時代とは年齢も違えば、キャリアの厚味(というか、早い話が「書き疲れ」)もちがうわけで、無いものねだりをしてはいけないのでしょうね。こういうことをやってみるのは、その試み自体が失敗しても、あとで迂回した成果をもたらすことがありますが、柴錬の場合はどうだったのでしょうか……。
by songsf4s | 2010-03-20 23:49 | 書物