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そして写真だけが残る(ことになるだろう) その2 あがた森魚+林静一『うた絵本 赤色エレジー』

先々週、十年来のウェブ上の友人で、当家のコメント欄にしばしば書いてくださるtonieさんにお会いしました。そのときに変な「本」をいただきました。

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この『ライ麦畑でつかまえて』ならぬ『大麦畑でつかまえて』は、本ならぬお菓子、ダクワーズです(男たるもの、こういうものに通じていたりするとまずいので、ご存知ない方もいらっしゃるだろうが、検索すればダクワーズのなにものかはすぐに判明する)。近ごろは和洋を問わずみな「スウィーツ」(おお寒う)だそうで、そういうジャンルのものです。

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栞も入っているのが笑えます。味のほうは、笑うどころか、外側のカリッとしたところと、その下のフワッとしたところの塩梅がよろしく、なかなかけっこうなお茶うけでした。

tonieさんは北海道物産大使を自認なさっているのか、ほかにもたくさんいただいたなかに、エアドゥの機内食にもなっているという、グリーンズ北見の粉末スープもありました。これがまたまたけっこうで、そのままではもったいないと、パンを刻んでクルトンをつくって飲んでいます。

オニオン、ゴボウ、カリーの3種類があるのですが、甲乙つけがたい味です。しいていうと、ゴボウのスープは、たしかにゴボウ独特の香りがあって、珍重に値します。おおいに気に入りました。「歩く北海道物産展」tonieさんにすっかり蒙を啓かれ、彼の地は独特の非日本的「郷土の味」を生み出したのだなあ、と感じ入っている昨今です。

◆ さち子の幸はどこにある? ◆◆
さて、古書シリーズ第2弾は変わり種です。標題に書いたとおり「うた絵本」という角書きのある、あがた森魚、林静一の共著になる『赤色エレジー』です。『赤色エレジー』といえば、林静一の長編漫画か、または、それを元にしたあがた森魚の曲を指すことになっています。

赤色エレジー(盤ヴァージョン)


「♪春こーろーの」が出てきたところで、なーんだ、滝廉太郎か、となるわけで、ちゃんと作者自身が曲の出自を明かしています。

わが家にある『うた絵本 赤色エレジー』は、なんというか、あがた森魚の45回転盤を、林静一描くさまざまなものでくるんだ、育ちすぎのシングル盤のようなものです。

音楽のほうは通常のスタジオ録音と同じものなので、ここでは林静一のさまざまな絵を配した、凝りに凝ったパッケージのほうをご覧に入れます。見開きページは両側を裁ち落とし状態にしています。また、通常ならするトリミングやレタッチをしていません。オークションに出すつもりなので、どの程度のイタミかわかるようにしました。

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表1

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見返し1

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A面「赤色エレジー」

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B面「清怨夜曲」

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本文1

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本文2

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本文3

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本文4


まだまだ付録のデザインもあるのですが、ここで一休みして、B面を聴いてみましょう。

清怨夜曲


A面が荒城の月をもとにしていたように、こちらもなにかタンゴの古典をベースにしているのかもしれませんが、タンゴ不案内にて、身元調べは行き届きませんでした。

◆ 付録 ◆◆
この本には盤を入れられる袋が二つあり、片方にはもちろん7インチの45回転盤が入っているのですが、もういっぽうには付録が入っています。まず付録1。

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なんともきれいな丸めんで、林静一ならではのデザインです。あたりまえのように「丸めん」と書いてしまいましたが、子どものころにそんなものにさわったことのあるのは、いまでは中年以上だけになってしまったかもしれません。

同じ袋にぬりえも入っています。

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ぬりえの最後のページは絵ではなく、あがた森魚の「さっちゃんへ」という一文が収録されています。これは読めるサイズにしたので、全体を表示するには写真をクリックしてください。

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また、本文の最後には高田渡の文章が収められています。これも写真をクリックすると全体が表示されます。

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奥付も凝っています。

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限定千部のうち、記番は50。こんな若い番号のものはこれしかもっていません。

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◆ 指呼の間に見たシンガー ◆◆
奥付によれば、この「うた絵本 赤色エレジー」は高校三年生のときに買ったようです。たぶん同じ年の十一月、あがた森魚さんはわたしの高校の学園祭にやってきて、ギター一本で数曲を歌ってくれました。

このときのギャラはわずか5000円だったと記憶しています。あるいは8000円かもしれませんが、いずれにせよ数千円であって、万に届きませんでした。まだ「赤色エレジー」が大ヒットする以前のこととはいえ、よくそんなギャラできてくださったものと思います。学校の費用からではなく、有志の寄付金でまかなったと記憶しています。

あるいは、ウソみたいに安いギャラで、馬鹿みたいな高校生たちのまえで歌うことに、彼は林静一描く『赤色エレジー』の主人公たち、一郎とさち子の貧しさに自分を重ね合わせていたのかもしれません。「おふとんもひとつ欲しいよね」というフレーズも、付録の「ぬりえ」のなかにある、電熱器で手をあぶるさち子の姿も、じつに切ないのであります。

思えば、わが高校では世間に先駆けて「赤色エレジー」は大ヒットし、コードがシンプルなこともあって、宴会ともなれば、だれかがかならず「ではわたしが歌います」といって、あのマイナー・コードを弾いたものです。わたしの所有になる林静一作、青林堂刊『赤色エレジー』は、男子寮の諸処を長旅し、よれよれになって所有者の手元に返ってきました。

あがた森魚歌う「赤色エレジー」が、ゆっくりと、しかし、力強くヒット街道を歩み始めたときには、あがたさん、これでもう安いギャラで高校の学園祭なんかで歌わなくてすむね、よかったよかった、と思ったものでした。でも、わたしをふくめ、小遣いを寄せ合ってあがたさんに来ていただいた同窓生たちは、いまでもあのときのことを忘れずにいるはずです。いや、あがたさんとしては、とうの昔に忘れたか、覚えているとしても、早く忘れたい記憶でしょうけれど!
by songsf4s | 2010-03-15 22:36 | 書物