- タイトル
- I'll Be Back
- アーティスト
- The Beatles
- ライター
- John Lennon, Paul McCartney
- 収録アルバム
- A Hard Day's Night
- リリース年
- 1964年
- 他のヴァージョン
コメントがあったりすると、いよいよ抜き差しならぬことになり、ビートルズの話題をもうすこしつづけようと思います。いや、今日もシンデレラ・タイムまでの残り時間僅少で、映画のことを書く余裕はないので、休むかビートルズか、二つにひとつの選択なのです。
残り時間からいって、今日も五月雨式に数パラグラフ単位で更新することになりそうです。おひまな方は、ほかのことをなさりながら、ときおり当家の画面をリフレッシュなさってみてください。
◆ 「コーラス」というこたえ ◆◆
なんでもいってみるものだと、毎度のことながら、今回も痛感しました。前々回の「And Your Bird Can Sing (early take)」という記事で、ささやかなクイズを出しました。
その記事で、目下の好みはHelp!のA面であるとしたうえで、わたしは「しかし、Help!のA面がベストというのも、『ジョン・レノンの声だけ』という基準とあまり懸隔のない、特殊な基準から考えているのかもしれません。Help!のA面のなかでも、とくにどれがいいと考えているかというと、Another Girlだからです! この基準でいうと、二番目にいいのはThe Night Beforeです。どういう基準かわかりますか?」と書きました。
友人たちの「回答」は、tonieさんはドラムだと思ったとのことで、正解。やっぱりバレバレなのね~、でした!
さてもうお一方、キムラセンセの回答は「コーラス」でした。わたしは一瞬首をかしげ、うん、そう考えるのも無理はない、こちらも正解かもしれない、たんにわたしが用意した「正解」とはちがうというにすぎない、と思いました。いちおう、前々回と同じクリップを貼りつけておきます。
The Beatles "Another Girl"
The Beatles "The Night Before"
刻限が来たので、ここまででいったんアップし、残りは数パラグラフずつ、五月雨式にアップします。
さて、Another GirlもThe Night Beforeも、どちらもポールの曲ですが、この時期のビートルズだから、当然のように背後にはずっとジョンの声が聞こえます。The Night Beforeだって悪くはありませんが、Another Girlのミドル・エイトでのジョンのハーモニーがじつにけっこうなのです。
アプリオリにジョンとポールがいっしょに歌うことになっていたのは、Help!までといっていいでしょう。Rubber Soulでは、二人のソロ・ヴォーカルが目立つようになります。「ビートルズとはすなわちジョン&ポールのデュオである」といえる、これが最後のアルバムでした。
◆ All I've Got to Do ◆◆
それでは前回のリストにもどって、またあれこれいってみます。前回を参照しないでもいいよう、まずリストをコピーしておきます。
No Reply
I'll Get You
You're Gonna Lose That Girl
I'll Be Back
All I've Got to Do
Ask Me Why
I Should Have Known Better
Yes It Is
How Do You Do It
I Will
I Don't Want to Spoil the Party
What Goes On
If I Fell
You Won't See Me
このリストはランダムであり、構造化していないので、並び順は気にしないでください。ここからのコメントはリリース順にしたがって書きます。
まあ、あれこれ書くまでもなく、ジョン・レノン・ファンなら当然という曲も多いのです。All I've Got to Doも、ジョンの声を第一の理由にして選んだ曲です。後年とちがって、きちんとポールが上のハーモニーを歌っていて、こういうところもビートルズは66年まで、という理由のひとつです。
それから、子どもとしては、ポールのベースにも、へえ、と思いました。こういう入れ方があるのかあ、です。いま、すれっからしの大人の耳で聴いても、このヴァースでのベースはクリエイティヴなフレージングだと思います。いやまったく、ハーモニック・センス抜群なうえに、テクニカルにいっても超一流でグルーヴも文句なし、とんでもないベース・プレイヤーだったと思います。
◆ If I Fell ◆◆
If I Fellもジョン・レノン・ファンなら当然という曲でしょう。ビートルズ以外はやらない無茶苦茶なヴォーカル・アレンジで、これがほとんど彼らのスタイルになっていたといっていいでしょう。
冒頭、ジョン・レノンがひとりで歌う、If I fell in love with youからthan just holding handまでは、もう二度と出てこないので「前付けヴァース」です。わたしはスタンダード曲の前付けヴァースというのが大嫌いで、どれもこれも不必要だと何度も書いていますが、さすがはレノン=マッカートニー、If I Fellは前付けヴァース抜きには考えられない曲です。
やはり、スケールがまったくちがうソングライター・チームだったことが、こういう小さなところに明瞭にあらわれています。使い捨ての前付けヴァースにすら、上出来のメロディーを惜しげもなく注ぎ込めたのは、ケチケチしなくても、これくらいのものならいつでも書けたからにちがいありません。
前付けヴァースも尋常ならざるコード進行で、子どものときは、なんなのこれは、と戸惑いました。ヴァースにはいると、すこしノーマルに近づきますが、それでもやっぱり変。
しかし、もっと変なのはジョンとポールのハーモニー。ヴァースに入ったとたん、ジョンは下のハーモニーにまわり、メロディーはポールが引き継ぐのです。これが奇天烈な捻れ感を生み、メロディーやコード進行のイレギュラリティーとあいまって、なんともいえない気持がいいような悪いような不思議なテクスチャーをこの曲にあたえています。好き嫌いはひとまずおいても、If I FellはA Hard Day's Nightでもっとも強い印象を残すトラックでした。
◆ I'll Be Back ◆◆
いま、ふと気づいたら、前回の記事を今回の記事の冒頭で置き換えてしまったことに気づき、あわてて手元のファイルに戻って修正しました。いろいろなミスをするものです。眠いは、疲れているは、だから、そういうバカなミスをするわけで、この曲で本日は終わりにします。
I'll Be Back (official release)
いまになると、ビートルズのカタログがすごいのは、一時期、シングルA面曲がことごとくチャートトッパーになったことではなく、こういう、はじめからシングル・カットするつもりのない曲がきわめてレベルの高い仕上がりになっていることのような気がします。ビートルズを聴いて、ブライアンがfillerのない、全曲がすぐれているアルバムをつくろうと決心したのはよくわかります。ダメな曲がないのです。すごくいい曲と、いい曲と、まあまあの曲だけで、ダメな曲というのがないのです。
それはそれとして、I'll Be Backは、ビートルズのカタログのなかにあって、ちょっと異質な要素があると感じますが、その正体がなんだかわからず。アップテンポなのにアコースティックだからでしょうかね。でも、これでエレクトリックにすると、違和感があるのです。
I'll Be Back (totally different arrangement)
はじめはワルツだったのだから、おやおや、です。後半に入っている4/4のエレクトリックはデモでしょう。こういうアレンジに変更したらどうかといってやってみただけ、というように聞こえます。ワルツより4/4のほうがいいが、でも、まだなんだかちがう、というので、ギターをガットとアコースティックにして、リリース・ヴァージョンができあがったのでしょう。
子どものころ、待ち受けたフレーズは、I thought you would realiseのところです。ここ、音韻的には完璧にきれいにキメられたわけではありません。ちょっとスムーズではないのです。でも、そこがかえって魅力になるというパターンです。
古今亭志ん朝が、オヤジの噺が、ウーとかアーでよく止まってしまうのがイヤで、どうしてつっかえるんだい、ちゃんとさらっておきゃいいじゃないか、といったら、そりゃなあ、おまい(とたぶん高座の志ん生の調子で!)、つっかえると、客がグッとまいに出てくるのがわかるんだよ、と答えたそうですが、そういうことですな。軽い引っかかりがあると、客は思わずグイと引っ張られてしまうのです。
もう頭も手もヨレヨレになったので今夜はここまで。「ライヴ」でお付き合いいただいた方には、お礼を申し上げます。
A Hard Day's Night OST
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