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新春名人寄席 古今亭志ん朝、三遊亭金馬、圓遊、雷門助六、柳家三喜松、人見明ほか
 
あけましておめでとうございます。旧年中はたびたびのご来訪ありがとうございました。本年も旧年と変わらぬお引き立てのほどをお願い申し上げます。

さて、年忘れの寄席をやったのだから、当然、元旦も寄席をやらなければ収まりがつかないというものです。

年忘れ寄席は毎回一席でしたが、今日は元旦、寄席なので、色物も織りまぜつつ、ドンとひとまとめに噺を並べて、番組をつくってみました。

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◆ 五代目柳家小さん「御慶」 ◆◆
現代にもそういう人がいらっしゃるのではないかと思いますが、女房を質において初鰹を食うわけではなく、女房の羽織を質に入れて富くじを買ってしまう男の話です。古今亭志ん朝「宿屋の富」で書いたように、現今の宝くじとちがって、江戸の富くじの値は一分、そんなものに入れをあげられては家計はたまったものではありません。

この男、大晦日に鶴がはしごのてっぺんにとまって羽を広げている夢を見たので、鶴は千年、はしごだから、鶴の一八四五番を買おうとしますが、湯島に行ってみると、一足違いでその番号は売れたあと。ガッカリしていると易者に話しかけられ、はしごを下がってはダメだ、のぼらなくてはいけない、だから八四五ではなく、五四八だといわれて、鶴の一五四八番の札を買います。

ということで、よし、それだ、といって、再び富札を買いに駈けだすところからサンプルをどうぞ。

サンプル 五代目柳家小さん「御慶」

この鶴の一五四三番がみごと千両富の当たり札となって、そこからの騒動がこの長い噺の後半、元旦の景へと移っていきます。だから「御慶」となるというしだい。好き嫌いはべつとして、正月向きのじつにおめでたい話柄です。

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◆ 三代目三遊亭金馬「初夢」 ◆◆
わたしは先代金馬が大好きなので、こんな浅いところに出してしまうのは申し訳ないのですが、オールスター・チームの場合はやむをえないのです。そもそも、初夢をめぐる考証エッセイのような趣で、骨格らしい骨格も、ストーリーらしいストーリーもないので、まあ、よろしかろうと思います。

サンプル 三代目三遊亭金馬「初夢」

先代金馬は物知りで、ふだんの噺のなかにもさまざまな考証が出てきますが、これはその考証だけを独立させたようなものですから、なかなか勉強になります。

◆ 人見明とスウィングボーイズ「民謡教室」 ◆◆
人見明は、クレイジー・キャッツ・ファンならどなたもご存知、植木等にひどい目に遭わされるあの「課長」というか、「カチョー」を演じた人です。寄席芸人だという話は読んだことがありましたが、じっさいにそういう芸をやっているのは、この録音でしか知りません。

サンプル 人見明とスウィングボーイズ「民謡教室」

というように、ストレートなボーイズです。びっくりしたのは、ハーモニーがうまいこと。冒頭の会津磐梯山がじつにきれいで、フル・ヴァース歌ってもらいたかったほどです。まあ、ボロが出ないところでやめるのでしょうけれどね。

それにしても、最初にあれだけみごとなハーモニーを聴かせておいて、あとで単独になるとみな音をはずしてみせるわけで、これはこれでたいした芸だと感心してしまいました。うまい人がピッチをはずすのは大変というか、うまくピッチをはずせるほどうまいというべきか、いやはや、短いあいだに何度も感心させてくれる芸でした。

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◆ 八代目雷門助六「七段目」 ◆◆
助六師匠、わたしは大好きです。この噺はべつに正月向けというわけではないのですが、わたしの趣味を押し通してみました。なにしろ、好きが昂じて、これを演じてみようと思いたち、声色のあたりをコピーしたことがあるほどで、大好きな噺です。けっこういいところまで模写したのですよ。いや、ホントに。

サンプル 八代目雷門助六「七段目」

枕から噺に入って、前半だけで切りました。このあと、若旦那と小僧が二人で忠臣蔵の「七段目」を演じるくだりになります。わたしは「角が暗い」、ではなく、芝居に暗いのですが、落語の芝居噺は大好きです。なかでも、この助六の七段目はベストだと思います。

なお、これはエアチェックなので、放送禁止用語がカットされています。「芝居気違い」といったのでしょう。

◆ 四代目三遊亭圓馬「けんげ者茶屋」 ◆◆
これは正月(正確には七草)の噺なのですが、わざと縁起でもないものばかり並べるところがミソです。これも上方から来た噺で、「けんげ」という言葉はこの噺の外題としてしか知りません。上方でも、もうふだんは使わない言葉ではないでしょうか。関東でいえば「験かつぎ」のことだそうです。

サンプル 四代目三遊亭圓馬「けんげ者茶屋」(2011年6月9日reup)

掛け軸を「のどがなる、はや、死にかかる松右衛門」と読むのは笑えます。くに鶴という妾の名前を「首つる」といったり、湯にいっていたというと、湯灌場かといい、お屠蘇をお上がりなさいというと、こりゃ冷たい、湯灌にしてくれと、じつに困った旦那です。

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◆ 四代目三遊亭圓遊「七福神」 ◆◆
「けんげ者茶屋」は関東ではあまり有名ではありませんが、同じ験かつぎの噺でも、こちらは有名も有名、正月には欠かせない噺です。

サンプル 四代目三遊亭圓遊「七福神」

七福神という噺の本体は「船屋」「宝船売り」が登場してからの部分ですが、圓遊は三つの短い噺をつないでいます。

まずは下男に若水迎えをやらせたら、「新玉の年立ち返るあしたより、若やぎ水を汲み初めにけり、これはわざっとおとし玉」という唱えごとを忘れてしまい、「目の玉のでんぐりけえるあしたより、末期の水を汲み初めにけり、これはわざっとお人魂」とやらかして、旦那と揉めるのが第一段。

験担ぎの旦那の名前が御幣担ぎだから「五兵衛」、そこへ友だちの早桶屋(棺桶屋)の四郎兵衛がやってきて、店先でさんざん縁起の悪いことをいって、五兵衛をくさらせるのが第二段。そして、翌日二日、先述のように宝船売りが来てからが第三段です。笑わせどころたっぷり、初笑いにはもってこいです。

◆ 柳家三亀松「粋談」 ◆◆
さて、膝がわり(上方でいうところの「もたれ」)は初代柳家三亀松の「粋談」ないしは「都々逸漫談」です。これはもう、ごちゃごちゃいわずにお聴きなさい、です。

サンプル 柳家三亀松「婦系図」

わたしは生粋のロックンロール・キッドだったわけでして、都々逸なんてものは、ああた、そういう東洋の退廃音楽は趣味じゃござんせんでしてな、てなことをいっていたのはいつのことやら、はじめて三亀松を聴いたときは愕きましたねえ。世間のいうことはきくものだと反省しましたよ。噂には聞いていましたが、いや、評判のはるか上をいく芸で、日本に生まれてよかった、といいたくなりました。こういう芸を生みだしたのだから、日本もたいしたもんですよ。

三亀松はしじゅう声色をやるわけではないのですが、わたしの趣味で役者の物真似が出てくるこのこの「婦系図」を選びました。

◆ 古今亭志ん朝「堀之内」 ◆◆
さて、トリは正月の噺ではありませんが、おめでたい人物ばかりの落語国でも、これほどおめでたい人物はほかにいないというくらいのキャラクターが大活躍する噺で、正月に聴くにはもってこいでしょう。

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堀之内妙法寺(お祖師様)

「堀之内」というと四代目三遊亭圓遊のものが有名で、そちらをサンプルにしようかと思ったのですが、すでに「七福神」で登場しているので、志ん朝のものにしてみました。長い枕をすべて飛ばし、噺に入ったところからどうぞ。

サンプル 古今亭志ん朝「堀之内」

じつにもって馬鹿馬鹿しい噺ですが、これほどおめでたい噺もそうたくさんはありません。堀之内に行くといって、両国に行ってしまい、ちがったといってこんどは浅草寺、それからまた堀之内に行くっていうんだから、考えてみるととんでもない健脚です。あっというまに江戸を縦横に歩いてしまうところが、志ん朝の噺の速さとみごとに呼応しています。

圓遊版は、リアリズムというべきか、志ん朝版よりずっと茫洋とした人物に描かれていて、そのへんに味があります。

さて、年末年始の寄席シリーズは(たぶん)今回でおしまい、次回からはレギュラー・プログラムに戻る予定です。

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by songsf4s | 2010-01-01 00:24 | 落語