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クリスマス映画11 Adeste Fideles (映画『素晴らしき哉、人生!』より)
タイトル
Adeste Fideles
アーティスト
OST
ライター
unknown
収録アルバム
N/A
リリース年
1946年
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クリスマス・イヴなので、しごくまっとうな映画を、ごく簡単に書きます。あれこれこじつけるまでもなく、クリスマス映画の古典としてずっと昔から評価が定まっている、フランク・キャプラの『素晴らしき哉、人生!』です。

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邦題はまあけっこうなのですが、まだこの映画をご覧になっていない方が、まちがった先入観をもたないように念押ししておけば、Life Is Wonderfulではなく、It's a Wonderful Lifeです。あなたやわたしの人生ではなく、この映画の主人公の人生が素晴らしいといっているので、その点、誤解なきよう。

ついでにいうと、lifeという言葉には、つねに「生命」の意味が寄り添っていることをお忘れなく。死なずにいることは素晴らしい、というタイトルでもあるのです。

トレイラー


◆ 天使のためのブリーフィング ◆◆
フランク・キャプラの映画なので、どんなに悪いことが起きても、最後には万事めでたく収まるようになっています。やはり、クリスマスだから、そういうもののほうがいいでしょう。

ジェイムズ・ステュワートはベドフォード・スプリングスという小さな町で生まれ育ち、父親の跡を継いで、ささやかな信用金庫のようなものを経営しています。貧しい人のための金融機関兼開発業者とでもいうべき組織です。当然、町を支配するシャイロック的銀行家(ライオネル・バリモア)と対立関係にあり、これがプロットの軸になっています。

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話はあるクリスマス・イヴに、ベドフォードの人びとの祈りが天に届き、神と天使のあいだで協議がおこなわれる、というところからはじまります。クラレンスというまだ羽のない「二級天使」がこの問題を解決するべく派遣されることになり、出発前に、ジェイムズ・ステュワートの人生についてブリーフィングを受けます。

このブリーフィングをわれわれも見ることになります。つまり、ジェイムズ・ステュワートの子ども時代のことからはじまり、青年になり、ヨーロッパ旅行に出発しようとしたその日に父親がみまかり、志に反して父親の金融機関を継ぎ、やがて結婚し、四人の子どもたちをもうける、というライフ・ストーリーが全体の7、8割を占めています。

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善意の人フランク・キャプラが、家族、友人、町の人びとから愛された人物の半生を描くのだから、そりゃもう気持のいい話です。ライオネル・バリモア扮するシャイロック的町のボスが、全身丸ごと人間の善意に対するアンチ・テーゼのように描かれているのも、図式的すぎると気になったりはしません。大昔の芝居のようなもので、「世界」ができているから、能や歌舞伎を見るように、自然にそういう枠組を受け入れてしまうのです。

◆ たかが8000ドルの悲劇 ◆◆
12月24日、ジェイムズ・ステュワートの会社に勤める叔父(『ポケット一杯の幸福』でブレイク判事を演じたトーマス・ミッチェル、というか、『駅馬車』のドク・ブーンないしは『風と共に去りぬ』のジェラルド・オハラといわないと怒られてしまうかもしれないが)が銀行に8000ドルの現金を預けに行き、金の入った封筒を脇に置いて帳票に書いているところに、ライオネル・バリモアのシャイロックがやってきます。

ちょうど、ジェイムズ・ステュワートの弟が戦功章かなにかを大統領から授与されたことが新聞で大きく報道されたところで、大嫌いなライオネル・バリモア扮するポッター氏に、どうだ、うちに甥っ子はたいしたものだろう、とその記事を突きつけます。

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バリモアが執務室に入り、苦々しげに新聞を広げると、そこから封筒があらわれ、札束が出てきます。正直者ならここで金を返して、この映画はなかったことになってしまいますが、バリモア=ポッター氏はもちろんシャイロックだから、してやったり、これでジェイムズ・ステュワートは破滅だ、と北叟笑みます。

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そして、必死で金を探す叔父と甥の様子やら、絶望して家に帰ったジェイムズ・ステュワートが荒れて家族に当たり散らしたり、ポッター氏に支援を求めて嘲笑されたり、酒場で荒れたりといった、必要なシーンがつづきます。

このあたりまでが二級天使クラレンスへの「ブリーフィング」で、彼が派遣されるにいたった経緯の説明です(ただしわたしは、このあとのドラマより、ここまでの田舎町の生活のていねいな描写自体に魅力を感じる)。

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かくして天使が派遣され、絶望的な状況に置かれたジェイムズ・ステュワートをいかに救うかがクライマクスとなります。典型的な「クリスマス・イヴの奇蹟」で、そういう善意のお話が嫌いでなければ、この『素晴らしき哉、人生!』をおおいに楽しめるでしょう。

もうすこしだけ先の展開を書きます。天使クラレンスが、ジェイムズ・ステュワートに取り憑いた死神を落とすところがなかなかいいのです。紛失した8000ドルを生命保険で補填をしようと決意したジェイムズ・ステュワートが、橋の上から濁流を眺めていると、人が転落して、助けてくれ、といっているのが耳に入るのです。自殺も、先にやられると気が抜けるのでしょう!

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天使が登場したのだから、当然、ジェイムズ・ステュワートは絶望的状況を大逆転で覆して、町中の人が集まって大騒ぎのクリスマス・イヴとなって映画は終わります。天使が派遣されてからの展開の詳細については、書かないでおくほうがいいでしょう。

◆ 挿入曲 ◆◆
スコアはディミトリー・ティオムキンで、それなりに楽しめますが、クリスマス映画だから、挿入曲のほうが気になります。しかし、時期が時期だし、話の内容からいってもそれが当然かと思うのですが、クリスマス・ソングといえるのは、二曲の賛美歌とスコットランド民謡だけです。

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どれも有名な曲で、Adeste Fideles、Hark! The Herald Angels Sing、そしてAuld Lang Syneです。三曲ともカヴァーはたくさんあるのですが、ほとんどが大まじめに歌っていて(こういう曲を茶化すと、不買運動やら抗議やらで苦労することになるので、当たり前)、わたしのような非宗教的人間はちょっともてあましてしまいます。

このなかでいえば、Adeste Fidelesがいちばん好ましいような気がするのですが、数種類聴いただけで、わけがわからなくなってきました。グルーヴなんかないので、だんだん区別がつかなくなっていくのです。Auld Lang Syneだけは、ポップ系のサウンドのものがいくつかありますが、この曲はべつの機会に取り上げたほうがいいように思います。

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ということで、クリスマス・イヴでもあるし、今日は恒例のヴァージョン聞き比べはなしということにします。目下、例によってアル・カイオラとリズ・オルトラーニのクリスマス・アルバムを流しています。これとフィル・スペクターのクリスマス・アルバムがあれば、とりあえずほかのものはいらないかもしれません。

素晴らしき哉、人生! [DVD] FRT-075
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by songsf4s | 2009-12-24 23:55 | クリスマス・ソング