人気ブログランキング |
クリスマス映画8 Mele Kalikimaka by B. Crosby & the Andrews Sisters(『LAコンフィデンシャル』より)
またしても、タイトルが長すぎるから削れといわれたので、以下に正しいタイトルを書いておきます。

クリスマス映画8 Mele Kalikimaka by Bing Crosby with the Andrews Sisters (映画『L.A.コンフィデンシャル』より)

タイトル
Mele Kalikimaka
アーティスト
Bing Crosby with the Andrews Sisters
ライター
R. Alex Anderson
収録アルバム
A Merry Christmas with Bing Crosby & The Andrews Sisters
リリース年
1949年
他のヴァージョン
Alfred Apaka & the Hawaiian Village Serenaders
f0147840_23374688.jpg

『L.A.コンフィデンシャル』をクリスマス映画などというつもりはありません。例によって「クリスマスを背景にした映画」だというだけです。

とはいうものの、クリスマス・ソング含有率はそうとうなもので、このクリスマス・スペシャル2で取り上げた映画のなかでもっとも多数が使用されています。映画はクリスマス・イヴからはじまるので、LAPDの警官までがSilver Bellsを「合唱」したりするのです。

◆ ジョニー・マーサーで開幕 ◆◆
『L.A.コンフィデンシャル』の音楽監督はジェリー・ゴールドスミスです。しかし、挿入曲の選曲がいいというか、1952、3年という時代設定のおかげか、ちょっとした顔ぶれなので、スコアのほうはどうしても霞んでしまいます。

f0147840_2356237.jpg

タイトルで流れるのは、ジョニー・マーサーのAc-Cent-Tchu-Ate the Positiveです。もう音だけでいきなり乗ってしまいます。ジョニー・マーサーがつくった会社、キャピトル・レコードは、西海岸初のメイジャー・レーベルになるわけで、ハリウッド・サウンドのセンター・ピラーです。たんにジョニー・マーサーがすぐれたシンガーで、Ac-Cent-Tchu-Ate the Positiveが作詞家としてのマーサーの代表作だというだけでなく、彼が背負っている重みをも利用した選曲に(結果的に)なっていて、じつに据わりのいいタイトルです。こういう風にビシッとキメてくれると、これはいけそうだ、という気分になり、すっと映画に入れます。



ケヴィン・スペイシーとダニー・デヴィートが登場するパーティーの会場に流れているのはOh! Look at Me Now、署内では警官がSilver Bellsを歌っています。そして、このクリップの最後、ラッセル・クロウとキム・ベイジンガーが出会う酒屋に流れているのが、Mele Kalikimakaです。アンドルーズが活躍するセカンド・ヴァースまで入れてくれたのにはうれしくなりました。曲の聴かせどころを平気でカットするのは、たいていダメな映画です。

映画ではよく聞こえるようにミックスされていますが、このクリップはレベルが低めなので、あらためてMele Kalikimakaだけどうぞ。

ビング・クロスビー&ザ・アンドルーズ・シスターズ メレ・カリキマカ


◆ またしても「あんた、発音なまってるよ」 ◆◆
タイトルのジョニー・マーサーもいいのですが、Mele Kalikimakaには、いい曲を使ったなあ、とニコニコしてしまいました。一昨年のクリスマス・スペシャルでは、アンドルーズ・シスターズのChristmas Islandを取り上げましたが、やはりトロピカルなクリスマス・ソングというのはいいものです。



Christmas Islandと、Mele Kalikimakaはまんざら無関係ではありません。クリスマス島があるキリバス共和国のスペルが、なぜKiribatiという珍妙なものになるかというと、キリバスの言葉にはSをあらわす文字がないので、tで代替するのだということを、一昨年のChristmas Islandの記事に書きました。

さて、Mele Kalikimakaです。これもそのつもりで眺めると、意味が見えてくるのではないでしょうか。Christmas Islandの記事で「クリスマス島を現地ではKiritimatiと書き、kee-rees-massと発音するというのだから、カタカナにすると“キーリースマス”あたりということになります」と書きましたが、Mele Kalikimakaもこれと似たようなことなのです。

f0147840_023543.jpg

f0147840_024769.jpg

キリバスの言葉と縁戚関係にあるハワイ語(両者とも大きくいえば「ポリネシア諸語」という分類でいいのだと思う)では、やはりSの音がないので、Kで代用されるのだそうです。日本語同様、Rの音もなく、Lで置き換えるそうで、結局、メレ・カリキマカとは「メリー・クリスマス」のことのようです。なーんだ!

わが家にはこの曲のカヴァーは2種類しかありません。そのうちのひとつ、アルフレッド・アパカのヴァージョンをサンプルにしました。Jingle Bellsとつなげているのですが、このJingle Bellsがハワイの言葉になっていて、Mele Kalikimakaばかりでなく、そちらもおおいに楽しいヴァージョンです。

サンプル Alfred Apaka "Jingle Bells/Mele Kalikimaka"

◆ ディノの2曲 ◆◆
ディーン・マーティンは2曲も使われています。ひとつはクリスマス・ソングです。

ディーン・マーティン クリスマス・ブルーズ


わたしはディノが大好きですが、やっぱりダウナーな曲は看板に立てにくいのです。ほかにいい曲がなければディノを看板にしたでしょうが、Mele Kalikimakaをさしおいて、とはいきません。

クリスマス・ソングではないのですが、ディーン・マーティンのもう1曲はじつにけっこうなもので、クリスマス・スペシャルでなければ、こちらを看板に立ててもよかったと思います。

ディーン・マーティン パウダー・ユア・フェイス・ウィズ・サンシャイン


この曲は、バド・ホワイト(ラッセル・クロウ)がジョニー・ストンパナート(実在のギャングで、ミッキー・コーエンのボディーガードだった。また、ラナ・ターナーの愛人であり、後年、ターナーの娘に刺し殺された)を脅して情報を得る酒場のシーンで流れます。

◆ メロドラマ化 ◆◆
映画としての『L.A.コンフィデンシャル』は、総じて悪くない出来で、ジョニー・マーサーやビング・クロスビーやディーン・マーティンのおかげもおおいにあって、気持よく見ることができました。

f0147840_042218.jpg

ジェイムズ・エルロイの原作は複雑で奥行きのある話なので、ふつうに考えると映画にするのは無理に思えます。当然、ものすごい量の「枝打ち」をして、ほとんどプロットの幹だけの坊主にまでやせ細らせたうえで、かろうじて映画にした、という印象です。したがって、エルロイの小説を読むなら、映画のあとにしたほうがいいでしょう。小説を読んだあとだと、映画は不満足に感じます。

f0147840_075415.jpg

なによりも、ウォルト・ディズニーをモデルにしたと思われる人物が、映画ではまるごと抹消されていることに、ブツブツいいたくなりました。この人物にまつわるあれこれこそが、「暗黒のLA四部作」という集合体を貫いて流れる都市の遺伝子であり、これをまるごと切った結果、都市の物語としての側面は薄まってしまいました。いや、それどころか、最初に見たときは、小説とはぜんぜんちがう物語に感じられたほどです。

まあ、エルロイの『L.A.コンフィデンシャル』そのままでは、どう逆立ちしても映画になどなるはずがないので、ドラスティックな改変が不可欠なのはたしかです。だから、小説とはまったく無関係な物語だと思えば、映画『L.A.コンフィデンシャル』もまずまずだと思います。

f0147840_081221.jpg

f0147840_083494.jpg

f0147840_084435.jpg

f0147840_08586.jpg

f0147840_091188.jpg

f0147840_092096.jpg

f0147840_093590.jpg

しかし、情緒的なエンディングは、客に媚びていて、映画の限界を感じてしまいます。ああいう風に甘く終わらせたために、人物像も一貫性を失い、プロットのロジックも乱れてしまったのが最大の欠点です。

エルロイの小説にはりっぱな人物は登場しませんし、友情などというものは存在しません。「一時的な利害の一致」はどこまで行っても友情に化けることはないのです。しかし、それでは観客のマジョリティーは感情移入できないからと、ああいう人物関係に改変したのでしょう。映画の限界とはそういう意味です。

f0147840_012141.jpg同じ時期のLAPDを扱った映画としては、『マルホランド・フォールズ』があります。わたしは、『L.A.コンフィデンシャル』の湿ったタッチより、『マルホランド・フォールズ』の乾いたタッチのほうが好きです。暴力描写にも甘さがなく、ニック・ノルティーが柄の大きさと重さを生かした身体の動きで、弱さを隠すための酷薄な鎧を着た警察官を好演しています。無表情にブラックジャックをふるう姿は美しいとすらいいたくなります。

ともあれ、頭のてっぺんのほうで考えるのとはまったく異なったレベル、視覚と聴覚を刺激するものとしては、『L.A.コンフィデンシャル』はよくできた映画です。わたしには善し悪しは判断できませんが、時代考証も手を抜いていないことが、がっしりとした実体の感じられる映像からも伝わってきます。

そして、はじめに戻っていえば、最初と最後にジョニー・マーサーの歌を入れたこと、ビング・クロスビー、アンドルーズ・シスターズ、ディーン・マーティンらの曲も、的確に配置されていることも、この映画の印象をおおいによくしています。

次回は、たんにクリスマスを背景にした映画ではなく、いかにもクリスマスらしい映画を、と思っています。


ビング・クロスビー&ザ・アンドルーズ・シスターズ クリスマス・アルバム
A Merry Christmas with Bing Crosby & The Andrews Sisters
A Merry Christmas with Bing Crosby & The Andrews Sisters


OST (better selection)
L. A. Confidential (1997 Film)
L. A. Confidential (1997 Film)

OST (alternate)
L.A. Confidential
L.A. Confidential

DVD
L.A.コンフィデンシャル 製作10周年記念 (初回生産限定版) [DVD]
L.A.コンフィデンシャル 製作10周年記念 (初回生産限定版) [DVD]

DVD
L.A.コンフィデンシャル [DVD]
L.A.コンフィデンシャル [DVD]

ブルーレイ
L.A.CONFIDENTIAL-ブルーレイ・エディション- [Blu-ray]
L.A.CONFIDENTIAL-ブルーレイ・エディション- [Blu-ray]

文庫上
LAコンフィデンシャル〈上〉 (文春文庫)
LAコンフィデンシャル〈上〉 (文春文庫)

文庫下
LAコンフィデンシャル〈下〉 (文春文庫)
LAコンフィデンシャル〈下〉 (文春文庫)

ペイパーバック
L.A. Confidential
L.A. Confidential
by songsf4s | 2009-12-21 23:56 | クリスマス・ソング