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クリスマス映画7A The Bells of St. Mary's by Bing Crosby (映画『聖メリーの鐘』より)
タイトル
The Bells of St. Mary's
アーティスト
Bing Crosby
ライター
Douglas Furber, A. Emmett Adams
収録アルバム
N/A
リリース年
1945年
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またしても、つぎの映画を見終わっていないので、今日は変則的スタイルでいってみます。映画の話をしてから音楽の話、というこれまでの順番を逆にして、『聖メリーの鐘』という映画はあとまわしにし、そのテーマ曲であるThe Bells of St. Mary'sの話から入ります。なんたって、たった5ヴァージョンしかないのだから、左団扇です。

おっと、これは勘定が微妙なのでした。5ヴァージョンの内訳は、サム・クック、ボビー・ソックス&ザ・ブルー・ジーンズ、リー・アンドルーズ&ザ・ハーツ、チェット・アトキンズ、エアロン・ネヴィルです。

ほんとうは、ここにオリジナルのビング・クロスビーを加えて、わが家にあるThe Bells of St. Mary'sは6種類といいたいのです。でも、ビング・クロスビーのヴァージョンは、もっているといえばもっているし、もっていないといえばもっていないのです。つまり、映画で聴くことはできるけれど、そのOST盤はもっていないのです。

トレイラー


◆ チェット・アトキンズ盤 ◆◆
どのヴァージョンから行きましょうか。もっとも書きやすいのは、チェット・アトキンズです。

チェット・アトキンズ


いつもながら、大変けっこうなものを聴かせていただきました、なんてお辞儀をしそうになってしまいます。とくに後半、高速アルペジオが登場してからが楽しめます。

1953年あたりの録音で、ごく初期のものだから、後年のような洗練されたプレイではなく、スムーズにいっていないところもありますが、そこがかえって魅力的に感じます。ささやかなミスのおかげで、すごくいいパッセージがよりいっそう引き立って聞こえるのです。

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しかし、これは「典型的なThe Bells of St. Mary's」とはいえませんねえ。ビング・クロスビーのオリジナルとは似ても似つかないアレンジです。このトラックを楽しんでいる理由はなにかと考えると、楽曲に負うところは小さく、チェット・アトキンズのプレイ自体のせいなのだと感じます。

◆ フィル・スペクター=ハル・ブレイン=ボビー・ソックス&ザ・ブルー・ジーンズ盤 ◆◆
これまた典型的なThe Bells of St. Mary'sではありませんが、フィル・スペクター=ボビー・ソックス&ザ・ブルー・ジーンズのヴァージョンも、やはりおおいなる魅力があります。

ボビー・ソックス&ザ・ブルー・ジーンズ


乗りまくっている人間のパワーというのはおそろしいものです。1963年とはどういう年だったか? わたしの定義では「The Year of Hal Blaine」です。まだ洗練されていないところがあるし、ときおりタイムが乱れることすらあるのですが、それでも、ついにハリウッドのドラマーのキングになったハル・ブレインのプレイは、多くのトラックでまばゆいばかりの光彩を放っています。

フィル・スペクターのアルバム、A Christmas Gift for You from Phil Spectorのアレンジャーはジャック・ニーチーです。しかし、ハル・ブレインの回想によれば、リズム・セクション、とくにドラム、ベース、ギターにはコード・チャートが渡されるだけのことが多く、たいていは自分で譜面を書いたといいます。アレンジャーの職掌は、基本的には弦と管なのです。

となると、このunusualなドラム・アレンジはどこから出てきたのでしょうか。たぶん、スペクターが例によって、「ハル、なにかやってみせてくれ」といい、ハルが思いついたスタイルをいくつか提示し、そこからスペクターが取捨選択していったのではないでしょうか。

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結局、2&4はなし、フィルインのみで構成される、世にもヘンテコリンなドラミングができあがりました。ハル・ブレインはunusualなドラミング・スタイルを大量生産しましたが(彼よりうまいドラマーはいるが、彼ほど華やかで、彼ほどクリエイティヴなドラマーはほかにいない)、なかでも、このThe Bells of St. Mary'sはスクルーボール・ドラミングの最右翼といえるでしょう。

でも、結局、エンディングはまごうかたなき「ハル・ブレイン印」にたどり着くのです。フェイドアウト直前の二分三連のキックの踏み込み。やっぱり、これが出ると、ハルだ! という雰囲気が横溢します。

◆ サム・クック盤 ◆◆
しかし、この曲はもともとはバラッド、ハル・ブレインがフィルインを叩きまくったり、チェット・アトキンズが高速アルペジオをするためのヴィークルとして生まれたわけではありません。

f0147840_022033.jpgとなると、やはりサム・クックのヴァージョンあたりがオーセンティックなThe Bells of St. Mary'sといえるのではないでしょうか。もともとソウル・スターラーズのリード・シンガー、いわば宗教が商売のタネだったので、こういう曲をやると、ゴスペル臭、宗教臭が鼻につくおそれがあるのですが、さすがはサム・クック、臭みのまったくない、すっきり、あっさりのオーセンティックなサム・クック・スタイルで歌っています。

わが家にあるこの曲が収録されたアルバムは、後年、オーヴァーダブされたトラックが大量に含まれている、じつにもって信用ならない盤です。よって、ヴォーカル以外は元からあったかどうか確認できないため、アレンジとサウンドについては黙して通りすぎることにします。いちおう、アマゾンで見つけた盤をあげておきましたが、わたしが聴いたヴァージョンと同じかどうかは保証できません。いえ、わが家の盤はひどい音なので、最悪でもわたしが聴いたものと同等、たぶん、もっとマシな音だろうと思います。

◆ エアロン・ネヴィルおよびリー・アンドルーズ ◆◆
わたしはエアロン・ネヴィルが好きなのですが、ほんとうに好きなのはTell It Like It IsやWrong Numberなど、ごく一握りの曲にすぎず、結局、声のよさを十全に生かせなかったと感じます。

以前にも書きましたが、ひとつまちがうとライオネル・リッチーになってしまう声とシンギング・スタイルなので、つねに臭い穴に落ちこむ危険を抱えています。The Bells of St. Mary'sはどうか? もろに臭い穴に落ちています。悪臭紛々のライオネル・リッチー化したエアロン・ネヴィルです。くどいヴィブラートには辟易します。

それにくらべれば、ピッチは乱れまくるとはいえ、リー・アンドルーズ&ザ・ハーツ盤The Bells of St. Mary'sは、嫌味なところがありません。

リー・アンドルーズ&ザ・ハーツ


いやまあ、もうちょっとピッチを整えてくれると助かりますがね。でも、ドゥーワップというのは、うますぎると感じが出ないものなので、当時の「文化」としては、こんなものだったのでしょう。

もうひとつ、これはもっていないのですが、クリップがあったので聴いてみたら、面白かったので、貼りつけておきます。

ローレンス・ウェルク


クラリネットをまじえた木管のアンサンブルというのは、ロック・エラになると流行らなくなりますが、そのせいでノスタルジックな感触を獲得したと感じます。たまに聴くと、いいサウンドだなあと思います。これは単なる偶然でしょうが、人数の少ないストリング・セクションが薄くミックスされた結果、面白い響きになったのも、このパフォーマンスの魅力的なところです。

それでは、次回はセイント・メアリー教会の奇蹟について、見てきたようなホントを書くべく、映画のほうを必死に見ることにします。


チェット・アトキンズ ボックス
Only the Best of Chet Atkins
Only the Best of Chet Atkins

フィル・スペクター
A Christmas Gift for You from Phil Spector
A Christmas Gift for You from Phil Spector

サム・クック
Songs by Sam Cooke
Songs by Sam Cooke

エアロン・ネヴィル
20th Century Masters - The Christmas Collection
20th Century Masters - The Christmas Collection

リー・アンドルーズ&ザ・ハーツ
Their Biggest Hits
Their Biggest Hits
by songsf4s | 2009-12-18 23:47 | クリスマス・ソング