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クリスマス映画4C White Christmas by Bing Crosby(映画『ホワイト・クリスマス』より その3)
タイトル
White Christmas
アーティスト
Bing Crosby
ライター
Irving Berlin
収録アルバム
Holiday Inn Original Soundtrack
リリース年
1954年
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一昨日の夕刊に、今年、N響の指揮者になったという、アンドレ・プレヴィンのインタヴューが掲載されていました。いまや伝統音楽の世界に戻っているようなので、記事の中身はわたしには関係ありませんでしたが、プレヴィンは八十歳になったそうで、それでちょっと思ったことがありました。

f0147840_2334115.jpg八十というのは、いわゆるレッキング・クルーの中核と同じ世代だということです。1929年生まれ、同い年のハル・ブレインと仕事をする機会はめったになかったかもしれませんが、映画音楽を山ほどやったトミー・テデスコ(1930年生まれ)とは何度も顔を合わせたでしょう。キャロル・ケイも同様です。

すこし年上になるアール・パーマーとはどうでしょうか。ハル・ブレインよりは可能性がありそうです。しかし、アンドレ・プレヴィンがもっとも頻繁に撮影所で顔を合わせたドラマーは、ポップ系のプレイヤーではなく、おそらくシェリー・マンでしょう。それから、バディー・リッチのヴィデオを探したときに、アンドレ・プレヴィンがピアノ・ストゥールに坐っているクリップがあったと記憶していますが、リッチは撮影所とはあまり縁がなかったのではないでしょうか。

わたしが集めている盤が録音された時代のアンドレ・プレヴィンは、ピアニスト、作曲家、アレンジャーであって、指揮といわれてもピンと来ません。セッションではアレンジャーがコンダクトすることになっているので、そういう意味での指揮は何度もしたでしょうが、その後、純伝統音楽のほうのコンダクターになったというのは、へえ、でした。

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まあ、そんなことも知らなかったくらいだから、わたしは「角が暗い」(と落語に明るいところを示してバランスをとった。落語知らずには、このフレーズの意味はわからないので、考えないこと)のです。伝統音楽は守備範囲外、わたしの関心はハリウッドです。いや、映画の話ではなく、60年代ポップ・クラシックから、ウェスト・コースト・ジャズ、ラウンジ/エキゾティカ/ポップ・オーケストラ、そして映画スコアをも包含する広い意味での「ハリウッド音楽」ということです。

わたしはアンドレ・プレヴィンのことを「伝統音楽出身の複合ハリウッド音楽家」とみなしていました。つまり、純粋な伝統音楽の世界とはすでに縁が切れていると思っていたのです。ハリウッドに関係したら、お芸術もイワシの頭もあったものじゃありませんからね。歌がうたえたら、第二のバディー・グレコになったのではないか、ぐらいに思っていました。

そういう人がN響の指揮者かあ、と夕刊を読みながらニヤニヤしてしまいました。やはり、時代は変わったのでしょう。ハリウッド映画界のきわめてアクティヴなプレイヤーだった人が、お芸術世界で爪弾きにされないなんて、昔だったら、断じて考えられません。

プレヴィンがどれほどアクティヴな撮影所のメンバーだったかを示す事実があります。Hollywood Rhapsodyという本によると、映画のなかで俳優のかわりに「ピアノを弾く手」として「出演」した回数で、アンドレ・プレヴィンは押しも押されもせぬナンバー・ワンなのだそうです。撮影所というのは、じつにさまざま人間を必要とするものです!

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◆ オーケストラもの1 フィーリクス・スラトキン ◆◆
さて、White Christmasの増補改訂をつづけます。

オーケストラものとしてはまず、一昨年のWhite Christmasの記事を書いたときにはまだ聴いていなかった、フィーリクス・スラトキンのヴァージョンをあげなければなりません。たまたま、フィーリクス・スラトキンも、夫人のエリナーともども、アンドレ・プレヴィンと同じく、ハリウッド映画界のきわめてアクティヴなメンバーでした。

フィーリクスとエリナーは映画とポップ・ミュージックの世界で働いたために(何度も書いているように、フィーリクス・スラトキンは20世紀フォックス音楽部およびフランク・シナトラ・セッションのコンサート・マスターだった)、伝統音楽の世界での評価は低いそうですが、そういう固定観念が昔は当然だったので、べつに異とするようなことではありません。アンドレ・プレヴィンが返り咲いたことのほうが意外です。まあ、スラトキン家は、息子が(ハリウッドや流行歌手とは無縁なだけでなく)純伝統音楽世界で有名になったから、バランスはとれたことになります。肝っ玉母さん(とわたしは見ている)のエリナー・スラトキンはまだ存命なのでしょうかね。

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さて、当家ではフィーリクス・スラトキンのアルバムをけなしたことはなく、このWhite Christmasを収録したクリスマス・アルバム、Seasons Greetingsも、Fantastic Percussionほどすごくはありませんが、ストリングスのやわらかさと厚味はやはり楽しめます(オオノさん、このLPのデータをお持ちでしたら、乞ご助力)。

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◆ オーケストラもの2 エスクィヴァル ◆◆
エスクィヴァル盤White Christmasは、一昨年の記事でも面白いと書いていますが、ちょとほめ方が足りなかったように感じるので、念押しで、これは聴くに値する、と繰り返しておきます。アブノーマルなアレンジをして、楽しめるものに仕上げてくる人には、格別の敬意を表するべきだと感じました。そこらに一山いくらで転がっている「才能」ではありません。

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結果としてできあがった音は遠くかけ離れていますが、エスクィヴァルは、アティテュードにおいてゴードン・ジェンキンズに似ています。ヴァースごとに、いや、数小節ごとに、じつに細かくアレンジを変えていくのです。ハンク・マーヴィンがヴァースごとにちがう弾き方をするといったレベルの話ではなく、装飾音を楽器もろともどんどん変化させながらエンディングに突き進んでいくのです。

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ゴードン・ジェンキンズはさまざまな小技をバロック大伽藍的にちりばめたアレンジをしますが(「クリスマス・トゥリー・アレンジ」と名づけたくなる!)、似ているとはいいながら、やはりエスクィヴァルは特殊かもしれません。エスクィヴァルの場合、数小節でどんどんとサウンドの相貌、音のテクスチャーを変化させていくのです。ゴードン・ジェンキンズは相貌まで変化させたりはしません。そこに両者が生きている世界の違いがあるといっていいでしょう。歌伴か、純粋なオーケストラ音楽か、という違いです。

どうであれ、聴けば聴くほど、エスクィヴァルの盤は楽しさが増していきます。

◆ ギターもの アル・カイオラ、スプートニクス ◆◆
アル・カイオラ&リズ・オルトラーニのThe Sound Of Christmasは、ハズレ曲がないすばらしいアルバムで、そのなかでは、White Christmasは思わずニコニコするほどではなく、相対的に出来のよくないほうです。でも、このLPのコンテクストから外に持ち出し、よそのヴァージョンと並べると、じつはなかなか魅力的な仕上がりなのだと気づきます。

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White Christmasがアルバムのなかではくすんで聞こえるのは、ゆるめのテンポで静かにやっているためなのでしょう。スロウで静かなぶん、アル・カイオラのピッキングの美しさが際だつというサイド・イフェクトがあります。アル・カイオラの場合、極論するなら、ピッキングの精確さと間の取り方がすべてなのです。ヘナチョコ弦でタッピングなんかやっていたら、ぜったいにこの境地にはたどり着けないでしょう。ヘヴィー・ゲージやレギュラー・ゲージが育てたタイプのギタリストです。

f0147840_0165782.jpgこれはたぶん一昨年は言及しなかったと思うのですが、スプートニクスのWhite Christmasは悪くないじゃないかと思い直しました。Add More Musicの「レア・インスト」ページで試聴することができます。

Add More MusicでスプートニクスのWhite Christmasを聴く

バックグラウンドで流していて、スプートニクスのヴァージョンがはじまるたびに、「あれ、エキゾティック・ギターズはWhite Christmasをやっていたんだっけ?」と思ってしまいました。似ていると思いませんか>キムラさん。リードのサウンドがアル・ケイシーみたいです。

◆ ホワイト・ドゥーワップ・クリスマス ◆◆
これを「ギターもの」といってはまずいのでしょうが、フォー・シーズンズの母体となったコーラス・グループ、フォー・ラヴァーズのWhite Christmasは、歌よりギターのほうが目立ちます。というか、派手に暴れています。

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サンプル The Four Lovers "White Christmas"

というように、かなり雑なピッキングですが、それがかえって魅力的に感じられるプレイです。とんでもない荒れ球で、配球もへったくれもあったものではなく、どこへ行くんだろうと思っているうちに三振していた、という感じ。

しかし、このアレンジ、これでいいんでしょうかね。いってみれば、マーセルズのBlue Moonの延長線上に生まれたアレンジなのでしょうが、やりすぎと感じます。ここまでいったら、たんに素っ頓狂なだけ。跳ねっ返りのギターがまぐれで救ったヴァージョンです。

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The Four Lovers

◆ 懐かしき宇宙時代 ◆◆
もうひとつ、これは分類するならコーラス・グループなのでしょうが、そう呼ぶのはちょっとためらうウォルター・シューマン(アーティスト名としては「ザ・ヴォイシーズ・オヴ・ウォルター・シューマン」)のヴァージョンも、一般的ではないものの、「またかよ」の凡庸アレンジではありません。

いや、アレンジというより、声を加工していて、それが耳に引っかかるのです。しかし、なにをやったのかは明確にはわかりません。後年のフェイズ・シフターのような効果を試行錯誤でつくったのでしょう。ちょっとヴォコーダー風でもあります。

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50年代というのは、こういうエレクトロニックな音楽が、シリアス、ポピュラーの区別なく盛った時代だったのだなあ、と後追いの人間は思います。スペース・エイジ・バチュラー・パッドの世界です。エスクィヴァルはもちろん、レス・バクスターですらこの流れのなかにあり、そして最後に、脇道から出てきたジョー・ミークがするすると先行するアーティストたちを追い抜いて、Telstarが生まれる、といった印象です。

入手がむずかしいので最後におきますが、ルース・ウェルカムのツィターによるWhite Christmas(アルバムChristmas in Zitherlandに収録)は、他のWhite Christmasとは隔絶したサウンド・テクスチャーをもっていて、おおいに楽しめます。80種類のWhite Christmasをドーンと聴いたら、最後はこのヴァージョンで締めるのがよろしいようです。酔って帰ってお茶漬けを軽く一杯、という気分哉。嗚呼、White Christmasの悪酔いキツい。

White Christmas Special Edition DVD
ホワイト・クリスマス スペシャル・エディション [DVD]
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ホワイト・クリスマス OST(ホリデイ・インOSTと2オン1)
Holiday Inn & White Christmas
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フィル・スペクター クリスマス・ギフト
A Christmas Gift for You from Phil Spector
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チップマンクスvol.1
Christmas with the Chipmunks, Vol. 1
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Ultra-Lounge: Christmas Cocktails, Pt. 3
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フォー・ラヴァーズ
THE FOUR LOVERS
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ジャッキー・グリーソン
Merry Christmas
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ローレンス・ウェルク
22 Merry Christmas Favorites
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エスクィヴァル
Merry Christmas from the Space-Age Bachelor Pad
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by songsf4s | 2009-12-10 23:58 | クリスマス・ソング