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クリスマス映画2 Sleigh Ride/Jingle Bells by Roy Rogers & Dale Evans(映画『めぐり逢えたら』より)
タイトル
Medley: Sleigh Ride/Jingle Bells
アーティスト
Roy Rogers & Dale Evans
ライター
Leroy Anderson and Mitchell Parish, James Pierpont
収録アルバム
Christmas Is Always
リリース年
1967年
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クリスマス映画2本目は、トム・ハンクスとメグ・ライアンの『めぐり逢えたら』(Sleepless in Seattle, 1993)です。

最初の葬礼のシークェンスで、トム・ハンクスが妻を失い、幼い息子と二人だけになってしまったことが描かれます。そして、妻のことを思いださせる場所ばかりのシカゴを去り、シアトルに移住するというのが導入部です。

Sleepless in Seattle pt.1


冒頭のクレーン・ショット、トム・ハンクス親子から、会葬者とその背後に見える町並みへとキャメラが移動していくところは、ちょっとハッとさせられます。

◆ またしてもアブノーマル・ヴァージョン ◆◆
それから一年半後、という文字が入って、クリスマス・イヴから話は動きはじめます。メグ・ライアンとビル・プルマンが、クリスマスの晩餐のために、メグ・ライアンの実家へと出発するところは、ちょっと笑いました。ビル・プルマンが晩餐に出席するメグ・ライアンの家族、親戚の名前と特徴を暗記するところです。

もっと可笑しかったのはつぎのクリップの冒頭。

Sleepless in Seattle pt.2


プロップか衣裳のだれかが仕込みをやったにちがいありませんが、ウェディング・ドレスの肩がみごとにビリッとやぶれて、その具合のよさに拍手したくなりました。仕込みの人間としては、きれいにやぶれた瞬間、監督をふりかえって、ガッツ・ポーズでしょう!

母親が昔着たウェディング・ドレスを試着しながら、メグ・ライアンと母親がかわす会話が、定石通りに、この物語の前口上になっています。「It's like a magic」がキーで、ドレスがやぶけてしまうのも「It's a sign!」、この結婚がうまくいかないことを暗示します。

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以上、地ならし完了、恋人たちはべつべつの車で帰途につきます。このへんはややわざとらしい展開ですが、メグ・ライアンをひとりにして、車のなかでラジオをきかせ、そのラジオから流れてくる声に気持を添わせるには、婚約者といっしょではぐあいが悪いというのはよくわかります。観客にあまりわかられすぎても、ほんとうはまずいのですが。

車中最初のラジオ・プログラムは、これまたお約束という感じで、クリスマス・イヴだから、クリスマス・ソングが流れます。ちょっと変わった選択です。いえ、Jingle Bells(ジングル・ベルの過去記事)とSleigh Ride(スレイ・ライドの過去記事)を、メドレーではなく、合体させたもので、楽曲としてはノーマルです。でも、なぜロイ・ロジャーズ&デイル・エヴァンズ盤なのか?

サンプル ロイ・ロジャーズ&デイル・エヴァンズ「ジングル・ベル/スレイ・ライド」

なんだか、この曲も、映画に使われたものは、盤としてリリースされているヴァージョンとは微妙に異なるように思えます。というのでコードを弾いてみたら、盤はノーマルなピッチ(D)、映画はクォーターノートで、盤より微妙にピッチをあげてありました。変なことをするものですねえ。どういう意図かはわかりません。ピッチがあがると明るくはなりますが、このロイ・ロジャーズ&デイル・エヴァンズのジングル・ベル/スレイ・ライドは、もとのままのピッチで十分に明るいのに!

星の数ほどあるJingle BellsやSleight Rideのなかから、どのような意図でこのロイ・ロジャーズ&デイル・エヴァンズ盤を選んだかはわかりませんが、このひょうきんなサウンドに乗ってメグ・ライアンが運転するすがたはおおいに魅力的で、そういうマッチングを狙ったのかもしれません。

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◆ クリスマスに欲しいものは? ◆◆
局を替えると、電話人生相談といった感じの番組になり、シアトルに住む八歳の子ども、冒頭に登場したトム・ハンクスの息子ジョナが登場し、クリスマスにはパパに新しい奥さんをプレゼントして欲しいといいます。

メグ・ライアンがラジオをききながら、思わず、イヤな女(電話相談の精神科の女医)、ジョナ、いうこときいちゃダメよ、電話を切りなさい、というけれど、結局、ドクターはトム・ハンクスを電話口に引きずり出します。

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ここでトム・ハンクスが語った死んだ妻の思い出話がアメリカ中(といっても、もちろん、この番組がネットワークされている範囲だが)の女性の関心を喚んでしまう、というのが、この物語のほんとうの意味での発端です。

タイトルのSleepless in Seattleは、この女医がトム・ハンクスにつけたあだ名、「シアトルの不眠症さん」という意味です。ついでにいえば、邦題の『めぐり逢えたら』は、この映画が下敷きにしたケーリー・グラントとデボラ・カー主演の『めぐり逢い』(An Affaire to Remember。監督はなんとレオ・マケアリー!)に由来しています。

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ということで、ここから、『ボギー俺も男だ』が『カサブランカ』のエンディングへと動いていったように、Sleepless in SeattleもAn Affair to Rememberのエンディングを再現するべく、アールデコの装飾が楽しいエンパイア・ステート・ビルディングの展望デッキを目指して動きはじめます。

この映画のいいところ、男でも楽しめる理由は、メタ・メロドラマになっているところです。メロドラマによるメロドラマ批評なのです。いや、ロマンティック・コメディーによるメロドラマ批評でしょうか。ストレートなコメディーでもなければ、ストレートなメロドラマでもなく、でもやっぱり、女性観客としては、エンディングでハンカチを取り出す、という風につくってあります。

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メグ・ライアンが友だち(名前は忘れたがロバート・ゼメキスの『抱きしめたい』で顔を覚えた)といっしょにヴィデオで『めぐり逢い』を見るという、いかにもメタ映画らしいシーン。

わたしは男なので、どこで泣けるかではなく、どこで笑えるかのほうが気になります。メタ・メロドラマであると同時に、映画によって映画を語るメタ映画でもあり、登場人物たちはしきりに昔の映画に言及します。

いちばん笑ったくだりは、トム・ハンクスと友人夫婦の会話です。ヴァレンタインズ・デイにエンパイア・ステート・ビルディングの展望デッキで待つという、「ファン」からの手紙(出版社社員のメグ・ライアンが、取材の一環として書いた)の話を聞き、友人の奥方が、それって『めぐり逢い』じゃないの、ほんとうにいい映画だったわ、もう泣けて泣けてと、エンディングの誤解とそれが解けるシーンの仕方話をひとくさりやります。

男たちは、An Affair to Rememberときいて、ありゃChick's movie(女が見るもの)だ、と関心を示しません。わたしもこの男たちに強く同意します! トム・ハンクスの友人は、いちばん泣ける映画はやっぱりDirty Dozen(特攻大作戦)だな、といって、ジム・ブラウンのことを話しはじめます。

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メグ・ライアンがエンパイア・ステート・ビルディングに駆けつけるが、もう展望デッキは閉まったといわれてしまう。どうしても人に逢わなくていけないのだと懇願すると、「『めぐり逢い』だね?」といわれる。「あの映画をご存知?」とメグ・ライアンがきくと、「女房が好きでね」とこたえたのは笑った。あくまでもchick's movieなのだ!

わたしも、そうだな、泣ける映画っていうのは、メロドラマじゃなくて、戦争映画とかウェスタンとか、そういうのが多いな、と笑いながら同意しました。ストイシズムが極点に達するようなシーンに、男の多くは反応するのではないでしょうか。このへんが、この映画の「メタ」な楽しさで、こいつはメロドラマじゃないの、と眉に唾しながら、最後まで見てしまう理由だと思います。

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展望デッキへのエレヴェーターは老警備員が運転する。この警備員が益田喜頓そっくり!

以上、映画としても悪くない出来で、ご家族で見ても、カップルで見ても、困惑するような場面はないでしょう。まあ、八歳の子どもが父親に、新しい奥さんをもらったらセックスするの? なんていうところで腹の底から笑うには、ひとりで見たほうがいいかもしれませんが!

クリスマス映画というより、冒頭にクリスマスが出てくるだけで、クライマクスはヴァレンタインズ・デイに設定されていますが(当然、中間にはニュー・イヤーズ・イヴのカウント・ダウン・パーティーと、日本でいえば除夜の鐘にあたる、新年の花火のシーンもある)、寒い時期の季節感に添ってつくられたウェルメイドな作品で、クリスマスに見るのもけっこうだろうと思います。

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展望デッキで待ちくたびれる子どもを空撮で捉える。ちょっとしたシーンにもヘリコプターを飛ばせるハリウッド映画はやはりうらやましい。

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◆ 追加ヴァージョン ◆◆
Jingle Bellsについては他の機会にゆずり、ここでは一昨年のSleigh Rideの記事をすこし補足しておきます。

アヴァランシェーズ盤がもっとも好きだというのは変わりませんし、他のヴァージョンに関する評価も、一昨年に書いたことを訂正する必要は感じません。ロネッツ、ヴェンチャーズ、アンディー・ウィリアムズ、リロイ・アンダーソンあたりも楽しめる、という考えも変わっていません。

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一昨年にはふれなかったヴァージョンをいくつか見ます。なんといっても素晴らしいのは、またしてもアル・カイオラとリズ・オルトラーニのクリスマス・アルバムSound Of Christmasに収録されたものです。

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イントロは印象的だし、カイオラにしてはめずらしく、オクターヴ奏法も織り込んで、技のあるところをほんのすこしだけ見せびらかしたプレイぶりも楽しいし、リズ・オルトラーニも、他のトラックより少し前に出るオーケストレーションをしています。コンボならアヴァランシェーズ、オーケストラありならこのアル・カイオラ&リズ・オルトラーニ盤でしょう。

目下、これを収めた編集盤は見あたらないようですが、ちょっと変則的なヴァージョンならCDで聴くことが出来ます。一昨年のクリスマス・スペシャルでは何度も称揚した、キャピトルのUltra Loungeシリーズのクリスマス篇第2集に収録されたヴァージョンです。

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どこが変則的かというと、前半はふつうにアル・カイオラ&リズ・オルトラーニのSleigh Rideなのですが、途中でJingle Bellsに化けてしまうのです。これはジミー・マグリフのヴァージョンだそうで、別個に録音したものをあとから編集でつなげてしまったのです。

ただし、ほとんど短縮はしていなくて、ちゃんとエンディングまでたどりつき、そこからすぐにジミー・マグリフのJingle Bellsがはじまってしまうだけなので、それほど強引な処理というわけでもありません。LPとはだいぶマスタリングがちがうし、ステレオ定位も異なるので、わたしは、これはこれでいいと思います。

あと数分まできてしまったので、ここからは電報。無茶苦茶にいいとはいいませんが、ヴェラ・リンのヴァージョンもそこそこ楽しめます。70年代の録音ですが、ヴェラ・リンだから昔の風味でつくってあり、オーケストレーションもわるくありません。

スプートニクス盤は微妙です。ドラムが馬鹿みたいなのがいただけませんが、ギターはそこそこ楽しめます。ほかにもちょっと追加盤があるのですが、このへんでいいでしょう。アル・カイオラ&リズ・オルトラーニ盤はほんとうに素晴らしい出来です。

めぐり逢えたら コレクターズ・エディション [DVD]
めぐり逢えたら コレクターズ・エディション [DVD]


アヴァランシェーズ
Ski Surfin'
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ウルトラ・ラウンジ クリスマス・カクテルズ2
Ultra-Lounge: Christmas Cocktails, Pt. 2
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リロイ・アンダーソン
Sleigh Ride: The Best of Leroy Anderson
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ヴェンチャーズ
The Ventures' Christmas Album
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Andy Williams
アンディ・ウィリアムス・クリスマス・アルバム
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ロイ・ロジャーズ&デイル・エヴァンズ
Christmas Is Always
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by songsf4s | 2009-12-02 23:53 | クリスマス・ソング