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Only a Game by Matthew Fisher
タイトル
Only a Game
アーティスト
Matthew Fisher
ライター
Matthew Fisher
収録アルバム
Matthew Fisher
リリース年
1980年
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デビュー盤が73年、セカンド・アルバムが翌年のリリースだったのに、マシュー・フィッシャーのエポニマス・タイトルのサード・アルバムは1980年のものです。やはり最初の2枚は売れなかったのでしょう。

◆ ドラム難 ◆◆
1980年というと、長い渇水期のようなディスコの時代が終わったのに気をよくして、それなりに新譜を買っていましたが、このあたりが最後になって、この数年後からは1955年から75年までのビルボード・トップ40を集める「大事業」に着手することになり、新しいものとはわたしはほとんど絶縁します。

この時期にどんな盤を買っていたというと、ライ・クーダー、トッド・ラングレンが両輪、アンドルー・ゴールド、ルパート・ホームズなんてあたりを覚えています。ラスカルズのフィーリクス・カーヴァリエーレが久しぶりにアルバムをリリースしたのもこのころでした。ビーチボーイズのLight Albumもこのころでしたか……。

そういうことを思いだして、マシュー・フィッシャーのアルバムについて感じるのは、全体のサウンドがコンテンポラリーな音とズレているということです。とくにドラムはどのアルバムも、プレイがどうこういう以前に、そろいもそろってタムタムやフロアタムの音がひどくて、おおいに悩まされました。

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イギリスの有力メーカーのヘッドの質が極端に悪くなった時期なのかもしれませんが、たとえば、この時期のジョン・ボーナムを聴けば(時期的にいってFool in the Rainが適切だろう)、ちゃんとしたサウンドでやっているわけで、マシューの選んだドラマーがみな三流だった可能性が高いと思います。

いや、タイムはそこそこなのですよ。でも、サウンドは耐え難いほどひどいのです。あのペタペタと餅つきのような湿った音をたてるタムタムは、どこのメーカーのヘッドをつけていたのか、いまでも追求したくなります。

フィルインのセンスもじつにあか抜けなくて、毎度、呆れていました。やれB・J・ウィルソンの、やれジョン・ボーナムのと贅沢はいわないので、ふつうのドラマーを調達して欲しかったと思います。

そういう意味で、サード・アルバムMatthew Fisherのドラムは、そこそこ我慢できるレベルにありますが、とくにうれしがるようなものでもありません。まあ、ハリウッド録音の盤のドラムがいい音なのは、カリフォルニアの気候のおかげなのだということにしておきましょう。

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◆ オープナーの問題 ◆◆
前回、マシュー・フィッシャーの盤は第一印象がよくないと書きましたが、サード・アルバムMatthew Fisherもまったくダメでした。買ってから半年もしてから、案外悪くないアルバムじゃないかと思い直したほどで、買った当初は2、3回聴いて、それきりになってしまいました。

第一印象を形成する大きな要素はアルバム・オープナーです。デビュー盤もセカンドも、オープナーの出来がよくありませんが、サードも似たようなものです。いや、いまでは悪くないバラッドだと思っていますが、ミディアム・スロウのバラッドなんかを頭にもってくるのが、そもそもの間違いなのです。そんなアルバムはわが家にはほとんどありません。ミディアム、ミディアム・アップ、あるいはアップで入るのが常識でしょう。

Matthew Fisher-Can't You Feel My Love


とはいっても、では、かわりにどの曲をオープナーにすればいいかと考えると、これがないのです。速めの曲はありますが、オープナー向きではなく、どの曲も置き場所はまちがっていなかったと感じます。つまり、あるムード、スロウな曲がつくったムードを受けて、アップでドラマティックに雰囲気を一新するタイプの曲なのです。

サンプル Running from Your Love

これはアルバム・クローザーです。たしかにクローザーか、A面のラストというムードの曲で、まちがってもオープナーには使えません。

ということで、なかば納得はできるのですが、でも、オープナーにふさわしい曲がないというのは、やはりアルバムの作り方として正統的とはいえないでしょう。マシュー・フィッシャーがソロ・アーティストとして成功しなかった理由はひとつではありませんが、シングル向きの曲、あるいは「シングル的な」曲、キャッチーなサウンドをつくれなかったことも大きな理由だったと思います。

◆ メランコリーの人 ◆◆
ネガティヴなことばかり書きつらねましたが、わたしはこのアルバムが好きなのです。そのよさがすぐには理解できないようになっているところが、マシュー・フィッシャーの大きな問題だったというにすぎません。

Matthew Fisher - Why'd I Have to Fall in Love with You


マシューの5枚のアルバムのなかでこのMatthew Fisherが、もっとも楽曲の粒が揃っています。この素材で、だれかべつのプロデューサー、べつのスタジオ、べつのミュージシャンで録音していたらなあ、と思います。マシューの思いとリスナーの思いはつねにすれ違っていたわけで、そこのところをうまくつなぐプロデューサーがいたら、彼のキャリアは異なったものになっていたのではないかと感じます。

アルバムMatthew Fisherは、粒が揃っている反面、I'll Be ThereのNot Her Faultのようなぬきんでた曲もありません。前出のRunning from Your Loveと並んで、わたしがよく聴いたのは、Only a Gameでした。

サンプル Only a Game

こういう曲を聴くにつけて、セルフ・プロデュースで成功しなかったとはいいながらも、では、マシュー・フィッシャーの目指すものが理解できるプロデューサーがいたかとなると、おおいに疑問とせざるをえません。

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このアルバムはエポニマス・タイトルなのだが、これをStrange Daysというタイトルで呼んでいるサイトがいくつかある。Strange Daysはつぎの4枚目のアルバムのタイトルであって、3枚目はあくまでもMatthew Fisherというタイトルだ。なぜそのような間違いが起きたかというと、CDではこの2枚のアルバムが組み合わされ、タイトルも2枚のLPのタイトルをつなげて、Matthew Fisher/Strange Daysとされているが、これがいけなかったらしい。2種類のアルバムタイトルではなく、アーティスト名とタイトルの組み合わせと勘違いし、アルバムMatthew FisherのことをStrange Daysと呼ぶようになったというお粗末。

マシューのすべてのアルバムに共通しているのは、メランコリーとセンティメンタリズムです。これはロック的な要素ではなく、英米音楽の枠組では据わりの悪いものです。こういう楽曲はどういう文化になじみやすいかというと、イタリアと日本のような気がしてきます。

なんとも微妙な位置にいる人で、この微妙さが理解の妨げになったのは間違いありません。ジャンルとジャンルの狭間に落ち込んで透明人間になった、といったぐあいです。5枚もアルバムがリリースされたのは幸運だったといいたくなります。

あと一回、マシュー・フィッシャーの話を延長するつもりです。

Matthew Fisher/Strange Days
Matthew Fisher / Strange Days
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by songsf4s | 2009-10-10 23:56 | その他