人気ブログランキング |
(仮)丘のホテル by 星野みよ子 (OST 『ゴジラの逆襲』より)
タイトル
未詳(仮に〈丘のホテル〉とする)
アーティスト
未詳(おそらく星野みよ子)
ライター
未詳(佐藤勝?)
収録アルバム
N/A (OST)
リリース年
1955年
f0147840_2318258.jpg

昔は映画とサウンドトラックを切り離して考えるようなことはありませんでした。テーマ曲、挿入曲は切り離せますが、スコアは映画と心中するものと思っていました。しかし、このところ、映画は退屈なのに、スコアはすばらしい、あるいは楽しいというものに立てつづけに出くわしました。どちらも日本映画です。

音楽の出来がいいのはけっこうなような、でも、映画が面白くないのでは、なんの意味もないような、いや、そうでもないような、そのへんはかなり微妙なところがありますが、それは、画面とスコアのバランスが崩れた映画を取り上げるときにでも書きます。いや、今日の映画も、そういうことと無関係ではないのですが。

f0147840_010930.jpg

◆ 都会を目指すゴジラ ◆◆
『ゴジラ』を取り上げたくせに、『ゴジラの逆襲』をまたいで通ったりすると、大阪方面で顰蹙を買う恐れがあるので、素直にゴジラ2へと進むことにします。

舞台が大阪になったせいなのか、それとも監督が小田基義(トニー谷の『家庭の事情 馬ッ鹿じゃなかろかの巻』および『家庭の事情 ネチョリンコンの巻』の監督)になったせいか、はたまた音楽が伊福部昭から佐藤勝になったせいか、ずいぶんとタッチのちがうゴジラで、これはこれで、いま見ると面白いのではないかと思いますが、映画のほうはさておき、まず音楽です。ゴジラ映画に、伊福部昭のあの曲が出てこないと、物足りない思いなきにしもあらずですが、佐藤勝のメイン・タイトルもなかなかけっこうな出来です。



例によって、説明不足ないしは説明する意志がないために、よくわからないところがあるプロットなのですが、なぜか今回は東京ではなく、ゴジラは大阪方面を目指します。しかし、(なぜか)大方の予想では四国に上陸するというので、第一発見者である小泉博をはじめ、大阪人は呑気にナイトクラブで踊っています。

台風だって四国に上陸しそうなら、大阪でも警戒しそうなもの、ましてゴジラなんだから、どこに来るかわかったものではなく、ナイトクラブで遊んでいる場合じゃないと思うのですが、たぶん、このシンガーに出演シーンをあたえなければならない事情があったのでしょう。

f0147840_0123379.jpg

f0147840_0125369.jpg

といって、ここにそのシーンを貼りつけられるといいのですが、そうは問屋が卸さないので、かわりにサンプルをおいておきました。盤ではなく、映画から切り出したもので、音質は悪いし、1分半ほどの断片ですが、曲もなかなかけっこうですし、人数は少ないものの、弦のアレンジもちょっとしたものです。

サンプル

映画のクレジットには曲名が書かれていないので、歌詞から勝手に「丘のホテル」と名づけておきました。歌手の名前を星野みよ子とした唯一の根拠はクレジット・タイトルの星野みよ子のところに「コロムビア」とあったことです。所属レーベルが書いてあるのだからシンガーであり、映画のなかで歌ったという意味と解しました。

f0147840_0142361.jpg

歌の終わりのほうに、空襲警報のようなゴジラ警報も残しておきました。これでナイトクラブの客はパニックになるのですが、そんなに怖いなら家にいろよ、と思ってから、家にいてもナイトクラブにいても同じか、と思いなおしました。近畿地方から避難するか、腹をくくるか、どちらかしかなく、パニックになる理由はかけらもないと思うのですがねえ。

ともあれ、こういうチェンジアップの曲を入れておいてくれたのはうれしいことです。挿入曲の作者とスコアの書き手はかならずしもイコールではないのですが、これが佐藤勝の作だとしたら、なるほどねえ、です。佐藤勝の曲は、当家では石原裕次郎の〈狂った果実〉を過去に取り上げています。〈丘のホテル〉も〈狂った果実〉もコード・チェンジの面白さがあり、したがって、シンガーにとっては難所があるところが共通しています。〈丘のホテル〉がサントラ盤に収録されていないのは残念ですが、所属レーベルの問題を解決できなかったのではないでしょうか。

f0147840_0184686.jpg

◆ サブプロットはつくったが…… ◆◆
最初の『ゴジラ』が太平洋戦争のメタファーなら、ゴジラとアンギラスという二匹の怪獣が勝手に日本にやってきて、周囲の迷惑にはおかまいなく、勝負をつけようと大暴れし、破壊のかぎりを尽くす『ゴジラの逆襲』は、米ソ冷戦時代のメタファーなのかもしれません。

f0147840_0231078.jpg
辰野金吾設計の中之島公会堂もゴジラとアンギラスの戦場になってしまう。

現実の冷戦はその後、だらだらとつづきますが、『ゴジラの逆襲』では、大阪城の戦いであっさり決着がつき、迷惑も中くらいですみます。まだ冷戦構造が明確になりはじめた段階で、まもなくドラスティックな変化が起こり、「熱戦」に突入して、破局的な結末にいたる、という予想または恐怖感があったのかもしれません。

f0147840_0313944.jpg

しかし、まあ、そういうメタファーというのは、一面で重要ではあるものの、いっぽうで、だからどうした、といいたくなるときもあります。まず、面白いかどうかが重要であり、面白さを裏づける要素としてメタファーがある、という順番であって、逆ではないでしょう。

当局は、光に反応するゴジラの習性を利用して、照明弾で大阪湾の外へと連れだそうとします。この作戦の遂行のために、大阪市内は厳重な灯火管制が布かれています(またしても太平洋戦争のメタファー)。そのゴジラ誘因作戦の真っ最中に、大阪市内を走る囚人護送車へと話が切り替わります。ははあ、この連中が作戦失敗の原因をつくるのね、とすぐにわかります。

f0147840_037344.jpg

いや、それはしかたがないのですが、なぜ囚人護送車なのか、です。ゴジラにそなえて厳戒態勢を敷いている最中なのだから、だれがどう見ても、囚人を移送するタイミングではありません。そこにはやむにやまれぬ理由があった、というのなら、そのシーンをちゃんと入れておいてよ、です。

f0147840_0374965.jpg
警官の銃を奪って脱走した囚人たちは、たまたまそこにあったタンク・ローリーに乗って逃走するが……。

物語というのは、手順を踏んで、場面と場面を有機的に結びつけていかないと、面白くならないもので、ゴジラが大阪に逆戻りする理由をつくるのは当然だし、そのためのサイド・プロットをつくるのもノーマルな手順です。そこまでは、唐突さを特徴とする東宝特撮のシナリオしては、いつになくまっとうな仕事をしていると思うのですが、理由づけ抜きでの囚人移送は無理です。ほんの2、3ショットで簡単に正当化できたはずなのですが、その手間をかけてくれないのが、いかにも日本映画らしいところです。いまになれば岡目八目、ここに滅亡の兆候あり、ですな。

f0147840_044397.jpg
ゴジラとアンギラスが大暴れしたために、川底が割れ、その下の地下鉄へと水がなだれこむ。囚人たちの一部はこの淀屋橋駅で奔流に呑みこまれてしまう。

◆ 戦争は終わっていない ◆◆
エンディング直前にも、わけのわからないことが起こります。これは、『ゴジラの逆襲』をこれから見よう、または再見しようという方はお読みにならないでください。

さて、千秋実は漁業会社に勤めるパイロットで、魚群を探すことを仕事にしています(魚探が生まれるのは未来のこと)。映画の後半、彼は北海道支社に移り、またしてもゴジラを発見してしまいます。それはかまわないのですが、自衛隊の攻撃がうまくいかないのに業を煮やし、なんの武器ももっていないのに、ゴジラに突っかけるように飛び、熱線にやられてしまいます。その結果、氷壁にぶつかり、それがヒントになって、土屋嘉男の飛行隊長はゴジラ氷漬け作戦を思いつき、これが決定打になる、という展開です。

f0147840_0525462.jpg

f0147840_053592.jpg

f0147840_053182.jpg

でも、わたしは、どうしても、千秋実の自殺行為の意味が解せず、あれえ、これでエンディングに持ち込む気かよ、まさかそれはないよなあ、と思いました。あれはどういう意味なのでしょうか。人間、心底怒ると、死にたくなる? まさかそれはないですよねえ。

考えられることは、千秋実は特攻隊の生き残りで、ここを死に場所と定めた、ということですが、ゴジラにダメージをあたえられるという確信もないのに、よく突っ込めるなあ、と首をひねります。特攻隊だって、500キロ爆弾かなんかを抱いて突っ込むわけで、戦争中、パイロットだったのなら、それくらいのことはわかっているでしょう。

f0147840_0542956.jpg
民間、自衛隊とところを変えた太平洋戦争の戦友たちは北海道で再会するが、ともにゴジラ邀撃のために出動することになる。

まあ、これは戦後生まれが思うことにすぎず、太平洋戦争経験者なら、あの千秋実のヤケクソ飛行の意味を、心情的に理解できるのかもしれません。ゴジラ・シリーズを見ていくと、つくづく、太平洋戦争は終わらなかったのだと思います。

それはともかく、わたしは『ゴジラの逆襲』という映画も、『ゴジラ』とは味わいが異なっているところが、なかなか面白いと感じました。スコアについても同じことがいえます。ゴジラといえば伊福部昭なのでしょうが、佐藤勝もお忘れなく。

f0147840_054441.jpg


Click and follow Songs for 4 Seasons/metalside on Twitter
metalsideをフォローしましょう



ゴジラの逆襲 [DVD]
ゴジラの逆襲 [DVD]
by songsf4s | 2009-07-15 00:39 | 映画・TV音楽