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Exodus by the Lively Ones (『栄光への脱出』より その3)
タイトル
Exodus
アーティスト
The Lively Ones
ライター
Ernest Gold
収録アルバム
The Best of the Liveley Ones
リリース年
1963年
他のヴァージョン
Ernest Gold (OST), the Mantovani Orchestra, Connie Francis, Henry Mancini, Earl Grant, The Gene Rains Group, Les Baxter, Martin Denny, Ferrante & Teicher, Grant Green, the Duprees, the Tornados, the Originals
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前回に引きつづき、Exodusのカヴァー盤、今回はコンボものを端から見ていきます。

正直にいうと、あまりいいものはありません。どういうわけか、この曲をコンボでやると、大袈裟な曲調を揶揄しているように聞こえる傾向があります。いや、じっさいに冗談半分のものもあると思うのですが、まじめにやったものまで、なんだかジョークじみてに聞こえてしまうのです。

◆ ロック系コンボ二題 ◆◆
まず、意図的なおちょくりとハッキリしているものからいきましょう。ライヴリー・ワンズ盤です。お客さんのなかには、『パルプ・フィクション』で流れた、このグループのSurf Riderのひどさにコケた方もいらっしゃるでしょう。ヴェンチャーズのオリジナルを知っていると、スクリーンのなかに乗り込んでいって、ドアホ、こんなひでえヴァージョンを使うな、と監督を殴らずには腹の虫がおさまらんてなもんでした。

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ああいうバンドなので、どんなものをやっても、褒められる気遣いだけはありませんが、「馬鹿さと下手さ 空回りするさ」と、はちみつぱいもかの〈塀の上で〉で歌っているわけで(歌っていないってば!)、ひどさ、下手さ、馬鹿さを楽しむことこそ大人のあらまほしき姿、嫌がらせでサンプルをアップしてみました。いや、あのSurf Riderよりずっとマシな出来、月並みなひどさなので、ご安心めされよ(なんていわれても安心できないか!)。

ライヴリー・ワンズ

どうしてこういう西部劇のテーマのようなアレンジになってしまったのか、そこがよくわかりません。なんだかラムロッズないしはヴェンチャーズの(Ghost) Riders in the Skyを聴いているみたいな気分です。

f0147840_1541438.jpgエレクトリックなコンボでは、ほかにトーネイドーズ盤があります。ウソかホントかよくわかりませんが、いちおうライヴ録音ということになっていて、たしかにプレイも荒っぽければ、録音もよくありません。トーネイドーズの面白さは、ジョー・ミークがスタジオでいじりまわしたサウンドにあるわけで、ライヴが面白かったら、そのほうが驚きです。

◆ コーラス・グループ二題 ◆◆
オリジナルズというグループは、The BellsやI'm for Realといったヒット曲を聴くと、いいなあと思うのですが、ほかにはあまりいいものがありません。2曲もすばらしいヒット曲がありながら、結局、あまり知られるところなく終わったのは、モータウンが下り坂に入って、コンスタントにいい楽曲をあたえることができなかったからではないでしょうか。オリジナルズのころになると、サウンド的にもモータウンは時代遅れになっていくのですが、彼らはフィリー風サウンドで世に出たのだから、ギャンブル&ハフのようなライターがいれば、もっとヒットが出ただろうと思います。Right time, wrong placeでした。

f0147840_16361871.jpgせっかくヒットが出たのに、あとがつづかず、苦闘しはじめた1972年のアルバム、Def-I-Ni-TionsのオープナーがExodusでして、I'm for RealやThe Bellsでこのグループを知っている方は聴かないほうがいいと思います。しかし、ライヴリー・ワンズ同様、シャレだと思って聴くと、かなり珍で、そういう意味では楽しめなくもありません。バッキングも、ホントにモータウンかよというグルーヴで、ひとたびものごとがグレハマになると、みんなガタガタになちゃうのねえ、と人生の真実にふれることができるわけでして、すくなくとも退屈だけはしないヴァージョンです。

それにしても、この曲をアルバム・オープナーにもってきたということは、相応の意味が込められていると受け取れます。Exodusはユダヤ人の悲願を歌った曲(This land is mineと宣言している)で、それをブラック・コーラス・グループが歌うについては、やはり政治的、社会的意味がこめられていたのでしょう。それにしては、仕上がりはあまりにも冗談ぽくて、そこがグレハマですが。

ほかにコーラスものとしては、60年代前半に活躍した白人コーラス・グループ、デュプリーズのヴァージョンがあります。このグループはあまりきれいに声がミックスしません。ハイパー・スムーズな四、五声のハーモニーがあまり好きではないのですが、ぜんぜんスムーズではないというのも、それはそれで困惑させられます。ピッチを外したハーモニーの面白さというのは二声どまりなのかもしれません(ディランとジョニー・キャッシュ!)。

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しかし、ハーモニーはいまいち、全体としてのアレンジ、サウンドもうまくいっているとはいいがたいデュプリーズ盤にも、それなりに楽しめる一瞬があります。ホーン・アレンジに部分的に面白いところがあるのです。買ってから15年以上もたつ盤で、いまさら「新発見」なんかするなよな、と思うのですが、人生、そんなもんです。Exodusを取り上げたおかげで、趣味じゃないと打ち捨てたも同然になっていた盤が、まんざら無駄でもなかったことがわかり、ちょっとだけ得をした気分になりました。

いや、あくまでもちょっとだけです。ホーンだって、ダサいラインのほうが多いのですが、ほんの何カ所かのいいラインが、ほかがみんなダメなおかげで目だつのです。子どものころ、里山を歩いて、アケビの実を見つけて食べましたが、たとえていえば、そういう感じです。べつにうまいというほどではないけれど、ほのかな甘みがあって、いちおう食べ物のような気分がする、といったところ。

デュプリーズ

◆ ジャズ、エキゾティカ ◆◆
例によってジャズ系は、Exodusも生真面目にやっています。その生真面目ヴァージョンの最たるものがグラント・グリーンで、真面目さが幸いもすれば災いもし、プラス・マイナス・ゼロ、可もなし不可もなしの出来です。いたってノーマルなギター・コンボのプレイ。

f0147840_1657547.jpgしいていうと、ブルーズ・コード進行ではないので、インプロヴに入ってもまったくべつの曲になったような感じはせず、まだなんとなくExodusのような気分が残っているところが、非ジャズ・ファンには楽しめます。ただし、同じ理由から、最後にテーマにもどったときの、「やれやれ、やっと音楽にもどったぞ」という昂揚感は味わえません。

なるほど、ジャズというのは、我慢に我慢を重ねて退屈なインプロヴをやりすごし、テーマにもどった一瞬の爽快感を味わう、東映ヤクザ映画類似の快感(最後の10分の大暴れとその後の痴呆的放心状態を楽しむために、1時間20分の長きにわたって我慢に我慢を重ねる昭和残侠伝シリーズを、よもやお忘れではござんせんでしょうな)を追求するものなのかと、世にもくだらない洞察に到りました。そういう観点からいうと、グラント・グリーン盤Exodusは、テーマの爽快感とインプロヴの退屈さの落差が小さく、高低差エネルギーによる発電量は残念ながら僅少です。

f0147840_1659169.jpgマーティン・デニーが売れてのち、アルフレッド・アパカの引きで知られるようになったハワイのラウンジ・コンボ、ジーン・レインズ・グループは、当然ながら、エキゾティカないしはティキに分類されます。さりながら、ピアノ、ヴァイブラフォーン、アップライト・ベース、ドラムという、デニーのコンボと同じ編成ではあるものの、ジーン・レインズ盤Exodusには、それほど強くエキゾティカのムードは漂っていません。流行りものだから、とりあえずカヴァーしてみた、というだけじゃないでしょうか。BGMとしてはわるくありませんが、それ以上のものでもありません。

f0147840_16595268.jpgアール・グラントといわれて、At the End of a Rainbow(別題The End)を思い浮かべてしまう方、いやまあ、それが圧倒的多数派でしょうが、そういう方は、グラントのアルバムを聴くとコケるだろうと思います。The Endは突然変異的なヒット曲で、音楽スタイルからいっても例外、グラントの録音の多くは、ピアノおよびオルガンによるラウンジ・ミュージックです。歌はあくまでも余技、本職はピアニスト、オルガニストです。

当然、アール・グラントのExodusも前半はピアノ、後半はオルガンによるインストです。グラントは、同じ曲のなかでピアノとオルガンの両方を弾くというのはよくやっています。いや、それはいいのですが、Exodusは大まじめなのか、それともシャレなのか、よくわからない仕上がりです。シャレだとしたら笑えず、大まじめなのだとしたら、馬鹿馬鹿しくて付き合っていられないというところで、残念ながら不発ヴァージョンでした。まあ、不発で幸い、そうじゃなければ、全員、血管がぶち切れてあの世行きみたいな高血圧エンディングです。

これでアーネスト・ゴールド作曲のExodusについては終わりますが、次回はべつのExodusをいってみようと思っています。

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by songsf4s | 2009-06-15 23:49 | 映画・TV音楽