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バディー・リッチ・クリップ その2

バディー・リッチの両親はヴォードヴィリアンで、バディー自身も四歳のときからステージに立ち、妙ちきりんなかっこうのドラムを叩いていたそうです(ジョニー・カーソン・ショウでその写真が披露されている)。1917年生まれなので、成人したのはスウィング、ビッグ・バンドの時代でした。

ヴォードヴィル芸人としてスタートし、ドラマーとして本格的にキャリアをスタートしたのがビッグ・バンドの時代だったということが、彼のスタイルを決定づけたと思います。彼の特徴は、モダン・ジャズのプレイヤーとは異なり、ショウマンシップに富んだ楽しいプレイをする、ということに尽きます。地味に、渋く、などということは、きっと生涯に一度も考えたことがなかったのでしょう。どこまでも華やかに、とことん派手に、徹底的に目だちまくるドラマーでした。

前回ふれた両方の手で片手ロールをするとか、シンバルの両面打ちだとか、ハイハットを極端に低く、クラッシュ・シンバルの一枚も極端に低くセットする、といったドラマーだけが関心をもつディテールもあるのですが、そういうことは、まあ、この際、おいておきます。

◆ コミカル・プレイ ◆◆
ヴォードヴィリアンとしてスタートしたせいなのか、あるいは、もともとそういうキャラクターなのか、バディー・リッチは純粋主義者のミュージシャンならぜったいにやらないようなことをたくさんしています。



モダン・ジャズのドラマーに、こういうことをやってみないか、などといったら、ふつうは激怒するのではないでしょうか。しかし、バディー・リッチはミュージシャンである前に芸人なので、きっと「Why not?」のひと言で、この馬鹿馬鹿しい芸に挑戦することにしたにちがいありません。たとえバディー・リッチがマックス・ローチやグレイディー・テイトより下手だったとしても、こういうことを平気でやるというだけでおおいに共感できます。



マペット・ショウの一コマ。このときもバディー・リッチは、「Why not?」のひと言だったのではないでしょうか。見上げたヴォードヴィリアン根性です。

ジェリー・ルイスと(1965年)


以前にも書きましたが、ゲーリー・ルイスは「パパの友だちに、昔、すごく有名だったドラマーがいて……」という失礼な回想をしています。昔は有名で、「いま」は有名ではなくなったドラマーというのは、もちろんバディー・リッチのことです。ゲーリーはそのパパの友だちにドラムの手ほどきを受けたなどとのたまっていますが、もちろん、「スティックはこのあたりを握って、こうかまえる」といったことを、自宅の居間できいたなどといったたぐいの「手ほどき」にちがいありません。まったくの想像ですが、ゲーリーの「ドラミング」と称するものも、この「パパ」のプレイと懸隔のないものだったのではないでしょうか! つぎは記録が残っている最後のショウからのクリップです。



七十歳でこれだけ叩ければ、なにもいうことがありません。メル・トーメはリッチと仲がよく、わたしが見たリッチのバイオ・ヴィデオにも出演していましたし、リッチに関する回想記も出版しているそうです。メル・トーメはもちろんシンガーとしてもっともよく知られていますが、The Christmas Song (Chestnuts Roasting on an Open Fire)で知られるソングライターでもあり、アレンジャーでもあり、そして、ドラマーでもありました。探せば、ほかにもメル・トーメがドラムをプレイしているクリップがあります。メル・トーメのキャリアを読んでいて、チコ・マルクスのバンドでドラムを叩いていたというので驚きました。

◆ トーク・ショウの花形 ◆◆
ドラマーとしてこうした遊びをすることでわかりますが、バディー・リッチは天性のユーモリストです。当然、座談の名手でもあり、トーク・ショウのクリップがたくさん残っています。なかでもジョニー・カーソンとはタイムが合うのか、Tonight Showのものには笑えるクリップがたくさんあります。



画質は悪いのですが、生まれ変わるならブルース・リーになりたい、というこの馬鹿話は楽しめました。これもバイオ・ヴィデオに収録されていました。もうひとつ、Tonight Showから。



鉛筆型ドラムスティックというはちょっと欲しいですねえ。鉛筆にも、ドラムスティックにもならないでしょうが! つぎはマーヴ・グリフィン・ショウ。



◆ 映画ほか ◆◆
つぎは、お笑いというわけではないのですが、純粋な音楽ではなく、ヴォードヴィル芸の混入したプレイで、変わり種ではありますが、やはりおおいに楽しめます。

Ship Ahoy


これは1942年の映画Ship Ahoyのシークェンスで、映画のクレジットはトミー・ドーシー・オーケストラとあり、リッチはそのひとりとして出演したことになります。エレノア・パウエルのタップというのをはじめて見ましたが、ちょっとばかり感銘を受けました。

レニー・ブルース・ショウ


おそらく画像キャプチャーの際にレベルを上げすぎたせいでしょう、ピークでひどいノイズが出てしまっていますが、プレイとしてはもっともすぐれたもので、バイオ・ヴィデオで見たときは唸りました。

ドラマーワールドの記事にヴィデオへのリンクがあります。たぶんQuicktimeのプラグインでしょう、なにかが必要だというので、わたしはパスしましたが、このなかにもいいものがあるだろうと思います。わたしがもっているバイオ・ヴィデオには、バディー・グレコがピアノというコンボでのすごいプレイがあり、これも探してみたのですが、結局、YouTubeでは発見できませんでした。
by songsf4s | 2009-06-05 23:50 | ドラマー特集