人気ブログランキング |
My Rifle, My Pony and Me by Dean Martin and Ricky Nelson (OST 『リオ・ブラボー』より その1)
タイトル
My Rifle, My Pony and Me
アーティスト
Dean Martin and Ricky Nelson
ライター
Dimitri Tiomkin, Paul Francis Webster
収録アルバム
Rio Bravo
リリース年
1959年
他のヴァージョン
Dean Martin (solo studio version)
f0147840_22281563.jpg

あるとき、ハワード・ホークスが、テネシー・ウィリアムズとクラーク・ゲイブルをドライヴに誘いました。ウィリアムズとゲイブルは初対面でした。ホークスが二人をバックシートに乗せて走りだすと、ウィリアムズは「ゲイブルさん、お仕事は?」と聞きました。ゲイブルが「映画に出ています。ウィリアムズさんは?」というと、ウィリアムズは「芝居を書いています」とこたえました。

f0147840_22353776.jpg
ハワード・ホークス

わたしはこれを読んで大笑いし、ひところ、あちこちで開陳していました。でも、最近になってこの話を思いだし、あれ? と思いました。こういうこぼれ話にはよくあることですが、これはいくらなんでも出来すぎです。この話がどうして広まったのか、状況を想像してごらんなさいというのですよ。テネシー・ウィリアムズにも、クラーク・ゲイブルにもその「チャンス」はありません。だって、二人とも、この会話の珍妙さを自覚していないのです。この状況がたまらなく可笑しいと感じた当事者は、ハワード・ホークスただひとりです。

f0147840_2235563.jpg
テネシー・ウィリアムズ

ね? 作為が見え見えじゃないですか。きっとこんな会話はなかったのです。ただ、ウィリアムズとゲイブルがいっしょにいるところを見たかなんかしたホークスが、「二人とも他人のことになんかまったく関心がなくて、世間知らずだからな。お互いの名前を知っていたら、そのほうが驚きだ」なんてことを思い、これから撮る映画の脚本にささやかなラインを加えるぐらいの気分で、「大劇作家、大人気俳優に遭遇す」の場面をちょいちょいとでっち上げたにちがいありません。まったく、ハワード・ホークス作品の一場面のようによくできた小話です。二人の人間をひとまとめにして、キレのよい一撃必殺の人物批評をやってのけたわけで、ホークスは作家になったとしても大成功したでしょう。

◆ ヴェテランとルーキーのデュエット ◆◆
さて、本日はそのハワード・ホークス監督の『リオ・ブラボー』です。どうもブラ「ボー」が気色悪いので、これで義理は果たしたことにし、以下、古い邦題を離れ、『リオ・ブラヴォー』と書かせていただきます。どうせどこかの映画会社のだれかが書いた邦題、金科玉条のようにありがたがる必要など、どこにもありません。会社は、テレビ放映するときやパッケージ商品にするときに、都合次第でひょいひょい副題を付けちゃったり、ひどいときは改題しちゃったりするわけで、おう、そうかい、なら、こっちも勝手にやらせてもらうぜ、です。

f0147840_2325658.jpg

さて、20年ぶりの『リオ・ブラヴォー』再々見、やはり、なかなか楽しめました。ホークスとは相性がよく、これは面白くないなあ、と思ったことはあまりありません。まあ、ジョン・フォード、フランク・キャプラ、ハワード・ホークスでひとつのリーグを形成するくらいだから、当然というべきでしょうが。

さて、この映画を見直す気になったのは、ディーン・マーティンとリッキー・ネルソンのデュエットが印象に残っていたからです。



ふーむ。わたしはリックのファンですが、これはやはり、勝負あった、ですね。ディノに一日の長どころか、百日の長ぐらいあるようで、駆け出しの若造とは格が三、四段ちがうことが、立ち会いの数小節だけではっきりわかります。ただ、リックのためにいえば、初々しい魅力はちゃんと発揮していて、一気に押しまくられて土俵を割った、という印象ともちがいます。もともと、バラッドにぴったりの声をしているので、ディノ抜きで、ひとりで歌っていれば、そこそこ聴かせただろうと思います。

f0147840_2345764.jpg

しかし、こういうデュオはほんとうにけっこうですなあ。こういうヴォーカル・アレンジは大好きです。ほんとうは、あとから行くほうが得で、格からいったら、ここはリッキーが先に行き、おもむろにディノが登場するべきところですが、映画の演出の都合かなにかで、逆順になったように感じます。おかげでリックは二重に損をしています。

では、ディノがひとりでこの曲を歌うとどうなるか? サンプルをどうぞ。

サンプル1

べつにどこも悪くはなく、かなりいいと思いますが、デュエット・ヴァージョンを知っていると、リックの声がからんでこないことを不満に感じます。しかし、このギターのトーンはなんだか懐かしいというか、小林旭の「ギターを持った渡り鳥」のオブリガートは、このギターがヒントだったりするのかもしれません。

f0147840_2384428.jpg

ついでに小さなキズをいっておくと、リックがずっとFを押さえつづけているのはいかがなものか、です。ディミトリー・ティオムキン作曲とはいえ、基本的には2コード、それもC-Fなのだし、リックはギターが弾けるのだから、音に合わせてきちんとコードの押さえ方を変えるべきでした。だれも見ていない、なんて思ってはいけないのです。たくさんの人がちゃんと見て、シンクさせろよ、と不満を感じているものなのです。

◆ 同趣向のデュエット ◆◆
f0147840_23121025.jpgさて、こういうタイプのヴォーカル・アレンジを好み、また、その効果をよく知っていたのはスティーヴ・スティルズです。CS&Nのデビュー盤に収録されたWooden Ships(はっぴいえんどの「かくれんぼ」の元歌とされる)では、デイヴィッド・クロスビーとのデュエットで同趣向の演出をしていますし、その後のマナサスのBoth of Us (Bound to Lose)でも、同様に、クリス・ヒルマンと交互に歌ったり、ハモったりというアレンジをしています。CS&Nはだれでもご存知でしょうが、マナサスをお持ちの方は少ないでしょうから、サンプルをあげておきます。リリース当時、よく聴いたアルバムです。一枚ものにして、トラックを絞り込めば、かなりいいアルバムになったでしょうが、惜しいかな、ダブル・アルバムで焦点がボケました。

サンプル2

こういうスタイルは、「タイプの異なる声の二人が、まず交互に歌って、お互いのカラーのちがいを見せ、なるほどねえと思ったところで、コーラスをハモる」というように定式化していいでしょう。二種の異なる声の組み合わせがいいと、じつに楽しめるものになるのですが、リオ・ブラヴォーで歌われたMy Rifle, My Pony and Meも、映画の設定としてもヴェテランと若手のガンマンという組み合わせなのを、それを歌のほうにも敷衍して、おい、若いの、まだまだだな、とディノが軽くいなしたという印象で、おおいに楽しめました。

本日はこの曲だけであっさりおしまいにし、次回はディミトリー・ティオムキンによる『リオ・ブラヴォー』のスコアとべつの挿入歌を検討したいと思います。

f0147840_2315134.jpg

by songsf4s | 2009-05-03 23:15 | 映画・TV音楽