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Star Trek (TV OST 『宇宙大作戦/スター・トレック』より)
タイトル
Star Trek
アーティスト
N/A (TV OST)
ライター
Alexander Courage
収録アルバム
Television's Greatest Hits
リリース年
1966年
他のヴァージョン
Billy Strange, the Secret Agents, Fred Steiner
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ついでといっては、ファンの方にお叱りを受けるかもしれませんが、スター・トレックの本編第一作の音楽を取り上げた以上、テレビのほうのテーマも取り上げておいたほうがいいような気がしてきました。そこで、本日も前回に引きつづき、エンタープライズに「転送」です。

いきなり、よけいなことを思い出しました。ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの初期の作品に「ビーム・アス・ホーム」という短編がありました。これが「SFマガジン」に掲載されたとき、スター・トレックの「転送してくれ」(Beam me up)をもじったタイトルだ、と書かれていました。

そのとおりですが、これを読んだとき、「おいおい、それだけで終わりじゃないだろ、まだあるじゃないか」と思いました。グラム・パーソンズというかフライング・ブリトー・ブラザーズのカヴァーで知ったのですが、マール・ハガードにSing Me Back Homeという曲があります。カントリーのほうではよく知られた曲なので、ティプトリーもこの曲を聴いたことがあったのではないかと、わたしは想像しました。発想の原点としては、音楽のほうに立脚していたのではないかと感じたのです。

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(上)アフリカで「ブロンドの女神」とあがめられていたころのアリス・シェルドン、すなわち後年のジェイムズ・ティプトリー・ジュニア。(下)ティプトリーの伝記。謎多き生涯なので、伝記が出るのも当然だろう。読みたくなった。

ジェイムズ・ティプトリーは、わたしにとっては「最後のSF作家」で、彼女が死んでからこっち、SFを読まなくなってしまい、長いあいだ買っていた「SFマガジン」もそれきりになってしまいました。「接続された女」を読んだときは無茶苦茶に興奮したものです。すごい人だったんですがねえ。でも、彼女のようなオフビートなタイプはジャンルのメインラインから外れてこそ生きるのですが、ウィリアム・ギブソンが出てきたあたりから、そっちがメインになり、アーサー・C・クラーク的なものは脇筋になってしまい、主客転倒してしまったようです。この20年ほど、ぜんぜん読んでいないので、「ようです」としかいいようがないのですが。

◆ 出し遅れの証文リリース ◆◆
さて、スター・トレックのテーマ、お馴染みの曲なので、ゴチャゴチャ書くこともなさそうです。今回調べて、え、そうだったっけ、とあわてたのは、1966年制作だということです。日本では翌年から放映かよ、と驚いて『ザッツTVグラフィティ』を調べたら、1969年4月からとありました。そうですよねえ。「スパイ大作戦」よりずっとあとに出てきて、あ、タイトルを真似した、と思った記憶があるので、1966年じゃあ、「スパイ大作戦」と同じ年じゃないか、と仰天したのです。わたしの記憶違いじゃなくて、安心しました。

ともあれ、初期のオープニングとエンディングをご覧あれ。



なぜこんなに放映が遅れたかといえば、たぶん、こういうのは受けないというのでお蔵入りし、公開の予定はなかったのに、『2001年宇宙の旅』がたいへんな評判になり、ついでにアポロ宇宙船の月着陸なんていうのもあって、宇宙がブームになったものだから、3年前の古物だけれど、ためしに放映してみたのでしょう。ひどく遅れましたが、とにもかくにも放映してあったし、その後も再放送や続篇の放送があったおかげで、本編になったときにも説明不要で、まずはめでたいことでした。ノヴェライゼーションの翻訳本もよく売れたらしく、古本屋ではしばしばゴミ扱いされていました。

しかし、テーマ音楽を検討するとき、1966年と69年では天と地のちがいです。Strangers in the Nightの年に生まれたか、「ウッドストック」の年に生まれたか、ですからね。あいだにサイケデリックの1967年がはさまっているので、ここにものすごい断層があり、この前後で、いってみれば、明治生まれか、昭和生まれか、ぐらいの違いが生まれるわけです。

だから、この曲がやや古めかしいサウンドになっているのは、しかたないというか、当たり前というか、そうなるわけで、こちらの見方も大きく変わります。いや、しかし、66年は微妙ですねえ。わたしの考えでは、ドラマのテーマが大きく変化するのはまさしく66年なのです。そのへんのことは改めて例をあげてみていくつもりですが、この年のいくつかのヒット・ドラマによって、旧派のオーケストラ音楽はテレビ・ドラマの世界では少数派に転落するのです。いや、そこに踏み込むのは来月ごろの予定なので、ここではこれ以上くどくはいいませんが。

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66年と69年ではまったくちがいますが、それでもやはり、これだけの年月がたつと、その程度の違いはゴチャゴチャいうようなことではなくなってしまうようで、いまになると、たとえ、サウンド的には古めかしくても、それはそれで「味」のような気もしてきます。そもそも、この曲のメロディー・ラインも、ストレートなメイジャー系のものではなく、ちょっと妙なところがあり、いまになると、そこがおおいに魅力的に響きます。69年だったら、ソプラノのヴォーカルは、シンセサイザーで演奏されたでしょうけれど、いまになれば、シンセじゃなかったのはむしろ幸いだったと思えます。TVテーマ音楽集には欠かせない一曲でしょう。

◆ ビリー・ストレンジのカヴァー ◆◆
有名な曲のわりには、わたしが知っているこの曲のカヴァーはたった3種類です。それも、自分で盤をもっているものはなく、みなよそで聴かせていただいたものばかりです。

聴いてみたいという方は、例によって、右のリンクからAdd More Musicにいらっしゃり、ビリー・ストレンジのアルバムDyn-O-Myte Guitarをダウンロードなさってください。「Rare Inst. LP」ページのNo. 48です。

このアルバム、ビリー・ストレンジのものとしては、1984年という、飛び地のように1枚だけ離れた時期に録音されています。しかし、ベースとギターのひとり(ニール・ノーマン)をのぞけば、プレイヤーは60年代の録音でお馴染みの人たちばかりです。

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これは「ビリー・ストレンジのギター・アルバム」ではありません。オーケストラ・リーダーとしてのビリー・ストレンジのアルバムなのです。だから、ボスはギターを弾いていません。リード・ギターはアル・ケイシーかデニス・バディマーがプレイしたのでしょう(詳しいパーソネルはAMMの「レア・インスト」ページをご参照あれ)。

フロア・タムというか、ロウ・ピッチのタムの音が60年代、70年代前半よりチープになってしまい、ああ、時代の流れには逆らえないなあと、あの時代のプラスティック・ヘッドのイヤな音に眉をひそめますが、それでもハル・ブレインはいかにも彼らしい派手なフィルインを連発していて、この「同窓会」に花を添えています。なんたって、エンジニアまでスタン・ロスなんだから、意識的に昔のメンバーを集めたとしか考えられないのです。

ということで、オールド・タイマーとしては、なかなか楽しいカヴァーで、百パーセントの満足とはいかないものの、80年代にもこういうメンバーで録音を残しておいてくれたことに感謝したくなります。

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こういうものもある。ニモイの歌は、うーん、なんといったものか、「正確なピッチとはいいがたい」といったあたりか!

◆ さらにBeyond the Horizon of Time ◆◆
このビリー・ストレンジ盤Star Trek Themeを聴いて、あれをベースにしているのじゃないかな、と思った曲があります。ヴェンチャーズの65年の録音、Geminiです。

サンプル

ディスコグラフィーを見ると、これは65年のシングル、La BambaのB面に収録されたものだそうですが(そういう記憶はなく、EPで聴いたのではないかと思う)、La Bambaなんかよりずっと出来がよく、比較にならないくらいで、AB面を間違えたと思います。逆にするべきでした。

こういうことばかりいっていると、Vファンがイヤがるのですが、Geminiのプレイはタイムが安定して、リラックスしたグッド・グルーヴをつくっています。いつもタイムが早くて突っ込みそうな営業用ヴェンチャーズの仕事には思えません。ドラムまで含め、外国旅行用メンバーとまったく無関係な、卓越したプロのみで録音したトラックだと推測します。オブリガートのギターとブラシ・ワークがすばらしい!

で、またここからさらに源流へとさかのぼると、Geminiは明らかにトーネイドーズのTelstarを元にしています。テンポとリズム・アレンジ(両者ともドラムはブラシで16分を叩きつづける)は同じだし、冒頭とエンディングのSEも、ヴェンチャーズ自身のTelstarのカヴァー・ヴァージョンにそっくりの音を使っています(ジョー・ミークのオリジナルのSEはまったく異なる)。

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こうなると、テレビ版Star Trekのテーマはこの流れに乗っているのかどうかたしかめたくなってきます。しかし、作者のアリグザンダー・カレッジは、若いころに聴いたBeyond the Blue Horizonのあるヴァージョンのアレンジにインスパイアされた、といっています。うーん、古い曲になるとわが家にはわずかにしかないんですよねえ。なんとか、アーティー・ショウ、スタン・ケントン、フランキー・レイン、4エイシーズ、シド・バースという5種類だけ聴いてみました。

あっ、これだ、これにちがいない、というのはありませんが、しいていうと、1956年のシド・バースのアルバム、From Another World収録のヴァージョンは、イントロとアウトロになにやら電子音のSEが入っていて、そこだけはアルバム・タイトルどおり、宇宙ものの雰囲気があります。音楽がはじまるとノーマルなビッグ・バンド風サウンドなのですがね。

サンプル2

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カレッジは1920年生まれだというので、バースのBeyond the Blue Horizonがリリースされた56年には三十代半ば、「若いころ」というにはちょっと苦しいのですが、「若いころに聴いた曲が元になっている」と語ったのは引退後のことでしょうから、三十代半ばも「若いころ」に繰り入れていいような気がします。ま、微妙ですが。

こうなってくると、事態は混迷してきて、わたしには判断のつけようがないのですが、そもそも、ジョー・ミークもTelstarを録音するときに、シド・バースをヒントにした、なんていう飛躍した推論はいかがでしょう? それなら、両者が結果的に似ても不思議はなく、ビリー・ストレンジ盤Star Trekは、そういう流れがずっと下ってきて、最後にもう一度、二者が統合された、というきれいな結論になりそうな気がします。

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こういうのもある。Leonard Nimoy and William Shatner "Spaced Out"とくるのだから、なかなか笑えるタイトル。しかし、ナメてかかると、これがけっこういいグルーヴで汗がじわっとわく。ハル・ブレインが叩いたトラックがたくさんあるのだ! まったく、どこにでもいるんだから呆れる。

by songsf4s | 2009-04-24 23:55 | 映画・TV音楽