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The Enterprise by Jerry Goldsmith (OST 『スター・トレック』より)
タイトル
The Enterprise
アーティスト
Jerry Goldsmith (OST)
ライター
Jerry Goldsmith
収録アルバム
Star Trek the Motion Picture (OST)
リリース年
1979年
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前回の『2001年宇宙の旅』がむやみに重かったので、今日は軽くさっといきたいと思っていますが、はてさてどうなりますことやら。

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本日の曲は、1979年の『スター・トレック』(テレビでの邦題は『宇宙大作戦』というダサダサの代物だったが、きっと『スパイ大作戦』のヒットにあやかったのだろう!)劇場版第一作の重要なシーンで使われた、ジェリー・ゴールドスミス作のThe Enterpriseです。

しかし、テレビでは大ヒットした『スター・トレック』のスクリーン・デビューは、成功とはいいかねるものでした。いや、そうはいっても、箸にも棒にもかからないほどひどかったわけではなく、だれかべつの監督がやれば成功したかもしれないという、セカンド頭上へのハーフ・ライナーみたいな凡打であり、キャッチャー・フライではありませんでしたが。

間違いの最たるものは、テンポが遅くて、冒頭でややダレ、中盤でむちゃくちゃにダレ、ラストでもちょっとダレと、ダレっぱなしだったことです。この素材そのままで、いっさい撮り直しをしなくても、3割ぐらいのショットを切って縮めるだけで、そこそこの映画ができた可能性があると思います。長ったらしいショットが多すぎるのが最大の難点でした。

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◆ 新型機お披露目ショウ ◆◆
作品としては失敗しても、部分的には見るべきところがある、というのはよくあることで、『スター・トレック』にも楽しめるシークェンスがいくつかありました。とりわけ、カーク提督が強引に現場復帰を果たし(テレビ・シリーズのあとで出世してしまい、地上勤務になっていたという心)、軌道上ステーション(floating officeといっている)からポッドに乗って、新型エンタープライズの姿をゆっくりと眺めるシーンは、子供心をおおいに刺激されました。



こういうのを面白い感じる心のありようというのは、われながらよくわかりませんが、男の子の多くは幼児のころにそういう心性を見せ、大人になってそれが消える人もいれば、わたしのように、年をとっても依然として幼児とさしたる懸隔がないままの人間もいるようです。

このシークェンスには視覚的にも刺激されたのですが、音楽にもおおいに感銘を受けました。スター・トレック・ファンとしては、この新しいエンタープライズが登場する場面でおおいに盛り上がりたい、というか、セコいテレビのときに鬱積した憤懣をぶちまけ、溜飲を下げたいのです。美しく、かつ、スケール感のある映像を希求しているわけで、当然、音楽にもそれに見合ったスケールが求められます。ジェリー・ゴールドスミスは、そのファンの要求に百パーセント応えるスコアを書きました。不満の多い出来にもかかわらず、映画館を出るときに気分がよかったのは、このシークェンスの映像と音楽のおかげでした。

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サウンドトラック・アルバムの切り分けによれば、この曲にはThe Enterpriseというタイトルがつけられています。しかし、この直前の宇宙ステーションの場面から、すでに「宇宙舞踏」ははじまっていて、そのFloating Officeという曲から、このThe Enterpriseまでを一連の曲と捉えるべきでしょう。どちらも好ましい曲です。ついでにいうと、この直後に出てくるLeaving Drydock、その名のとおり、ドックからの出発シーンで使われる音楽も、この「一連」に繰り込んでいいような気がします。

検索していて、別ヴァージョンというのにぶつかったので、一応、貼りつけておきます。たぶん、オルタネート・テイクの音を既存映像に嵌めこんだのでしょう。



◆ 『2001年』の影 ◆◆
ロバート・ワイズは『2001年宇宙の旅』を意識しすぎたのではないでしょうか。『2001年』は人類が「創造主」を探しに行く映画でしたが、『スター・トレック』(アメリカではTMPまたはStar Trek Iと略される)は、異星の機械生命体が「創造主」を求めて太陽系にやってくる物語でした。

そして、どちらの映画も、極度に抽象化され、ほとんどそれと読み取ることができない性行為類似の表現があり、その結果、生命体はべつの次元へと昇華されるという結末でした。宇宙船ディスカヴァリーのデザインは精子をモティーフにしている、という解釈は正しいと考えます。だって、最後には「スター・チャイルド」が誕生するのですから。

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ディスカヴァリーの頭でっかちなオタマジャクシ型デザインが暗喩するものは?

『スター・トレック』では子どもは産まれませんが、その前提となる行為は営まれるわけで、「ヴィージャー」と人類のあいだに、半機械生命体が産まれたにちがいありません。

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機械生命体と人類の合体。これを見て、『バーバレラ』のジェイン・フォンダとデイヴィッド・ヘミングスのシーンを思いだして、思わず笑ってしまった。

そういう骨組に異存があるわけではないのですが、じっさいの演出にはあくびが出ました。エンタープライズが機械生命体の「雲」の内部に入り込んでいくシークェンスは、『2001年』の「スペース・コリダー」を意識したにちがいないのですが、あちらのスピード感のまえでは、『スター・トレック』はただただ鈍重に見えました。いや、発想もデザインもそれなりに面白いのですが、なんせ変化が遅く、編集も間延びしていて、だんだん、さっさと話を先に進めろや、とイライラしてきます。

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エンタープライズは摩訶不思議な巨大構築物のなかに入り込んでいく。このアイディア自体はいいのだが、演出と編集はいただけなかった。

そして、結論にたどり着いたときには、なんだ、『2001年』をひっくり返しただけか、となってしまうのです。きちんとつくっていれば、『2001年』の記憶をうまく借用して、それなりのエクサイトメントをもたらすことができただろうに、ロバート・ワイズまたはジーン・ローデンベリーが計算違いをしたのでしょう。

そんなぐあいで、出来上がりは満足のいくものではありませんでしたが、あのドライドックのシーンがあるから、それでいいのです。ジェリー・ゴールドスミスのスコアも、あの3曲ばかりでなく、おおむね楽しめるものでした。

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たしか、ダグラス・トランブルがいっていたのだと思うが、モデルにスケール感をあたえるのは豊富なディテールなのだという。『エイリアン』や『スター・ウォーズ』の宇宙船は、この原則にしたがってゴチャゴチャとさまざまな構造物が加えられているが、それとは対極にある、のっぺりしたエンタープライズは、スケール感をあたえるのがもっともむずかしいタイプのデザインで、トランブルは機体表面に細かいテクスチャーを加えて、すこしでも大きく見せようとした。

それにしても、今回、『2001年宇宙の旅』と『スター・トレック』をつづけて取り上げてみて思いましたが、宇宙ものだけは劇場のスクリーンで見ないと、興趣半減どころか、9割減です。ホーム・シアターなどとご大層なことをいったところで、つまるところ、ただのデカいテレビにすぎませんからねえ。あの漆黒の宇宙に飛び込んでいく感覚は、劇場でしか味わえません。また大劇場で『2001年宇宙の旅』を見たいものです。

◆ 嫁ひとりに婿二人? ◆◆
うかつなことに、スター・トレック・シリーズの新作がまもなく公開とはつゆ知らずに、この稿を書きはじめてしまい、検索をかけてはじめてそのことに気づきました。



なんだかスター・トレックというより、スター・ウォーズ・シリーズの後期のものに近い絵作りのように見えます。あの「カーク」と名乗った少年は、ジェイムズ・T・カークの息子とか孫とか曾孫とか、そういう設定なのでしょう。あるいは、ほかならぬジェイムズ・T・カーク自身の若き日の冒険へと遡行した、という設定の可能性もありますが。

どういう意味なのかと首をかしげているのですが、新作の邦題も『スター・トレック』のようです。どこを見ても、Star Trek the Motion Pictureの邦題であった『スター・トレック』と区別する文言が見あたりません。わたしが勘違いをしているのかと思って検索をかけたのですが、やはり1979年製作のStar Trek the Motion Pictureの邦題は『スター・トレック』です。

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いや、いくら映画輸入会社が非常識でも、そこまで無茶をするとは思えないのですがねえ。同じシリーズに同じタイトルの二本の映画があるなんて、かの大チョンボ、『続・荒野の用心棒』のさらに上をいく空前の愚行になってしまいます。30年まえのスター・トレック劇場版第一作と、今年の新作が同じ邦題だなどというのは、わたしの誤解であることを祈っております。

『続・荒野の用心棒』がどれほど大馬鹿なタイトルだったかということについては、『夕陽のガンマン』に書いておいたので、ご存知ない方はそちらをご覧あれ。

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by songsf4s | 2009-04-22 23:55 | 映画・TV音楽