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The Good, the Bad and the Ugly(OST 『続・夕陽のガンマン』より)
タイトル
The Good, the Bad and the Ugly
アーティスト
Ennio Morricone (OST)
ライター
Ennio Morricone
収録アルバム
The Good, the Bad and the Ugly (OST)
リリース年
1966年
他のヴァージョン
Billy Strange, Hugo Montengro, the 50 Guitars, Henry Mancini, Enoch Light, Leroy Holmes, Hank Marvin, the Ventures
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さすがに春到来ともなると花々はすごいことになるもので、今日の散歩で見たのは、連翹、オキザリス、桃(早い!)、庭梅、 灯台躑躅(まだ蕾)、馬酔木、白木蓮(なかば散ってしまった)、雪柳、花韮、辛夷、木瓜、姫踊子草などなど。花ではありませんが、大葉紅柏という、新芽が真っ赤な低木も芽を出しはじめています。わが家では鈴蘭水仙が開花しました。やや寂しげではあるものの、なかなか可憐な花です。

肝心の染井吉野は、やはり開花にブレーキがかかったのか、一昨日みたときとたいしたちがいはないようで、この週末はまだ見ごろには遠く、週なかばから来週末にかけてがピークになりそうな気配です。早めに開花した株はだいぶ葉が出てしまったものが多く、なんとも味気ないありさまになっています。

◆ セヴンスの導入 ◆◆
前回に引きつづき、「名無しのガンマン」シリーズ、今回は第三作にして、シリーズのどん詰まり、『続・夕陽のガンマン』です。前回、ご説明したような輸入会社の愚行がなければ、『新・荒野の用心棒』というタイトルが付いたであろう作品ですが、まあ、すでに黒澤の『用心棒』とはおよそ関係ないところにたどり着いているので、どちらにしろ、それはどうでもいいことですが。



第一作がひとり、第二作がふたりと、シリーズがつづくにつれてガンマンが増えつづけ、今回は三人の対決になりますが、テーマ曲のほうも、このThe Good, the Bad and the Uglyが、ギター曲としてはもっとも弾きにくく感じます。そのこととまんざら無関係でもないのですが、だれもがテーマだと勘違いした『荒野の用心棒』挿入曲Titoliから『夕陽のガンマン』、そしてこの『続・夕陽のガンマン』と、「哀愁度」は右肩下がりで低下しています。

The Good, the Bad and the Uglyまでくると、演歌がまったくわからないアメリカ人にも了解できる音楽といえるでしょう。そもそも、ストレートなマイナー・スケールではなく、セヴンスの音が入っているため、マイナーの味わいは薄くなっています。たんに変化を求めてそうなっただけかもしれませんが、アメリカ市場を意識した結果なのかもしれないと感じます。

◆ レッキング・クルーによるカヴァー ◆◆
たぶん、そうした変化がもたらしたものでしょうが、この曲はイタロ・ウェスタンのテーマとしてははじめてビルボードにチャートインします。OSTではなく、ヒューゴー・モンテネグロのカヴァーです。この時期のモンテネグロのものはみなレッキング・クルーの仕事で、ドラムはハル・ブレイン、ベースはキャロル・ケイでしょう。



どこといって停滞するところのない、いたってスムーズなアレンジ、レンディションで、まずは文句のないところです。二本のギターを重ねたところが、いかにもクルーらしいところ。

クルーがらみのカヴァーを先に見てしまいます。ビリー・ストレンジは、『夕陽のガンマン』同様、Great Western Themesでカヴァーしています。なんだかむやみにテンポが速く、どういうわけか、ハル・ブレインがむちゃくちゃに叩きまくっています。わたしの好みとしては、ここまで叩くのはどうだろうかという感じで、それほど好きではありません。

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50ギターズもやはりアルバムEl Hombreでカヴァーしています。OSTではなにか笛のたぐいでやっているラレラレラという5音のリックは、ものすごくシンプルなだけに、強弱のつけかたがひどくむずかしく、アタックの強い楽器でやると、おそろしくぎくしゃくしたプレイになってしまいます。50ギターズはこのリックを、最初はギターで、後半はトランペットでやっていますが、とちらもアクセントに違和感があり、いい出来とはいえません。

ヘンリー・マンシーニは、このリックを笛のたぐい(オカリナらしい)でやっていて、そこは違和感がないのですが、うーん、どうでしょうかねえ。マンシーニにしてはめずらしいことですが、どこにもいいところのない完璧な失敗だと感じます。The Big Latin Bandというアルバムに収録されているので、リズム・アレンジはチャチャチャ風なのですが、大編成のホーンはマーチング・バンド風、というのがどうも水と油です。

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◆ その他のカヴァー ◆◆
クルーと無関係なカヴァーとしては、まずはイーノック・ライトのものがあります。これも納得の出来とはいいかねます。どうもスムーズではなくて、もうちょっとなんとかなるんじゃないのかなあ、とイライラします。マンシーニもそうですが、この威勢のいいホーンが邪魔で邪魔で癇に障ります。アメリカ製西部劇の常識に近づけようとしたのでしょうかねえ。ド演歌はアメリカでは毛嫌いされるというのは理解できますが、こんなに元気いっぱいの大西部爆走サウンドにしてまで、マイナーの臭みを取り去る必要があるのでしょうか。ここまでやるのだったら、はじめからマイナーの曲はやらないほうがいいでしょう。

f0147840_025834.jpgハンク・マーヴィンは、ギターについては、さすがは、というプレイなのですが、バックのサウンド、とくにドラムはわたしには悪い冗談にしか聞こえません。80年代以降、音楽に興味を失ったのはドラムのせいでした。

ヴェンチャーズはただ笑うしかない出来です。君たち、そこに正座しなさい、いいかい、よく聴きなさいよ、そもそもグルーヴっていうものはね、なんてんで、思わずお説教を垂れたくなってきますぜ。

こうしてみると、The Good, the Bad and the Uglyというのはよほどの難曲なのか、はたまたアメリカ人はこういう曲のアレンジがとことん苦手なのか、どちらかと考えるしかないようです。ヘンリー・マンシーニがこれほどぎくしゃくしたアレンジをするなんて、まずありえませんからねえ。まったく不得手なタイプで、どうしていいかわからなくて途方に暮れたのでしょう。

結局、まともな音楽に聞こえるのは、モリコーネのOSTと、ヒットしたヒューゴー・モンテネグロ盤だけです。まったく予想外の結果で、こんなにひどいヴァージョンばかりだとは思ってもみませんでした。やっぱり、聞き比べというのはやってみるものです。

◆ パワーアップの果て ◆◆
シリーズものの宿命なのかもしれませんが、登場人物を増やし、複雑化路線をとってきた「名無しのガンマン」シリーズも、『続・夕陽のガンマン』でくるところまできたようで、予算はどっと増えたけれど、味は薄くなったという、シリーズものの末路のひとつの典型を示しています。

リー・ヴァン・クリーフの役柄は、前作とは似て非なる血も涙もない悪漢で、bad度99パーセントの濃厚なビター・チョコレート、この「改善」はおおいにけっこうでした。イーライ・ウォラック演じる「イヤな奴」も、現代でいえばジョー・ペシかダニー・デヴィートあたりが演じる役柄ですが(ついでに昔の日本映画でいうと佐藤允向き)、ウォラックのほうがずっとugly度が高く、イヤな奴率90パーセント、愛嬌者率10パーセントぐらいの比率で、絶妙のミクスチャーです。

クリント・イーストウッド演じる名無しのガンマンは、ここではThe Goodとなっていますが、たんに他のふたりほど悪いことをしないだけで、善人などではありません。要するに、三人とも、それぞれ別種のタイプの悪党であって、このキャラクター設定は、子どものときもおおいに気に入りましたし、いまも肯定できます。

しかし、その結果できた全体のプロットはどうでしょうかねえ。前半、「いい奴」と「イヤな奴」がコンビになって、賞金稼ぎをするところは笑えます。「いい奴」が「イヤな奴」を官憲に突きだし、賞金を受け取る。いざ縛り首という段になって、「いい奴」がライフルで縄を撃って「イヤな奴」を逃がし、あとで賞金を山分けする、という商売をはじめるのです。賞金の二重どり三重どりで、徹底的に儲けようという発想は、いかにもこのシリーズにふさわしいものでした。



ふたりの関係がこじれて、敵対することになってからの中盤のやりとりも、まあ、それなりに楽しめます。西部劇としては自然な展開です。問題はそのあとで、ふたりが南北両軍の戦いに巻き込まれたあたりからテンポが遅くなり、しまいには反戦映画のようになってしまうところが、いまになると違和感があります。ヴェトナム戦争が悪化した時期につくられたからなのでしょうが、観客はそういうソーシャル・コメントをイタリア製西部劇に求めていたかどうか……。



第一作にくらべれば天と地というぐらいに予算が潤沢になったことは、この南北両軍の戦いにあらわれていて、これまでのような低予算映画ではないことははっきりと伝わってきますが、それがよかったかというと、プロットの求心力が弱まっただけにしか思えません。楽しいシーンがたくさんあり、イーライ・ウォラックの演技も楽しめましたが、結局、大満足とはいかず、時がたつにつれて、もっとも印象の薄いイタロ・ウェスタン作品へと後退していきました。

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予算増大のおかげで派手な爆発シーンになったが、派手すぎて、スタントマンやキャメラの近くにまで石が飛散し、あやうく大事故。

このあたりでわたしはイタリア製西部劇への興味を失いましたが、それはわたしだけのことではなかっただろうと思います。イーストウッドはこの三作のヒットでハリウッドに返り咲き、主演作品を成功させることで、第一級のスターになり、二度と「都落ち」することはなくなります。

それにしても、今回、シリーズの全作を見直して、おや? と思ったことがあります。インディアンが登場しないことです。すでにこのころから、先住民の扱いがむずかしくなっていたのでしょうか。わたしは中学生だったので、そのへんの記憶がなく、少々考え込んでいます。

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by songsf4s | 2009-03-27 23:58 | 映画・TV音楽