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The Long Hot Summer by Jimmie Rodgers
タイトル
The Long Hot Summer
アーティスト
Jimmie Rodgers
ライター
Alex North, Sammy Cahn
収録アルバム
The Long Hot Summer (OST)
リリース年
1958年
他のヴァージョン
Gene McDaniels
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ちょっとこのページの上のほうをご覧になってください。いや、PC画面ならこの状態でも見えているのじゃないかと思います。18年前から、クリスマス以外は差し替えず、ずっと同じグラフィクスで恐縮なのですが、これの左のほうにThe Long Hot Sという文字が見えます。本日の曲はこれです。

当家の発足当初は、この曲は夏の歌として取り上げるつもりでいたのですが、いつもトップにおいてあるので、いまさらなあ、と思いもし、また、ひどく古風で、興味をお持ちになるお客さんもあまり多くなさそうな気もして、ついつい先送りになり、はや幾星霜、であります。

◆ ほぼ忘れられたポップ・シンガー ◆◆
子供の時も、大人になっても、ファンというわけではなかったのに、ここへ来て、なかなかいいじゃないか、なんでいままであまり聴かなかっただろう、と思うシンガーがいます。ひとりはLightnin' Strikesのルー・クリスティー、もうひとりがこのジミー・ロジャーズです。

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Jimmie Rodgers - His Golden Years


同姓同名、綴りも同じ、ジミー・ロジャーズというカントリー/フォーク/ブルーズ・シンガーがいて、たぶん、そちらのほうが有名、というか、音楽史的に重要な位置を占めていますが、本日のジミー・ロジャーズはポップ・シンガーのほうなので、お間違えなきよう。

昔は歌詞を逐一検討したものですが、もうそんな力があるかどうか、まあ、とにかく、聴いてみましょう。

サンプル(音質は落としてあります。ご了承ください)
Jimmie Rodgers - The Long Hot Summer

まずは第一ヴァース。

The long hot summer
Seems to know every time you're near
And the touch of a breeze gently stirs all the trees
And a bird wants to please my ear

ポール・ニューマン扮する流れ者が南部の町の名家に入り込んで、騒擾を起こし、(たぶん)カタストロフに至る、という映画らしく、ここは、その設定に沿ったヴァースなのでしょう。状況説明という感じで、あまり重要なことは云っていません。「きみがぼくのそばに来ると、長く暑い夏はそれを察知するみたいだ、そよ風が吹いて木々がそよぎ、鳥たちがさえずる」というように、夏を擬人化したところが作詞家の工夫、というところでしょうか。

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The long hot summer
Seems to know what a flirt you are
Seems to know your caress isn't mine to posess
How could someone posess a star?

第二ヴァースも相変わらず、seems to knowの主語はthe long hot summerで、非英語スピーキング・ピープルには尻がむずむずする構文ですが、まあ、詩なら、日本語でもこういう表現はあるかもしれません。

長く暑い夏はきみが浮気者だということを知っているらしい、きみの戯れはぼくが独占できないものだと承知しているようだ、というので、第二ヴァースはちょっと波乱が暗示されています。

つぎはブリッジ。マイナーに転じます。

But you may long for me, long before the Fall
Long before the winds announce that winter's come to call
And meanwhile I'll court you, and meanwhile I'll kiss you
Meanwhile my lonely arms will hold you strong

でも、秋が訪れるよりはるか前に、きみはぼくに惚れているだろうな、とまあ、主役はポール・ニューマンなんで、なんだって云えるのです。ブリッジ後半は、言い寄り、口づけし、強く抱きしめると、それまでのあいだ=秋がが訪れるまでのあいだの三大行動指針を列挙しています。

秋が訪れるはるか以前に、と強調しているのは、何か、急がないといけない理由があるのかなあ、なんて色気のない人間は思っちゃうのですが、もちろん、夏は恋の季節だから、秋になる前に、それまでのあいだに、と繰り返しているわけですな。こういうことが何も考えなくてもすっとわかるのが若さ、考え込んでしまうのがお年寄り、と云えます。

つぎはちょっと奇妙なパートで、ふつうならブリッジが終わってヴァースに戻るはずなんですが、メロディー/コード進行はそうならず、これまでに出てきていないパターンで、コーダというか、長いエンディングというか、そういうものです。

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And meanwhile the long hot summer slowly moves along
Oh so slowly moves along

それまでのあいだ、長く暑い夏の時間はゆっくりと流れるだろう、と云っているだけです。時間はある、たっぷり楽しめもうぜベイビー、と色男舌なめずりし、てなもんです。このへん、コード進行は面白いんですが、詞のほうはどうも。年を取ると、暑いときは静かにしてりゃいいじゃないか、なんてんで、色気も何もあったものじゃありません。

◆ フリーランスのいない時代 ◆◆
メロディーを書いたアレクス・ノースは、映画音楽好きのあいだでは有名なフィルム・コンポーザーではあるものの、活躍したのは遥か昔のことなので、少々駄言を、と思ったのですが、なんだか、昔、書いたような気がして、当ブログを検索してみました。やっぱり、詳しく書いていました。

The Blue Danube by the Berlin Philharmonic Orchestra (OST 『2001年宇宙の旅』より) その2

古い記事を読むのは面倒臭いという方のために簡単に。ノースが1955年の映画Unchainedのために書いたUnchained Melodyが大ヒットし、スタンダードとなり、膨大なカヴァー・ヴァージョンが生まれたことはよく知られています。

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Unchained Melodies: The Film Themes of Alex North

映画史的には『欲望という名の電車』のスコアで、4ビートを取り込み、ハリウッド映画音楽の流れを変えた、と云われています。がしかし、その点については、じっさいにこの映画での音楽の使われ方を確認し、そんな大げさなものじゃないと、過去のわたしは、ウィキのテキトーな記述を批判しています。

50年代半ばまでは、ハリウッドの撮影所はスタッフを社員として抱え込んでいたものです。ノースはどこの会社で働いていたのかと思ったら、20世紀フォクス、コロンビア、WBなど、じつにさまざまで、あの時代にはめずらしい、フリーランスのフィルム・コンポーザーだったようです。こういう映画史的に重要なことを書かないから、ウィキは駄目だって云うのです。

SecondHandSongsのUnchained Melodyページ

映画は見ていないのですが、The Long Hot SummerのOST盤がうちにはあり、その中から一曲をサンプルにしました。主題歌のライトモティーフを使った変奏曲です。

Alex North - Southern Belle

◆ ノースよりさらに大物 ◆◆
作詞のサミー・カーンは、当家では何度も言及しています。スタンダード・ソングを聴けば、いやでも名前を覚えてしまうくらいの大作詞家です。カーンの曲を扱った当家のバックカタログのいくつかをあげておきます。

It's Been a Long Time⇒お遊びのライヴ更新
この記事では石原裕次郎ヴァージョンを取り上げていますが、有名なのは、レス・ポールがギターを弾いた、ビング・クロスビー・ヴァージョンです。

The Things We Did Last Summer⇒The Things We Did Last Summer by Frank Sinatra
「看板」にはシナトラを立てていますが、レズリー・ゴアのヴァージョンが好きでこの曲を取り上げました。

Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow!⇒Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow! by Dean Martin
はじめはただの冬の歌だったのに、いつまにかクリスマス・スタンダードになった曲の代表。ディーン・マーティン・ヴァージョンが、彼のキャラクターと相まって群を抜く出来で、A Winter Romanceという素晴らしいアルバムの中でもひときわ素晴らしいレンディションです。

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VA - It's Magic: Capitol Sings Sammy Cahn

まだ取り上げていないサミー・カーン作品としては、アンドルー・シスターズ盤が大ヒットしたBei Mir Bist Du Schon (Means That You're Grand)、無数のヴァージョンがあるDay by Day、やはり誰のヴァージョンがヒットしたのか知らない(シナトラ?)Time after Time(好きなのはハル・ブレインがいいドラミングをしているクリス・モンテイズ盤)、これはヒットしなかったかもしれないけれど、ディーン・マーティン盤が楽しい、ちょっとコミカルなAin't That a Kick in the Headなどなど。

◆ 難物のコード ◆◆
サミー・カーンというのはそういう人です。そのわりには、The Long Hot Summerは、当たり損ねという感じの歌詞ですが、曲のほうは、さすがはノース、と思います。

昔なら、ここでコードを示すところなのですが、この曲は、コードを弾いている楽器が見当たらないし、終盤、面白い動きをするところは、変なところへ行っていたり、妙なテンションがついたりで、力およばず、一時間ほど苦闘して、撤退しました。長時間、意識を集中して作業すると、血圧が上がるせいか、体調が悪くなってしまうのです。

ブリッジの後半「And meanwhile I'll court you, and meanwhile I'll kiss you/Meanwhile my lonely arms will hold you strong」のコード・チェンジはじつに面白くて、いずれ、再挑戦し、なんとか終盤のコード進行を解明したいものです。


◆ ジーン・マクダニエルズ盤 ◆◆
この曲のカヴァー・ヴァージョンはわが家にはジーン・マクダニエルズのものしかありません。うちのHDDには百万曲かそこらしまってあるので、そこになければ、世間にもあまりないだろうと思いつつ、一応、Second Hand SongsのThe Long Hot Summerエントリーをチェックしました。オリジナルまで含めてわずか6種類。

知らなかったゴードン・マクレー盤をSHSに貼りつけられていたクリップで聴いてみました。悪くはないのですが、まあ、ふつうの出来で、ヒットはむずかしいでしょう。オーケストラを前に出し過ぎで、アレンジそのものは悪くないけれど、ちょっと煩く感じました。

ジーン・マクダニエルズ盤は、オーケストラのミックスが薄く、コーラスに至っては、さらに薄くて、ヘッドフォンで聴いても、女声コーラスなのか混声コーラスなのか判断できないほどです。しかし、このかすかに聞こえるコーラスが、このカヴァーのアレンジの美点で、セカンド・ヴァースの頭で、かすかな幻のように聴こえる瞬間は、ハッとさせられます。

ジーン・マクダニエルズの声は好きなのですが、この曲のレンディションは、ちょっと違和感があります。ヴァースはひねらずに、すっと唄ったほうがよかったのではないでしょうか。

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Gene McDaniels - Sings Movie MemoriesGene McDaniels - Sings Movie Memories プロデュースはスナッフ・ギャレット

SHSにリストアップされているこの曲のカヴァーの中では、コニー・〝クリケット〟・スティーヴンズにちょっと心惹かれます。そのうち、聴いてみようと思います。

◆ ロジャーズの美質 ◆◆
The Long Hot Summerは、ビルボード・ヒットだし、魅力的なメロディーなのに、やはり、時代が進む方向からそっぽを向いてしまった、外れ者、はみ出し者要素の濃厚な曲なのでしょう。

なんと云えばいいのか、失われた古代文明の遺跡を発掘している感じ、でしょうかね。ジミー・ロジャーズの唄い方は、もういまではまったく相手にされないでしょう。いや、当時だって、ちょっと特殊に感じられたはずです。周囲を見て、似たタイプの人というのは見当たりません。

それが長所にわたしには思えるけれど、多数派の感じ方は違うのでしょう。ジーン・マクダニエルズやゴードン・マクレー盤を聴いて思うのは、終盤の朗々と唄って盛り上げるパートが、凡庸で、面白みがないことです。

ジミー・ロジャーズの美点はここにあります。ふつうなら、音吐朗々となって、シンガーの声と技術が前面に出てしまう箇所で、独特の響き、にじみのようなものが彼の声にあらわれます。Meanwhileと唄う時に、朗々とならず、ちょっと哀し気な味が混じります。こういうのは、ほかのシンガーには感じたことがありません。

この発声とシンギング・スタイルの特長が、The Long Hot Summerという曲に複雑な色づけをし、忘れがたい印象を残すのでしょう。

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◆ 四季はめぐり、歳月もめぐり ◆◆
noteのほうにこちらのリンクを貼りつけたら、「四季折々の歌を聴く」というブログの説明のようなものが表示されて驚きました。そう云えば、登録の時に、何かそういうことを書いたなと、かろうじて記憶がよみがえったのですが、なんだか妙な感じです。

一年で四季が巡れば、もう書くことがなくなる、そうしたらやめよう、と思いつつはじめたのですが、「四季折々の歌を聴く」から離れること、具体的には映画音楽を取り上げたり、四季折々の落語を並べたり、あれこれと手を広げることで、なんとなく生き延びてしまいました。

頻繁に新しい記事が公開されている「現役のブログ」ではなくなって時間がたつと、流体であることをやめ、固体になります。右ペインのランキングというのは、「現役」の時には新しい記事が上にくるだけで、べつに面白くもなんともないのですが、「固体化」してみると、どういうものが検索されているかが見えてきて、面白くなります。

それで思うのは、書いた当人がすっかり忘れてしまった「四季折々の歌を聴く」が、最終的に効いたいうことです。統計データの中に、検索キーワード・ランキングがあるのですが、夏には夏の歌が検索され、冬にはクリスマス・ソングが、ハロウィーンには怪奇音楽および映画が検索されるのです。

映画もそうです。夏になると、毎年、「日本のいちばん長い日」のページがよくアクセスされます。「季節感のある情緒的映画」にはほど遠いのですが、ある意味で、あれほど強く夏を感じさせる映画はないでしょう。

季節とは関係ない方面では、日活映画について多くの記事を書いておいたことがここへきて生きたようにも感じます。日活公式チャンネルの活動がこのところ活発になった結果、古い日活映画にふれる機会が増え、その方面の検索をする人が多くなったのではないでしょうか。

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発足当初は、毎月、テーマを決めて、その枠組からあまり逸脱しないように話を進めましたが、途中から、とくにテーマは決めず、尻取りみたいな調子で、流れに沿ってトピックを決めていきました。

やっと再開(じつは、再々々開なのだが!)にこぎつけたいまは、もう、気ままにやろう、としか考えていません。やるとなると一所懸命になってしまう人間なのですが、これが老体にはいちばんよくないのです。いや、若くてもよくないのですが、体力があるから、その悪影響が見えにくいだけなのです。

気楽、気ままがいちばんです。ずぼらな人間が、身の丈に合わない努力をしたりするから病気になるのです。夏だから、それっぽいものは中心にしようか、てなことは思っていますが、それ以上の、「プラン」などというものは決めていません。

さっき、noteのほうに新しい記事、はっぴいえんどと宮谷一彦をめぐる「海を渡る起き抜けの路面電車:宮谷一彦が描く汽車、電車、市電」というのをアップしました。

これは高画質の写真を必要とするタイプの話題で、ああ、そうだ、高解像の写真がほしいテーマはあちらへ回そう、こちらは、音が中心で、ヴィジュアルは重要ではないことを書こう、と考えました。エキサイト・ブログは1GBの制限があるのに対し、noteはそんなことを気にしなくていいのです。

ということで、次回も何か曲を取り上げることになるでしょう。ティム・ハーディンの曲か、はたまた歌謡曲か、まあ、風の吹くまま、水の流れるままに。


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# by songsf4s | 2025-07-12 17:13 | 夏の歌 | Comments(0)
ペット・サウンズ記事について、および「HAL-9000再起動プロジェクト」、チューブ・クリップ、自前サンプル音源の現状、その他のバックステージ事情など

前回の「ご来訪のみなさまへ」という記事でふれたように、九年ぶりに統計数字を見て、先月はやはりブライアン・ウィルソンのタグがトップだったことを確認しました。

その「いまさらのようにPet Soundsを聴きなおしてみる」シリーズの記事を自分でもちょっと読み直してみましたが、パーソネルについてしきりに首を傾げているのが目立ちます。その点について、ちょっとだけ弁解します。

書いている時も感じていたのですが、あれは使用したデータ・ソースがよくなかったのだといまでは考えています。長年のビーチボーイズ・ファンはご存じだと思いますが、ブラド・エリオットというビーチボーイズ研究家が、たしかウェブ・サイトを持っていて、主としてそれを参照したのだったと思います。

最新の研究成果だから、と考えたのですが、あれは勇み足、やはり、従来の、AFMの記録に準拠したパーソネルをベースにするべきでした。エリオットはビーチボーイズの記録について、いろいろな訂正を試みていますが、それに対して証拠をあげて反論している人も多く(いや、当然、擁護派もいる!)、かなり乱暴な論を強引に主張する人のようです(まあ、この点について、わたしはよそさんを批判できないが!)。

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では、そういう反省にもとづいて、Pet Sounds記事を修正するつもりかというと、さすがにそれは無理、というしかありません。ひとつひとつパーソネルを他のソースで書き直し、ヘッドフォンをかけて一曲一曲、そのパーソネルと自分の耳が聴き取ったことの齟齬を書く……そりゃこの年ではもうできません。あれは(今よりは相対的に)若かったからできたことです。

かわりに、というわけでもありませんが、Pet Sounds記事の一覧を。


この下のほうに、過去の特集ないしは分載記事のまとめリンクがあります。力を入れた(とパートナーが判断した、つまり彼女が重要と認めた)記事は整理してあるのですが、そこにPet Soundsがないのは、まだ完結していないためです。だから、今後、それを書く可能性はなくもない、と含みを持たせておきますが、はたして書けるかどうか……。

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Pet Soundsについてはこれでおしまいです。以下は関係ないこと、当ブログの過去と未来について書くので、ブライアン・ウィルソンのことをお読みになるために当家を訪れた方は、ここまでで読むの終えられるといいでしょう。

◆ 埋め込みユーチューブ・クリップについて ◆◆
当家は2007年にスタートしました。しばらくたってから、チューブ・クリップを埋め込めるようになり、古い記事では「千社札ペタペタ」と云っていますが、記事でふれたさまざまな音楽や映画の断片を貼り付けるようになりました。

しかし、ご存じのように、クリップは著作権問題から削除されてしまったり、そのアカウント/チャンネル自体が停止されたり、その他の事情により、生存確率は高くないことがその後、わかってきました。それで、古い記事の埋め込みクリップのほとんどが再生できなくなっているのです。

これに対応するために、自分でユーチューブ・チャンネルをつくり、それを紹介するために、ラスカルズやサーチャーズやゲーリー・バートンなどの特集もしました。これは目論見通り、わたしがチャンネルを維持しているおかげで、すべてのクリップがいまでも再生できます。




しかし、ユーチューブ自体は昔と事情が変わってしまいました。以前の音楽クリップは、その音楽が好きだからアップしている、とわかるものばかりだったのですが、いまはそういうのは少数派、チューブはほぼ純粋に金稼ぎの場所になってしまいました。

あまり金になりそうもない地味なアーティストまで含め、わたしのチャンネルに挙げたものをほぼすべてアップし直した「バスター」がいるのですが、その人物は、もうジャンルもアーティストも時代も関係なし、何から何まですべてアップする方針のようです。音楽が好きでやっているはずがありません。

そして、音楽クリップは、昔のように著作権侵害を理由に削除されなくなりました。なぜかというと、著作権所有者に金がいくように仕組みが変わったからです。いや、アーティストにその金がいくのならいいのです。その金を横取りする「海賊」がいるのです。

わたしはもう自分のチャンネルにクリップをあげるのをやめましたし、ユーチューブで音楽を聴くのもやめました。猫と野球と映画各社公式チャンネルのクリップを見ています。正当な著作権の保有者がアップローダーであることがわかるものを選ぶように心がけています。

それにですよ、あの音質は音楽を聴くにはひどすぎるでしょう。MP3が悪いとはいいません。256あれば、ふつうにはロスレスと区別はつけにくいぐらいの音質を確保できます。いやそこまでいいません。せめて160あれば、MP3でもなんとか格好がつくのです。

しかし、ユーチューブは96(いや、80だったか?)です。音が甚だしく変形されてしまう、使い物にならないサンプリング・レートです。わたしはあの音は好みません。落語ですら、ひどい音だな、と思うクリップがあります。そもそも、音質に気を使ってクリップを作成しても、自動的に96に圧縮されてはどうにもなりませんよ。だから、誰も音質に気を使わなくなったのでしょう。きわめて無神経な「メディア」です。

◆ サンプル音源のストリーム(のようなもの) ◆◆
記事に必要ななのに、チューブ・クリップが見つからなかったり、そもそも、アップされているはずのないもの(映画の音声トラックの切り出しなど)もあるので、そういう場合は、「サンプル」として、ストリーミング・サービスに自分でアップロードしたMP3クリップへのリンクをつけたものもあります。

これもフリー・サービスを利用しているので、すでに廃業してしまったり、Div Shareのように、一見、まだ生きているようでいて、実態としてはずっと昔から廃業同然のところもあります。

その中で、box.netにアップしたものはいまでも多くが生き残っていて、再生することができます。box.netは発足当初から利用しているのですが、こんなビジネス・モデルではすぐにつぶれるのではないかというわたしの読みは見事に外れ、いまも隆盛です。

Johnny Smith - Walk, Don't Run

ただ、わたしのミスで、box.netに上げたにも拘わらず、再生できなくなったサンプルもあります。box.netには二つアカウントをつくったのですが(たしか、当初は映画音楽とポップでアカウントを使い分けるつもりだった)、ひとつは、登録に使ったフリー・メールが廃業して、ログインできなくなり、たぶん、その後、アカウント自体が削除されたと思います。したがって、そちらに上げた音源は聴けなくなりました。

ひとつひとつ確認するわけにはいかないのですが、自前サンプル音源の生存率はチューブ・クリップよりはるかに高いでしょう。今日、チェックしたのですが、容量も当初の5GBから、たぶん、長年の利用によるボーナスで10GBまで増え、まだ7.5GBの余裕があるので、チューブの利用をやめても、しばらくはサンプルの提供をつづけられそうです。

◆ 2025: The Year We Made Contact, Again ◆◆
ということで、この記事の目的地はおわかりいただけたでしょう。

六月終わりから、映画『2010』で、チャンドラ博士が、2001年の停止以来、九年間休眠しつづけていたHAL-9000コンピューターを再起動するように、2016年以来、九年間休眠していたSF4Sブログを再起動できるか検査を続けてきましたが、いくつかの問題はあるものの、眠っていただけだから、もう一度、運行させることは可能だと結論しました。

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2010年、チャンドラ博士は2001以来、休眠させられていたHAL-9000を生き返らせるために、まずボーマン船長が外したメモリー・ユニットを元に戻す。


じつは、最大の問題は、チューブでも、box.netなどの外部サービスでもなく、このエクサイト・ブログの1GBという容量制限だったのですが、目下の使用量は200MBとちょっとで、画像の質をあげたい、などと望まなければ、まだ1000本ぐらいの記事は書けるでしょう。

(わたしはここに千本以上の記事を書いて、自分で密かに設立した「シェヘラザード・クラブ」の最初の会員になりました。いまのところ、友人がnoteで千日回峰を達成したのしか例を知りませんが、まだけっこういらっしゃると思います。いや、くだらない冗談の脇道、失礼をば。)

◆ Simple Twist of Fate ◆◆
画質がどうこうとかいうのなら、有料プランにすればいいだろうと、ご来訪のみなさまも、このブログの席亭もおっしゃるでしょう。ところが、それは勘違いなのです。無料プランだったからこそ、九年間眠り続けていられたのです。

そうでしょう? 考えてもごらんなさいな。これが有料プランで、もう更新しなくなったら、ただ眠らせておくために九年間も料金を払いつづけると思いますか。さっさと契約を打ち切りますよ。無料だからこそ、放置しつづけられ、九年たった今も、こうしてちゃんと存在していたのです。

それはbox.netも同じです。ブログのために開いたアカウントなのだから、有料プランだったら、ブログの契約打ち切りと同時に、やはりアカウントを閉じます。無料だから、放置できたのです。

長く生きると、人生は皮肉な現象に満ちているなあ、と苦笑したり、溜息をついたりすることがしばしばありますが、ウェブもそれなりの歴史ができてみると、皮肉なことばかりだなと、やはり思います。いや、そんな話に入り込んだら、どこまで続くかわからないので、これは打ち切り。

次回は、こういうバックステージのことではなく、昔のように、音楽か映画の記事を、休眠などなかったかのように、シラっと再開したいと考えています。まあ、noteとブログの違いなど、休んでいるあいだに考えたことなども書きたいのですが、それは、例によって、記事の枕の中に埋め込んでいきます。

2007年とは違って、わたしはもう正真正銘の年寄り、思考速度も、タイプ速度も落ち、体力気力も衰えたので、毎日、Round Midnightには新しい記事があがっている、なんて昔のような業はできません。週一回程度が限界かもしれませんが、とにかく、試してみるつもりです。いざ行かむ、雪見に転ぶところまで、せめて冬まではなんとか。


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和田誠監督『真夜中まで』Round About Midnightかつては、毎晩、この映画の主人公と同じように、真夜中までになんとか記事を公開しようと必死にあがいた。


@tenko11.bsky.social



# by songsf4s | 2025-07-09 10:52 | backstage news | Comments(0)
ご来訪のみなさまへ

はて、何から書いたものか、昨日から考えているのですが、なかなか手順が決まりません。

これを書いているいまは2025年7月1日、このひとつ前の記事の日付は2016年10月19日です。九年近いブランクということになります。

ブログのお客さんがたは、なんでそんなに間があいたのだ、と思われるでしょうが、当人はそんなことは思わないのです。だって、この九年の「ブランク」のあいだも、わたし自身は一日のブランクもなく、毎日(かならずしも元気ではなかったものの)ちゃんと生きていたのですから。

◆ Friends (and no lovers) ◆◆
まず思うことは、消長の激しいウェブの世界にあって、エクサイトがまだあり、わたしが更新しないあいだも、当家が存在しつづけた幸運です。

いや、冗談ではなく、昨日今日の二日間、すこしリンクなどを手直してみてわかったのですが、右ペインにある「Friends」のうち、いくつかのブログは、オーナーがそのサイトやブログを閉じただけでなく、サービスそのものが廃業していました。

生き残っていたのは、まず大嶽義徳さんのThe Wall of Houndサイト。もう15年間更新していなくて、オーナーもメインテナンスはせず、放置なさっていると思われますが(掲示板の猥褻書き込みが削除されていない)、それでも、Biglobe自体がサービスを停止しなかったおかげで生き残っています。

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大嶽さんがコンパイルとデザインをなさった
Phil Spector Masterpiece Vol. 2のフロント・カヴァー


これはもう運ですな。その下の三つのブログ、黄金光音堂、散歩やせんとて、猫町ぶらりは、全部わたしがやっていたもので、もう15年ほど放置しているのですが(正確には、ずぼらなわたしにかわって、パートナーがときおりログインし、消されないようにしている)、FC2自体が生きているおかげで、まだ存在しています。

ほかにも、わたしはブログをふたつ開いて、そのどちらもわたしが非公開にしただけにすぎず、設定変更するだけで、いますぐ過去の記事が見られるようになり、新しい記事を追加できます。生きているのです。

大嶽さんのThe Wall of Houndは、かのAdd More Music (to Your Day)サイトのBBSで彼と知り合った時にはもう開設されていたので、1998年ごろにスタートしたものでしょう。20世紀生れです! 当家にはさすがにそこまでの歴史はありませんが、それでも2007年生れ、当年とって満十八歳。人間なら晴れて大学生てなものです。

光陰矢の如し、というほど、時の流れは速くなく、年を取ってみたら、意外なことに、ちょっとスロウダウンし、time passes slowlyな感覚も生まれて、ずいぶん生きたなあ、幼児の自分がほんの豆粒ぐらいの大きさにしか見えないほど遠くまで来ちゃったぜ、などと思ったりします。

このブログについてはどうか? これがどうとも云いかねて、頭の中はぐるぐるし、こうして長々と、いや、ぐずぐずと書いているのです。

◆ (小? 中? 大?)盛況! ◆◆
こうして新しい記事(のようなもの)を書いているので、再開する気になったのかと云うと、そうとも云えず、いやはや、われながら煮え切らないことです。

これを書くきっかけは、半分はブライアン・ウィルソン、半分は鈴木清順が与えてくれました。

当家の過去の記事に、「横浜映画」というものがあります。この記事の最後のほうで、長門裕之が主演した『密航0ライン』と『けものの眠り』という二本の清順映画にふれ、どちらも横浜映画なのだが、長いあいだ再見していないし、DVDももっていない、と書いた(当時はまだウェブ配信は存在しなかった)。

その後、『けものの眠り』を再見し、『密航0ライン』と取り違えていたことが判明しましたが、それはどうでもよく、やはり、この映画の横浜ロケは面白くて、はるか昔の記事のつづきを書くことにしました。

しかし、当ブログは長いあいだ更新していなかったので、ルティーン(とHTMLタグ!)を忘れてしまい、この二年ほど使っているnoteのほうに書くことにしました。

「鈴木清順『けものの眠り』(1960年):『横浜映画』追加 」

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(これはたんなるキャプチャー画像で、クリッカブルではありません)


この記事のために、当然、オリジナルである当ブログの「横浜映画」を参照しました。ちょうど、ブライアン・ウィルソンが没した直後で、右ペインの「アクセス・ランキング」を見ると、Pet Sounds関連の記事がずらっと並んでいました。

更新を停止して以来、意味がないからと、来訪者数やページ・ヴューなどの数字は見ていなかったのですが、ブライアン・ウィルソンの記事がどれくらい読まれているのかと、好奇心を起こし、ログインして、数字を見て、ビックリ!

六月の一日平均の来訪者数は63人、PV総計は3044、つまり一日に100ページ表示されている(読まずに閉じられてしまう可能性もあるので!)ということです。

毎日更新していたころのお客さんはもういらしていないはずで、ヴィジター数はパラパラ、前座の勉強会みたいに、噺家とお客が一対一でにらみ合って脂汗を流している、なんていうありさまを想像していたので、ビヒャーと叫ぶぐらいに意外でした。

ブライアン・ウィルソンの訃報のおかげで増えたのだろうからと、まだそういう「特需」は起きていない五月分もチェックしたのですが、一日平均の来訪者数は50人ちょっとと、やはり思ったよりはるかに多くて、考え込んでしまいました。


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2025年6月の「タグ別」PVのトップは506PVのブライアン・ウィルソン。



◆ ブログ対note ◆◆
さすがに時間がたってしまったので、たしかなことは云えないのですが、「終わりの始まり」となった住まいの移転(「お知らせ」という記事に書いた)の直前、つまり毎日更新していたころの最後のヴィジター数は、一日に250~300人ぐらいです。

それが50人になった、というのは、大幅減とお考えになるかもしれませんが、なにも記事を書いていないのに、毎日50人の方がいらして、ひとり当たり2ページほどご覧になっている、というのは、わたしには驚きでした。

いま、noteのほうがどれくらいかというと、統計数値は表示されず、各記事の累計PV、全体の累計PVだけしかわからないのですが、一日100PVはいかないだろうと思います。まあ、記事数はこちらの10分の1ぐらいにすぎないのですが、あちらはほぼ毎週、コンスタントに更新している「現役」です。

◆ 再開 or NOT? ◆◆
昔と違って、常連のお客さんはほとんどいらっしゃらず、圧倒的多数の方が検索エンジン経由でいらしているスポットの、というか、フリのというか、「通りすがり」のお客さんでしょうが、やはり、ときおりご覧になっているであろう昔なじみの方も、何人かいらっしゃるに違いありません。

それで、ちょっとご挨拶しておこうか、と思ったのが九年ぶりに更新しようという気になった第一の動機です。To say hello to my old friendであります。だいぶ衰え、頭の動きも体の動きものろくなりましたが、わたしはなんとか生き延びております。みなさまはいかがお過ごしでしょうか?

といって、再開するかというと、まだそこまでは考えていなくて、ペンディングであります。Pet Soundsや「陽のあたる坂道」など、中途半端なところで切れているものがあるので、そのへんはまとめておきたいような気はします。

そこらのことは明日の風にまかせることにして、とりあえず、長らく不可にしてきたコメントを書き込めるようにしました。ただし、「承認制」なので、自動的に公開はされませんし、そもそも承認して公開するつもりはないので、わたしに一言おっしゃりたい場合だけ、わたし宛の私信のつもりでご利用ください。

ひとまず、これでおしまいにして、あとのことはまた日を改めて考えることにします。昔なじみの方も、通りすがりの方も、どうもご来訪、ありがとうございます。


# by songsf4s | 2025-07-02 20:09 | backstage news | Comments(0)
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