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いまさらのようにPet Soundsを聴きなおしてみる その11 Don't Talkセッション+付録Good Vibrations
 
本題に入る前に、相変わらずのジム・ゴードン三昧ネタを少々。今回もビーチボーイズがらみ、しかもSmileがらみです。

Good Vibrationsのドラムは、ずっとハル・ブレインのプレイだと思っていたのですが、いくつか、ジム・ゴードンが叩いたパートがあるというのをはじめて知りました。

Good Vibrationsは、一連のPet Soundsセッションの最後に録音されているのですが、おそろしく複雑かつ長大なセッションになり、ずるずるとSmileへつながってしまいます。だから、The Pet Sounds Sessionsではなく、The Smile Sessionsのほうに収録されているのです。

いまさらのような気もしますが、いちおう、記憶を新たにするために、完成品を。

The Beach Boys - Good Vibrations


まあ、「おおむねハル・ブレインがドラムをプレイした」といって大丈夫でしょう。しかし、ジム・ゴードンが叩いたところは、やはり、ディテールに富んでいて、なかなか面白いのです。

以下の部分はオフィシャル・リリースではオミットされたと思いますが、以前聴いた別エディット(Good Vibrations Boxに収録されたものだったか)では、最後の「グー、グー、グー、グッヴァイブレーションズ」コーラスに突入する直前に貼り込まれていたと思います。

サンプル The Beach Boys "Good Vibrations" part c

おお、やっぱりな、でした。ブライアンがドラムのフレーズを歌い、ジム・ゴードンに叩かせ、ちがうだろ、といっています。つまり、このフィルはジミーがつくったわけではなく、ブライアンがつくったものだということです。

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60年代のジム・ゴードンは、2タムタムのセット(+ハイピッチ・タムが1または2)だったので、ちょっと悩んでしまいますが、このフレーズは、フロアタムとタムタムを使ってやっているのだと思います。ピッチを大きく変えた二つのタムタムでやった可能性もチラッと感じますが……。

ハル・ブレインは自分で譜面を起こし、変更があればそこに書き込んでいきましたが、ジミーはおそらく譜面を書かなかっただろうと思います。それで、ブライアンの変なフレーズを暗譜でプレイするため、ちがうだろ、といわれてしまったのでしょう。

つまらないことですが、ハル・ブレインのカウントの声は無数の曲で聴くことができます。しかし、ジム・ゴードンのカウントはそれほどありません。貴重です!

それにしても、Smileセッションもやはり面白くて、いずれ、本気で取り組むか、などとあらぬことを口走りそうになります。いや、当面、その気はありません!

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◆ 遅ければ楽ともいえず ◆◆
本日のPet SoundsトラックはDon't Talk (Put Your Head on My Shoulder)です。

まずは完成品。ステレオ・ミックスで。

The Beach Boys - Don't Talk (Put Your Head on My Shoulder)


Pet Soundsは、全体がそうなっているといえなくもありませんが、そのなかでもとくにこの曲は、「ブライアン・ウィルソンのプライヴェートなバラッド」といえるでしょう。

Surfin' USAとか、Fun, Fun, Funとか、Help Me RhondaとかCalifornia Girlsといったような、アップテンポのシングルA面曲とは対極にある、たとえば、Please Let Me WonderやShe Knows Me Too Wellのような、ビーチボーイズといっしょに騒ぐのではない、静かにひとり黙考するようなタイプの曲のことです。ブライアンもそのつもりで書き、したがって、自分でリードを歌い、他のメンバーのハーモニーを入れなかったのでしょう。

こういう曲をアレンジするのはむずかしいと感じます。ブライアンもそれなりに悩んで、(Pet Soundsのなかにあっては相対的に)シンプルなアレンジを選んだのではないでしょうか。

この曲のアレンジで好きなのはヴィオラのラインです。とりわけ、1:00あたりからヴィオラが前に出てきて、ブライアンのヴォーカルにカウンターをつけるような形になり、おお、美しいな、と感嘆します。短いインストゥルメンタル・ブレイクでも、耳に立つのはヴィオラの音です。

サンプル The Beach Boys "Don't Talk (Put Your Head On My Shoulder)" (stereo backing track)

というように、バックトラックだけにすると、ヴィオラのラインがさらに明瞭に聞こえてきます。

ブラッド・エリオットの調査によるパーソネルを書き写します。

ドラムズ……ハル・ブレイン
パーカッション……スティーヴ・ダグラス
ヴァイブラフォーン、ティンパニー……フランク・キャップ
アップライト・ベース……ライル・リッツ
フェンダー・ベース……キャロル・ケイ
ギター……グレン・キャンベル、ビリー・ストレンジ
オルガン……アル・ディローリー

オーヴァーダブ・セッション
ヴァイオリン……アーノルド・ベルニック、ラルフ・シェイファー、シド・シャープ、ティボー・ジーリグ
ヴィオラ……ノーマン・ボトニック
チェロ……ジョージフ・サクソン

ふと思います。ストリングスのアレンジはどうしていたのでしょうか? ブライアンは譜面を書くのが苦手で、ベース以外のパートはみなプレイヤーに歌ってみせたといわれています。

前回の「その9 I Know There's an Answerセッション」に貼りつけたクリップで、トミー・モーガンは、ブライアンが「dictate」したとおりにプレイした、といっていますが、つまり、それです。dictateというのは、一般に、口述して書き取らせることですが、この場合は「口頭での指示」といったあたりでしょう。

リズム・セクションはそれでいいのです。譜面なしのセッションというのはめずらしいことではないし、ほとんどは経験豊富な第一線のプレイヤー、口頭での指示で十分でしょう。

しかし、弦のプレイヤーというのはクラシック出身です。譜面がないとなにもできません。インプロヴもしません。ビートルズのA Day in the Lifeのエンディング、オーケストラ全体が揺れながら上昇していき、それぞれの最高音でフォルテシモになる、という有名なシークェンスがあります。

あのレコーディングには、もちろんジョージ・マーティンがいたのですが、譜面で表現のしようがなく、上述のようなことをdictateしたそうです。どの楽器だったか忘れましたが、有名なプレイヤーが、このセッションの途中で、マッカートニーのくだらない音楽なんかやってられるか、といって帰ってしまったといわれています。まあ、気持はわからなくもありませんがね。譜面なしのインプロヴなど、この人にとっては、教育のない下賤の輩のやることだったのでしょう。

ハリウッドのクラシック・プレイヤーは、映画とテレビで食っていたので、ポップ・セッションは慣れていたとはいえ、Don't Talk (Put Your Head On My Shoulder)のような曲を譜面なしでやるのはひどく厄介でしょう。

この録音のストリング・セクションのなかに、シド・シャープがいます。シャープはハリウッドのポップ・セッションのレギュラーで、しばしば、strings supervised by Sid Sharpeというクレジットを見かけます。あるいは、シド・シャープ・ストリングスというグループとしてのクレジットもあります。

案ずるに、ブライアンとストリング・セクションのあいだに、シド・シャープが入って、「ブライアン語」をノーマルな譜面に翻訳し、クラシックのプレイヤーにもわかる形にしたのではないでしょうか。

The Pet Sounds Sessionsのライナーに引用されていたのだと思いますが(あるいは、私信に書かれていたことかも知れない。キャロル・ケイさんと無数のメールを交換した時期ときびすを接してThe Pet Sounds Sessionsがリリースされたので、いつも記憶がごちゃごちゃになる)、キャロル・ケイさんがおっしゃっていたことで忘れられないことがあります。

ふつうは速いパッセージがむずかしいのだと考えるだろうが、じつは、遅い曲というのもむずかしい、Don't Talk (Put Your Head on My Shoulder)は、打楽器はシンバルが四分を刻んでいるのみ、それだけを頼りに、音数の少ないラインを精確なタイムで弾くのは、非常にむずかしかった、と彼女はいっていました。

これを読んで、わたしは、そりゃそうだ、と深く首肯しました。ただラインをなぞるだけならできます。しかし、グルーヴを失っては意味がないのです。遅くてもリズミカルに(小津映画!)プレイしなければいけないわけで、この曲はひどくむずかしかっただろうと思います。

星の数ほどいるビーチボーイズ・ファンのなかには、Carl & the Passionsに収められた、デニス・ウィルソンの曲を好む方もいらっしゃるのではないでしょうか。

The Beach Boys - Cuddle Up


The Beach Boys - Make It Good


こういうサウンドは、デニス・ウィルソンのソロ・アルバム、Pacific Ocean Blueに受け継がれます。デニスはワーグナーが好きで、それが彼の曲やアレンジに反映されたといわれています。

たしかにワグネリアンらしい音作りだと思います。しかし、そのいっぽうで、ブライアンの音作りにも大きな影響を受けているのはまちがいありません。とりわけ、ブライアンの"Don't Talk (Put Your Head On My Shoulder)と、デニスのCuddle UpやMake It Goodは、影響関係が明白だと感じます。


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by songsf4s | 2011-11-10 23:59 | 60年代
いまさらのようにPet Soundsを聴きなおしてみる その10 I Know There's an Answerセッション
 
相変わらずジム・ゴードンのプレイを聴きつづけているのですが、そのからみで、ビーチボーイズの20/20とFriendsも聴き直しました。

Smileが空中分解したあと、その残骸を集めてSmiley Smileというアルバムがつくられました。Smileの残光、とりわけGood Vibrationsのせいで、このアルバムを重視するビーチボーイズ・ファンはいますが、わたしはあまり好みません。どうとりつくろっても、かなりダウナーなアルバムです。

そのつぎのWild Honeyも印象散漫です。R&B的なものを目指したのでしょうが、そういうものを聴きたければ、べつのアーティストのほうがいいと思います。Darlin'のアレンジ、サウンドはおおいに好みでしたが、それだけではアルバム全体の印象を左右しはしません。

少数派意見なのだろうと思いますが、わたしはそのつぎのFriends、そして翌年の20/20が、Smile分解後のアルバムとしてはもっとも好ましく感じます。70年のSunflowerとくらべてもそう思います。

今回、聴き直しても、Friendsについては「放心の果ての心地よい弛緩」とでもいったグッド・フィーリンに、20/20については、シンプル&ストレートフォーワードへの回帰(サイケデリックは終わったと感じている人々の間では、あの時代のグローバルな気分でもあった)に魅力を感じます。もうホームランは狙っていないのです。きれいなミートでセカンドの頭を越そうという打ち方です。

20/20はともかくとして、Friendsについては、ジム・ゴードンがプレイしたという確たる裏づけがあるわけではなく、ジム・ゴードン・ディスコグラフィー・ブログスポット関係者の推測ではないかと思われます。

たしかに、ハル・ブレインの可能性を感じるトラックは一握りですし、だれだとはっきりイメージできるドラミングはないので、とりあえず、反対する理由はありません。

ジム・ゴードンであるとも、ないとも判断できませんが、こういうリラックスしたサウンドがFriendsというアルバムの特徴です。

The Beach Boys - Busy Doin' Nothin'


複雑精緻なPet Soundsにくらべれば、三桁ほどスケールダウンした単純さですが、これはこれでグッド・フィーリンがあって、好ましい音楽だと感じます。スパニッシュ・ギターはだれでしょうか、端正なピッキングにニコニコしてしまいます。ドラムも、サイドスティックのサウンドがきれいで、けっこうなプレイです。いや、地味ですけれどね。

つぎの曲のドラムも好ましいプレイですし、デニス・ウィルソン・ファンのわたしは、もっとデニスの歌を聴こうじゃないか、と訴えたくなります。

The Beach Boys - Little Bird


Pet Soundsは遙かな高みを目指した巨大プロジェクトでしたが、Friendsは、旅から帰った男が、ポーチに出したイージー・チェアに坐って、秋の海の静かに寄せては返す波を、日がな一日眺めているような心地よさがあります。

それにしても、60年代のジム・ゴードンはよくわかりません。粘っているうちに聞こえるようになると期待しているのですが……。

◆ 自我こそすべて ◆◆
本日のPet Soundsトラックは、I Know There's an Answerです。まずは完成品から。

The Beach Boys - I Know There's an Answer


何度も書いているように、Pet Soundsというアルバムは、変な音がいっぱい鳴っていて、ただのロック小僧の狭小な見聞の範囲に収まろうはずもなく、いったい、この音はどうやってつくったのだと、ほとんど一曲ごとに首を傾げていました。

いまでは、すべて解明され、考えるまでもなく、ライナーを読めばわかるのですが、それが楽しいことかどうかはなんともいえません。何十年も首を傾げて、解決篇を読めたわれわれのほうが幸福だったように思いますが、まあ、いきなりすべてがわかるのも、あながち不幸とはいえないでしょう。

ブラッド・エリオット作成のパーソネルを見れば、この曲での摩訶不思議サウンドの解答がわかります。

ドラムズ……ハル・ブレイン
パーカッション……ジュリアス・ウェクター
アップライト・ベース……ライル・リッツ
フェンダー・ベース……レイ・ポールマン
ギター……グレン・キャンベル、バーニー・ケッセル
タック・ピアノ……アル・ディローリー
オルガン……ラリー・ネクテル
ハーモニカ……トミー・モーガン
サックス……スティーヴ・ダグラス、ジム・ホーン、ポール・ホーン、ボビー・クライン
バリトン・サックス……ジェイ・ミグリオーリ

オーヴァーダブ・セッション
ギター……グレン・キャンベル

昔は、間奏の楽器がわからなくて思いきり悩みました。いわれてみれば、たしかにベース・ハーモニカだ、と思うのですが、こんな楽器は、ビートルズのFool on the Hillぐらいしかほかに使用例を知らず、しかも、ちょっと変な使い方なので、ずっと、なんだろう、と首を傾げっぱなしでした。

どこかでジョージ・ハリソンがベース・ハーモニカを吹いている写真を見た記憶があったので、いま検索したのですが、イの一番に当家の「The River Kwai March/Colonel Bogey (OST) (『戦場にかける橋』より)」という記事が引っかかってしまい、あらら、でした。

しようがない、記憶を新たにするために、いちおう音だけ貼りつけておきます。

The Beatles - The Fool On The Hill


ポールはブライアン・ウィルソンの大ファンで、長い不遇の時代(ポールのではなく、Pet Soundsの)からずっと、「Pet Sounds大使」を務めてきたので(嘘)、ベース・ハーモニカを使ってみようと思ったのは、ひょっとしたら、I Know There's an Answerのせいかもしれません。

で、Fool on the Hillを聴けばわかりますが、これは穏当な使い方で、ギョッとしたりはしません。

トミー・モーガンはキャピトル・レコードのプロデューサーが本業というべきなのかも知れませんが、ハリウッドのスタジオでは、ハーモニカの第一人者であり、長年に渡って各種のセッションで活躍しました(The Official Tommy Morgan Website)。

当家ではかつて、「The High and the Mighty by The Shadows (『紅の翼』より その2)」という記事で、トミー・モーガンのTropicaleというアルバムをご紹介したことがありますし、何度か言及しています。

ヒューゴー・モンテネグロの大ヒットであるつぎの曲も、トミー・モーガンのプレイだそうです。ドラムはもちろんハル・ブレイン、ダンエレクトロ6弦ベースは、キャロル・ケイさんから、自分のプレイである、という確認の返事をいただきました。要するに、Pet Soundsのバンドがヒューゴー・モンテネグロ・オーケストラだったのです。

Hugo Montenegro - The Good, the Bad & the Ugly


Pet Soundsに戻ります。トミー・モーガンのコメントを二つつづけて。

Van Dyke Parks, Brian Wilson and Tommy Morgan talk


もうひとつのトミー・モーガンのコメントにいく前に、ごちゃごちゃやって、やっとジョージがベース・ハーモニカをプレイしている写真が出てくるクリップを見つけました。

Paul McCartney on Pet Sounds and Sgt. Peppers


おっと、こりゃ失礼をば。すでにMr. Kiteでベース・ハーモニカが使われていたことを失念していました。どうであれ、ポールは率直にブライアン・ウィルソンに傾倒していたことを語っています。やはり、ベース・ハーモニカを使おうというアイディアはPet Soundsからきたのでした。

Tommy Morgan section from The Pet Story


歌伴のセクションで低音部の補強にベース・ハーモニカを使っている部分は、すべてブライアンの指示どおりにプレイした、しかし、ソロはインプロヴだった、といったことを語っています。

いやはや、すごく低いところにいったときの音のすさまじいこと。ブロウ・テナーのような力強さで、そのことはブライアンも強調しています。

直接は関係ないのですが、最後にCKさんがいう、人柄なんかどうだっていいの、きっちり仕上げられる能力だけが重要、という台詞の重いこと!

わたしはこの曲のベース・ハーモニカの音にショックを受けました。それはわたしだけのことではなく、そもそも、ブライアンからして、この楽器に接して驚き、大々的に使ってみようと考えたのだとたしかめられ、嬉しくなりました。

Pet Soundsの向こうにある根元の音楽衝動はこれです。すごい音でみんなを驚かせてやろう!

ベース・ハーモニカ自体は昔から存在してましたが、その可能性の地平をここまで広げたアレンジャー、プロデューサーはブライアン・ウィルソンただひとりでしょう。

この曲につけられた最初の歌詞は、リリース盤とは異なり、タイトルもHang on to Your Egoだったことはよく知られています。

わたしは、この歌詞の変更をとくに重要とは思っていませんが、いちおう、当初の意図を知るために、はじめのヴァージョンを貼りつけて、本日の幕とします。

The Beach Boys - Hang on to Your Ego


イントロを聴き直していて、書き忘れていたことを思いだしました。

このイントロは大好きです。やはり、なにが鳴っているのかよくわからないところがあります。アル・ディローリーがプレイしたタック・ピアノ(ハンマーに釘を打って金属的な音にしたもの)はいいとして、もうひとつの支配的な楽器がわかりません。オルガンでしょうか。

I Know There's an Answerも、California Girls、Wouldn't It Be Niceなどと並ぶ、ブライアン・ウィルソンのイントロの代表作だと考えています。

あ、もうひとつ。この曲のバンジョーの使い方も意外でした。バンジョーのコードにベース・ハーモニカのインプロヴを載せる、この発想の異常さ!


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by songsf4s | 2011-11-08 23:56 | 60年代
いまさらのようにPet Soundsを聴きなおしてみる その4 Pet Soundsセッション
 
ちょっと紛らわしいのですが、本記事のタイトルのPet Soundsは、アルバムのことではなく、タイトル・カット、Pet Soundsという曲のほうです。

アルバムPet Soundsには2曲のインストゥルメンタルが入っていますが、Pet Soundsはそのうちのひとつ、12曲目、クローザーのCaroline, Noの直前に置かれています。

わたしの解釈では、11曲目のI Just Wasn't Made for These TimesでPet Sounds本体はおしまい、コーダ、お別れとして、インスト曲、Pet Soundsがおかれ、13曲目の、シングルではブライアン・ウィルソンの名義でリリースされたCaroline, Noは、いわばボーナスです。

というわけで、重要なのだか、重要でないのだか、よくわからない曲ですが(たしかThe Pet Sounds Sessionsのライナーでだった思うが、キャロル・ケイは、このトラックはアルバムの他の曲より劣る、といった趣旨の発言をしていて、ええ、そうなんですか、と独り言をいった)、わたしはけっこう好んできました。

まずはリリース・ヴァージョン。

The Beach Boys - Pet Sounds


お読みになるのは面倒でしょうが、いちおうパーソネルを書き写しておきます。

ピアノ……ブライアン・ウィルソン
ドラムズおよびコーク缶……リッチー・フロスト
フェンダー・ベース……キャロル・ケイ
アップライト・ベース……ライル・リッツ
ギター……トミー・テデスコ、ジェリー・コール
レズリー・リード・ギター……ビリー・ストレンジ
バリトン・サックス……ジェイ・ミグリオーリ
テナー・サックス……プラズ・ジョンソン、ジム・ホーン、ビル・グリーン
トランペット……ロイ・ケイトン

他の曲と目立って異なるのは、ブライアン自身がピアノをプレイしたことと、ドラムがハル・ブレインではなく、リッチー・フロストだということでしょう。

リッチー・フロストは50年代終わりから60年代はじめまで、リック・ネルソン・バンドのドラマーでした。ジェイムズ・バートンやジョー・オズボーンのバンドメイトだったことになりますが、キャリアはもっと長く、スタジオ・プレイヤーとして大成功はしなかったので、リック・ネルソンの週給のほうを選び、スタジオからステージへというコースをたどったのだと思います。タイムは安定しています。

Ricky Nelson - The Very Thought Of You

(Ritchie Frost on drums; James Burton on guitar; Joe Osborn on bass)

「コーク缶」(coke can)とあるので「ママ」としましたが、どうでしょうか。1、3拍目の、1は4分、3は8分2打に割っている(つまりBe My Babyのキック・ドラムと同じパターン)パーカッションがそれなのでしょうが、缶の音かなあ、と思います。

Caroline, Noでは、大きなプラスティック・ボトルをハル・ブレインが叩いたという話を読んだことがありますが、こちらも缶ではなく、プラスティック・ボトルだというなら、素直に納得するのですがね。まあ、テープかなにかでミュートすれば、缶でもこういう音になるかもしれません。

キャロル・ケイは、この曲を買っていないというわりには、さすがは、というクールなプレイで、またまた惚れます。

プロのプレイヤーにとっては退屈でしょうが、ギターの単調なリックをプレイアロングすると、けっこう楽しめます。いや、たんなる変態の倒錯心理かもしれません。Memphis Undergroundのドラムなんかやってみたいと思う人間ですから。

当然ながら、エディションごとに鳴りがずいぶんちがっていて、サンプルは、どれにしようかな状態ですが、まずはPet Sounds Sessionsに収録された、OKテイク(たぶんテイク3)の、リズム・トラック・オンリーをいってみます。ビリー・ストレンジのレズリー・リード抜きの状態です。

サンプル The Beach Boys "Pet Sounds" (backing track only)

ジェイムズ・ボンド映画のサントラのつもりで書いたもので、"Run James Run"というワーキング・タイトルだったというのだから、アルバムの他の曲とは、ちょっとテンションがちがっていたのでしょう。

そのリラックスした軽さがこの曲のよさだと思います。テイク3でOKということは、レッキング・クルーメン&ア・ウーマンにとってもパイのように楽なトラックだったのでしょう。

今回、改めてさまざまなエディションを聴いて、あれ? こんなだったのかよ、と思ったのは、つぎのミックスでした。

サンプル The Beach Boys "Pet Sounds" (first mono mix)

OKであるテイク3の最初のモノ・ミックスだそうです。このトラックの1:42あたりからの数秒間、アコースティック・ギターのコードが聞こえて、ええ! でした。

こんなの知らなかったぞ、と思って、いろいろなミックスを聴きました。失礼! たしかに、ヘッドフォンで注意深く聴けば、The Pet Sounds Sessionsのバックトラック・オンリーの段階で聞こえていました。

しかし、ビリー・ストレンジのリードが載ったノーマルなミックスでは、モノ、ステレオ、ともにこんなギターの音は聞こえません。

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後年のリミックスで、かつては聞こえなかったものが姿をあらわすのはめずらしいことではありませんが、それにしても、やはりPet Soundsは、尋常ではないほど多数、そういう音があります。

4ピースのギターバンドだと、オーヴァーダブをしたといっても多寡は知れています。たいていの音はノーマルなミックスで聞こえます。Pet Soundsの場合、編成が大きく、そして、トラックの上に分厚いハーモニーが載せられてしまうせいで、多くの音が埋もれてしまったのでしょう。

もうひとつサンプルを。こんどは、リード・ギターのオーヴァーダブのさらにオーヴァーダブ。こちらも当然、ビリー・ストレンジ御大によるものでしょう。

サンプル The Beach Boys "Pet Sounds" (second guitar overdub)

当家でも「ギター・オン・ギター」というシリーズをオン&オフでやっているぐらいでして、わたしはギターを重ねるのは大好きです。ブライアンの頭のなかでも、レズリー・ギターを重ねたサウンドが鳴っていたのでしょう。

でも、それをきれいに取り出すことができず、ビリー・ストレンジにとにかく弾いてもらって、最終目的地にたどりつこうとしたけれど、ついにイマジネーションの爆発は起こらず、安全なところでまとめることにして、撤退した、なんてあたりではないでしょうか。

書き忘れていましたが、このギターの音は、本来はハモンド・オルガンの付属品として生まれた回転スピーカー、レズリー・スピーカーにギターを通したものです。

レズリー・ギターのもっとも有名な例は、ビートルズのSomethingでしょうが、それ以前に、ブライアンがこの時点ですでにやっていました。まあ、ビートルズのほうは、この時点より以前に、Tomorrow Never Knowsで、ジョン・レノンのヴォーカルをレズリーに通すという無茶をやっていますが!

しかし、レズリーのハモンド以外への利用は、さらに時を遡行できます。

Shelley Fabares - He Don't Love Me (1964年)


このレズリー・ギターもビリー・ストレンジのプレイといわれています。ドラムはハル・ブレインだということまではわかりますが、あとは不明です。

The Ventures - Slaughter on 10tn Avenue


イントロからすでに入っていますが、途中、セカンド・ヴァースから薄く入ってきて、やがてはっきり聞こえるようになる、単音しかやらないオルガンのような音の楽器は、スティーヴ・ダグラスのサックスにピックアップを取り付け、レズリー・スピーカーに通したものだそうです(ブリッジに使われている、和音が出る楽器はオルガンなのでお間違いなきよう)。

Pet Soundsというのは、タイトルが示すように、「サウンド」の一大実験場です。ブライアンはじつにさまざまな音色を蒐集し、それをどう展示するかに腐心した、というように言い換えてもかまわないと思います。ビリー・ストレンジがプレイしたレズリー・ギターも、ブライアンが昆虫を集めるようにして集めた音色のひとつでした。

これでアップしようとしたら、下調べのときにみつけておいたクリップを忘れていたことに気づきました。2004年のライヴです。

Brian Wilson - Pet Sounds (live)


そろそろ逃げ切れなくなってきたようで、つぎからはむずかしい曲に挑戦かもしれません。自分ではじめておいて、逃げるものなにもあったものではありませんが!


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The Pet Sounds Sessions
The Pet Sounds Sessions
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by songsf4s | 2011-10-27 23:19 | 60年代
いまさらのようにPet Soundsを聴きなおしてみる その2 Sloop John B.セッション
 
Pet Soundsにはさまざまなエディションがありますが、もっとも画期的だったのは、初のリアル・ステレオ・ミックスや、トラッキング・セッション、バックトラックなどを収録した、1997年のThe Pet Sounds Sessionsボックスでした。

このボックスではじめて、ヴォーカルがなくなり、トラックがどれほどすごい音で鳴っていたかがわれわれにもわかりました。「スペクターのミュージシャンたち」が、スペクター・セッション以上に、遺憾なく力量を発揮したことが明らかになったのです。

同じころ、Pet Sounds Sessionsの直後ぐらいでしょうが、Unsurpassed Mastersというブート・シリーズのリリースがはじまりました。60年代のビーチボーイズのアルバムのトラッキング・セッションやオルタネート・ミックス(とくにリアル・ステレオ)を収録したもので、Vol. 12のディスク1、および13と14のすべてのディスク、合わせて8枚がPet Soundsにあてられています。

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当然、テイク数も、Pet Sounds SessionsよりUnsurpassed Mastersのほうが多いので(ちょっと多すぎるのだが!)、このシリーズでは、トラッキング・セッションについては主としてこちらを参照するつもりです。

今回はLPに先立ってシングル・リリースされたSloop John B.です。これはトラッド曲で、たとえば、わたしがもっていたものでは、キングストン・トリオのヴァージョンがありました。

となれば、当時流行りのフォーク・ロック・スタイルで、ということになりそうなものですが、12弦ギターがそれらしい雰囲気をつくってはいるものの、すくなくともわたしは、たとえば、バーズやママズ&ザ・パパズやP・F・スローンの同類とは、よかれあしかれ、感じませんでした。

いや、ビーチボーイズのSloop John B.でプレイしたハル・ブレインは、バーズやママズ&ザ・パパズやP・F・スローンのトラックでプレイしましたし、他のパートもずいぶん重なっているはずですが、そういう印象は持ちませんでした。

まずは完成品のクリップから。といっても最近のステレオ・リマスターなので、わたしが子供のころに聴いたものとはかけ離れたサウンドです。

The Beach Boys - Sloop John B.


子どものころは、たいした曲じゃねえな、とナメていましたし、アルバムのなかで聴くようになってからも、それほど好きではありませんでした。楽曲の構造が単純すぎて、アルバムの他の曲と乖離しているように感じました。

置かれた場所もA面のラストなので、ちょうど都合がよく、その前のLet's Go Away for a Whileまででピックアップを上げて、B面に移るのがつねでした。

それがブライアン・ウィルソンの意図だと思ったからです。つまり、Pet Soundsは本来、12曲構成のLPだったのに、会社の要請でシングル曲を無理やり押し込むことになり、やむをえず、もっとも無害なところに配置することで、ダメージを最小限に抑えた、ということです。

そんな調子で、何十年ものあいだ、Sloop John B.は、ブライアン・ウィルソンの乾坤一擲のアルバムの小さな汚点、と思ってきました。

しかし、Pet Sounds Sessionsに収録されたステレオ・ヴァージョンと、トラッキング・セッション、そして、ファイナル・バッキング・トラックを聴いて、のけぞりました。

わたしが知っているSloop John B.とはまったくちがう音でした。とくに、ヴォーカルをとったトラックでの、ハル・ブレインのドラムとキャロル・ケイのベースのプレイとサウンドにはほんとうに驚きました。

ちょうどこの直前ぐらいに、キャロル・ケイとは何十通ものメールを交換し、さまざまな曲のディテールについて質問していたので、なおのこと、このサウンドは「さもありなん」でした。

彼女は繰り返し、「わたしは一度も女っぽいプレイなどしたことがない」といっていますが、まさにそういう人にふさわしい、じつにマッチョな、野太いサウンドです。

タイムの善し悪しは複雑なプレイよりも、シンプルなプレイにあらわれるもので、ドラムでいえば、16分のパラディドルをきれいに聞かせられる人なら、たいていのプレイに適応できるとみなして大丈夫です。

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キャロル・ケイについていえば、4分音符で押しまくるプレイ(たとえば、ハーパーズ・ビザールのThe Biggest Night of Her Life)には、いつも感服します。精妙なタイムに裏付けられた、豪快なプレイです。不十分な技術しかないプレイヤーは、4分音符だけを弾きつづけたら、すぐにボロを出します。

Unsurpassed Mastersに行く前に、Sloop John B.の最善のエディションである、The Pet Sounds Sessionsに収録された、トラック・オンリーを貼りつけておきます。このエディションではじめて、Sloop John B.のときも、ハル・ブレインは眠ってはいなかったことがわかりました。

サンプル The Beach Boys "Sloop John B." (final backing track from "The Pet Sounds Sessions")

このころのキャロル・ケイはフェンダー・プレシジョン(ジョー・オズボーンも初期のプレシジョン)を弾いていますが、ふつうはこんな音にはなりません。

ブライアン・ウィルソンのセッションにかぎらず、フィル・スペクターや、スナッフ・ギャレットのセッションで、さらにはさまざまなプロデューサーのセッションで、フェンダーとアップライトを重ねる手法はしばしば使われていました。

わたし自身が確認したかぎりでは、スペクター以前にスナッフ・ギャレットが(たしか)ジーン・マクダニエルズの曲で複数ベース手法を採用しています。

LPでは、おそらくはカッティングの関係で、アップライト・ベースの音は抑えがち、沈みがちなミックスでした。しかし、CDでは針飛びがないせいだと思うのですが、多くの場合、アップライトの音は太く、重くなる傾向があります。むろん、ディジタル・マスタリングの特性でもあるのでしょう。

最近のエディションではベースをいっそう前に出していますが、そもそも、前に出そうといって出せるのは、フェンダーのみならず、アップライトでも同じフレーズを弾いているからにちがいありません。それで、なかにはギョッとするようなリミックスがあるのでしょう。

順序が前後してしまいましたが、この曲のパーソネルは(ときおり修正されるが)以下のようになっています。

ドラムズ……ハル・ブレイン
フェンダー・ベース……キャロル・ケイ
アップライト・ベース……ライル・リッツ
ギター……アル・ケイシー、ジェリー・コール
ギター(オーヴァーダブ)……ビリー・ストレンジ
オルガン……アル・ディローリー
グロッケンシュピール……フランク・キャップ
タンバリン……ロン・スワロウ
フルート……スティーヴ・ダグラス、ジム・ホーン
クラリネット……ジェイ・ミグリオーリ
バリトン・サックス……ジャック・ニミッツ

わからないことがいろいろあります。タンバリンの音は聞こえませんが、かわりにウッドブロックかなにか、木製のパーカッションがずっと聞こえています。ロン・スワロウ(聞かない名前だ!)という人は、そちらをプレイしたのではないでしょうか。

オルガン・ベースが入っていると、なにかで読んだ記憶があるのですが、そうなるとバリトン・サックスが宙に浮くので、このクレジットが正しいなら、あれはバリトンか、あるいはバリトンとオルガン・ベースを重ねたものなのでしょうか。ふつうのオルガンの音は鳴っていないと思います。

ジェイ・ミグリオーリがクラリネットをプレイしたとありますが、さまざまなテイクを聴いても、クラリネットの音はわたしには拾い出せません。テイク4と5のあいだで、フルートだけに音を出させるとき、ブライアンが「ムーヴ・イン、ジェイ」といっているので、フルートをプレイした可能性が高いでしょう。

サンプル The Beach Boys "Sloop John B." (tracking session take 3 through 5 from "Unsurpassed Masters vol. 12" disk 1)

Unsurpassed Mastersには、Sloop John B.のほとんどのテイクが収録されています。とくにトラックに関しては、テイク1からOKのテイク14まで、すべてが入っています。

それを通して聴いて、あれ、と首を傾げたことがあります。ビリーストレンジの12弦のオーヴァーダブというのはどれのことなのだ、です。イントロで聞こえる12弦はテイク1から入っています。12弦と6弦の2本でスタートしているようです(あとですくなくとも一本、コード・ストロークが重ねられていると思う)。

f0147840_0133137.jpg
ビリー・ストレンジ(右はナンシー・シナトラ)

Unsurpassed Mastersに収録された、オーヴァーダブ・セッションのテイク5aを聴いて、やっと、ビリー・ストレンジがどういうプレイをしたのかがわかりました。

サンプル The Beach Boys "Sloop John B." (take 5a, guitar overdubbing from "Unsurpassed Masters vol. 12" disk 1)

でも、このビリー・ストレンジの12弦のプレイは、リリース・ヴァージョンではほとんど聞こえないくらいにミックス・アウトされてしまいます。そういうことはよく起こります。驚くようなことではないのかもしれません。

でも、ブライアンは、週末、子どもたちを連れてハリウッドに買い物に来ていたビリー・ストレンジを町で捕まえ、いまからオーヴァーダブをやってくれ、といったのだそうです。

ビリー・ストレンジが、ギターをもってきていない、といったら、ブライアンは楽器屋(サンセット&ヴァインのWallichs Music Cityか?)に連れて行き、フェンダーの12弦とアンプを買い、ビリーをスタジオに押し込んでオーヴァーダブをしたと伝えられています。しかも、セッションが終わると、ギターとアンプはもっていっていい、といわれたので驚いた、とビリー・ストレンジは回想しています。

f0147840_016889.jpg

そうまでして録音したのが、リードでもなんでもなく、ミックス・アウトされてほとんど聞こえなくなるリックだったというのだから、おやおや、です。でも、これはブライアンのサウンド構築手法と密接に結びついていることかもしれないと感じます。まあ、そのへんの詳細はこのシリーズのあとのほうで書くつもりですが。

子どものころは、それほど面白いと感じず、大人になっても、あまりSloop John B.を聴かなかったのは、たぶん、非ロック的なニュアンスが強すぎたからだと思います。

The Pet Sounds Sessionsの新しいマスターのSloop John B.にショックを受けたのは、ひとつにはもちろん、90年代なかばに、ハル・ブレインやキャロル・ケイのプレイを徹底的に聴きこむ作業をしたからでしょうが、もうひとつは、やはりドラムとベースが前に出て、よりロック・ニュアンスが強まったためでした。

また、LPのときには、他のトラックとちがって、楽器が少なく、サウンド・レイヤーが薄く感じられましたが、ヴォーカルがなくなり、トラックだけが姿をあらわしたら、すでにアルバム・トラックと同じような、サウンド・レイヤー構築がはじまっていたことがわかり、連続性があったのだと納得がいきました。

いやはや、やってみれば、やっぱりPet Soundsは手強く、われながら隔靴掻痒の記事になりましたが、懲りずに、次回はいよいよ、アルバムのほうのセッションへと入り込みます。


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The Pet Sounds Sessions
The Pet Sounds Sessions
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by songsf4s | 2011-10-24 23:58 | 60年代
いまさらのようにPet Soundsを聴きなおしてみる その1
 
正直にいうと、60年代の音楽がいまも商品として売られているのは、どうも違和感があります。

自分が粗野であることをいいふらすようですが、高校までは、昔の音楽になどほとんど関心がありませんでした。日々サウンドが変化する忙しい時代を生きていたので、過去のことなどかまっていられなかったのです。

わずかに、中学三年のとき、チャック・ベリーのことが気になり、当時、日本では手に入らなかったので、横浜の日本楽器に輸入盤の注文したことがあった程度です。あとはひたすら「今日を生きよう」でした。

いま、古い音楽をお聴きになっている若い方のことをどうこうというわけではないので、そのあたりは誤解のないようにお願いしますが、古い音楽がこのようにいまも生きている状況を改めて認識するたびに、こんなはずではなかった、と思います。

ギター、ベース・プレイヤーのキャロル・ケイは、はっきりいっています。ああいう音楽を録音するのは、日々の仕事にすぎず、その場かぎりで忘れられるものをつくっているのだと思っていた、まさか、何十年もたって、歴史的な遺産とみなされるようになるとは想像もしなかった、と。

f0147840_043744.jpg

これは、聴く側のわれわれも似たようなものでした。つくる側ではなく、聴く側なので、彼女よりは音楽的に重要性があると考えていたと思いますが、それも五十歩百歩、基本的には、毎日、ラジオから流れてきては、消えてゆくヒット曲、という見方であって、それ以上でも、それ以下でもありませんでした。

これからしばらく、ビーチボーイズの、というか、ブライアン・ウィルソンのPet Soundsのことを書こうと思います。

Pet Soundsは、リリースのときはシングルしか知らず、アルバムを買ったのはずっと後年、例のCarl & The Passions So Toughと抱き合わせの二枚組という、おそろしく変な版で買いました。72年、いや73年リリースでしたか。

f0147840_061446.jpg

だから、アメリカの文化遺産になると予想するも、予想しないも、あったものではないようなものですが、しかし、73年の時点でもまだ、Pet Soundsは「ビーチボーイズのヒットしなかった地味なアルバム」だったのではないでしょうか。

一学年上の友人が、大学在学中から音楽評論を書いていて、ときおり原稿に詰まると電話してきました。あるとき、おまえ、Pet Soundsをどう思うというから、ビーチボーイズのアルバムのなかでいちばんいいと思う、と答えました。

彼は、俺はどうも好きじゃないな、管のアンサンブルとヴォーカル・ハーモニーが衝突して、音がスッキリしないのがイヤだ、といいました。

むろん、昔からサウンド・レイヤーの美を偏愛するわたしは、あの管のアレンジがいいのに、とぶんむくれました。じゃあ、どの盤が好きなの、ときいたら、そうだなあ、15 Big Onesなんかいいな、というので、ダアー、とコケました。

たとえば、LAを憎悪しているRoling Stone誌なんかも似たようなもので、昔出ていたBuyer's Guideとかなんとかいうものでは、Pet Soundsは、エーと星印だったか、ポイントだったか忘れましたが、たとえば65点とか、星二つ半とか、そういった調子の、凡庸なアルバムという評価になっていました。政治雑誌に転向して正解です。彼らにはタイムもピッチもサウンド・レイヤーも理解できないのです。

とまあ、かつてはその程度の評価だったので、Pet Sounds支持派はちょっと力みかえってしまいましたが、ピッチもタイムもわかーんない、ロックンロールはパワーコード一発ガーンだ、という方たちもいらっしゃれば、アイツはピッチが悪くて気持ち悪い、タイムがボロボロで聴いていると吐き気がする、なんていうわたしのような人間も片方にはいるのでして、あちらの人たちが洗練されたLAのサウンドを理解できなくても、まあ、お互い様というあたりでしょう。

f0147840_093097.jpgどこかで見かけたのですが、賢明なミュージシャンは、Pet Soundsについてあれこれ贅言を弄さない、たんに「いいアルバムだと思う」などと簡潔にいうだけで、深入りは避ける、なんて書いている人がいました。

これはよくわかります。キジも鳴かずば撃たれまいに、物言えば唇寒し、てな決まり文句が脳裏に浮かぶわけですよ。半端な気持で、ふつうより一層下を掘ったりすると、墓穴だったりするのがPet Soundsというアルバムです。研究者にとっては、ポップ史上もっとも手強いサウンドです。

一度もPet Soundsを正面から取り上げていないな、いろいろ書くべきことはあるのに、なんてことを思ったのですが、君子危うきに近寄らずだぞ(今日はクリシェ連打だ)とも思いました。

しかし、学術論文を書くわけではあるまいし、ちょっとぐらい間違いがあったって、仕事を失うわけではなし、ミュージシャンでもないのだから、見当違いなことをいって、あいつ、音痴なんじゃないの、などと面目を失墜することもありません。

ということで、いつものように、好きな音楽のことを、ちょっと斜めから眺めてみるというスタイルで、お気楽にやろうと決めました。

とはいえ、聴くべきソースは多く、この数日、暇をみて棚卸しをやっていたのですが、いまだ整理整頓にはいたらず、今日は一曲だけ、おやまあ、と思ったものを貼りつけるに留めます。いきなり、とくに重要ではない曲で、恐縮ですが。

サンプル The Beach Boys "That's Not Me" (mono, from "Pet Sounds 40th Anniversary Edition)

今回、いくつかのエディションを聴き直したのですが、いちばん変化が大きいのは、最新のエディションである(と思う)、40周年記念盤のCD(DVDもある)に収録された、このThat's Not Meのモノ・ミックスでした。

f0147840_0111238.jpg

一聴、この太いベースはどこから出てきたのよ、と思いました。イヤ、存在しないものが突然あらわれるはずがなく、どこかにあったはずですが、こんなものの記憶はありませんでした。

古いLPも、初期のCDももうもってはいないのですが、そんなところまで遡行しなくても、近年のマスタリングと比較するだけで違いがわかります。Pet Soundsの伝説化にもっとも大きな役割を果たした、The Pet Sounds Sessions収録の初のステレオ・ミックスをどうぞ。

サンプル The Beach Boys "That's Not Me" (stereo, from "The Pet Sounds Sessions")

40周年記念のモノの00:17あたり、「I could try to be big in the eyes of the world」のところのベースを聴いた瞬間、ギョッとしました。

以前のステレオ・ミックスの同じ部分をお聴きになっていただければ、はっきりおわかりと思います。こんなところで、ブーンとベースが入ってきたりはしないのです。

後半、ドラムレスになって、1:52あたりからのI once had以下の部分でも、40周年記念盤モノでは、ベースがブンブンいっています。こんなミックスは、LP以来、過去のPet Soundsにはまったくなかったものです。

おっと、時間切れなので、本日はここまでにします。先日のビートルズのときと同じように、Pet Soundsを隅から隅まで何度も聴いたことがないと、たぶん面白くもなんともない話になるだろうと思います。まあ、当家ではいつものことですが。


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by songsf4s | 2011-10-22 23:57 | 60年代
Hal Blaine Takes You to Surfin' Vol. 6
 
(7月30日午前9時45分追記 あとからチェックしていて、エラい間違いを発見しました。Jan & DeanのPop Symphony No. 1のなかからハル・ブレインが全編ロールを使っているトラックを選んでサンプルにしたつもりだったのですが、それはDrag Cityなのに、勘違いでSurf Cityをアップしてしまいました。相当数の方がSurf Cityにアクセスされたようで、失礼いたしました。改めてDrag Cityをアップし、リンクを追加しました。)

前回、Wall of HoundのO旦那に、アン=マーグレットのパーソネルを頂戴したことを書きました。以前のアン=マーグレットとハル・ブレインの記事に誤りがあるとのご指摘でした。

クレジットを読んで、記事に修正を加えようと思ったのですが、結局のところ、記事を構成するに足る楽曲はなくなってしまい、修正で対処するのは断念し、あの記事はこのまま冥界に葬ることにしました。Bye Bye Birdieの盤ヴァージョンのサンプルだけ、なにかの記事の付録として、もう一度貼りつけるつもりです。

ということで、O旦那には感謝、お客さん方には陳謝申し上げます。

◆ And sufin' is here to stay ◆◆
そろそろクリップが見つからなくて苦しくなってきましたが、そのあたりはサンプルで補って、本日もサーフ・アンド・ブレインです。

トラックでプレイしたのがほとんど同じ人たちだというばかりでなく、サーフ・ミュージックは上ものも見かけどおりではなく、かなり錯綜しています。

いちばん有名なのは、ジャン&ディーンのSurf Cityでブライアン・ウィルソンがリードをとったことと、そのお返しに、ビーチボーイズのBarbara Annでディーン・トレンスがリードをとったことでしょう。

Surf Cityはこのハル・ブレイン・シリーズですでにかけたので、もう一曲のほうを聴いてみます。小学校六年、本格的にラジオを友として生きるようになったときにヒットしていた曲で、たいした出来じゃないと思いつつ、流れればやっぱりシングアロングしてしまいます。歌うはディーン・トレンス。

ビーチボーイズ Barbara Ann


ハル・ブレインはこのセッションに呼ばれたものの、先約があって、途中で抜けています。この曲ではタンバリンをプレイしているのでしょうが、よくわかりません。ベースはジョー・オズボーンです。

このシリーズでは、ほかに、ブルース・ジョンストンとテリー・メルチャーが、いくつかリップ・コーズの盤で歌っていることも書きました。すでにThree Window Coupeを取り上げましたが、リップ・コーズのもう一曲のヒットもブルース&テリーが歌っています。

リップ・コーズ Hey Little Cobra


リードはテリー・メルチャーでしょう。しかし、なんともはやという「互換性」で、わかっていても呆れます。ここにジャン&ディーンのヴォーカルが載っていても、なんの違和感もないでしょうしねえ。

よく似ているのはSurf CityやDrag Cityですが、そのへんはすでにかけているので、そういうことにはこだわらず、とにかくジャン&ディーンを。

ジャン&ディーン Dead Man's Curve


ジャン・ベリーが事故で瀕死の重傷を負ったのは、この「死者のカーヴ」ではなかったものの、その近くだったそうです。スティングレイかなにか、スポーツカーをすっ飛ばしていて、停車していたトレイラーの下にもぐりこんでしまったというのだから、よく生きていたものです。ハルはHal Blaine and the Wrecking Crewのなかで、ジャンの事故とその後の療養、リハビリのことをくわしく語っています。

ここまで書いたところで、是非入れなければいけないクリップが残っていたのを思い出しました。畏友オオノさんがアップされた、めずらしいハル・ブレインのライヴ、アーティストはジャン&ディーンです。

ジャン&ディーン Surf Cityほか


ジャン・ベリーはびっこを引いています。テレビ・ドラマの撮影で危うく列車に轢かれそうになり、骨折したということがHal Blaine and the Wrecking Crewに出ていますが、そのときのことでしょう。

オオノさんがお書きになっていますが、ハル・ブレインのほかにも、このライブではトミー・テデスコ(めずらしく口ひげをはやしている)、ドン・ピーク、レイ・ポールマンなどがプレイしています。これはどこのライヴだったか、LAかその近郊だったと思います。そうじゃないと、なかなかこのメンバーでステージには上がれません。ハリウッドのレギュラーはスタジオに幽閉されていたも同然でしたから。

f0147840_0265034.jpg

ハル・ブレインは、ジャン&ディーンとナンシー・シナトラを特別扱いしていました。あまりライヴではプレイしなかった全盛期にも、彼らと彼女の仕事はやったようです。ナンシーはラス・ヴェガスでのショウだから大変だったそうです。週末はハリウッドに帰ってスタジオの仕事をし、ウィークデイにはまたラス・ヴェガスという調子だったそうです。

ナンシーは、金に糸目をつけずにベストのスタッフを集めたといっているので、当然、払いもよかったのでしょう。盤で稼いだ金をすべて注ぎ込んだというのだから、採算度外視だったようで、あとでパパに説教されたといっています。そういうのはビジネスとはいえないね、というわけです。ごもっとも。

f0147840_2350574.jpgもちろんパパは、みずから芸能界の友人たちに電話をかけ、娘がラス・ヴェガスにデビューするんだ、ぜひ行ってやってくれと頼んだそうです。フランク・シナトラの頼みを断れるハリウッド・スターは、あの当時、そうたくさんはいなかったにちがいありません。サンズの客席はものすごく派手なことになったそうです。

このショウをフィルムに収めておけば、あとでVCRやDVDにしておおいに稼げただろうに、惜しいことをしたものです。まあ、NBCで放送されたナンシー・シナトラ・スペシャルはその後パッケージになり、いまでも楽しめますけれどね。これまた豪華ショウです。

閑話休題。ジャン&ディーンは二人しかいないので、ビーチボーイズのような大人数のハーモニーを録音するのは面倒だし、そもそも、二人ともあまりピッチがよくありませんでした。コーラスが得意なはずがないのです。

では、どうしていたのかというと、楽器のほうにもプロがいたように、歌のほうにもスタジオ・シンガーというプロフェッショナルがいました。

しかし、ジャン&ディーンの場合、ある時期はこの二人がハーモニーをやっていたといわれています。フィル・スローン&スティーヴ・バリー、ザ・ファンタスティック・バギーズ、Hot Rod USA



フィリップ・スローンは、まるでジェリー・コールのようなリードギター弾きたがり少年だったので、この曲も間奏は彼のプレイかもしれません。

尻取りはこれくらいにして、そろそろなにかインストをいってみたいと思います。といったはいいけれど、なかなかぴったりのものがなくて、ユーチューブを掘り返してしまいました。

名前はご存知ないでしょうし、このシリーズには何度も登場したパターンですし、始まるまでに手間どって、ちょっと間が抜けていますが、しかし、そうしたあれこれがあっても、やはりプレイの豪快さが魅力、ザ・カタリーナーズ、Banzai Washout



これはめずらしくパーソネルがわかっています。ドラムのハル・ブレインのほかは、ギター陣がビリー・ストレンジとトミー・テデスコの両エースに加えてジェリー・コール、キーボードがリオン・ラッセルとブルース・ジョンストン、ベースがレイ・ポールマン、そしてサックスがスティーヴ・ダグラスです。

ブルース・ジョンストンをのぞけば典型的なレッキング・クルーのサブセットです。一枚だけLPがあるのですが、ヴォーカルは開いた口がふさがらず、顎がだらーんと垂れるほどひどくて、とても聴けたものではありません。下手なだけでなく、味もなく、取り柄ゼロです。

サーフ・インストというと、高血圧タイプが多いのもたしかですが、いっぽうで、選曲するわたしの都合もあります。クレジットなしでわかるハル・ブレインのプレイというと、派手なものに偏ってしまうのです。サイドスティックで軽く2&4を叩いているのでは、ハル・ブレインとアール・パーマーとジム・ゴードンの区別はぜったいにつきません。

つぎの曲はクレジットはないし、かならずしも典型的なハル・ブレインのスタイルではないのですが、バック・カヴァーにハルの写真があるし、じつにあざやかなロールなので、問題ないでしょう。ジャン&ディーン・ウィズ・ザ・ベル・エア・ポップス・オーケストラ、むろん、そんなオーケストラが存在したわけではないけれど、でもとにかく、Surf City

サンプル Jan & Dean with the Bel-Aire Pops Orchestra "Surf City"

(間違ってアップしたトラックもそのまま残しておくことにします。サンプル Jan & Dean with the Bel-Aire Pops Orchestra "Surf City"

タムタムを16分で豪快に叩きまくるハル・ブレインもいいのですが、どこまでも美しいロールもまたたまらなく魅力的です。バーズのセッションで、テイクの合間に、ハルがロールをやるところが記録されていますが、これがまたあざやかなのです。そこらのただ棒を振りまわすだけの芸能人にはぜったいにできません。才能と経験のたまもの。

f0147840_0273028.jpg

つぎは、サーフじゃねーだろー、とブーイングがあるかもしれませんが、サーフ・ミュージックのぎりぎり紫外領域に入り込んでみます。

ウェイン・ニュートン Comin' on Too Strong


サーフ・ミュージックとフィル・スペクター・サウンドの幸せな結婚、というあたりでしょうか。媒酌人はブルース&テリーとハル・ブレイン。ハルはBe My Babyリックを再演しています。

もうひとつ、すこし遅めのムーディーなサーフ・インストをいっていみます。

サンプル Bruce & Terry "Roger's Reef vol. 2"

テンポは高血圧タイプではありませんが、ドラマーの立場からいえば、こういうテンポで、なおかつアレンジの締め付けがゆるいのもまた、叩きまくるにはもってこいだったりします。

しかし、Hal Blaine and the Wrecking Crewのなかで、ハルは、ある時期から、かならず譜面を書くようになった、といっています。こういう曲でもやはり、インプロヴではなく、譜面を書いたのでしょうかねえ。

まあ、サム・クックのAnother Saturday Nightのように、フリー・ウィーリンに聞こえるプレイでも、じつは譜面を固めてあったことがあとでわかったので、いちおう、どんなケースでも譜面を書いたのだとしておきましょう。

これまた、紫外領域に踏み込みますが、わたしは昔から夕暮れの浜辺が見える音だと思っています。鎌倉の由比ヶ浜に住んでいたころ、夕方、よくこの曲をかけました。かのPet Sounds Sessions Boxより。

ビーチボーイズ Let's Go Away for a While


(追記 このクリップは状況を説明しているが、最後のほうに出てくる、スライドギターはバーニー・ケッセルのプレイだと確信している、という部分は、べつの説もあることを書き加えておく。現物が手元にないのだが、たしか、Pet Sounds Sessionsのライナーには、あとで、ビリー・ストレンジがスライドをオーヴァーダブしたと書かれていたと記憶している。わたしの記憶間違いならば、どなたかコメント欄で訂正していただきたい。)

いきなり、ブライアンがホールドして、ハルに、スネアを入れるな、と指示しています。プロデューサーは星の数ほどいますが、ブライアンは非常に鋭敏なドラミング・センスをもっていて、たいていの場合、的確な修正をしていると感じます。

Wouldn't It Be Niceの入口のアレンジが、ハルではなく、ブライアンがドラミングを修正した結果、ああなったのだとPet Sounds Sessionsでわかったときは、すごいアレンジャー/プロデューサーだと思いました。ハルはいたってノーマルな入り方をしたのに、ブライアンが、unusualな入り方をするように指示しているのです。

☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

今日は長門勇のチャンバラ映画をやっと見終わりました。その続編も見るつもりだったのですが、ふと気が変わって、フランソワ・トリュフォーが見たくなりました。いや、まだ手をつけていませんけれどね。

そろそろなにか映画をやりたいと思って、すこしずつ準備を進めています。しかし、次回は、まだSurf'n'Blaineしていると思います。


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Party / Stack-O-Tracks
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リップ・コーズ
Hey Little Cobra & Other Hot Rod Hits / Three
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ジャン&ディーン
Complete Liberty Singles
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ブルース・ジョンストン
Surfin' 'round the World!
Surfin' 'round the World!


ファンタスティック・バギーズ
Anywhere the Girls Are the B.O.
Anywhere the Girls Are the B.O.


ブルース&テリー
The Best Of Bruce & Terry
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ビーチボーイズ
ペット・サウンズ(MONO&STEREO)
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ウェイン・ニュートン
Collector Series
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by songsf4s | 2011-07-29 23:30 | ドラマー特集
増補ハル・ブレイン・ディスコグラフィー読解 その9 続(きっと)Bobbie Gentryと(たぶん)Julie London
 
前回、ボビー・ジェントリーの三枚目まで書いて、そのあとは、グレン・キャンベルとのデュエット盤にふれただけ、あとのアルバムには言及せずに終えてしまいました。

主観的にはこれで問題ないのですが、やはり説明が必要のような気もします。四枚目のTouch'em with Loveはナッシュヴィル録音なので、ハル・ブレインは無関係です。

ボビー・ジェントリーの魅力のひとつは、極端なオンマイクで録音することだったのですが、このアルバムはごくノーマルなマイキングで、リリース当時、ひどく落胆し、以後のアルバムは手を出しませんでした。いまになって、べつに悪くはないと気を取り直してはいますが、でも、ボビー・ジェントリーである必要もないサウンドです。

ボビー・ジェントリー Seasons Come, Seasons Go


こんな感じで、べつに悪くはないのですが、ボビー・ジェントリーというより、だれか別人の歌を聴いているような気分です。

五枚目のFancyは、当時は買わず、あとから聴いたのですが、なんだかなあ、と思っただけで、ほとんど記憶に残っていません。メンフィスのフェイム・スタジオまでいってリック・ホールのプロデュースでやっていますが、ぜんぜん合わなかったのでしょう。

ただし、一部ハリウッド録音があって、これはかなり考え込みます。ベースはジョー・オズボーンに聞こえるので、ハルがいてもおかしくないのです。でも、確信はもてませんでした。ジム・ゴードンの可能性も否定できないのです。

一曲だけクリップがあったのですが、リップ・シンクながら、場内に流した音を拾い直したようなボケ方で、ドラムのニュアンスなどはわからないでしょう。

ボビー・ジェントリー Raindrops Keep Fallin' on My Head


この状態でも、慣れた方ならジョー・オズボーンはわかるでしょう。丸出しのプレイです。

最後のPatchworkはハリウッドに戻っての録音で、気になるプレイがいくつかありますが、これまた確信をもつにはいたりませんでした。複数のドラマーがプレイしていて、いいプレイもありますが、タイムが寸詰まりになったジョン・グェランみたいなトラックや、垢抜けなくて鈍くさいラス・カンケルのようなプレイもあります。

そんな事情で、三枚目までで終わりにしてしまったのでした。

◆ 時代は変わる ◆◆
さて、今日こそはジュリー・ロンドンのトラックからハル・ブレインを発見します。

わたしはジュリー・ロンドンが好きなのですが、よく聴いていたのはおおむね50年代のものでした。

盤によってパーソネルは異なりますが、デビューのあたりは、バーニー・ケッセルのギターとレイ・レザーウッドのベースだけ、あるいは、ギターがアル・ヴィオラ(いつのだったか、シナトラがライヴで、めったにツアーに出ないミスター・ヴィオラが一緒にきてくれたことに感謝している、と紹介していた)といった名前が見えます。

すこしあとのJulie Is Her Nameでは、ハワード・ロバーツとレッド・ミッチェルでやっていたりして、これまたけっこうでした。その続編はまたギターがバーニー・ケッセル。

60年代に入ると、リバティー・レコードの隆盛にもっとも貢献した、スナッフ・ギャレットがジュリー・ロンドンもプロデュースするようになり、当然、その手駒である、アーニー・フリーマンやアール・パーマーを率いて卓につきます。

ジュリー・ロンドン The End of the World (produced by Snuff Garrett, arranged by Ernie Freeman)


ここから微妙になるのですが、たぶん、ギャレットのときもドラマーはアールで、ハルはないと思います。64年ごろから、ギャレットのアレンジャーはリオン・ラッセルに交代し、それと同時に、ドラマーもハル・ブレインになるのですが、その時期、ギャレットはジュリー・ロンドンのアルバムはやっていないようです。

なんだかゴタクばかりで音がないので、ちょっと話を端折って1969年、ジュリー・ロンドンのリバティーにおける最後のアルバム、Yummy Yummy Yummyに飛びます。まずは、順序がめちゃくちゃですが、最後のアルバムの最後の曲から。

ジュリー・ロンドン Louie Louie


60年代のジュリー・ロンドンはあまり聴いたことがなく、とくに60年代後半は知りませんでした。ハル・ブレインはこのアルバムの曲をリストアップしたわけではありませんし、それほど明確なわけではありませんが、このアルバムのほとんど、あるいはすべてのトラックでハル・ブレインがプレイしていると感じます。

ジュリー・ロンドン Like to Get to Know You


この曲はつい先日、このハル・ブレイン・シリーズで取り上げたばかりで、そのときはスパンキー&アワー・ギャングの(たぶん)オリジナル・ヴァージョンでした。ハル・ブレインの場合、ある曲のオリジナルとカヴァーの両方をやるなんていうのは、日常茶飯のことでした。さがせば十種類以上のカヴァーをやった曲が見つかるだろうと思います。

ジュリー・ロンドン Stoned Soul Picnic


Stoned Soul Picnicのオリジナルはローラ・ニーロ、ヒット・ヴァージョンであるフィフス・ディメンション盤ではハル・ブレインがドラムをプレイしました。ベースはキャロル・ケイ、ガット・ギターはトミー・テデスコに聞こえます。

ジュリー・ロンドンの他の盤とは、このYummy Yummy Yummyというアルバムは、選曲、サウンド、歌い方が大きく異なりますが、この風邪声みたいなのも、これはこれで悪くないと感じます。

ジュリー・ロンドン Light My Fire


選曲はだれなのでしょうか。候補としてはプロデューサー、アレンジャーとしてクレジットされているトミー・オリヴァーですが、おおむね成功していると思うものの、つぎの曲は微妙でしょう。ボブ・ディラン作、ヒット・ヴァージョンは、ポール・ジョーンズが抜け、リード・ヴォーカルがマイク・ダボになってからのマンフレッド・マン。

ジュリー・ロンドン Mighty Quinn


こういう曲をジュリー・ロンドン自身が歌いたがるとは思えないのですがねえ。

ジュリー・ロンドンという人は、ヴァーサティリティーというものがなく、いかにもジュリー・ロンドン好みの曲を、ジュリー・ロンドンのスタイルで歌う以外のことはできませんでした。そこが最大の美点だったと思います。

この最後のアルバムは、これで契約が切れるということがわかっていたからか、ジュリー・ロンドン向きではない曲を、ジュリー・ロンドン風に改変して、なんとか時代との折り合いをつけようとした、というように感じます。

残念ながら、当時は退勢挽回とはいかなかったのでしょう。これをもって彼女のレコーディング・アーティスト時代は終わり、女優およびステージ・アクトとして生きることになります。

冷たいいい方をするなら、レッキング・クルーで録音するなら、もっと早い段階、最悪でも1967年にやるべきだったと思います。ディーン・マーティンは1964年に、フランク・シナトラも同じ年にハル・ブレインをドラム・ストゥールに迎えて、久しぶりのシングル・ヒットを得ています。

レッキング・クルーにはそれくらいの神通力がかつてはありました。どうにも時代からずれてしまった人たちと、時代のあいだをとりもって、両者の中間に落ち着き場所を見つけることができたのです。しかし、1969年では、レッキング・クルー自体が、時代から乖離しはじめていました。そういわなければならないのは、残念なんですがね。

しかし、長い時間がたって、コンテクストから切り離され、あの時代にはちょっと古めかしく感じられたであろう音が、それなりに落ち着いた音に聞こえるようになりました。

ジュリー・ロンドン Yummy Yummy Yummy


ハル・ブレインの場合、ストップ・タイムからの戻りは、強い音を使うのがつねですが、さすがに、「ほんのちょっとの声しかない」と自認するシンガーの録音なので、少し遠慮気味で、ファンとしては、微笑んでしまいます。

このトラックは、そこはかとなくボビー・ジェントリー的で、ひょっとしたら、ボビーの成功を参考にして、ジュリー・ロンドンを再生しようという意図があったのかもしれません。

今日、あまり聴いていなかった60年代の盤、The End of the World、Feeling Good、With Body & Soulの三枚を聴いてみましたが、ハル・ブレインらしきプレイはありませんでした。

また折を見て、まとめて聴いてみようと思っていますが、いまのところ、ハル・ブレインがプレイしたと断じられるのは、Yummy Yummy Yummyだけのようです。



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ジュリー・ロンドン
ヤミー・ヤミー・ヤミー(紙ジャケット仕様)
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ボビー・ジェントリー
Ode to Billie Joe / Touch Em With Love (2-For-1)
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ボビー・ジェントリー
Patchwork / Fancy (Reis)
Patchwork / Fancy (Reis)
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by songsf4s | 2011-07-23 23:57 | ドラマー特集
増補ハル・ブレイン・ディスコグラフィー読解 その1 The BuckinghamsとSpanky & Our Gang
 
ラロ・シフリン・フィルモグラフィーをたった二本で終える気は毛頭ないのですが、いかんせん、つぎの映画を見る時間(ないしは気力)がないため、やむをえず前回もべつのことを書き、本日もまたちょっとだけ耳を使えばすむ話題でつなぐことにします。

◆ スパンキー&アワー・ギャング ◆◆
先日、オフィシャル・ハル・ブレイン・ウェブサイトの新しいディスコグラフィーにふれました。いずれ、詳細に検討したいと思いますが、ラロ・シフリンの準備ができるまで、何曲か、新たにリストアップされた曲を聴いてみることにします。

まずはスパンキー&アワー・ギャングです。どういうコンテクストで出てきたのか忘れてしまったのですが、たしかTonieさんが、どこかでハルのクレジットを見つけたのではなかったでしたっけ? どういう経緯であったにしても、まえまえから疑っていたスパンキー&アワー・ギャングでもハルがプレイしたということは、いちおうすでに確認済みでしたが、今回、ハル自身の側から具体的にトラック名が出てきて、推測はコンファームされました。

スパンキー&アワー・ギャング I'd Like to Get to Know You


なかなか涼しげなサウンドで、いまの季節にはとくによろしいようで。スパンキー&アワー・ギャングは、当初、NYで録音していたのではないかと推測しています。デビュー・アルバムのプロデューサーがジェリー・ロスで、ロスはNYベースで仕事をしていたからです。

ハルは、自分がプレイしたのはロッカーばかりだったので、ブラシを使う機会は多くなかった、そのなかで、この曲でのブラシのプレイはすごく楽しかった、とコメントしています(ブラシとスティックの両方の音がしているが、ハル自身によるダブルなのだろう)。いや、ハルはブラシのプレイでも天性のイノヴェイターぶりを発揮したとわたしは考えていますが、ご本尊としては、もっとブラシのプレイをしたかったのでしょう。

データなしでスパンキー&アワー・ギャングのベスト盤の音だけを聴いていると、ハルに聴こえるものがいくつかあり、途中からはハリウッド録音なのだろうと考えていました。新しい拡張ディスコグラフィーでは、ハルはセカンド・アルバムの曲をあげているし、前回、ハル=アワー・ギャングの検討をしたときも、セカンドからではないかと推測したので、これでなんの疑いもなく百パーセントの確定です。

今回のリストにはありませんが、以前の検討で、ここからはハルだろうと考えた曲。

スパンキー&アワー・ギャング Sunday Mornin'


どちらのクリップもあまり音質がよくないので、ドラマーの聞き分けをするには不都合です(最初にあげたI'd Like to Get to Know Youでは、ブラシの音がただのホワイトノイズのように聞こえてしまう)。お持ちの方はご自分の盤をお聴きになっていただければと思います。ドラムを聴く場合、たとえば、スティックの尖端がスネアのヘッドをヒットする瞬間の微妙なタイミングは、音質が悪いと把握できません。

いや、むろん、ハル・ブレインかジム・ゴードンかが判断しにくくなる、といったレベルのことであって、ハル・ブレインとチャーリー・ワッツを間違えるなどということは、低音質でも起こりませんが!

ハル・ブレインが自分のディスコグラフィーにあげているのに、なぜ聞き分けだなどというかというと、ハルのメモや記憶にもときおりミスがあるので、いちおうの検証は必要だからです。また、パーカッションをプレイしたものもリストアップされるので、トラップがハルなのかどうかを確認する必要もあります。

ハル・ブレインはもう一曲、スパンキー&アワー・ギャングの曲を上げています。ハルのプレイは文句なし、楽曲の出来もよいので、これはサンプルにしました。LPリップですが、ノイジーではないのでご安心を。

サンプル Spanky & Our Gang "Medley: Anything You Choose/And She's Mine"

メドレーの後半、And She's Mineのベースは、キャロル・ケイやジョー・オズボーンのような感じがしません。ひょっとしたら「第三の男」(といっても赤木圭一郎ではない)、ラリー・ネクテル?

◆ ビーチボーイズのコントラクターたち ◆◆
つぎは以前からハル・ブレインの参加がわかっていたものですが、今回の拡張ディスコグラフィーでは、コメントに興味深いことが書かれていたので、クリップを貼り付けます。

ビーチボーイズ Barbara Ann


この一連のPartyセッションでは、ジョー・オズボーンがフェンダー・ベースを、ハル・ブレインがパーカッションをプレイしたことは以前からわかっていました。この曲ではタンバリンでしょうから、ハルのプレイがどうのこうのというトラックではありません(他の曲ではボンゴをやっていて、これは「さすがはハル・ブレイン」と瞠目するが)。

ほう、と思ったのは、この曲のことではなく、そこに付されたハルのコメントのほうです。

「(The Beach Boys were) usually contracted by Steve Douglas and later Hal Blaine and later Dianne Revell」

「ビーチボーイズに関しては、多くの場合、スティーヴ・ダグラスがコントラクターをつとめたが、のちにはハル・ブレインが、さらに後年になると、ダイアン・ラヴェルがおこなった」(Revellではなく、正しくはRovell)

ひどく専門的話題で恐縮ですが、ビーチボーイズのコントラクトをしていたのはだれか、なんてことを明らかにした記述ははじめて見ました。わたしはスターには関心がなく、プレイとサウンドとそれを支えたシステムの研究をしています。わたしのような人間にとっては、こういう事実を押さえておくことがなによりも重要なのです(あるセッションのメンバーは、プロデューサーの注文に配慮しつつ、コントラクターが決める)。あのダイアンがコントラクターをやっていたなんてはじめて知りました。

つぎの曲はダイアン・ラヴェルのことを歌ったものといわれています。いや、真偽のほどはなんともいえませんが。

ビーチボーイズ My Diane


このころになると、ハル・ブレインはあまりビーチボーイズの仕事はしなくなっていたと思っていましたが、この曲はハルかもしれないと感じます。

◆ バッキンガムズ ◆◆
1998年だったと思うのですが、メールでキャロル・ケイさんにいろいろなお話を伺いました。モータウンの話題が多かったのですが、わたしが彼女にメールを送ったのは、ハル・ブレインの回想記のディスコグラフィーで言及された以外に、クルーが影武者をやったバンドとしてはどういうものがあったのかを知りたかったからです。

ハーパーズ・ビザールはスタジオではプレイしなかったのではないか、というわたしの疑いは、彼女によって全面的にコンファームされました。ドラムはハル・ブレイン、ベースはキャロル・ケイ、ギターはトミー・テデスコというのがレギュラーだった、というのです。

つぎに質問したのは、たしか、このバンドのことだったと思います。

バッキンガムズ Don't You Care


彼女からは、セカンド以後、ほとんどのシングルでわたしがベースをプレイした、という回答がとどきました。セカンド・シングルとは、すなわち、上記のDon't You Careです。

ベースがキャロル・ケイなら、では、ドラムはハル・ブレインか、というと、わたしにはそうは聴こえませんでした。ハルにしては、タイムが少し早すぎると感じますし、そもそもこの曲がハルのプレイだったら、回想記のトップテン・ヒッツ・ディスコグラフィーにあげられていてしかるべきです(もっとも、あのディスコグラフィーから抜け落ちた曲をいくつか確認しているが)。彼女もドラマーがだれだったかまでは記憶していなくて、この件はそこで行き止まりとなりました。

ただし、当時も、この曲は他のシングルでプレイしたタイムがすこし早いドラマーより微妙に遅いので、ハル・ブレインの可能性が高いと考えていました。

バッキンガムズ Mercy, Mercy, Mercy


いま聴きなおしても、これが丁半博打なら、やはりハル・ブレインであるというほうに札を張ります。

そして、今回の拡張ディスコグラフィーでは、ついにハル・ブレインの側から、バッキンガムズの名前があがりました。

バッキンガムズ Just Because I've Fallen Down/Any Place In Here/Any Place In Here-Reprise


細かいことをいうと、ハルが言及しているのは、Any Place In Hereだけで、このクリップでつながって出てくる他のトラックには言及していません。Just Because I've Fallen Downは、最初はハルのような気もしましたが、だんだん違うような気がしてきて、これについてはとりあえず判断保留です。ハルのことを離れても、ストップタイムのギター・アンサンブルがすごくチャーミングです。パーソネルを知りたいものです。

この曲が収録されたバッキンガムズのPortraitsというアルバムは、時代を反映した、いわゆる「ペパーズの息子」で、ちょっとばかりビートルズの真似事をしています。サウンド・イフェクトの多用もペパーズの息子の特徴のひとつでした。

バッキンガムズのプロデューサーは、ジェイムズ・ウィリアム・グェルシーオです。グェルシーオの名が最初に歴史に記録されるのは、チャド&ジェレミーのツアー・バンドにベース・プレイヤーとして加わったときのことで、つぎにチャド&ジェレミーのためにこの曲を書いたことで名前が残ることになります。

チャド&ジェレミー Distant Shores


たまたまというか、必然的に、というか、この曲のドラマーもハル・ブレインです。確証はありませんが、ベースはキャロル・ケイとわたしは考えています。タイムといい、ルートから離れるときのラインの作り方といい、いかにもCKスタイルと感じます。

バッキンガムズについては、ハルはとんでもない勘違いをしていて、要するに、ほとんど記憶に残らない程度のかかわりでしかなかったのだろうと思います。したがって、Don't You Careなどでプレイした微妙にタイムの早いドラマーは依然、未詳と考えています。

夏の夜、涼しい風が吹いたりすると、無性に昔の歌が聴きたくなるものですが、今夜はビーチボーイズをあれこれ聴きたくなりました。次回はただなんとなくビーチボーイズのトラックを並べるなんていうのをやってみましょうか。


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スパンキー&アワー・ギャング(ボックス)
Complete Mercury Recordings
Complete Mercury Recordings


ビーチボーイズ(Barbara Annを収録)
Party / Stack-O-Tracks
Party / Stack-O-Tracks


ビーチボーイズ(My Dianeを収録)
M.I.U.アルバム(紙ジャケット仕様)
M.I.U.アルバム(紙ジャケット仕様)


バッキンガムズ(Mercy, Mercy, MercyおよびDon't You Careを収録)
Mercy Mercy Mercy: A Collection
Mercy Mercy Mercy: A Collection


チャド&ジェレミー
Very Best of Chad & Jeremy
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by songsf4s | 2011-07-14 23:25 | ドラマー特集
ラロ・シフリン・フィルモグラフィー2 ヘンリー・レヴィン監督『サイレンサー殺人部隊』中篇
 
リプリーズ・レコード時代のディーン・マーティンのボックスを聴いて思ったのは、なんだよ、このハル・ブレインだらけは、ということです。かのEverybody Loves Somebody以降、ディノのあらゆるレコーディングで、ハルがストゥールに坐ったのではないかと思うほどです。

ディーン・マーティン Everybody Loves Somebody(リメイク45ヴァージョン ハル・ブレイン・オン・ドラムズ)


以前、書肆の求めに応じてハリウッド音楽史を書いたのですが、先様の都合でお蔵入りしてしまいました。いま、そのときにきちんと調べて書いたディノの大復活劇を参照して、三段落ぐらいにまとめようと思ったのです。しかし、そういっては手前味噌がすぎますが(いつものこと!)、入念に練り上げた(呵呵)パラグラフなので、当人にもいまさら切り刻むのは困難、そのまま貼り付けることにしました。

ジミー・ボーウェンが友人の紹介でリプリーズ・レコードに入社することになった顛末(フランク・シナトラ・リプリーズ・レコード会長がじきじきに電話してきた!)から、以下の段落へとつながります。縦組を想定した文字遣いなので、あしからず。

 ボーウェンには、リプリーズで仕事をするなら、ぜひ自分の手でレコーディングしたいと思っていたシンガーがいた。ディーン・マーティンである。希望叶って、彼は六三年の《ディーン・“テックス”・マーティン・ライズ・アゲイン》Dean "Tex" Martin Rides Againから、ディノのプロデュースを引き継いだ。前作が久しぶりにチャートインしたことを受け、同じ路線を行ったカントリーの企画盤だった。しかし、ヒットはしなかった。
 ボーウェンにとっては二枚目のディノのアルバム、六四年の《ドリーム・ウィズ・ディーン》Dream with Deanは、ラス・ヴェガスのショウのあと、いつもラウンジに場所を移して歌っていた曲を、その雰囲気のまま録音するというディノ自身が望んだ企画で、いかにも彼らしい、リラックスしたムードの好ましいアルバムだ。バーニー・ケッセル、レッド・ミッチェル、アーヴ・コトラーというウェスト・コースト・ジャズ生き残り組もすばらしいプレイをしている。だが、このメンバーからわかるとおり、シングル・カットに向くものはないし、ビートルズの嵐が吹き荒れた年には、古めかしく聞こえただろう。

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《ドリーム・ウィズ・ディーン》の録音では一曲足りなくなり、ピアノのケン・レインが、自分が昔、シナトラのために書いた曲をやってみてはどうかと提案し、その曲を録音して仕事は終わった。この埋め草の曲はあとで意味をもつが、LP自体はチャートインしなかった。
 二枚つづけて失敗したボーウェンは、つぎはヒットさせなければ、と覚悟したのではないだろうか。それまでの二枚の保守路線を捨て、ドラスティックな転換を図った。ビートルズ旋風の真っ最中だったことも、この決断に影響を与えただろうし、ディノ自身や会社上層部の同意も得やすかっただろう。
 選ばれた曲は、前作で埋め草として録音され、思わぬ好評を得たケン・レインの曲、〈エヴリバディー・ラヴズ・サムバディー〉Everybody Loves Somebodyだった。最初のジャズ・コンボ・ヴァージョンは、片手がグラスにいっている姿が彷彿とする、いかにもディノらしいインティミットな雰囲気があり、ケッセルのプレイと合わせて、なかなか楽しめる。しかし、これをシングル・カットしようと考えるプロデューサーはひとりもいないだろう。ここからが手腕を問われるところだ。
 ボーウェンは先行するヴァージョンを参照したという。わたしが聴いたことがあるのは、シナトラ、エディー・ヘイウッド、ダイナ・ワシントンの三種だが、ボーウェンはワシントンの名をあげている[*注1]。ボーウェンの構想とアーニー・フリーマンのアレンジへの影響を考えるなら、シナトラ盤よりスピードアップしたヘイウッド盤のミディアム・テンポ、ワシントン盤のストリングスがヒントになったのかもしれないが、いずれも微妙で、直接的な影響は観察できない。
 ボーウェンとフリーマンは、先行ヴァージョンには見られなかった華麗な衣装をつくりあげた。まず、ボーウェンが好んだハル・ブレインをドラムに据え、メインストリーム・シンガーの盤にしては強めのバックビートを叩かせた。ここにアップライト・ベースのみならず、ダノを加えるというスナッフ・ギャレットやフィル・スペクターの手法を適用し(ただし、完全なユニゾンではなく、アップライトと付いたり離れたりする)、エレクトリック・ギターには2&4のカッティング、ピアノには四分三連のコードを弾かせた。そして、左チャンネルには女声コーラス、右チャンネルにはストリングスとティンパニーを載せた。

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 前作にくらべると装飾過多といえるほどだが、ディノという「一昔前のスター」をよみがえらせたのは、ハルのタムにティンパニーを重ねることまでやってみせた、この厚いサウンドにほかならない。〈エヴリバディー・ラヴズ・サムバディー〉は、ビートルズの〈ア・ハード・デイズ・ナイト〉A Hard Day's Nightに替わって、六四年八月一五日付でビルボード・チャートのトップに立った。
 この大ヒットでディノは復活したどころか、キャリアのピークを迎えた。それまでのヒット枯渇が一転してヒット連発となり、秋にはフォロウ・アップの〈ザ・ドア・イズ・スティル・オープン〉The Door Is Still Openがまたしてもトップテンに入った。もちろん、スタッフは変わらず、この曲でもハル・ブレインがストゥールに坐った。そして翌年には、新たな「商品価値」を得たディノをホストにして「ディーン・マーティン・ショウ」がはじまり、九シーズンつづくヒットとなる。
 ディノという大スターが、後半生も「現役のスター」でありつづけることができたのは、〈エヴリバディー・ラヴズ・サムバディー〉というモンスター・ヒットのおかげだった。ジミー・ボーウェンという嵐の時代に適応できる二十代のプロデューサー、いまやアレンジャーとしてヴェテランになりつつあったアーニー・フリーマン、時代を背負う位置に立ったハル・ブレインの力に負うところ大だ。このスタッフはやがて、もうひとりの低迷する大スターも復活させることになる。
 しかし、大きく見れば、ディノがこのように新しい時代のメインストリーマーのあり方を示すことができたのは、ビートルズが「ルールを破壊した」結果だったと考えるべきだろう。

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左からサミー・デイヴィス・ジュニア、ハル・ブレイン、レイ・ポールマン、そしてジミー・ボーウェン。

Dream with Dean収録のオリジナル・レコーディングのクリップはありませんでしたが、ピアノ一台という点が異なるものの、以下のクリップのようなムードです。このクリップでピアノを弾いているのがケン・レインではないでしょうか。

ディーン・マーティン Everybody Loves Somebody(テレビ・ライヴ)


この話を持ち出したのは、ひとつには、「マット・ヘルム」シリーズも、ディノの大復活の延長線上でつくられたといいたかったからです。Everybody Loves Somebodyのヒットによるチャートへのカムバックがなければ、テレビのレギュラー番組も、本編のシリーズも、彼のところには持ち込まれなかったでしょう。

そして、もうひとつはハル・ブレインです。ジミー・ボーウェンはハル・ブレインとアーニー・フリーマンという彼の「手駒」に固執しました。ディノの復活によって、フランク・シナトラをプロデュースするチャンスが巡ってきたとき、ボーウェンはアレンジャーからプレイヤー、さらにはエンジニアにいたるまで、シナトラの従来のスタッフを退け、彼のスタッフである、アーニー・フリーマン、ハル・ブレイン。エディー・ブラケットを配置し、同じようにフランクもビルボード・チャート・トップに返り咲かせます。

いわゆる「シナトラ一家」(アメリカでは「ラットパック」と呼んでいる)はみな義理堅かったように見えます。しかし、その義理堅さは異なった形をとって顕れたように思います。

シナトラは、ボーウェン=フリーマン=ブレイン=ブラケットで世紀のカムバックを成し遂げたあとも、このヒット・レシピには固執しませんでした。ハル・ブレインは2曲のチャートトッパーをはじめ、彼にいくつもヒットをもたらしたのに、ついに「シナトラのドラマー」にはなりませんでした。フランク・シナトラは古い付き合いを途絶えさせることなく、その後も、ネルソン・リドル、ビリー・メイといった昔馴染みのアレンジャーを起用しました。これも彼の義理堅さゆえのことなのでしょう。

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「シナトラ会」の会合 集合したかつてのシナトラのアレンジャーたち。左から、ビリー・メイ、ドン・コスタ、会長その人、そしてゴードン・ジェンキンズ。まるで「生きているアメリカ音楽史」たちの記念写真。

いっぽう、ディーン・マーティンは、彼に再び栄光をもたらしたスタッフを大事にしつづけたように見えます。だから、以後、可能なかぎりハル・ブレインが彼のセッションのストゥールに坐るように気を配ったのではないでしょうか。まあ、なかば成田山のお札みたいな験かつぎだったのかもしれませんが。

ハル・ブレインはポップ・フィールドではキングでしたが、映画の世界はべつです。彼が音楽映画以外でスコアもプレイした例は、それほど多くないでしょう。AIPのビーチ・ムーヴィーなどは、ハル・ブレインだらけのスコアがあったりしますが、一般映画ではそれほどプレイしていないと思います。

それなのに、マット・ヘルム・シリーズでは、ハルのプレイがそこらじゅうにばら撒かれているのはなぜか、と考えると、むろん、映画スコアにも8ビートが求められる時代になったからという側面もあるでしょうが、同時に、ディノの希望もあったのではないか、という気がしてきます。カムバック以後のディノは、ハル・ブレインをヒットのお守りのように思っていたのではないでしょうか。いや、まったくの憶測ですが。

◆ ラウンジ・タイム ◆◆
今回で『サイレンサー殺人部隊』は完了のつもりだったのですが、なぜこの映画はハル・ブレインだらけなのか、と考えているうちに、脇筋に入り込んでしまったので、今日はちょっとだけ聴いて、次回完結ということにします。

『サイレンサー殺人部隊』よりカー・チェイス・シークェンス


ここはちょっと笑いました。マット・ヘルムが「フランス警察に告ぐ。この車にはinnocentな(=無辜の)女性が乗っている」と表示する(!)のですが、それでも警察は撃ってきます(音声認識して文字に変換する技術もすごいがw)。それでディノがつぶやきます。

「フランスの男らしいぜ。この世にinnocentな(=清純な)女の子がいるなんてことは、てんから信じていないとくる」

まあ、フランスだとかイタリアだとかいった国に対して持っているイメージは、わたしの場合もマット・ヘルムと似たようなものです!

いったん、追跡者を振り切ったところで、ハープシコードをあしらったけっこうなラウンジ・ミュージックが流れるのですが、あまりよく聞こえないし、すぐに終わってしまうので、サンプルにしました。

サンプル Lalo Schifrin "Suzie's Themre"

一難去ってまた一難、警察のつぎは悪漢に追跡されますが、こんどは「この文字が読めるとしたら、車間距離を詰めすぎです」とテールに表示されるので、また笑いました。この手のジョークは豊富な映画で、それでうかうかと最後まで見てしまったのでありました。

もう一曲、ラウンジ系のものをサンプルにしました。

サンプル Lalo Schifrin "I'm Not the Marrying Kind"

この曲は、最後にディノのヴォーカル・ヴァージョンも出てきますが、サブ・テーマという感じで、二種のインスト・ヴァージョンも使われます。おおむねノーマルなラウンジ・ミュージックなのですが、途中で入ってくるギターがベラボーにうまいところが、いかにもこの時代のハリウッドらしいところです。ハワード・ロバーツなのかトミー・テデスコなのか、はたまたクレジットされていないギタリストなのか、そのへんはわかりませんが。

ベースはアップライトなので、当然、キャロル・ケイではなく、未詳のプレイヤーによるものです。このセットのときは、ドラムもハル・ブレインではなく、アール・パーマーだろうと推測できます。


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by songsf4s | 2011-07-09 22:58 | 映画・TV音楽
ラロ・シフリン・フィルモグラフィー2 ヘンリー・レヴィン監督『サイレンサー殺人部隊』前篇

当家のお客さん方には事新しく申し上げるほどのことではありませんが、1960年代中期、ハリウッドでつぎからつぎへとヒットを生んだ一群のスタジオ・プレイヤーたちを、後年、ハル・ブレインは「レッキング・クルー」と名づけました。

これは彼の回想記Hal Blaine & the Wrecking Crewによって広まり、まるでそのようなバンドが存在したかのように語られることになりますが、キャロル・ケイはこれを真っ向から否定しています。ハルが勝手にでっちあげた名前に過ぎず、当時からそう呼ばれていたわけではない、というのです(したがって、なんという表題だったか、時間旅行をして、ブライアン・ウィルソンに『スマイル』を完成させようという物語のなかで、ブライアンがプレイヤーたちを「レッキング・クルー」と呼ぶのは大間違いのコンコンチキ。いや、主人公はわれわれのとは異なる時間線に迷い込んだのかもしれないが)。

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キャロル・ケイのいうことが正しいのであって、ハルは「吹いた」のだろうと思いますが、なんだって名前がないと不便ですから、ビリー・ストレンジやトミー・テデスコなど、クルーの中核的プレイヤーにもこの名称は追認され、やがて、この名称をタイトルとしたドキュメンタリー映画までつくられるにおよびました。わたしは、CKさんのおっしゃることも尊重しつつ、名前はあったほうがいいという立場から、留保つきでこの名称を使っています。

(いわゆる)「レッキング・クルー」という名前を、ハル・ブレインはどこから思いついたのでしょうか。回想記のなかでは、われわれより前の世代のプレイヤーはスーツにネクタイという姿でスタジオにやってきた、だが、われわれはジーンズとTシャツだった、彼らはわれわれのことを、スタジオ文化を「破壊する」(wreck)輩だといった、と説明しています。

つまり、旧弊なサウンド・パラダイムを破壊し、新しい音をつくる集団、というのがハル・ブレインの命名意図だったようです。

しかし、いっぽうで、映画から思いついたのだろう、という外野の声もあります。

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日本では「サイレンサー」シリーズなどと呼ばれていましたが、アメリカでは主人公の名前をとって「マット・ヘルム」と呼ばれた、ドナルド・ハミルトン原作のスパイ・アクション・シリーズ第四作『サイレンサー破壊部隊』というものです。

たまたま、というか、ハルはこの映画から「レッキング・クルー」という名前を頂戴したと見る立場からは必然でしょうが、テーマをはじめ、この映画のスコアのあちこちでハルのドラミングを聴くことができます。

やれやれ、長いイントロでしたが、ということで、ラロ・シフリン・フィルモグラフィー・シリーズの2回目は、1966年のマット・ヘルム・シリーズ第二作『サイレンサー殺人部隊』です。

◆ ロッキン・スコア ◆◆
まずは、主演俳優がみずから紹介するめずらしい予告編を貼りつけます。

『サイレンサー殺人部隊』オリジナル・トレイラー


いまどきのタームでいえば「スパイ・ファイ」(Spy-Fi。スパイとSci-Fi=サイ・ファイ=サイエンス・フィクションを合成した語で、SF的要素のあるスパイものを指す)、昔はたんにスパイ映画などといっていた、諜報組織に属すエイジェントをヒーローにした、ジェイムズ・ボンド類似のアクション映画です。

ボンドは実在の組織に属していましたが、たとえば「ナポレオン・ソロ」のU.N.C.L.E.のように、この種のお話では架空の組織もしばしば登場することになっていて、ディーン・マーティン扮するマット・ヘルムは、I.C.E.すなわちIntelligence Counter Espionage(しいて訳すなら「防諜部」といったぐあいの凡庸な名称)に属しています。なんて、わざわざ書くほどのことでもないのですが。

さらにどうでもいいことですが、マット・ヘルムは今回も、前作『サイレンサー沈黙部隊』同様、世界征服を目指す秘密組織BIG O(なにを略したかは略す)が秘密兵器「ヘリオビーム」(ヘリウムを利用したレーザー光線のようなものを想起させたいのだろう)なるものでワシントンを破壊しようという陰謀に立ち向かいます。文字で読むと馬鹿馬鹿しく見えるでしょうが、映画で見るともっと馬鹿馬鹿しいのです。

でもまあ、小学校の終わりから中学にかけて、こういうスパイ・ファイにどっぷり漬かっていたので、わたしの場合は(ほかの人のことは断じて知ったことではない!)、あちこちに埋め込まれた手抜きにニヤニヤしながら、なんとなく最後まで見てしまいます。あの時代にしかないタイプの映画であり、70年代には絶滅してしまったからです。

いくつか気の利いた台詞がありますし、知っていればちょっと笑う楽屋落ちもあるので、百人のうち三人ぐらいは、これはこれで面白い、という方もいらっしゃるかもしれません。映画はその程度の出来ですが(しつこいが、わたしはこういうBムーヴィーをそこそこ好む)、あの時代の音楽がお好きな方なら、ちょっと身を乗り出すようなスコアです。

サイレンサー殺人部隊』タイトル・シークェンス


わっはっは、です。スネア、タムタム、フロアタムと流すストレート・シクスティーンスを聴いただけで、ハル・ブレインとわかる派手さです。Jazz on the Screenデータベースにはドラムはアール・パーマーだけ、先日、三河のOさんが教えてくださった強力なラロ・シフリン・ディスコグラフィーにはベースのキャロル・ケイの名前しかありませんが、この場合はまったく問題ありません。百パーセントの自信をもって、テーマをプレイしたドラマーはハル・ブレインと断言します。

いちおう、Jazz on the Screenのパーソネルをペーストしておきます。

Inc: Bud Shank, Plas Johnson, reeds; Howard Roberts, Tommy Tedesco, guitar; Carol Kaye, acoustic double bass; Earl Palmer, drums; Emil Richards, percussion.

キャロル・ケイはアコースティック・ダブル・ベースと書かれていますが、彼女はフェンダーしかプレイしないので、これは記載ミスです。ただし、スタンダップ・ベースの音がするトラックはあるので、だれかがプレイしたはずですが。

『ブリット』同様、バド・シャンクがフルートのようですが、プラズ・ジョンソンも、サックスではなく、木管(reed)と書かれています。

プラズはアルトとテナーのクレジットしか見たことがありませんが、フルートもプレイしたのかもしれません。仕事でやるかどうかはべつとして、木管プレイヤーはたいていフルートの経験もあるはずですから。でも、あまり見ないということは、たとえフルートをプレイするとしても、テナー・サックスの場合のような圧倒的技量ではなかったのでしょう。

◆ ハル・ブレイン・ストライクス ◆◆
フランス語吹き替えがちょっと珍なのですが(まあ、それをいうなら、日本語吹き替えのほうがもっとずっと珍だが)、つぎはディノがクラブでアン=マーグレットと知り合う場面。



はじめのほうで歌っているのはディノ・デジ&ビリー、すなわちディーン・マーティンの息子のバンドです。もちろん、ディノ・デジ&ビリーの盤の多くはハル・ブレインがプレイしていますし、この曲もまたどこからどう見てもハル以外にはありえないというプレイです。

ハルがStraight sixteenth against shuffle=「シャッフル・ビートに逆らう16分のパラディドル」と呼んでいるイディオムが多用されていますが、Straight sixteenth against shuffleをこういうアクセント、ニュアンスでプレイするドラマーはハル・ブレインしかいません。

この映画でもっとも好きなトラックは、残念ながらクリップが見当たらないので、サンプルをアップします。メロディーはメイン・タイトルと同じ、リード楽器をギターにしただけの変奏曲なのですが、やっぱりギターだと盛り上がり方が数段違うなあ、と思います。

サンプル Lalo Schifrin "Iron Head"

かつてのジェイムズ・ボンド・シリーズには、かならず敵側の強力な殺し屋というのが出てきましたが(ジョーズだのグレート・トーゴーだの、印象深い敵役がたくさんいた)、この曲のタイトルになっている「鉄の頭」というのも、頭に鉄板を貼りつけた(『宇宙大作戦』のミスター・スポックの髪型に似ている!)ゴリラ野郎のことです。

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この鉄板の由来がどこかで説明されるのかと思ったのですが(たとえば、ロボトミーをしたあとで鉄板をかぶせたといった、いかにもSpy-Fi的な趣向だとか)、ついに説明されませんでした。マット・ヘルムが鉄板を殴って痛がるシーンがありますが、それぐらいの用途しかないようです!

で、ディノと鉄頭が格闘する場面で、この典型的なスパイ・アクション・ギター・インストが流れます。典型的過ぎて、半歩パロディーに踏み込んでいるところがこのトラックの魅力ですが、そのあたりを意識していたのか、無意識だったのか、微妙なところです。

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この鉄頭、殴られても痛くない、などというくだらない用途しかないだけでなく、最後は電磁石に頭が貼りついてしまうという情けない事態になる。

いうまでもなく、この曲もドラムはハル・ブレインと一小節でわかります。ギターは、12弦だけでなく、6弦も重ねられているのかもしれませんが、だれでしょうねえ。クレジットがあるのはトミー・テデスコとハワード・ロバーツのみ。この二人のデュオでしょうか。

映画としては、とくにすぐれているわけではないのですが、音楽を聴くと、やはりどれも捨てがたく、まだ佳曲があるので、次回はラウンジ的なものを中心に、さらに『サイレンサー殺人部隊』をつづけます。


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by songsf4s | 2011-07-08 23:23 | 映画・TV音楽