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【ブリティッシュ・ビート根問い】サーチャーズ篇7 1963年の7
 
先日は、次回からサード・アルバムへ、と書いたのだが、ハンブルクのスター・クラブでのライヴ盤も63年にドイツでリリースされたようなので、先にこちらを検討する。

それが終わったらサード・アルバムへと進むかというと、これがまた微妙で、ほかに同時期のBBCやスウェーデンのラジオ・ライヴも盤になっていて、収録曲を検討したうえで、そちらも取り上げるかどうか、後日決める。

スター・クラブのライヴ盤は、LPの時代とCDになってからでは、曲数が異なっているので、ここでは手元にあるCDヴァージョンの収録曲にしたがって見ていく。

いちおう、最初のLPヴァージョンの構成をDiscogsから以下に引き写した。

Sweets For My Sweet - The Searchers At The Star-Club Hamburg

Sweets For My Sweet
Ain't That Just Like Me?
Listen To Me
I Can Tell
Sick And Tired
Mashed Potatoes
I Sure Know A Lot About Love
Rosalie
Led In The Game
Hey, Joe
Always It's You
Hully Gully
What I'd Say

f0147840_2240268.jpg

今回検討するCDヴァージョンは以下のような構成。

Complete Live at The Star-Club Hamburg

Sweets For My Sweet
Ain't That Just Like Me
Listen To Me
I Can Tell
Sick And Tired
Mashed Potatoes
I Sure Know a Lot About Love
Rosalie
Led in the Game
Hey Joe
Always It's You
Hully Gully
What'd I Say (uncutted long version)
Beautiful Dreamer
Sweet Nothin's
Shakin' All Over
Sweet Little Sixteen
Don't You Know
Maybelline

オリジナルLPが13曲なのに対して、CDのコンプリート・ヴァージョン21曲構成になっている。しかし、ライヴだから、すでに検討したスタジオ盤と重なる曲もあり、そういうものは省略する。

なお、盤のライナーには録音日時が記載されていないのだが、こういうものはレーベルと正規の契約を結ぶ以前のものと決まっているので、62年または63年前半の録音だろう。

◆ I Can Tell ◆◆
最初の3曲、Sweets For My Sweet、Ain't That Just Like Me、Listen To Meはすでにこのシリーズで取り上げているので、4曲目のI Can Tellへ。

作者はイーラス・ベイツ、すなわちボー・ディドリーで、オリジナルを歌ったのもディドリー自身。

The Searchers - I Can Tell (live)


Bo Diddley - I Can Tell


ほとんど別人28号と化していて、好みからいえば、スピードアップしたサーチャーズ盤がいい。ディドリーのオリジナルはそこらによくあるブルース崩しにしか思えない。

とはいえ、それもまた考えようで、オリジナルに隙があるとカヴァーは多くなる傾向がある。ボー・ディドリーの曲はそのパターンが多い、という偏見を持っている。

サーチャーズ盤のリード・ヴォーカルは、いつもの二人の声とは違うので、クリス・カーティスなのだろう。メロディックなものはトニー・ジャクソンとマイク:ペンダーに任せ、自分はロック系、ブルーズ系と思っていたのだろうか。

イギリスでは、サーチャーズより早く、または同時期にこのグループもカヴァーしている。

Johnny Kidd & The Pirates - I Can Tell


サーチャーズのカヴァーは、ボー・ディドリーのオリジナルより、こちらのほうにずっと近いので、ディドリー盤直接ではなく、ジョニー・キッド経由でカヴァーした可能性もあると思う。

ほかにゼファーズ(サーチャーズと同時代のイギリスのマイナー・グループ)のものもある。ゼファーズはほとんど盤がないにもかかわらず、クリップが上がっていたので、これも貼り付けておく。

The Zephyrs - I Can Tell


惜しかったねえ、ささやかなヒットがあれば、アルバムを出すぐらいのところには行けたのに、という感じだが、それにはヴォーカルの魅力が不足していたかもしれない。

サー・ヘンリー&ヒズ・バトラーズという60年代のデンマークのグループのものもちょっと面白いのだが(ギターとドラムがいい)、クリップはないし、サンプルをアップするほどのものでもないので、割愛。

I Can Tellなどという変哲もないタイトルなので、HDDに検索をかけると、同題異曲がずいぶんヒットしてしまう。レスリー・ゴア、ハニーカムズ、レパラータ&ザ・デルロンズ、ベイカー・ナイトなどのものは別の曲である。

それで通り過ぎられれば問題なかったのだが、以下の曲は引っかかった。同じ曲ではないのだが、共通点があって、まったく無関係の曲とはにわかに断定できない。

サンプル The Youngbloods - I Can Tell

こちらの作者はボー・ディドリーではなく、チャック・ウィリスで、作者自身のヴァージョンはクリップがあった。

Chuck Willis & The Sandmen - I Can Tell


曲の構造はブルーズだが、スタイルは典型的なドゥーワップである。

結局、これも古い歌がベースになっているということではないか。それぞれに変形して歌っていて、アダプトした人間が作者としてクレジットされる、といういつものパターンで、同題にしてかつ共通点がありながら、作者名が異なるヴァリエーションが存在するのだろうと考える。

◆ Sick and Tired ◆◆
サーチャーズの曲はシンプルなものが多いが、ライヴになるといよいよ3コードばかりになっていく。つぎはアール・パーマーが単純きわまりないといったファッツ・ドミノの、じつに単純な曲。

The Searchers - Sick and Tired (live at The Star Club, Hamburg)


Fats Domino - Sick and Tired


やりやすそうだからか、オブスキュアな曲のわりにはカヴァーが多い。それぞれに味があって面白いのだが、たとえば、このヴァージョンはどうだろうか。

The Righteous Brothers - Sick and Tired


フィレーズ時代の録音だが、アルバム・トラックなので、スペクターは無関係、ビル・メドリーのプロデュースだろう。トラックはストレートでそれほど面白くないが、デュエットでやるのもまたいいな、と感じさせる。

つぎはファット・ドミノと同じニューオーリンズ録音。4つの4分音符のあつかいが平等ではない、うねるグルーヴがファッツのオリジナルと共通する。

Chris Kenner - Sick and Tired


テンポが違いすぎて比較しにくいかもしれないが、もう一度、ニューオーリンズとは異なるストレートなグルーヴのヴァージョンを。

Ronnie Hawkins - Sick and Tired


わたしはどうもホークス(ロニー・ホーキンズのバンド)が苦手なのだが、これはタイムが安定していて、危なっかしい感じがなく、もしもこれがホークスのプレイなら、「どうもお見それしました」である。

サム・ブテーラや、エディー・コクランがプロデュースしたボブ・デントンのもの、ドゥエイン・オールマンがプレイしたロニー・ホーキンズのリメイクなど、それぞれに面白いのだが、クリップがないので割愛する。

また、グレイトフル・デッドもやっているが、うちにはWBからのデビュー前の、あらま、と困惑するようなヴァージョンしかないので、これもなかったことにする! ヴォーカルはピグペンで、結局、その後、レパートリーからはずされたのだろう。

まだ二曲だけだが、聴くべきヴァージョンは山ほどあり、調べに手間取った疑問もあり、長くなったので、以下は次回へと。


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サーチャーズ
Definitive Pye Collection
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サーチャーズ
Meet the Searchers
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サーチャーズ
Sugar & Spice
Sugar & Spice

サーチャーズ
Sugar & Spice
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サーチャーズ
Live at the Star-Club Hamburg
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ボー・ディドリー
His Best : The Chess 50th Anniversary Collection (紙ジャケット)
His Best : The Chess 50th Anniversary Collection (紙ジャケット)

ジョニー・キッド&ザ・パイレーツ
The Best of Johnny Kidd & The Pirates
The Best of Johnny Kidd & The Pirates

ヤングブラッズ
The Youngbloods/Earth Music/Elephant Mountain
The Youngbloods/Earth Music/Elephant Mountain

チャック・ウィリス
Chuck Willis Wails-Complete Recordings 1951-56
Chuck Willis Wails-Complete Recordings 1951-56

ファッツ・ドミノ
Vol. 3-Imperial Singles
Vol. 3-Imperial Singles

ライチャウス・ブラザーズ
ふられた気持(紙ジャケット仕様)
ふられた気持(紙ジャケット仕様)

ロニー・ホーキンズ
RONNIE ROCKS
RONNIE ROCKS

クリス・ケナー
I Like It Like That (THE DEFINITIVE CHRIS KENNER COLLECTION 1956-1968)
I Like It Like That (THE DEFINITIVE CHRIS KENNER COLLECTION 1956-1968)
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by songsf4s | 2014-02-25 22:48 | ブリティシュ・インヴェイジョン
【ブリティッシュ・ビート根問い】サーチャーズ篇6 1963年の6
 
◆ Saints & Searchers ◆◆
B面3曲目の作者はSugar and Spiceと同じくフレッド・ナイティンゲール、すなわちトニー・ハッチなので、サーチャーズがオリジナルと考えて大丈夫だろう。Sugar and SpiceのB面としてリリースされた。AB面両方いただいて、プロデューサー冥利に尽きるというものだ!

クリップはフランス語版しかなく、これが笑っちゃいそうな、どうにもこうにも気分の出ないヴァージョンなので、まともな英語版をサンプルにした。

サンプル The Searchers - Saints and Searchers

しかし、この曲は純粋なオリジナルではなく、タイトルからもわかるように、そして、歌詞の冒頭がそのまま引き写しになっていることからわかるように、このスタンダード曲を下敷きにしている。

Fats Domino - When the Saints Go Marchin' In


クレジットを見なくても、アール・パーマーとたちどころにわかるプレイで、彼の発明になる「スツチャカ」リズムが楽しい。

あまたある「聖者が町にやってくる」のなかでも、とくにファッツ・ドミノ盤を貼り付けたのは恣意的な選択ではない。ドラムのクリス・カーティスがファッツ・ドミノのファンで、サーチャーズはこのヴァージョンを下敷きにしてSaint and Searchersをアレンジしたからだ。

◆ Cherry Stones ◆◆
この曲のタイトルは、本来はCherrystoneと一語で、しかも単数形なのだが、サーチャーズは転記の際に間違えたのか、どの盤でもCherry Stonesとしている。

タイトルが間違っているせいで同定を過ったのか、あるいはサーチャーズの盤のどれかがすでに誤記していて、それを引き写しただけなのか、Discogsはソングライター・クレジットを間違え、Cherry Stonesという曲の作者であるジョン・ジェロームという人をクレジットしている。こちらはジョージア・ギブスとボブ・クロスビー(ビングの兄)がオリジナルらしく、販売サイトで試聴したが、やはりぜんぜん違う曲だった。やれやれ!

しつこく繰り返すと、正しいタイトルはCherrystone、作者はドナルドとリチャードのアドリシ・ブラザーズ、オリジナルを歌ったのもこのデュオ。アドリシ・ブラザーズはこの曲をタイトルにしたアルバムを1959年にデルファイからリリースしている。

アドリシ・ブラザーズというと、アソシエイションがヒットさせたNever My Loveが有名だが、50年代にはまだそういう雰囲気ではなかったようだ。

The Searchers - Cherry Stones


The Addrisi Brothers - Cherrystone 1959


サーチャーズ盤はアドリシ兄弟盤のストレート・カヴァーで、手触りを変えずにやっている。明らかにエヴァリー・ブラザーズ・スタイルの模倣だが、エヴァリーズにあてて書かれたわけではないらしい。

「ロックンロール・ニュアンスを強めたエヴァリーズ」という雰囲気が気に入って、サーチャーズはこの曲をカヴァーしたのではないだろうか。

◆ All My Sorrows ◆◆
All My Sorrowsも由来がちょっとねじ曲がった曲だ。そのせいで記憶違いをし、一瞬、おおいに戸惑った。たくさんヴァージョンを知っているつもりだったのだが、HDDを検索したら、サーチャーズのほかには、キングトン・トリオとシャドウズのヴァージョンしか見つからなかったのだ。

どれをオリジナルとみなすかはさておき、サーチャーズがベースにしたのはキングストン・トリオのヴァージョンではないかと思う。

The Searchers - All My Sorrows


The Kington Trio - All My Sorrows


All My Sorrowsは、そもそもAll My Trialsから派生したもので、わたしがいっぱいもっているような気がしたのは、この二種類の曲の両方を合わせてのことだった。それで、検索結果に3ヴァージョンしか出てこず、ビックリしたのである。

捜索範囲をAll My Trialsにまで広げると、たちまちヴァージョンは増える。

PP&M - All My Trials


Joan Baez - All My Trials


歌詞も雰囲気も「漕げよマイケル」Michael Row the Boat Ashoreによく似ている。トラッドというのは、あっちで融合し、こっちで分離し、ということを繰り返しているのだろう。

The Highwaymen - Michael (Row the Boat Ashore)


こういうものの場合、誕生の経緯もよくわからないのだから、著作権もあいまいだったりして、誰を作者と呼べばいいのかよくわからない。

サーチャーズのAll My Sorrowsの作者はライムライターズのグレン・ヤーブロウとなっているが、ヤーブロウのヴァージョンも、ライムライターズのヴァージョンも見つからなかった。

イギリスで最初にこの曲をカヴァーしたのはつぎのグループだった模様。1961年リリースの彼らのデビュー・アルバムThe Shadowsに収録された。

The Shadows - All My Sorrows


シャドウズのAll My Sorrowsの場合は、デイヴ・ガード、ボブ・シェイン、ニック・レイノルズ、すなわち、キングストン・トリオの三人が作者としてクレジットされている。

こういうことだろう。

作者不明のトラッド曲は、アレンジないしはアダプトをした人間がソングライターとしてクレジットされる。だから、シャドウズの四人の名前だってかまわなかったのだが、彼らはそうとは考えず、キングトン・トリオの三人がほんとうの作者だと思ったのだろう。同様に、サーチャーズは著作権管理団体などで調べて、グレン・ヤーブロウが作者だと信じたと考えられる。

ということで、いろいろゴチャゴチャしたが、All My Sorrowsは、All My Trialsと同じ根から出てきた異なる像にすぎない。サーチャーズはここでもまた、「フォーク・ロックの始祖」への準備をしたわけで、その面において意味のあるカヴァーといえる。

いい曲なのだが、どのヴァージョンもくそ真面目で、へこたれてしまう。よって中和剤を投入する。各種ノヴェルティー・ソングでヒット・アフター・ヒット、頑固一徹、生涯一お馬鹿シンガーを貫いた偉人のヴァージョンを。

Ray Stevens - All My Trials


ワウ・ギターの間奏というアイディアがすんばらしいのことあるよ!

◆ Hungry for Love ◆◆
サーチャーズのセカンド・アルバム最後の曲は、イギリスのソングライター、ゴードン・ミルズの作で、オリジナルは確定できなかったものの、サーチャーズのヴァージョンと同年にシングルとしてリリースされた、ジョニー・キッド&ザ・パイレーツ盤がオリジナルである可能性が高い。

The Searchers - Hungry for Love


Johnny Kidd & The Pirates - Hungry for Love


またしても一聴明らかなことを書くが、対照的なスタイルのバンドが、それぞれの持ち味を出したヴァージョンが並んだ。サーチャーズはあくまでも軽快に、パイレーツはベースを強調し、サーチャーズより重いサウンドにしている。

まだ小学生だったせいかもしれないが、当時、ジョニー・キッド&ザ・パイレーツなんてバンドは、盤を見たこともなければ、ラジオで流れたのを聴いたこともなく、名前すら知らなかった。

日本では、ビートルズ以前は、イギリス音楽というのはクリフ・リチャードに指折って、あとは誰がいるの? ぐらいの感じだった。ジョニー・キッド&ザ・パイレーツは50年代終わりから活動していたせいで、「イギリスの侵略」後も、日本では顧みられなかったのかもしれない。

しかし、そういうキャリアだから、このシリーズの対象となる資格は十分にもっている。いずれ詳しく検討することになると思う。

以上でサーチャーズのセカンド・アルバム、Sugar and Spiceを完了し、次回からサード・アルバムに入る。


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サーチャーズ
Definitive Pye Collection
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サーチャーズ
Meet the Searchers
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サーチャーズ
Sugar & Spice
Sugar & Spice

サーチャーズ
Sugar & Spice
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ファッツ・ドミノ
Eight Classic Albums
Eight Classic Albums

キングストン・トリオ
Nine Classic Albums
Nine Classic Albums

シャドウズ
The Shadows / Out of the Shadows
The Shadows / Out of the Shadows

ピーター・ポール&マリー
In the Wind
In the Wind

ジョーン・バエズ
Joan Baez
Joan Baez

レイ・スティーヴンズ
Turn Your Radio On: Misty
Turn Your Radio On: Misty

ジョニー・キッド&ザ・パイレーツ
The Best of Johnny Kidd & The Pirates
The Best of Johnny Kidd & The Pirates
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by songsf4s | 2014-02-21 23:13 | ブリティシュ・インヴェイジョン
【ブリティッシュ・ビート根問い】サーチャーズ篇5 1963年の5
 
サーチャーズの30周年記念3枚組というものに、そこそこ詳しいライナーノーツが付属しているのだが、この盤のディスコグラフィーでも、デビューLPはMeet the Searchers、セカンド・アルバムはSugra and Spiceとしている。

前回、allmusicのディスコグラフィーでは逆になっていると書いたが、ほかに逆順のディスコグラフィーは見つけられなかったので、多数決で、Meet the Searchersのほうをデビュー盤と確定する。いつものallmusicのデタラメにすぎないようだ。

◆ Listen to Me ◆◆
サーチャーズのセカンド・アルバム、Sugar and SpiceのA面5曲目は、バディー・ホリーのロッカ・バラッド。作者はホリー自身とプロデューサーのノーマン・ペティー。

The Searchers - Listen to Me


Buddy Holly - Listen to Me


バディー・ホリーの両輪のひとつはPeggy Sue、Not Fade Away、Rave Onに代表されるような、パワー・コードのロックンロールだが、もうひとつの車輪は、このListen to Meや、ビートルズがカヴァーしたWords of Love、映画『スタンド・バイ・ミー』でも使われたEverydayといった、シンプルなコードのロッカ・バラッドである。

バディー・ホリーの曲は、速いのも、遅いのも、おおむね3コードだし、歌いやすいし、ほんとうにパフォーマーに「やさしく」できていると思う。呵々。

サーチャーズは例によって、オリジナルよりすこしスピードアップしているが、これはテンポの変更がいい結果につながった例だろう。ちょうど、ビートルズのWords of Loveと同じぐらいの速さだ。

◆ The Unhappy Girls ◆◆
A面の最後におかれたThe Unhappy Girlsは、おそらくカール・パーキンズがオリジナル。作者はフレッド・バーチとマリジョン・ウィルキン、前者はカントリー系のソングライターで、代表作はトーマス・ウェイン&ザ・デルロンズやフリートウッズがヒットさせたTragedy。後者はナッシュヴィルで活動したシンガー兼ソングライター、といった程度のことしかわからなかった。

The Searchers - The Unhappy Girls


Carl Perkins - The Unhappy Girls


聴けばわかることを書いて恐縮だが、カール・パーキンズのヴァージョンは、ロカビリー・スタイルで、カントリーに半分重心がかかっている。そのあたりはBlue Swede Shoes以来、変わっていない。

サーチャーズ盤は、主としてトニー・ジャクソンのトレブルをきかせたギターのせいで、カール・パーキンズ盤よりロックンロール・ニュアンスが強くなっていて、これはこれで好ましい。

しかし、トニー・ジャクソンというプレイヤーも、ナメていると、期待以上のプレイをすることがあって、あらら、と思う。この曲なんか、わたしがジャクソンに期待するものの5割増しぐらいの出来である。呵々。

ほかに、ジェイ・チャンス&ザ・チャンセラーズという、ロンドンはソーホーのグループのヴァージョンがみつかった。

Jay Chance & The Chancellors - The Unhappy Girls


録音、リリース時期がはっきりしないのだが、50年代から活動していたそうだし、音からいっても60年代はじめのスタイル、サーチャーズとほぼ同時期のものと推測できる。こちらのヴァージョンのほうが先で、サーチャーズはチャンセラーズ経由でカヴァーした可能性もある。ドラムのタイムは不安定だが、ギター・プレイはなかなか魅力的。

余談。

カール・パーキンズのThe Unhappy Girlsを聴こうとしてフォルダーを開いたら、前回あつかったOne of These Daysをパーキンズも歌っていたことに気づいた。

このカール・パーキンズ・セッショノグラフィーによると、パーキンズのOne of These Daysは1964年10月8日の録音で、サーチャーズよりあと、したがって、重大なミスではなかったのだが。

Carl Perkins - One of These Days


このヴァージョンもなかなか好ましい。パーキンズのヴォーカル・レンディションとギターがいい。

◆ Ain't That Just Like Me ◆◆
B面トップのAin't That Just Like Meはコースターズがオリジナル、作者はキャディラックスのリード・シンガーで一時期コースターズにも在籍したアール・キャロル。プロデューサーは例によってジェリー・リーバー&マイク・ストーラー。

サーチャーズのクリップはライヴしかなかったので、スタジオ録音をサンプルにした。

サンプル The Searchers - Ain't That Just Like Me

The Coasters - Ain't That Just Like Me


たんに慣れているだけなのかもしれないが、コースターズよりもサーチャーズのテンポのほうがいいと感じる。

ライヴを見るとヴォーカルの分担がわかる。

The Searchers - Ain't That Just Like Me [The ES Show - 1964]


後半でシャウトしている聴き慣れない声は誰かと思ったら、ドラムのクリス・カーティスだった。いや、クリス・カーティスの声はサーチャーズ・ファンなら知っているが、それはあのハイ・ハーモニーであって、こんな低い音域で歌うのはめずらしい。トニー・ジャクソンもマイク・ペンダーも、シャウトはイヤだといって、カーティスが歌うことになったのかもしれない。

この曲はホリーズのヴァージョンがもっとも人口に膾炙しているのではないだろうか。パーロフォンからの彼らのデビュー・シングルだった。

The Hollies - (Ain't That) Just Like Me


オフィシャル・ホリーズ・ウェブサイトのディスコグラフィーによれば、彼らのAin't That Just Like Meは1963年3月1日リリースなので、サーチャーズより早いことになる。サーチャーズは、コースターズ盤ではなく、ホリーズ盤に依拠してテンポを決めた可能性が高いと思う。

ボビー・カムストックのカヴァーというのもあるが、このディスコグラフィーが正しければ、カムストック盤は1964年3月14日リリースで、ホリーズないしはサーチャーズのヴァージョンをベースにしているのではないだろうか。

Bobby Comstock - Ain't That Just Like Me



◆ Oh My Lover ◆◆
B面の2曲目はまたオブスキュアなもので、オリジナルはシフォーンズ、作者はシフォーンズの生みの親であり、彼女たちの大ヒット、He's So Fineを書いたロニー・マック(Memphisのヒットがあるギター・プレイヤーのロニー・マックとは別人。RonnieとLonnie)。

The Searchers - Oh My Lover


The Chiffons - Oh My Lover


この曲自体はまったく有名ではないが、シフォーンズはHe's So Fineの大ヒットがあり、イギリスの連中はみなガール・グループを聴いていたのだから、B面かアルバム・トラックとして知り、カヴァーしたのだと推測できる。

ロニー・マックはHe's So Fineのプロデュースをし、このシングルがチャートを上昇しはじめた時までは生きていた。彼の雇い主であったトークンズが急いでゴールド・ディスクを手配したが、出来上がった時には、マックはガンに斃れていたという。

ジョージ・ハリソンは後年、My Sweet LordはHe's So Fineの盗作であると、ロニー・マックの楽曲出版権をもつトークンズの会社に訴えられ、敗訴しているが、まあ、それほどまでに、あの時代のイギリスの連中はガール・グループをよく聴いていたのだ、と云える(苦しいw)。

ということで、サーチャーズはまたしても、人気のあるシンガーの非有名曲を選択し、他のバンドに「渋いじゃん」といわせようとしたのだと思う。あはは。


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サーチャーズ
Definitive Pye Collection
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サーチャーズ
Meet the Searchers
Meet the Searchers

サーチャーズ
Sugar & Spice
Sugar & Spice

サーチャーズ
Sugar & Spice
Sugar & Spice

バディー・ホリー
The Very Best of Buddy Holly
The Very Best of Buddy Holly

カール・パーキンズ
The Classic
Classic

コースターズ
Four Classic Albums Plus
Four Classic Albums Plus

ホリーズ
The Hollies Greatest Hits
The Hollies Greatest Hits

シフォーンズ
Sweet Talkin Girls: The Best of
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by songsf4s | 2014-02-18 21:51 | ブリティシュ・インヴェイジョン
【ブリティッシュ・ビート根問い】サーチャーズ篇4 1963年の4
 
サーチャーズは1963年にもう一枚、Sugar and SpiceというLPをリリースしている。

と思ったのだが、順番が逆と主張しているソースもあり、こちらがデビュー盤で、すでに3回にわたって書いたMeet the Searchersのほうがセカンド・アルバムといっている。

サーチャーズ全曲集の順番にしたがって書いてきたし、Discogsやウィキも、Meet the Searchersのほうをデビュー盤にしている。

シングルの順序から考えると、やはりMeet the Searchersがデビュー盤に思えるし、タイトルもいかにもデビュー盤らしい。反対意見をいっているのは、デタラメなデータとお話にならないレヴューで有名なallmusicだし(嫌いなのだ)、たぶん、大丈夫だろうと思う。

これについては、後日、裏がとれたら確定するつもりだが、たとえ当方の順番が間違っていたことが判明しても、いまさらさかのぼって修正するのは煩瑣なので、順番は入れ替えない。どうかあしからず。

◆ Sugar and Spice ◆◆
では、セカンド・アルバムに突入する。そのオープナーはタイトル・カットのこの曲。シングル・カットされて、イギリスでは大ヒットした。

The Searchers - Sugar and Spice


ソングライター・クレジットはフレッド・ナイティンゲイルとなっているが、これはトニー・ハッチの変名。クレジットが見あたらないのだが、このセカンド・アルバムもトニー・ハッチのプロデュースだと思われる。

したがって、Sugar and Spiceはサーチャーズが封切りと考えて大丈夫だろう。サーチャーズ以前のヴァージョンは発見できなかった。

サーチャーズは、後年はさておき、同時代にあっては強い影響力があった。その影響はアメリカのバンドのサウンドにもっとも顕著にあらわれたし、ストレートにサーチャーズをカヴァーしたアメリカのバンドもあった。

The Cryan' Shames - Sugar and Spice


ドラムがかなり突っ込み気味なのが気になるが、この時期としてはめずらしいことに、セッション・プレイヤーではなく、バンドのメンバーがプレイしたのだろう。アメリカではこのカヴァーがヒットした。

◆ Don't Cha Know ◆◆
セカンド・アルバムの2曲目は、バディー・ホリーが抜けたあとのクリケッツの曲のストレート・カヴァー。作者はデイヴィッド・ボックスとアーニー・ホール。

ユーチューブには、サーチャーズ盤はライヴしかないので、スタジオ録音をサンプルにした。

サンプル The Searchers - Don't Cha Know

The Crickets - Don't Cha Know


作者のデイヴィッド・ボックスはソニー・カーティスの後釜としてクリケッツに入ったシンガー。共作者のアーニー・ホールは、ボックスがそれ以前にやっていたレイヴンズというバンドのドラマーで、クリケッツのジェリー・アリソンの実家のすぐ近くに住んでいた縁により、ボックスがクリケッツに加入することになったのだそうだ。

Don't Cha Knowも、ボックスとホールがレイヴンズ時代に書いた曲で、のちにそれをクリケッツで録音した、というしだい(参考「デイヴィッド・ボックス略伝」)。

サーチャーズはいつものようにDon't Cha Knowも少し速くしているが、その結果、バディー・ホリーの風味は消えている。アルバム・トラックとして、たいした手間はかけずに録ったものという印象。

クリケッツのオリジナルは、バディー・ホリーがいないにもかかわらず、バディー・ホリーの雰囲気が濃厚にある。デイヴィッド・ボックスはホリーの大ファンだったそうで、ソングライティングにもそれが反映されたのだろう。バディー・ホリーのムードが漂うクリケッツ盤のほうが好ましい出来である。

しかし、問題は出来不出来ではなく、やはりサーチャーズもバディー・ホリー関連の曲をカヴァーしていた、ということ。イギリスでのホリーの影響力は絶大で、ホリーがいない彼のバックバンドにも後光を与えるほどだったようだ。

◆ Some Other Guy ◆◆
3曲目は前回もふれたリッチー・バレットの曲のカヴァー。前回登場したTricky Dickyはバレットの45ではB面で、Some Other GuyのほうがA面だった。作者はジェリーリーバー&マイク・ストーラー、およびリッチー・バレットの三人。

The Searchers - Some Other Guy


Richie Barrett - Some Other Guy


前回も書いたように、もともとはヒットしなかったR&Bチューンで、リッチー・バレットもシンガーとしては目立ったものがない。

にもかかわらず、Some Other Guyはマージーサイドの複数のグループがレパートリーにしていた。その種を蒔いたのは誰か? 確証はないが、やはりこの四人組らしい。

The Beatles - Some Other Guy live at the Cavern 1962


ちょうどドラマーがピート・ベストからリンゴに交代した直後で、テイク2の終わりに、客が「We want Pete!」と叫んでいるのが聞き取れる。

めずらしくもジョンとポールがユニゾンで歌っているが、なぜそうなったかというと、二人ともリードをとりたがり、譲らなかったために、二人ともリードを歌うことにしたのだという!

ピート・ベストが首になった理由はいろいろ云われているが、たとえ人間関係の問題があったにせよ、「ドラマーとして十分な能力がなかったから」という公式声明も本音だろう。

ジョージ・マーティンがピート・ベストのプレイが気に入らないと云ったのも、嘘ではないだろうと思う(「ドラマーを替えろ」と「命じた」わけではないようだが)。

本番の録音には、マーティンはアンディー・ホワイトというプロフェッショナル・ドラマーを用意していた。テストの時に、ピート・ベストは使い物にならないと見切りをつけたから以外に、そんなことをする理由などあるわけがない。音楽ビジネスの論理である。

Some Other Guyに話を戻す。マーク・ルーイソンのThe Complete Beatles Chronicleで最初にこの曲が登場するのは、1962年8月、グラナダ・テレビが上記のクリップを撮影し、結局、お蔵入りにした事実に言及している箇所でのこと。

手元の資料ではこれ以上はさかのぼれなかった。おそらく、ビートルズの誰かがこのオブスキュアな曲を見つけてレパートリーにし、その結果、マージーサイドのグループの「共有財産」のようになっていったのだろうと想像される。

ジョンが家を出て行ったためにシンシア・レノンのもとに残されたジュークボックスには、リッチー・バレットのSome Other Guyのみならず、当時、リヴァプールで活躍していたこのグループのカヴァーも入っていた。

The Big Three - Some Other Guy


ビートルズはついにSome Other Guyをシングルにしなかった。ジョン・レノンはビッグ・スリーのヴァージョンを「あの時代」を偲ぶよすがにしていたのかもしれない。

◆ One of These Days ◆◆
つづいてはロニー・ホーキンズのロックンロール・チューン、といいたいが、それほどヘヴィーではなく、ロカビリー寄りの軽い仕上げの曲。

作者はロニー・ホーキンズ自身とジャクリーン・マギル。後者については、ほかにForty DaysやThirty Daysなどをロニー・ホーキンズと共作しているということぐらいしか判明しなかった。

The Searchers - One of These Days


Ronnie Hawkins - One of These Days


サーチャーズがこの曲を知ったのは、Forty DaysのB面としてだろう。Forty Daysはヒットしたので、見つけるのが困難な盤ではなかった。

Ronnie Hawkins - Forty Days


B面を狙う気持は、バンドをやったことがある人にはよくわかるだろう。周囲との競争意識があるので、A面を避け、B面を上手くやってみせ、「渋い」と云わせたいのだ。呵々。

ほかに、同じマージーサイドの仲間、スウィンギング・ブルー・ジーンズもこの曲をカヴァーしている。

The Swinging Blue Jeans - One of These Days


このスウィンギング・ブルー・ジーンズのアレンジが、いちばん趣味がいいと感じる。


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サーチャーズ
Definitive Pye Collection
Definitive Pye Collection

サーチャーズ
Meet the Searchers
Meet the Searchers

サーチャーズ
Sugar & Spice
Sugar & Spice

クライアン・シェイムズ
Sugar & Spice (a Collection)
Sugar & Spice (a Collection)


サーチャーズ
Sugar & Spice
Sugar & Spice

クリケッツ
Fought the Law
Fought the Law

ジェリーリーバー&マイク・ストーラー(リッチー・バレットのTricky Dickyを収録)
The Leiber & Stoller Story Volume 3: 1962-1969
The Leiber & Stoller Story Volume 3: 1962-1969

ジェリーリーバー&マイク・ストーラー(リッチー・バレットのSome Other Guyを収録)
The LEIBER & STOLLER STORY VOL.2
The LEIBER & STOLLER STORY VOL.2

ビッグ・スリー
Cavern Stomp: The Complete Recordings
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Ronnie Hawkins & The Hawks + Mr. Dynamo (Bonus Track Version)
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Good Golly Miss Molly: The Emi Years 1963-1969
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ビートルズ
On Air-Live at the BBC Volume 2
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by songsf4s | 2014-02-14 22:33 | ブリティシュ・インヴェイジョン
【ブリティッシュ・ビート根問い】サーチャーズ篇3 1963年の3
 
ビートルズはどこかの段階、たとえば、セカンド・アルバムWith the Beatlesあたりで、アメリカ市場を意識した気配があるが、サーチャーズ以下、同時代にファブ4のすぐ近くで動きまわっていた他のバンドはどうだったのだろうか?

彼らはしばしばアメリカ音楽をカヴァーしたが、その意図は、まず第一に、やはり日本の子供たち同じように、純粋に「格好いい」と感じたからだったのだろう。

一歩進んで、録音し、リリースするという段階におよぶのは、それを受け入れるリスナーが存在し、したがって商品として価値があったからに違いない。

日本の場合、それは明白で、ビートルズ登場以前の日本の音楽番組、とりわけ「ザ・ヒット・パレード」では、主としてアメリカのヒット曲に日本語の歌詞をつけて、日本人が歌ったものが流された。

「ザ・ヒット・パレード」から生まれた典型的なヒット曲をひとつ。もちろん、オリジナルはジェリー・ゴーフィン&キャロル・キング作、リトル・エヴァが歌った大ヒット。

伊東ゆかり「ロコモーション」


ドラムを中心にサウンドがきわめて弱いのがこの時代の日本の盤の特長だが、これでも十分に需要があり、ヒットした。

このような現地の言葉に訳したローカル盤は、日本以外にも例があり、たとえば、イタリアではそれなりの数がリリースされたらしい。ボビー・ソロなど、60年代に活躍したイタリアの歌手のベスト盤を聴いて、それを感じた。

イギリスの場合、同じ英語なのだから、このようなローカル盤は必要ないのではないかと思ってしまうが、いろいろな盤を眺めると、やはり、一定の需要はあったのだろうと推測できる。

言語の壁はないのに、なぜローカル化の必要があったのか?

たぶん、親近感の問題だろう。テレビで日常的に見られ、サーキットに組み込まれて、しばしばツアーで近所のクラブにやってくるシンガーたちのヴァージョンのほうを好む気分はよくわかる。

初期ブリティッシュ・ビート・グループがアメリカの曲をカヴァーしたのは、「内向き」だったのだろうと思う。国内市場のみを意識した「ローカル盤」だ。63年いっぱいは、ビートルズをのぞいて、そういう意図だったのだと見なしている。

◆ Since You Broke My Heart  ◆◆
サーチャーズのデビュー・アルバム、残りは4曲となった。B面の3曲目は、エヴァリー・ブラザーズの曲、作者は兄のドン・エヴァリー。

The Searchers - Since You Broke My Heart


The Everly Brothers - Since You Broke My Heart


完コピかい、と笑ってしまう。異なるのは、ドンとフィル・エヴァリーの声か、トニー・ジャクソンとマイク・ペンダーの声かという点だけ、と云いたくなる。

エヴァリーズはイレギュラーなハーモニー・ラインをつくることは稀なのに対して、サーチャーズは変なヴォーカル・アレンジを何度かしている、という違いはあるのだが、それでも、こういう曲を聴くと、やっぱりエヴァリーズが根っこにあって、あのハーモニーが作られたのだということに得心がいく。

◆ Tricky Dicky ◆◆
つづいてのTricky Dickyは、またもしてもジェリー・リーバー&マイク・ストーラーの作&プロダクション、歌ったのはリッチー・バレット。

The Searchers - Tricky Dicky


Richie Barrett - Tricky Dicky


サーチャーズがどういう経路で、このようなあまり有名ではないシンガーのノン・ヒット曲にたどり着いたかは、容易に想像がつく。リッチー・バレットのTricky Dickyはこの曲のB面としてリリースされたからだ。

Richard Barrett - Some Other Guy


作者はジェリー・リーバー&マイク・ストーラーおよびリッチー・バレット自身。プロデュースもおそらくリーバー&ストーラーだろう。

このSome Other Guyはリヴァプール勢が好んでカヴァーし、ビッグ・スリーのヴァージョンがイギリスではヒットすることになった。後年、売却されて有名になったジョン・レノンのジュークボックスには、オリジナルとビッグ・スリーのカヴァーの両方が収まっていた。

このシングルのB面としてTricky Dickyを知り、それをカヴァーしようと考えたのはいいとして、では、なぜSome Other Guyにたどり着いたかと根問いすると、ううむ、となってしまう。

なにしろSome Other Guy自体がノン・ヒットだから、どこから出現したのかと思うが、例によって、あの4人組が見つけた可能性が高い。ではあるものの、ではビートルズはなんだって、Some Other Guyを拾い上げたのか、そのへんはよくわからない。

いずれにしても、サーチャーズはこのシングルのA面、B面双方をカヴァーしているので、後日、Some Other Guyにたどり着いた時に再考する。

また、シンガーではなく、裏方としてのリッチー・バレットというのはちょっと興味を惹かれるのだが、あまりにも煩瑣なので、ここでは控える。いつか後日に。

◆ Where Have All the Flowers Gone ◆◆
こんどは、このアルバムの中ではちょっと変わり種の曲、といっても、昔は日本の子供でも知っていた有名曲だが。作者はピート・シーガー、オリジナル録音もやはりシーガー自身。

The Searchers - Where Have All the Flowers Gone


Pete Seeger - Where Have All the Flowers Gone


やはりMoneyなどと比べると、サーチャーズのキャラクターには、こういう曲のほうがはるかに合っている。のちに、彼らはフォークロックの始祖と目されることになるが、その出発点がこの曲だった。いや、まだ意識はしていなかったのだろうが。

サーチャーズが依拠したヴァージョンは、しかし、ピート・シーガーのものではないだろう。イントロから、このヴァージョンをベースにしたことがわかる。どうでもいいことだが、わたしも子供の時、このキングストン・トリオのヴァージョンを持っていた。

The Kingston Trio - Where Have All the Flowers Gone


どういう加減か、日本ではキングストン・トリオよりブラザーズ・フォーのほうが受けがよかったが、いま聴いても、キングストン・トリオのハーモニーは好ましく感じる。当時のカレッジ・フォーク・グループのなかでも抜きんでた売れ方をしたのも当然だと思う。湿度が低く、あっさりしていて、厭味がない。

サーチャーズはもちろん、もうひとつのヒット・ヴァージョンも聴いていただろう。日本ではこちらのほうが好まれた。

Peter, Paul & Mary - Where Have All the Flowers Gone


PP&Mのハーモニーはきわめてイレギュラーで興趣尽きないが、しかし、この曲に関しては、キングストン・トリオのほうが格段にすぐれていると思う。

やはりサーチャーズは自分たちの柄に合ったヴァージョンに依拠したことが、これでおわかりだろう。

◆ Twist and Shout ◆◆
サーチャーズのデビューLP、Meet The Searchersの最後の曲は、またまた例の4人組のデビュー盤であるPlease Please Meのラスト・ナンバーと同じ曲である!

ライターはバート・ラッセル(バート・バーンズ)とフィル・メドリー、オリジナル盤はトップノーツというフィリーのブラック・コーラス・グループ、プロデューサーはアトランティックと契約したばかりだったフィル・スペクター。フィルとしてもごく初期の仕事で、まだ見習い中という雰囲気が濃厚だが。

The Searchers - Twist and Shout


The Top Notes - Shake It Up, Baby (Twist and Shout)


はじめて聴いた時の脱力感を引きずって、長いあいだ、トップノーツのヴァージョンはダメ、と決めつけていたが、これだけ時間がたち、コンテクストから切り離されると、そして、ジョン・レノンの圧倒的ヴォーカル・レンディションを棚上げするなら、これはこれで悪くないか、という気がしてきた。

フィル・スペクターの意図はじつに明快だ。タイトル通り、トゥイストのグルーヴで、というのが前提にあり(踊れなければ無意味だ)、そこに、師匠であるジェリーリーバー&マイク・ストーラーの得意技である、ラテン・パーカッションの味つけを施してみた、というところだろう。

結果的にドリフターズのムード、たとえば、Sweets for My SweetやSave the Last Dance for Meのような感触になり、冷静に見れば、エチュードとしては成功している、というほうに、当方の見方は180度変化してしまった!

作者のひとりであるバート・ラッセル(バート・バーンズほか変名無数)は、誰もがそうだったように、たぶんフィル・スペクターが嫌いだったのだろう、俺の曲を台無しにしやがって、と怒ったと伝えられている。

バート・バーンズは、あの思い上がりの小僧に手本を見せてやる、というので、自分でプロデュースをやり直し、そのヴァージョンがヒットすることになった。

じつにめでたい。お前はダメだ、俺が手本を見せるといって、それが失敗したら、格好がつかないではないか。そのバーンズ先生のお手本盤。しだれ尾の長々しキャリアを誇るアイズリー・ブラザーズのごく初期のヒット。

The Isley Brothers - Twist and Shout


なるほど。バーンズ先生のおっしゃることもよくわかる。タイトルなんかに気をとられて適切なテンポを見つけられないヤツは阿呆だ、グリージーな感覚がゼロだから、お前の盤は音も立てずに消えたのだ、と云いたかったのだろう。

後年、バート・バーンズは黒っぽい感覚のソングライティングとプロダクションで成功し、フィル・スペクターは黒さを洗い流した音でチャートを席捲することになる。立場の違い、考え方の違いにすぎない。

さて、この曲は如何にして英国に伝播したのか? やはり、ここでもあの4人組がリーダーシップをとったと推測するしかない。

ジョン・レノンとビートルズのレンディションは、バート・バーンズがやってもまだ残ってしまった甘さを殺し、この曲の深いところに組み込まれたセックスの暗喩を強調したものになっている。お手本というなら、ジョン・レノンのレンディションこそが理想的なものだ。

では、締めはそのファブ4ヴァージョン。スタジオ録音ではなく、最初のアメリカ・ツアーでのホットな、ホットな、ホットなパフォーマンスを。

The Beatles - Twist and Shout [HD] Live at the Washington Collisium, 1964



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ジェリーリーバー&マイク・ストーラー(リッチー・バレットのSome Other Guyを収録)
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by songsf4s | 2014-02-10 22:50 | ブリティシュ・インヴェイジョン
【ブリティッシュ・ビート根問い】サーチャーズ篇2 1963年の2
 
用語のことを少々。

わたしが「初期ブリティッシュ・ビート」または略して「ブリティッシュ・ビート」と呼んでいる音楽は、われわれが子供のころの日本では「リヴァプール・サウンズ」と呼ばれた。

リヴァプール・サウンズという言葉を使わない理由は自明で、この一群の音楽をになったグループやシンガーはリヴァプール出身とはかぎらない、という一点に尽きる。

また、イギリスでは「マージー・ビート」という言葉がよく使われるが、これも「マージー河周辺のビート・グループ」という意味で、要するに日本語の「リヴァプール・サウンズ」の謂いにほかならず、同様に地域が狭く限定されている。

この用語は、地元の人々が好むものとして尊重はするが、われわれが使うのに適した言葉ではない。まあ、たまに気分転換として使うかもしれないが。

つまり、ロンドンやらグラスゴーやらトテナム(!)やらマンチェスターやら、そうした細かい差違はすっ飛ばし、イギリス全体を包含する用語が必要で、アメリカでよく使われる「ブリティッシュ・ビート」を選択した。

「初期ブリティッシュ・ビート」と、わざわざ「初期」というのにも理由がある。

65年あたりからのストーンズやヤードバーズの台頭以後、ブルース・ベースのグループが「表側」でも一大勢力となり、マージー勢を中心とする「イギリスの侵略」(「ブリティッシュ・インヴェイジョン」)の先鋒となったグループの(相対的に)ハーモニー重視のスタイルは、やがて押しのけられていくことになる。

この二大勢力は、重なる部分をもっているのだが、大きくニュアンスの異なる面もある。じっさい、ヤードバーズから語り起こすような「ロックな人」たちは、たとえば、ビリー・J・クレイマー&ザ・ダコタスには興味を示さないだろう。

The Yardbirds - Jeff's Blues


Billy J. Kramer & the Dakotas - Bad to Me


後年になると、仕切り線が引かれて、わたしが「初期ブリティッシュ・ビート」と呼ぶ一群のグループは、切り捨てられていった。あるいは「別扱い」にされた、といえばいいだろうか。

歴史的に見て、なんの影響力をもたなかった、一過性の商業主義音楽、というように扱われたような印象をもっている。ストーンズ、ヤードバーズ、フーといったあたりから線を引っ張ったものが「ブリティッシュ・ビート」とされたようだ。

それはそれでいいのだが、そのために一群のシンガー、プレイヤーたちが、「まつろわぬ民」として、荒野に放り出されたことには、異議を唱えておきたい。

◆ Stand by Me ◆◆
それでは前回のつづき、デビュー・アルバムMeet the SearchersのA面の5曲目は、ドリフターズのリード・テナーだったベニー・キング独立後の大ヒット。作者であるジェリー・リーバーとマイク・ストーラーがプロデュースもした。

The Searchers - Stand by Me


Ben E. King - Stand by Me


あまりくどくどいう必要のない曲だろう。この録音の時はもうフィル・スペクターがリーバー&ストーラーに弟子入りしていた。この曲にハル・ブレインのヘヴィー・バックビート加えると、スペクターのスタイルができあがりそうな気がチラとする。

サーチャーズのヴァージョンはあまりしっくりこないが、たぶんこのデビュー盤は、ビートルズ同様、当時の彼らのステージでのレパートリーを再現したものなのではないかと思う。

ストレート・ロッカーと、このStand by Meのようなバラッドは、昔のバンドの両輪だった。チーク・タイム(などというものがリヴァプールのクラブにあったかどうかは知らないが)にこの曲をやっていたのだろうと想像する。

◆ Money (That's What I Want) ◆◆
デビュー・アルバムA面の6曲目は、バレット・ストロングのヒット、というより、モータウンのオーナーであるベリー・ゴーディーがジェイニーブラッドフォードと書いた、モータウン・レコード最初のヒットのカヴァー。

The Searchers - Money (That's What I Want)


Barrett Strong - Money (That's What I Want)


会社設立後まもないので、作者でもある社長の陣頭指揮の録音なのだろう、バレット・ストロングのオリジナルも、時代を考えれば、なかなかのサウンドだ。いいビートがあり、ちょっとした薬味程度のえぐさもあり、それでいて、白人市場から閉め出されない程度には洗練されている。

歌詞が歌詞なので(いや、それがこの曲のポイントだが)、あまりグリージーにやるわけにはいかず、そのへんの匙加減はわかっていたのだろう。そうでなければ、モータウンは成功しなかった。

サーチャーズはバレット・ストロングのオリジナルに依拠したのだろうか? たぶんそうではない。例によってこの四人がやっているのに刺激されたのだろう。

The Beatles - Money (With Pete Best, at the Cavern)


ビートルズはブライアン・エプスタインのネムズでバレット・ストロング盤を見つけたといわれている。エプスタインがファブ4を「発見」するに至るあの有名なエピソードをよもやお忘れではあるまい。ネムズは充実の品揃えを誇っていたのだ!

ビートルズがこの曲をやった結果、リヴァプールのキャヴァーンやら、ハンブルクのスター・クラブあたりをぐるぐる廻っていたバンドのあいだで、このMoneyは共有されるに至ったのだろうと想像する。

このようなシンプルなダンス・チューンというのは、ライヴ・バンドには必須のもので、やる側から云えばやりやすく(酔っぱらっていてもなんとかなるだろう!)、客の側から云えば、盛り上がりやすく、踊りやすい。

サーチャーズのキャラクターに合った曲だとは思わないが、以上のような事情から、彼らもこういう曲をレパートリーに入れておく必要があったに違いない。

以上三者のほかに、わが家には、エヴァリー・ブラザーズ、ルー・クリスティー、バディー・ガイ、ジュニア・ウォーカー、ハイ・ナンバーズ(ザ・フー)、トッド・ラングレン、スタンデルズ、ランディー&ザ・ラディアンツ、アンダーテイカーズ、リチャード・ウィリー&ヒズ・バンド、ローリング・ストーンズなどなど多数のカヴァーがあるが、やはり、With the Beatlesの最後に収録された彼らのスタジオ録音がベストだと思う。

以上のなかでは、このカヴァーがなかなか好ましい。やはりモータウンのロースターだが、このヴァージョンはヒットしなかった。

Richard Wylie & His Band - Money 1961


◆ Da Doo Ron Ron ◆◆
B面のオープナーは、フィル・スペクター・プロデュースによるクリスタルズの大ヒットのカヴァー。ジェフ・バリーとエリー・グリニッジ夫妻、およびフィル・スペクターの共作。すばらしい4分3連のライド・シンバル・プレイはもちろんハル・ブレイン。

The Searchers - Da Doo Ron Ron


The Crystals - Da Doo Ron Ron


とくにサーチャーズに合った曲には思えないし、ハーモニーの面白さもあまりない。アルバム・トラックとして、さしたるアレンジも施さずに録音したものだろうから、フィル・スペクターの金も時間もかけたプロダクションと比較しては気の毒だ。これまた、アメリカのヒット曲の軽いローカル盤のつもりだったか、あるいはライヴでのレパートリーだったのだろう。

フィル・スペクター=クリスタルズのDa Doo Ron Ronオリジナルは、ビルボード・チャート3位までいく大ヒットになった。チャート・トッパーになったクリスタルズの前作He's Rebelには、チャート・アクションの面では劣ったが、スペクターのプロダクション・テクニックはこの曲でさらに深まり、巨大な音のボールはサイズと強さを大きく増した。

He's a Rebelでフィル・スペクターが惚れ込んだハル・ブレインは、Da Doo Ron Ronでは正確で美しい4分3連のライド・シンバル・プレイでわれわれを圧倒する。

派手なフィルインは、ハル・ブレインのフロアタムではなく、ニーノ・テンポがマレットでキック・ドラムを叩いたと云われる。

フィル・スペクターにとっても、ハル・ブレインにとっても、文句なしの生涯の代表作である。

◆ Ain't Gonna Kiss Ya ◆◆
Ain't Gonna Kiss Yaはオリジナルを確定できなかった。

リボンズというLAベースのガール・グループのものがオリジナルである可能性が高いと感じるが、ノン・ヒットなので、さらにそれ以前に、誰も注目しなかった盤があった可能性は残る。

ソングライター・クレジットはJames Marcus Smithとなっていて、これはP・J・プロビーの本名。プロビー自身の盤は当時はないようで、ずっと後年の懐古的なアルバムで歌ったらしい。

プロビーはアメリカ人だが、シンガーとしてはイギリスで成功することになる。しかし、それは64年のこと。この時はまだアメリカ、おそらくはLA住まいだろう。

その根拠は、プロビーという芸名をつけたのがシャロン・シーリーであり、イギリスに渡ったのはジャッキー・デシャノンの紹介による、ということ。LAのソングライター・サークルと付き合いが深かったことがわかる。

The Searchers - Ain't Gonna Kiss Ya


The Ribbons - Ain't Gonna Kiss Ya


リボンズについてはほとんどなにも発見できない。LAのグループであり、メンバーはEvelyn Doty、Arthetta Gibson、LovieおよびVessie Simmonsの四人といった程度の記述しか見あたらなかった。

Discogsのリストには、Ain't Gonna Kiss Yaを含む2枚の45があるのみ。「のちにシークィンズ、サンドペイパーズになった」とあるが、「紙ヤスリ」なんてヤケクソな名前を選ぶようでは、もう先がなかったのがわかる。

リボンズ盤Ain't Gonna Kiss Yaのプロデューサーはマーシャル・リーブ、すなわち、テディー・ベアーズでのフィル・スペクターの相棒である。レーベルはMarshとなっている。マーシャル・リーブの会社なのだろう。

テディー・ベアーズのLPではアール・パーマーがドラム・ストゥールに坐ったが(最初のシングルのドラマーはサンディー・ネルソン!)、リボンズのAin't Gonna Kiss Yaも、どうもアール・パーマーのプレイに聞こえる。

ハリウッドのサウンドにはなってはいるものの、ハリウッド的洗練が強く感じられるものではないし、あまり叮嚀なアレンジでもなく、インスピレーショナルな録音とはいえない。マイナー・ヒットの可能性はあっただろうが。

惜しい、と思って拾い上げる気持はわかるが、サーチャーズの録音もそれほどインスピレーショナルとはいえない。少し速くしようという考えはけっこうだが、ちょっと速すぎて、かえって印象が薄くなった。

こんなノン・ヒットのオブスキュアな曲をどういう経緯で見つけたのやら。偶然、リボンズのシングルを聴いたのか、あるいは、パブリッシャーからデモがまわってきたのか……。

サーチャーズのヴァージョンは63年、それも秋のリリースらしいが、同年にはもうひとり、レイ・ピルグリムというイギリスのシンガーが、You'll Never Walk Alone b/w Ain't Gonna Kiss Yaというシングルをエンバシーからリリースしている。のちにスターリングスというグループ名でも再リリースしたようなのだが、逆の可能性なきにしもあらず。

レイ・ピルグリムの盤はサーチャーズとほぼ同時で、しかもシングルだが、B面ではあるし、この人のディスコグラフィーを見ると、ほとんど後追いばかりで、なんだか、パチモン専門のように感じられる。誰かがヒット・ヴァージョンと間違えて買うのを期待していたのか、なんて、厭味なことを思ってしまうほどだ。

興味が湧いてしまった方は、仕方ないから、ウィキのレイ・ピルグリムのエントリーの63年から64年ぐらいのリストをご覧あれ。この臆面のなさ。月に2枚ぐらいのペースで他人のヒットをじゃんじゃんリリースしている!


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ビリー・J・クレイマーとダコタス
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Da Doo Ron Ron: the Very Best of the Crystals
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The Ribbons - Ain't Gonna Kiss Yaを収録、4枚組ボックス
Girl Group Sounds: One Kiss Can Lead to Another
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by songsf4s | 2014-02-08 22:43 | ブリティシュ・インヴェイジョン
【ブリティッシュ・ビート根問い】サーチャーズ篇1 1963年の1
 
今回からしばらくのあいだ、というか、オン&オフでかなり長々と、「ブリティッシュ・ビート根問い」と題して、初期ブリティッシュ・ビート・グループがカヴァーした曲の戸籍調べをする。

正月いっぱいかかった、「大滝詠一、フィル・エヴァリー、そして2パート・ハーモニー」というシリーズで、影響関係の毛糸のかたまりをそこそこ解きほぐせたように思う。だが、それはあくまでも中間結果、仮説を組み上げたにすぎなかった。

それを半歩進めて、「ブリティッシュ・ビート・グループがカヴァーしたのは、これこれの系統の曲が多い」と云うときに、統計的に依拠できる程度までは数字を確定したいと考え、くどい根問いをしようと思い立った。

すべての曲を集めたわけではないのだが、できるだけ省略せずに、彼らのカタログがどのような構成になっているかを検討すれば、なにか思いつくことがあるのではないか、という了簡のシリーズである。

まずは、カヴァー専門バンドと云いたくなるほど、カヴァー曲の選択とアレンジの上手さが特長だった、サーチャーズから取り掛かる。

◆ Sweets for My Sweet b/w It's All in Dream ◆◆
サーチャーズのことは概ねわかっているつもりだったのだが、いざ一曲一曲仔細に見ていくと、この曲はそもそもどこから出現したのか、と首をひねるものがずいぶんあった。

わかっていたのはヒットした曲ばかりで、B面やアルバム・トラックになると、本籍地がどこなのかさっぱり知れないものがかなりある。

イギリスはシングル曲がLPに収録されないことがしばしばあって、アルバム順というわけにはいかず、まずパイからのデビュー45。

イギリスではチャート・トッパーになったA面のSweets for My Sweetは、ドク・ポーマスとモート・シューマン作、オリジナルはドリフターズで、そちらもアメリカでヒットしている。

The Searchers - Sweets for My Sweet


The Drifters - Sweets for My Sweet


63年には、いわゆる「英国の侵略」はまだはじまっていないので、サーチャーズのカヴァーは、純粋に「ローカル盤」という意図だったのだろう。

サーチャーズの魅力の過半は彼らの声のミックスにあり、このデビュー盤でも、純粋なメイジャー曲であるにもかかわらず、彼らの特質である、ほどのよいメランコリーが加えられている。

ドリフターズのオリジナルは、彼らのトレイドマークになっていたラテン・パーカッションによる飾りつけがにぎやかで、ヒットも当然と感じる出来。残念ながら手元の盤にはプロデューサー・クレジットがない。いちおう検索したが、とりあえず判明しなかった。

ドリフターズのスタッフはみな白人で、こういうタイプのグループやシンガーというのが50年代から60年代にかけてはずいぶんあり、単純にR&Bないしはドゥーワップと色分けするのはためらわれる。初期ブリティッシュ・ビートに関係する曲にはこういうタイプがかなりあるので、いずれ数が揃ったところで再考するつもりだ。

B面のIt's All Been a Dreamの作者はChris Crummyとなっているので、検索したら、クリス・カーティス、すなわちサーチャーズのドラマーの別名とわかった。

カヴァー曲ではないので、この記事の対象ではないのだが、クリス・カーティスがデビュー盤のためにこういう曲を書いて、すでにこのようなヴォーカル・アレンジをし、スタイルを確立していたことは非常に興味深いので、いちおうクリップを貼り付ける。

The Searchers - It's All Been a Dream


◆ Alright ◆◆
つづいてデビューLP、Meet The Searchersへ。

アルバム・オープナーはすでに見たSweets for My Sweetなので飛ばして、2曲目のAlrightへ。ライター・クレジットは、Ross, Vanadoreとなっている。

これはJerry RossとLester Vanadoreのことで、前者はもちろんスパンキー&アワー・ギャングやカウシルズのプロデューサー。

後者は経歴不明で、Discogsには、Alrightのほかに数曲のクレジットがあり、どうやらアメリカのカントリー系のソングライター(あるいはパブリッシャーも兼業?)らしい。

Alright(またはAll Right)をやったのは、サーチャーズのほかに、スプートニクス、ゲス・フー、フレッシュトーンズとなっていて(ほかにペブルズという日本のグループもあるが)、後二者は明らかにサーチャーズよりあとの録音だから、オリジナルの可能性のあるのはスプートニクスのみ。

ではあるものの、山勘で云うと、その可能性は低い。アメリカのシンガーによるAlrightは発見できなかったが、ヴァナドーアの本籍地であるカントリーないしはロカビリー・シンガーのヴァージョンがあるのではないかという気がする。情報をお持ちの方はコメント欄かツイッターでお知らせいただけるとありがたい。

The Searchers - Alright


スプートニクスのヴァージョンはカヴァーだと思うが、いちおうサンプルを。

サンプル The Spootnicks - Alright

◆ Love Potion No. 9 ◆◆
これはイギリスではシングル・カットされず、65年になってアメリカでリリースされて、ビルボード・チャート3位までいく大ヒットとなった。

その余波は日本にまでおよび、日米において、サーチャーズの代表作とみなされている。わたし自身、子供のころにラジオで聴いた記憶のあるサーチャーズのヒットはこの曲のみ。

作者はアトランティック・レコードのドリフターズやコースターズをスターに押し上げた、ジェリー・リーバーとマイク・ストーラー、オリジナルはやはりアトランティックのクローヴァーズ。

クローヴァーズの盤ではプロデューサー・クレジットは発見できなかったが、There's a Riot Goin' On! The Rock'N'Roll Classics of Lieber and Stollerというライノの編集盤では、この曲はプローデュースもリーバー&ストーラーとされている。

The Searchers - Love Potion No. 9


The Clovers - Love Potion No. 9


こちらが色眼鏡をかけて見るせいなのか、歌詞はかなり濃厚にブードゥーの雰囲気があり、クローヴァーズのヴォーカル・レンディションもそれを前提にした、やや粘っこいものに感じる。

アップライト・ベースのオクターヴ上に、ギターで同じラインをかぶせる、クローヴァーズ盤におけるリーバー&ストーラーの手法は興味深い。これは60年代にハリウッドでしばしば利用される。リーバー&ストーラーに弟子入りしたフィル・スペクターによって、ハリウッドにもたらされたのかもしれない。

サーチャーズ盤は、例によって彼らの特質が明瞭にあらわれている。クローヴァーズ盤にあった、ややダーティーな味わいはきれいに洗濯され、ユーモラスな側面にアクセントのおかれた、軽い仕上がりだ。それがヒットの要因だろう。

サーチャーズ以降のヴァージョンをここにいちいち書くことはしないが、わたしの考えでは、そうしたカヴァーの大部分は、クローヴァーズではなく、サーチャーズ盤をベースにしている。クローヴァーズのオリジナルをはるかにしのぐ大ヒットとなり、サーチャーズの曲として記憶されたのだから、当然のことだが。

◆ Farmer John ◆◆
つづいてデビュー・アルバムの4曲目。作者はドン・“シュガーケイン”・ハリスとデューイ・テリー、すなわち、ドン&デューイの名でシンギング・デュオとして活動した二人であり、オリジナル録音も彼ら自身の歌。プロデューサーは木管プレイヤーのハロルド・バティスト。

The Searchers - Farmer John


Don & Dewey - Famer John

音がよくないのだが、これしか見当たらなかったのであしからず。手元にあるスペシャルティー・レコードのボックスに収録されたヴァージョンはまともな録音である。

ドン&デューイはR&Bではなくロックンロール・デュオと呼ばれることが多いようだが、やはり歌い方はブラック・シンガーのスタイルだし、ドラムのアール・パーマーを中心としたプレイヤーたちも、R&Bスタイルでやっている。

サーチャーズはこの曲をシングル・カットせず、アメリカでは以下のヴァージョンがヒットすることになった。

The Premieres - Farmer John


チャン・ロメロのHippy Hippy Shakeと並び、LAチカーノ・ロックの編集盤にはかならずといっていいほど収録されている曲で、このディック・クラークのアメリカン・バンド・スタンドの映像を見ると、はっきり彼らがチカーノであることがわかる。

しかし、これは1964年のリリース、サーチャーズよりあとの録音と考えて大丈夫だろう。

先は長いので、今回はここまで。これまでの曲を見ても、「ある傾向」を読み取れるのだが、その点もまた、もっと先にいってから、ゆっくり検討する。


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The Drifters
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Jerry Leiber & Mike Stoller
(The Clovers - Love Potion No. 9を収録)
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by songsf4s | 2014-02-05 23:05 | ブリティシュ・インヴェイジョン
トッド・ラングレンのひとり2パート・ハーモニー その2
 
トッド・ラングレンのいま出回っている盤を眺めていて、アマゾンの記述は不正確だと思ったものがある。

これは間違えても不思議はないのだが、トッドのソロの1枚目と2枚目のタイトルは、

Runt 1970

Runt: Ballad of Todd Rundgren 1971

である。これが目下2ファーとして1枚になっている。だから、表記としては、

Runt/Runt: Ballad of Todd Rundgren

が正しいのだが、じっさいにはRunt/Ballad of Todd Rundgrenと、Runtがひとつ足りず、セカンド・アルバムのタイトルが半欠けになっている。

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以前、「Only a Game by Matthew Fisher」という記事で、Mathew Fisherというタイトルのアルバムと、Strange Daysというタイトルの2枚を合わせた2ファーCDなのに、たいていの人が、マシュー・フィッシャーというシンガーのStrange Daysという1枚のアルバムであるかのように誤解していると書いたが、それと似たような現象といえる。

トッドの最初の2枚がなんでこんなややこしいことになったのか、昔、友人に理由を縷々説明されたのだが、忘れてしまった。

たしか、セイルズ兄弟とトッドの3人で、「ラント」というグループを組んだつもりだった、というような話だったと思う。

それが実現せず、その名残として、トッド・ラングレンのアルバムというより、ラントというバンドのアルバムのような形式にした、とかいったことじゃなかっただろうか。まあ、どうでもいいようなことだが!

さて、今回は1972年にリリースされたサード・アルバム、Something/Anything?の2番目に収録されたこの曲のハーモニーを検討する。

このダブルLPは、最後のD面を除く、A、B、C面の全曲のソングライティング、演奏、ヴォーカルをトッド・ラングレンがひとりでやっている。この曲もそのひとり多重録音。

Todd Rundgren - It Wouldn't Have Made Any Difference


かなり変なハーモニーだということは、一聴、たちどころにおわかりかと思う。どこにどのようにハーモニーを入れるか(あるいは入れないか)という、ひとつ上のレベルのメタな部分も問題なのだが、とりあえず、どんなラインをつくっているかを見る。

まず、ファースト・コーラスの後半。When itまでは単独で、Wouldn'tから上にハーモニーが入ってくる。

以下の譜面がわりの「半採譜」では、例によって上段が歌詞、中段がメロディー、下段がハーモニー。You just didn't love meのところはハーモニーが消えるので、略した。

When it wouldn't really
Db-D-E-E-E-E
    A-A-A-A
make any difference
E-Db-B-B-A-Db
A-F#-E-D-E-E
If you really loved me
B-B-B-A-B-Db
E-E-E-D-E-F#

メロディーからしてすでに動きの小さいお経ラインなので、ハーモニーもお経になるのは当然の結果なのだが、それにしてもやはり、ピーター&ゴードンやデイヴ・クラーク5のスタイルを連想させる。

こうして眺めると、ラインそれ自体はそれほど強引とはいえず、たんに、ハーモニーが入ってくる時の高いAの音のように、その音域でハーモニーを入れるのは、ふつうは避けるのではないかというところでハーモニーを入れるので、それが無理矢理な感触を生み、耳を引っ張られるらしい。

loved meのところのハーモニーがF#にあがるのも気になるのだが、ここのコードはF#mなので、F#は主音だから、外れているわけではない。トッドの声がひっくり返るか返らないかの微妙な出方をしていて、ピッチが揺れるので耳を引っ張られるのかもしれない。

ここがこの曲のヴォーカル・アレンジの複雑なところなのだが、ファースト・ヴァースにはハーモニーはなかったのだが、セカンドの冒頭には入っている。いちおうコピーしてみたが、後半の尻尾(I could be)はよく聞こえず、まったく自信なし。

I know of hundreds
B-A-E-B-A
D-Db-A-D-Db
Of times I could be
Ab-Ab-Ab-Ab-Ab-F#
B-B-B-B-B-A

メロディーがI know ofのofでEまでジャンプするので、いきおい、ハーモニーも上へと押し上げられるわけだが、それにしてもAまでジャンプすることはないのに、と(笑いながら)思う。しかし、そこでハッとするのだから、効果的といえるのだが。

このofのところだけ上は歌わず、I know -- hundredsと歌っても、まったく問題ないはずなのに、かなり無理のあるジャンプをやってしまうのが、いかにもトッド・ラングレンだと思う。

ここは、大滝詠一の「それは僕ぢゃないよ」に出てくる、「ただの風さ」の「さ」で上のCまでジャンプするところを想起させる(「大滝詠一、フィル・エヴァリー、そして2パート・ハーモニー その14」という記事で詳細に検討した)。

いや、ここは最初の音からして、すんなり収まらない。ここのコードはIのところはE、knowのところでAに行く。E-Aという進行だ。

したがって、当たり前ながら、メロディーはコードの構成音であるB-Aと動いているのだが、ハーモニーはD-Dbという遷移になっている。DbはAメイジャーの構成音だが、DはEメイジャーの構成音ではない。

この部分のハーモニーがイレギュラーに響くのは、このDの音のせいだと思う。DはEに対してセヴンスの音なので、コードがEメイジャーのところでDを歌うと、合わせてE7コードということになってしまう。

視点を変える。Dの音はAメイジャー・コードではサスペンディッド4th(以下sus4)を形成する。sus4は長くつづけないほうがいいコードで、すぐにメイジャーに戻す必要があるが、I knowのコードがAsus4→Aの遷移だとみなすと、この変則ハーモニーはちょうどその規則にしたがって音が動いたことになる。

いや、話が逆だった。D-Dbという動きのせいで、ここのコードがAsus4→Aと動いたかのような印象を与えるのだろう。それで、「なんとなく変だ」というところに留まり、「合ってないんじゃないか」とは感じないのだと思う。

こんなことを計算してやったとは思えないのだが、まあ、とにかく、結果的にAsus4の響きになって、この変なハーモニーは、変は変なりにかろうじて落ち着いたような気がする。呵々。

だいぶ離れたので、もう一度、同じクリップを貼り付ける。

Todd Rundgren - It Wouldn't Have Made Any Difference


個々のラインではなく、ハーモニーの「出し入れ」についてもすこし見ておく。これが凝っているのだ。

この曲はVerse/Chorus/Verse/Chorus/
Bridge/Verse/Chorusという、典型的な構成をとっている。しかし、ハーモニーの使い方は、各ブロックごとにすべて異なり、同じパターンを繰り返すことはない。

最初は、ハーモニーが入るのはコーラスの後半のみ(バックグラウンドのウーアー・コーラスは勘定に入れない)。

セカンド・ヴァースは、ヴァース冒頭と、コーラスの大部分にハーモニーがある。

サード・ヴァースは、コーラス前半の後半分とコーラス後半(ややこしい書き方で申し訳ない。コーラスを4つの部分に分けると、2番目と3番目と4番目)にハーモニーがある。

さらにややこしいことに、コーラスのハーモニーがないところには、メロディーをダブル・トラックにしてユニゾンで歌っていたりするし、ハーモニーのチャンネルを移動させたり、じつに目が回るような細かい操作をしている。

すべてが計算されたわけではなく、ヴォーカルを7回も8回も重ねているうちに、あっちのチャンネル、こっちのチャンネルと動かしてしまい、そのままミックスしただけなのかもしれないが、分析する方は「神経衰弱じゃないんだからさあ、トッド」とボヤきが出る。

32トラック初体験だったのか、ヴォーカル・アレンジの実験をやっているとしか思えない。いや、変なハーモニー・ラインとは直接に関係のあることではないのだが、どちらも、オーヴァーダブの時点であれこれ考えたことの結果なのだと思う。

これはトッド・ラングレンのソロではなく、彼のバンド、ユートピアの曲だが、参考にクリップをおく。ビートルズ・ファンは、冒頭の数小節でトッドの意図がわかって笑いだすにちがいない。

Utopia - I Just Want to Touch You


これはDeface The Musicという1980年のアルバムのオープナーで、LP全体がビートルズのパスティーシュになっている。

しかも、曲調やアレンジは徐々に後年のビートルズのスタイルへと変化していき、彼らの歴史をたどるような構成になっている。遊びはまじめにやらないと面白くないわけで、やるなら凝らないといけない。

ただし、最後は68年ごろの音で、つまり、最後の2枚には模作するほどの面白味はないということを示唆している(と偏見)。

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いや、話はそこではなかった。ハーモニーの問題である。

サンプル Utopia - Where Does the World Go to Hide

最初のI Just Want to Touch Youにしても、この曲にしても、ハーモニーはやっているのだが、ノーマルで、とくに耳を引っ張られる箇所はない。

ここがよくわからない。ビートルズのパスティーシュなのだから、トッドらしい変則ハーモニーが飛び出しそうなものだが、アルバム全体を通して、とくにそういう曲はない。

いちおう、拡大版のフル・アルバムをおいておく。ビートルズのどの曲がベースになっているか考えながらお聴きあれ。簡単な曲もあれば、悩む曲もある。

Utopia - Deface the Music extended edition full album


結局、バンドとしてやるには、あの変則ハーモニーはあまりにも面倒なのかもしれない。ライヴでやると外しやすい難所になってしまうということもあるだろう。

トッドがダリル・ホールとやったライヴでも、スタジオ録音のコピーのような2パートはわずかな箇所のみで、おおむねウーアー・コーラスで逃げた。

では、最後にそのライヴ、It Wouldn't Have Made Any Differenceの近年の姿を。




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Todd Rundgren
Runt/Ballad of Todd Rundgren
Runt/Ballad of Todd Rundgren

Something/Anything
Something/Anything

RuntおよびFaithfulを収録
Todd Rundgren (Original Album Classics)
Todd Rundgren (Original Album Classics)

Utopia
Adventures in Utopia & Deface the Music/Swing to T
Adventures in Utopia & Deface the Music/Swing to T
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by songsf4s | 2014-02-02 23:03 | ハーモニー