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回想のビリー・ストレンジ、その音楽と時代 その5 Limbo Rock(チャビー・チェッカー、チャンプス他)
 
今回は、先日やったヴェンチャーズ・セッションズと同時期のビリー・ストレンジの仕事、ただし、セッション・ワークではなく、ソングライターとしての曲を聴きます。ソングライター、ビリー・ストレンジにとってははじめての大ヒット曲、Limbo Rockです。

Chubby Checker - Limbo Rock


これはあと一歩でビルボード・チャート・トッパーになるところでした。シンプルで覚えやすく、バブルガム的なグッド・フィーリンがあるのがヒット要因でしょうか。

チャビー・チェッカー盤はカヴァーで、オリジナルはハリウッドのセッション・プレイヤーたちによるプロジェクト、チャンプスのインスト・ヴァージョンでした。

The Champs - Limbo Rock


うーむ、久しぶりに聴いても、やはり、チャンプスというより、ビリー・ストレンジの自己名義という雰囲気ですが、御大自身は、否定というか、チャンプスの曲でプレイした記憶はないとおっしゃっていました。

彼らとは友だちだった、とはおっしゃっていたので、プレイしたのに忘れたか、あるいは、なんらかの事情があって、むくつけにいわなかっただけの可能性もありますが。

いまになって気になるのは、このフェンダー・ベースはだれよ、ということです。61年ではまだキャロル・ケイはギターをプレイしていて、この時期の代表的フェンダー・ベース・プレイヤーはレイ・ポールマンでした。いや、代表どころか、セッション・プレイヤーとしてはレイ・ポールマンしかいなかったとまで、CKさんはおっしゃっていました。

ジョー・オズボーンはすでにリック・ネルソン・バンドで活躍していましたが、彼がこの時期にセッション・ワークをした記録は見たことがありません。オズボーンが大活躍をはじめるのは、リックがツアー・バンドを放棄して以後のことです。チャンプスのメンバーとされている二人のどちらかのプレイか、はたまたビル・ピットマンあたりなのか、ちょっと気になるところです。

国境の南の味が濃厚な曲なので、当然、ボーダー・タウン・サウンドで売ったこのグループもカヴァーしています。

Herb Alpert & The Tijuana Brass - Limbo Rock


ご存知ない方もいらっしゃるかもしれないので駄言を弄します。ティファナ・ブラスもまたハリウッドのスタジオ・プロジェクトなので、実体は、例によってスタジオ・プレイヤーたちです。ビリー・ストレンジはあまりTJBではプレイしていなくて、ギターはトミー・テデスコが多かったようです。初期のドラムはアール・パーマー、のちにハル・ブレインがほとんどのトラックをプレイするようになります。

Limbo Rockはヴェンチャーズもやっています。ビリー・ストレンジがプレイしていた時期なのですが、どういうわけか、ギターもドラムもボンクラなプレイで、ダメなメンバーでの録音に思われるので、略します。

同じハリウッドのスタジオ・プロジェクトでも、ラウターズ(ルーターズと表記される場合もある)のヴァージョンはヴェンチャーズよりいい出来です。

サンプル The Routers "Limbo Rock"

書きはじめたときには、ほかの曲にもふれるつもりだったのですが、のんびりLimbo Rockの棚卸しをしているうちに時間は飛び去ってしまったので、本日はLimbo Rock一色で終わることにします。

最後は、わが家にはないものを。チェット・アトキンズとハンク・スノウのカヴァー。スノウは歌っていないので、左チャンネルのアコースティックをプレイしたのでしょう。

Chet Atkins and Hank Snow - Limbo Rock


これでおしまいのつもりだったのですが、ひとつ忘れていました。わたしらオールドタイマーには自明のことなので、忘れてしまったのです。

このLimbo Rockは、当時流行した「リンボー・ダンス」というものを題材にしています。走り高跳びのバーのようなものがあり、膝を折り曲げて踊りながら、その下をくぐり抜ける、というものです。

走り高跳びとは逆に、徐々にバーを低くしていき、どこまで体を折り曲げられるかを競う遊びでもありました。われわれは子どものころに、バーのかわりにロープやゴムひもを張って真似事をしました。

これが大ヒットの背景にあったのです。お若い方には、この曲のヒットは不可解だろうと思っての蛇足でした。

おっと、もうひとつ、大事なことを忘れていました。当然ながら、ビリー・ストレンジ御大自身によるLimbo Rockのセルフ・カヴァーもあります。

あるどころか、LPのA面すべてを使ったあげく、B面はA Lotta Limboとタイトルはちがうものの、やっぱりLimbo Rockという、たぶんダンス用のアルバムを録音しています。

ご興味がおありなら、Add More MusicのLimbo Rock / Billy Strange With The Telstarsのページでサンプルをお聴きあれ。


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by songsf4s | 2012-02-28 23:39 | 60年代
回想のビリー・ストレンジ、その音楽と時代 その4 ザ・ヴェンチャーズ・セッションズ後編
 
ビリー・ストレンジ・ディスコグラフィーを見ていて、いくつか、ほう、と思った点があります。

ひとつは、ボニー・ギターの1963年のセッションがあげられていたことです(ボニー・ギターについては当家では「Trade Winds by Frank Sinatra」という記事で概略を記している)。

f0147840_0301263.jpg

ボニー・ギターはドールトン・レコードの設立者のひとりです。ドールトンはヴェンチャーズのレーベルでした。ヴェンチャーズをプロデュースしたのは彼女の共同経営者だったボブ・ライスドーフでしたし、そもそもドールトンからヴェンチャーズがデビューしたときには、ボニー・ギターは経営から手を引いていた可能性もあるのですが、しかし、ハリウッドでセッション・ギタリストとして働いた女性が作った会社だったのだから、この関係は非常に興味深いものです。

さて、今回はそのビリー・ストレンジ・ディスコグラフィーに記されたヴェンチャーズのトラックをいくつか並べます。ほんの一握りなのですが。

The Ventures-2,000 Lb. Bee Pt 1 and 2


このクリップのアップローダーのコメントによると、"Walk Don't Run: The Story of the Ventures"というものに、どっちをノーキーが弾いて、どっちをビリー・ストレンジが弾いた、といったことが書かれているようです。ご興味のある方はご一読を。一度通り過ぎたことなので、わたしとしては、もう一度研究し直す気力は湧きませんが。

パート1のドラマーはわかりませんが、パート2はハル・ブレインである可能性が高いと思います。また、ビリー・ストレンジ御大自身は、手製のファズ・ボックスを使っていたということで、モズライトの組み込みファズについては言及したのを見たことがありません。モズライトを使ったことがあるのは、ヴィデオなどでもわかりますし、とくに12弦については、私信でも、非常に弾きやすいと賞賛していました。

つぎはビリー・ストレンジ作なので、当然のコンファームでしょう。

The Ventures - Ya Ya Wobble


残念ながら、セッションで曲が足りなくなり、ちょっとした断片をもとにその場でつくった、といった雰囲気で、典型的なアルバム・フィラーといったところです。蛇足ですが「ウーブル」はないでしょう。カタカナにするなら「ワブル」あたりが妥当です。

ほかに単独のトラックとしては、Tabooという、後年のアウトテイク集で陽の目を見たものとか、Walkin' With My Baybeという、わたしは聴いたこともない楽曲があげられていますが、これは省略します。

さらに、アルバムとしてLet's Goがリストアップされているのですが、その収録曲であるにもかかわらず、単独でリストアップされたトラックを貼りつけます。

The Ventures - Hot Pastrami


この中間部でのソロは、ビリー・ストレンジのアルバムMr. Guitarに収録された、Kansas Cityあたりのロック系の曲と比較してみると面白いだろうと思います。まあ、いずれ、このシリーズでお聴きいただくことになるでしょうが。

以下、アルバムLet's Goの収録曲をいくつか聴いていくことにします。つぎの曲も、かつて、ヴェンチャーズの謎を解こうと奮闘していたときに、インスピレーションを与えてくれました。

The Ventures - Sukiyaki


ビリー・ストレンジかどうかはいざ知らず、前回あげたLolita Ya Ya同様、いかにもハリウッドのセッション・プレイヤーらしい、隅々まできっちりしたアンサンブルの曲もありました。

クリップは埋め込み不可なので、サンプルで。

サンプル The Ventures - More

ドラムはハル・ブレインでしょう。フェイド・アウトのあたりのフィルインに彼のサウンド、スタイルがあらわれています。

つぎの曲もビリー・ストレンジらしさ、ハリウッドのセッション・プレイヤー集団らしさがよく出ています。邦題は「エル・ワッシ」だったようですが、カタカナにするなら「ワトゥーシ」あたりが妥当でしょう。

The Ventures - El Watusi


ギターもきっちりしていますが、全体のアンサンブルが堅固で、The Ventures in Japanの突っ込みまくるグルーヴの気持悪いバンドには似ても似つきません。

十年前は、初期ヴェンチャーズのリード・ギタリストはボブ・ボーグルではない、などというと、いきり立つフーリガンみたいな輩が山ほどいたので、こちらもねじり鉢巻き、たすき掛け、腕まくりで、ビリー・ストレンジやハル・ブレインのプレイだったのだと、熱弁を振るいましたが、もはや時代は変わりました。

メル・テイラーが叩いたトラックはたくさんあるでしょうし、ノーキーがプレイしたものもあるでしょう。しかし、ビリー・ストレンジ、トミー・テデスコ、グレン・キャンベル、ジェイムズ・バートンら、ハリウッドの錚々たるギター・エースたちがプレイした曲もたくさんあります。

たんに、それだけのことだと現在では考えていますし、ヴェンチャーズ・ファンも、ツアー用バンドの録音がたくさん残っているのだから、それを聴いて満足していればいいだけです。War Is Overですよ。呵呵。

Let's Go収録曲としては、Sukiyakiと並んで好きなトラックを本日の締めとします。アルバム・クローザーでした。

The Ventures - Over the Mountain, Across the Sea



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by songsf4s | 2012-02-27 23:53 | 60年代
回想のビリー・ストレンジ、その音楽と時代 その3 ザ・ヴェンチャーズ・セッションズ
 
今日、ロマン・ポランスキーの『ゴースト・ライター』を見ていて、the begenningとthe begenningsの違い、という最後の謎解きの鍵を見た瞬間、俺も同じ経験をしたぜ、と思いました。

いや、ゴースト・ライターをしたこともありますが、その話ではありません。「冒頭」なのか「はじめのころ」なのかという違いです。いや、ご心配なく、あの映画のいうbeginningsは意味が違うので、映画を見る妨げにはならないでしょう。

キャロル・ケイさんに、あなたやあなたの同僚たちは、ヴェンチャーズのセッションでプレイしたことがあるでしょうか、とうかがったとき、彼女は、ハル・ブレインにこの質問を取り次いでくれました。

ハルの返事は、俺ははじめからヴェンチャーズのセッションでプレイした、のちにメル・テイラーが入ったとき、レパートリーを教えてあげた、というものでした。

このfrom the begenningはじつに悩ましいものでした。なぜなら、Walk Don't Runのドラミングは、わたしが徹底的に研究したハル・ブレインのドラミング・スタイルやサウンドとはかけ離れたものだったからです。

これは、基本的には時期の違いと、機材の違いに由来するものだと、あとでようやく理解できました。当初は、「はじめから」ではなく、無理に「はじめのころから」と拡大解釈したのですが、そうではなく、ハル・ブレインは文字通り「はじめから」ヴェンチャーズのレコーディングでドラムを叩いたのです。

では、ギターだって、はじめから、ハル・ブレインの仲間であるだれかにちがいありません。当然、ビリー・ストレンジ御大がディスコグラフィーにあげたものより、はるかに多くのトラックが、ハリウッドの若いセッション・プレイヤーたちによって録音されたと考えるのが自然です。

じっさい、The Ventures Play Country Classicsをのぞいて、1963年までのほとんどのアルバムの、多くのトラックがリード・ギターとしてビリー・ストレンジをフィーチャーしたものと、現在のわたしは考えています。

『急がば廻れ'99』という本を上梓したときには、そこまでの確信はありませんでした。Walk Don't Runのときからすでに、ハル・ブレインやビリー・ストレンジが「ヴェンチャーズ」だったのだ、という、たしかな手応えを得たのは、ずっとあとのことだったのです。

The Ventures - Walk, Don't Run


そのつぎのヒット。

The Ventures - Lullaby Of The Leaves


ビリー・ストレンジ特集で、ハル・ブレインのことをあれこれ書くのは気が引けますが、最初からヴェンチャーズなど存在しなかった、という確信を得られたのは、ハル・ブレインのおかげです。

この「急がば廻れ」や「木の葉の子守唄」のプレイでもわかります。これほどのプレイヤーが、ヴェンチャーズに首にされたくらいで、シーンから消えるでしょうか? ぜったいにネガティヴです。

これほどのプレイヤーが、のちに名を成さずにいるものでしょうか? 断じてノーです。かならず大成して、有名なプレイヤーになったにちがいありません。

では、1960年当時にハリウッドのスタジオでレギュラーだったドラマーに比定できるでしょうか? わたしには困難でした。アール・パーマーではないという確信はありましたが、たとえば、シェリー・マンやメル・ルイスが正解だったとしたら、わたしは異議を唱えず、そうか、と納得したでしょう。

ただ、ほんの感触にすぎないのですが、すでに名を成した人ではなく、有望な若手ではないかということは思いました。うしろに引っ込むつもりはなく、覇気横溢で、前に出ようとしているからです。

アルバムを順番に聴いていき、このドラマーがBe My Babyで叩くすがたが、しだいに見えてきました。スネアのサウンドも、プレイ・スタイルも異なりますが、タイムと生来の華やかさはやはりハル・ブレインのものだという気がしてきたのです。

こんどは少しタイプの違う曲、「セレソ・ローサ」を。

The Ventures - Cherry Pink And Apple Blossom White


読書百遍、その意自ずから通ず、といいます。音楽もそういうところがあって、Walk Don't Runを死ぬほど繰り返し聴いているうちに、ギター・プレイヤーのプロファイルが浮かんできました。

ミュージシャンシップに富むヴェテランで、あわてず騒がず、必要な音だけを、一音一音丁寧に弾くプレイヤー、という像です。ほんのちょっと前にギターを手にし、シアトルのクラブでプレイしていた若者、というボブ・ボーグルのプロファイルとはまったく一致点がありません。

ビリー・ストレンジのプレイであると最初に確信のもてた1963年ごろの録音からさかのぼっていき、Walk Don't Runまで行くと、やはり、これは同じプレイヤーだと納得がいきました。

つぎはビリー・ストレンジの、というより、ハリウッドのスタジオ・プレイヤーたちの傑出した技量を示すものとして、この曲を。ストイシズムとプロフェッショナリズムの極致。

The Ventures - Lolita Ya Ya


これが二十歳そこそこの素人同然の若者たちのプレイだとしたら、天地がひっくり返りますよ。「プロフェッショナル・プレイヤー」とは、こういうアンサンブルのできる人たちを云います。

だれも目立とうとしてはいませんが、全員が精確なプレイに徹していて、一糸乱れぬアンサンブルになっています。若者の「ロック・バンド」には無理なプレイです。

初期ヴェンチャーズ・セッションのレギュラーは、ビリー・ストレンジ、キャロル・ケイという二人のギターに、ベースがレイ・ポールマン、ドラムがハル・ブレイン、というのがわたしの想定です。ここに、トミー・テデスコ、グレン・キャンベル、さらにはジェイムズ・バートンといったギター陣が加わったり、入れ替わったりしたのだと思われます。

今回はあえてビリー・ストレンジ・ディスコグラフィーでコンファームされていない曲ばかりを選びましたが、次回は逆に、ボスが確認したヴェンチャーズのトラックを聴いてみるつもりです。

お別れはこの曲で。

The Ventures - Lonely Heart



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by songsf4s | 2012-02-25 23:53 | 60年代
回想のビリー・ストレンジ、その音楽と時代 その2 スピーディー・ウェスト、リック・ネルソンほか
 
ビリー・ストレンジは、幼児のころから両親とともにラジオに出演したり、ステージに立ったりしていましたし、シンガー、ギタリストとして出発したものの、ソングライター、アレンジャーの仕事も多く、また、カントリーに基盤をおきながらも、多様なスタイルの音楽をつくりだしたため、そのキャリアをたどるのは容易ではありません。

時系列にしたがって、あるいはその他の基準にしたがい、系統立ててご紹介するのは放棄し、ゆるやかに時系列をたどりながら、あっちに飛び、こっちに横滑りしながら、彼の音楽を聴いていくつもりです。

オフィシャル・サイトのディスコグラフィーにある曲で、クリップを発見できる最古のものは、ジーン・オークウィンのTexas Boogieですが、わたしにはあまりにも古めかしく感じられ、また、ビリー・ストレンジのプレイとして聞くほどのものではないので、これは略します。

前述のように、幼児のころから音楽を仕事にしていた人なので、どこからキャリアをスタートしたと見るかはむずかしいのですが、七十五歳の記念につくられたバイオDVDを見ていて、最初のターニング・ポイントは、このカントリー・スターとの仕事ではないかと感じました。いや、このころから音源が見つけやすくなるという事情もあるのですが。

まだビリー・ストレンジはサイド・ギターでしたが、1952年のこの仕事は彼にとっては重要だっただろうと思います。カントリー・インストを代表する二人の大物のバッキングです。

Jimmy Bryant and Speedy West - Lover


同じく巨人二人のバッキング。こんどは1954年の録音です。こんな人たちとしじゅういっしょにプレイしていたら、イヤでもうまくなったにちがいありません!

Speedy West & Jimmy Bryant - Freettin Fingers


どうせ徒弟奉公をするなら、こういう本物の「親方たち」のほうがいいに決まっています。若いときにこういうプレイをたっぷり裏から見れば、生涯、慢心することはないでしょう。

徒弟奉公が終わったのか、あるいは、今度の親方がギター・プレイヤーではなく、シンガーだったおかげか、翌1955年にはリード・ギターのプレイが記録されることになります。

Cliffie Stone - Barracuda


1955年のカントリー系の盤としては、ちょっと異質なギター・ソロかもしれません。いや、すこし4ビートのニュアンスが入ってくるウェスタン・スウィングと見れば、本流のスタイルでしょうか。どうであれ、わたしの耳には、カントリーにしては洗練されたプレイに響きます。

1950年代のビリー・ストレンジは、おおむねカントリーの世界で、さまざまなアーティストのバッキングを、ステージやスタジオでおこなういっぽう、ラジオやテレビ、さらには映画でプレイし、歌っていた、といっていいでしょう。

50年代後半にはもうひとりの大スター、テネシー・アーニー・フォードがビリー・ストレンジの顧客リストに加わりますが、フォードのカタログも膨大で、御大がプレイした曲も多いので、その検討は後日ということにします。

われわれの視界でビリー・ストレンジの姿が大きくなるのは、むろん、ヴェンチャーズのデビューからです。どういうわけか、肝心のWalk Don't Runのクリップがライヴばかりで貼りつけようがありませんが、それはひとまずおき、気になるのは、この時期のセッション・ワークです。

ヴェンチャーズのデビューである1960年前後で、なにかギター・ソロが聴けないかと思って探してみました。ちょっと変なソロですが、リッキー・ネルソンのアルバム・トラックをサンプルにしました。

サンプル Ricky Nelson "Make Believe (ver. 2)"

ベア・ファミリーの「The American Dream」ボックスのセッショノグラフィーによると、この曲は、1959年10月27日にハリウッドのマスター・レコーダーで録音されています。

ジミー・ハスケル=アレンジ、ウィリアム・エヴァレット・ビリー・ストレンジ=ギター、リロイ・ヴィネガー=ベース、フランク・キャップ=ドラムズ、ジミー・ロウルズ=ピアノというメンバーでベーシックが録音され、後日、ストリングスや女声コーラス(ブロッサムズ)のオーヴァーダブがおこなわれています。

よけいなことですが、これは、わたしが知るかぎり、フランク・キャップの最古のセッション・ワークです。サーフ・インストの時代になると、けっこうクレジットを見るのですが。

あまり土地鑑のないところで、あれこれ聴きくらべをするというのは思いのほか気力を要するもので、リック・ネルソンにたどりついたら、ホッとして、どっと疲れが出ました。

本日はおおいなる助走、というあたりでおさめ、次回から60年代のビリー・ザ・ボスの八面六臂の大活躍を見ていくことにします。


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by songsf4s | 2012-02-24 23:56 | 60年代
「My friend Billy Strange-san」──回想のビリー・ストレンジ、その音楽と時代
 
現地時間の二月二十二日朝、ビリー・ストレンジさんが亡くなりました。ほかのミュージシャンとは異なり、メールを通じて親しく接した人なので、どうも勝手が違うのですが、複雑な気分はさておき、やはり、なにかを書く義務があると強く感じます。

いろいろ考えたのですが、追悼記事のかたちは今回だけにして、さらに数回、ハル・ブレインやジム・ゴードンのように、好きなプレイヤーの特集という気分で、ビリー・ストレンジが遺した音楽を聴いていこうと思います。

まずはサニー・サザン・カリフォルニアを代表するギタリストにふさわしい、明るくにぎやかなプレイから。ビリー・ストレンジ・オン・リード、ドラムはもちろんハル・ブレイン。

The Beach Boys - Surfin' USA


ライノのCowabunga! The Surf Boxのパーソネルでは、この曲のリード・ギターはカール・ウィルソンになっていて、そんな馬鹿なことがあるか、と腹を立てましたが、オフィシャル・ビリー・ストレンジ・サイトのディスコグラフィーで、ボス自身が自分のプレイであるとコンファームしています。

この追悼特集では推定は避け、できるだけ上記ディスコグラフィーにある曲を聴くことにしますが、そもそも、ビリー・ストレンジさんに連絡をとるきっかけになったのは、ある推測の結果でした。そのきっかけになったのは一曲ではないのですが、たとえば、これ。

The Ventures - Lucille


1998年から翌年にかけて、Add More Musicにつどった仲間たちと、ヴェンチャーズのほんとうのリード・ギターはだれだったのだろうということを話し合いました。

最初はキャロル・ケイさんの示唆から、トミー・テデスコの線で考えていたのですが、このあたりのトラックをしつこく聴いているうちに、ビリー・ストレンジに考えがおよびました。

当初は、そういう当てずっぽうを云って遊んでいただけだったのですが、だんだんシリアス・ゲームになってしまい、ついには「オオノ隊長」がビリー・ストレンジ氏のメール・アドレスを発見し、わたしが代表としてメールを送りました。

初期ヴェンチャーズのリード・ギターはビリー・ストレンジではないかという洞察に至ったのは、いろいろなプレイを徹底的に聴いた結果だったのですが、つぎの曲も、これはあの人ではないか、と思わせるものでした。

The Ventures - Sukiyaki


これが、ビリー・ストレンジのどの曲と似ていると思ったか、特定のトラックをあげるのはむずかしいのですが、たとえば、このスタンダード。前半はスパニッシュ・ギターですが、後半、フェンダーでのプレイが登場します。

Billy Strange - Maria Elena


もうひとつ、ビリー・ストレンジらしいバラッドのプレイを。ドラムはハル・ブレイン。みごとなアコースティック・リズム・ギターはだれでしょうか。グレン・キャンベルかトミー・テデスコかもしれません。

Billy Strange - Deep Purple


機材は異なりますが、こういうトラックをしつこく聴いていると、ヴェンチャーズのギタリストが指を動かす像が頭のなかで見えてきたのです。またヴェンチャーズにいきます。

The Ventures - Lonely Heart


かなり確信がもてたときに、ビリー・ストレンジさんのアドレスがわかったので、勇を鼓して、あなたはヴェンチャーズのセッションでプレイしませんでしたか、というメールを送りました。

そのあたりのいきさつは、『急がば廻れ99' アメリカン・ポップ・ミュージックの隠された真実』という(ボロクソにけなされたw)本に書いたので、ご興味のある方は図書館などでどうぞ。

もうこの件でわたしに噛みつく人もいなくなったので、ヴェンチャーズ・ファンも、あきらめて、ライヴだけを聴くようになったのだと考えています。スタジオとライヴは違うバンドだということさえわかっていただければ、わたしのほうはそれで文句はありません。どちらがうまいか、なんていうのは、古来、蓼食う虫も好きずきという諺があるくらいで、お好みですから(呵呵)。

なにかビリー・ストレンジさんが動いているクリップを、と探していたら、灯台もと暗し、オフィシャル・サイトで息子さんがこのクリップを紹介していました。めずらしくもモズライトを持っていますが、音はスタジオのものなので、フェンダーだろうと思います。

Billy Strange - Satisfaction


もうひとつ、アコースティック12弦ですが、こんどはほんとうにプレイしています。

Nancy Sinatra and Billy Strange - Bang Bang


だれしも生老病死は免れず、自分自身だっていつ死ぬかはわからないので、軽々に「驚いた」などという言葉を使ってはいけないとは思うのですが、しかし、今日知ったばかりで、まだ考えはまとまりません。

二度目の返信だったか、Mr. Strangeは勘弁してくれ、ビリーかウィリアムにしてほしいといわれ、では、日本の習慣にしたがって、Billy-sanと呼ばせていただくと書き送りました。

つぎの返信の冒頭は、My friend Yuji-sanでした。Yujiはわたしのファースト・ネーム。スタジオ・プレイヤーはプロフェッショナルなので、お高くとまったりはしないものですが、ビリー・ストレンジさんもその例に漏れず、わたしを歓迎してくれました。

小学校で日本語のクラスをとったので、まだ君が代の断片をかすかに覚えていると、アルファベットで君が代の歌詞の一部を書き送ってくださったのにも、ちょっと驚きました。たしか、pretty closeだと返事を差し上げたと思います。

いや、センティメンタルになることがこの稿の目的ではありません。ビリー・ストレンジという人が遺した音楽を回顧することに徹したいと考えています。次回からは、ふつうのビリー・ストレンジ特集にする予定です。


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by songsf4s | 2012-02-23 23:58 | 60年代
フロー&エディー、タートルズ、タートル・マザーズ、タートライズドTレックス
 
いつものように理由はとくになく、今日はちらっとフロー&エディーをかけたりしていました。

Flo & Eddie - Feel Older Now


このハーモニーはあれみたいだな、と思った方は、正解です。フロー&エディーはあのグループにハーモニーをつけたことがありました。

T.Rex - Metal Guru


で、ご存知の方はご存知、フロー&エディーとは、このバンドのフロントの二人、ハワード・ケイランとマーク・ヴォーマンのことです。

The Turtles - Elenore


タートルズといえば、とりあえずHappy Togetherということになっていますが、あれはすでに何度か貼りつけているので、今日は後期のヒット、Elenoreにしておきました。この曲のほうがフロー&エディーやタートルTレックスとの連続性が明瞭に感じられるはずです。

フロー&エディーは、Tレックスばかりでなく、こういう親亀に載ったこともあります。

Frank Zappa & the Mothers - Happy Together


俗に「タートル・マザーズ」といわれていたメンバーのマザーズはそれなりに録音が残っています。これなんかも、ハワード・ケイランとマーク・ヴォーマンのほうがフロントです。

Frank Zappa & The Mothers - Call Any Vegetable


フロー&エディーにもどって、こんどは伝統的な意味での「いい曲」を。

Flo and Eddie - Rebecca


つづいてスモール・フェイシーズのカヴァー。以前、サンプルにしたことがあり、いまでもリンクは生きていますが、その後、クリップがアップされたので、今日はそちらのほうを貼りつけます。

Flo & Eddie - Afterglow


初期のフロー&エディーのドラマーは、エインズリー・ダンバーのことが多く、この曲の派手なプレイもダンバーによるものです。エインズリー・ダンバーはフランク・ザッパとたくさんやっているので、その縁でしょう。

Afterglowはなかなかドラマティックな曲で、フロー&エディーのトラックのなかでいちばん面白いと感じます。スモール・フェイシーズのオリジナルよりフロー&エディー・ヴァージョンのほうが数段上の出来でしょう(この記事で両ヴァージョンを比較できる)。

フロー&エディー盤は、むろん、エインズリー・ダンバーのドラミングが魅力的なのですが、はっぴいえんどの「風をあつめて」に似たオルガンの音にも惹かれます。もう盤を持っていないので、クレジットを確認できず、相済みませぬ。

つぎはタートルズ末期の曲のリメイクで、フロー&エディーにとってはごく初期の録音。

Flo & Eddie - Goodbye Surprise


そろそろタイム・イズ・タイト、もう一曲だけ。ここまで来ると迷うのですが、タートルズに戻ってみます。67年のシングル。このときはもうドラムはジョニー・バーバータでした。

The Turtles - She's My Girl


タートルズのディスコグラフィーを眺めていて思いましたが、一回ぐらいなら、続編ができそうです。いや、やるかやらないか、なんともいえませんが。


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タートルズ
Save the Turtles: Turtles Greatest Hits
Save the Turtles: Turtles Greatest Hits


フロー&エディー
Phlorescent Leech & Eddie / Flo & Eddie
Phlorescent Leech & Eddie / Flo & Eddie


フランク・ザッパ&ザ・マザーズ
Fillmore East - June 1971
Fillmore East - June 1971


フランク・ザッパ&ザ・マザーズ
Just Another Band From L.A.
Just Another Band From L.A.


Tレックス
Slider
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by songsf4s | 2012-02-17 23:51 | その他
殺菌消毒済み、ソフトにして安全なり――ブラザーズ4のRevolutionほか
 
このところ、過去の記事の点検をやっているのですが、消されてしまったクリップも多くて、新しいクリップを貼りつけるのに時間がかかっています。

また、貼りつけることはできても、著作権者の意向などで、ブログに貼りつけたものは再生できず、ユーチューブに行かなくては再生できないという、これまでになかったタイプもたくさんあります。

ユーチューブならよくて、ブログはダメというのは明らかな差別、区別で、検閲に準じる行為です。でも、情状酌量の余地もあります。

なにしろ、風前の灯火の業界、レコード会社がなんらかの物体に音楽を封じ込め、それを販売するというビジネス・モデル自体が前世紀のもので、すでに有効性を失っています(配信というビジネス・モデルも、すでに古いと思うが)。

しかし、そうはいっても、その仕組みのなかで生きている人たちはたくさんいるし、なにごとも、一挙に覆すのは、多くの弊害を生みます。

だから、断末魔のあえぎぐらいのことは我慢しなければならないでしょう。ゆっくりと縮んで、知らないあいだに消滅していた、というのが、望ましいあり方、いや「ない方」でしょう。

いちいちクリップの右下のユーチューブ・ボタンをクリックするという面倒な作業は、そうした消えゆくものの残照なのだから、同情と憐憫の気持をもって我慢していただけたらと思います。

今日、音楽について思ったのはそれだけなのですが、これでおしまいというのもなんなので、冗談のようなクリップをいくつか貼りつけます。

今日、べつのものを検索していて、昔、買いそうになって、思いとどまった盤を見かけ、そういえば、こういう笑えるものがあったなあ、と思ったのです。

その「Soft, Safe & Sanitized」、すなわち「ソフトにして安全、殺菌消毒済み」という、ライノによるオムニバスに収録された曲をまずひとつ。

The Brothers Four - Revolution


あはは。たしかにソフトにして安全なカヴァーです。

だれでもご存知の曲だから、こういうカヴァーに思わず笑うのですが、最近はそういう思いこみは通用しないようです。ツイッターで、ポール・マッカートニーってだれよ、というのが話題になっている、というツイートを見て、なるほど、そういう世代だっているさ、と思いました。わたしだって、アンドルーズ・シスターズをはじめて聴いたのは高校のときですからね。あいこです。

で、原曲は「云うまでもなくビートルズの」といいそうになりますが、これはかならずしも自明ではないのでしょうね、お若い方たちにとっては。では、殺菌消毒前のハードで危険なオリジナルを。

The Beatles - Revolution


東芝EMIは特別熱心に検閲しているので、このクリップもユーチューブへいけ、と表示されるかもしれませんが、どうかあしからず。貼りつける段階では、そこまではわからないのです。

coverという言葉は、現在ではちがう意味で使われていますが、もともとは、ブラック・ミュージック、いや、その時代の呼び方で云うなら「レイス・ミュージック」を白人市場に移転する場合に使った、という説を読んだことがあります。

ラジオの白人局ではブラック・ミュージックはかけてはいけなかったのですが、しかし、そのままほうっておくのももったいないから、白人局でもかけられるように、ブラック・ミュージックを白人が歌うことを「カヴァーする」と言い習わした、という説です。

ロックンロール黎明期でも、まだ白人局と黒人局の区別はあり、それでパット・ブーンがリトル・リチャードの曲を白人局用にカヴァーしたりしたのです。そういう習慣がなくなってからも、言葉だけは生き残ったわけですが。

黒人曲の白人局向け移転ではありませんが、これなんかも、なかなか素敵な安全性を確保していると思います。

Mel Torme - Sunshine Superman


ドラムのタイムがちょっと早めで、そこで安全性がややそこなわれていますが、それにしても、メル・トーメはなんだってこんな曲をやろうと思ったのでしょうかね。

これまたわれわれの世代には自明の曲なのですが、ある世代にとっては、ドノヴァンてだれよ、でありましょうな。クリップには69年とありますが、まちがえるに事欠いて、なんてえ間違いをするんだ、トンチキが、です。1967年ですよ。サイケデリックのど真ん中だったんですから。

Donovan - Sunshine Superman


ドノヴァンはMellow Yellowがいちばん危険な匂いがあり、そのつぎがSunshine Supermanでしょう。最初に聴いたのがMellow Yellowだったので、なんなのこいつ、変なヤツと思いました。そのせいで、あとでColorsなんかを聴いたときは、なんと凡庸な、なんと退屈な、とあくびが出たほどです。

時間切れは迫っていますが、もう一曲消毒してみましょう。これがいちばん馬鹿っぽくて楽しめるかもしれません。

Mitch Miller & The Gang - Give Peace A Chance


あはは。なにごとも、一方の極端は、もう一方の極端に接続してしまうという、この世のメビウス構造を体現した曲、などとホラをいいたくなります。ここまで愚劣だと、ほとんどラディカルといっていいのではないでしょうか!

この曲も自明に類するでしょうが、ジョン・レノンてだれよ、という人もいるでしょうから、いちおう貼りつけます。またあの会社の管理するものなので、プレイできなかったらハイごめんよ。

John Lennon - Give Peace a Chance


ジョン・レノンというのは、ビートルズというイギリスのバンドのメンバーだった人で、ビートルズ解散後は、ソロ・シンガーとなり、って、時間がないときに、こんなくだらない冗談はやめておきます。ジョン・レノンを知らない人は、適当に検索してバイオをお読みあれ。


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ジョン・レノン
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by songsf4s | 2012-02-13 23:54 | 60年代
続Q&Aソングス ゴーフィン=キングの自己レス・アンサー・ソング He Takes Good Care of Your Baby
 
以前、べつのブログで「Q&Aソングス」というシリーズをやったことがあります。そのときには、Answer to Everything: Girl Answer of the 60sというアンサー・ソング集を使ったのですが、最近、またこの種のコンピレーションを見かけたので、どういう選曲なのか、ちょっと覗いてみることにします。

例によって知らない曲がたくさんあるのですが、へえ、といったのはこの曲。本歌と同じく、ジェリー・ゴーフィンとキャロル・キングの共作です。

Carol King - He Takes Good Care of Your Baby


メロディーは原曲のママ、タイトルも原曲のもじりになっているので、たいていの方がすぐに本歌がおわかりでしょう。ボビー・ヴィーの大ヒット曲。山ほどクリップがあるのですが、音の悪いものばかりで、やっとみつけた許容できる音質のものを貼りつけます。

Bobby Vee - Take Good Care of My Baby


もう冒頭の数打でアール・パーマーとわかってしまうほど、どこからどうみてもアールのスネア・ワーク、時代を築いたサウンドです。1963年には、わが家でもこのスネアが毎日のように聴かれていました。って、あたしがかけていたのですが。

この時期のボビー・ヴィーのアレンジャーはアーニー・フリーマン、たいていの場合、彼自身がピアノを弾きながらストリングスをコンダクトしたそうです。この曲も、ストリングス・アレンジメントに心惹かれます。

ボビー・ヴィーの回想によれば、ベースはしばしばジョージ・“レッド”・カレンダー、ギターはハワード・ロバーツかバーニー・ケッセルがプレイしたそうです。オーヴァー・スペックといいたくなるようなメンバーです。しかし、ハリウッド音楽界では、こういう「スペック」はいたってノーマルでした。

この豪華なボビー・ヴィー盤にくらべると、キャロル・キングのセルフ・アンサー・ソングは、バッキングは彼女のピアノのみ、わずかにヴォーカルをダブル・トラッキングしていることだけが色づけです。

むろん、これはデモだったのでしょう。調べるとDora Dee & Lora Leeというデュオらしきアーティストの名義によるHe Takes Good Care Of Your Babyがリリースされたことがあるようです。

さて、アンサー・ソングというのは、たいていの場合、メロディーは原曲のものを流用します。違いは、当然ながら、歌詞にあらわれます。まずは原曲、Take Good Care of My Babyの歌詞から。

My tears are fallin'
'Cause you've taken her away
And though it really hurts me so
There's somethin' that I've got to say

Take good care of my baby
Please don't ever make her blue
Just tell her that you love her
Make sure you're thinkin' of her
In everything you say and do

Oh, take good care of my baby
Now don't you ever make her cry
Just let your love surround her
Paint a rainbow all around her
Don't let her see a cloudy sky

Once upon a time
That little girl was mine
If I'd been true
I know she'd never be with you

So, take good care of my baby
Be just as kind as you can be
And if you should discover
That you don't really love her
Just send my baby back home to me

Well, take good care of my baby
Be just as kind as you can be
And if you should discover
That you don't really love her
Just send my baby back home to me

Oh, take good care of my baby
Well, take good care of my baby
Just take good care of my baby

というわけで、ちょっと浮気のようなことをしたばかりに、愛する女性を失うことになった男が、彼女の新しいボーイフレンドに、「俺のベイビーを大事にしてくれよ、お願いだから彼女を悲しませたりしないでくれ」と訴える、いかにもジェリー・ゴーフィンらしい、すぐれたセントラル・アイディアをたくみに展開するストーリーです。

あまり時間がないのですが、コピーしてもってこられるものもないので、自前でやるしかなく、特急でHe Takes Good Care of Your Babyの歌詞を聞き取ります。やっつけ仕事なので、誤脱はご容赦願います。簡単な英語なので、ご自分で修正できるでしょう。

タイトルからおわかりのように、こちらは女性のほうが、かつてのボーイフレンドに語りかける形になっています。まずは前付けヴァース。

Your tears were fallin'
When he took me away
But darlin' now I'm cryin' too
And there's somethin' that I have to say

というように、原曲にほぼ一対一対応させてあります。まあ、当然、そうでなければいけないところです。ここで明かされるのは、別れるときにあなたが泣いたけれど、いまはわたしが泣いている、という、オヤオヤな現状ですw

つづいてファースト・ヴァース。

He takes good care of your baby
He never ever makes me blue
Though he's thinking of me
And always says he loves me
I can't help wishing it were you

これも原曲のファースト・ヴァースに対応させてあります。あなたが頼んだとおり、彼はわたしのことを大事にしてくれているわよ、でも、愛しているといわれるたびに、彼ではなく、あなただったらよかったのに、と思ってしまうの、という、いまのボーイフレンドはもうぜんぜん立場がないという、オイオイな展開です。

セカンド・ヴァース。ここからが、天下のジェリー・ゴーフィンの本領発揮です。いっておきますが、あたしは、キャロル・キングなんかよりはるかにジェリー・ゴーフィンのほうが好きなのです。

He takes good care of your baby
But ever since we said goodbye
When he puts his arms around me
Memories of you surround me
And darling I can't help but cry

ここは本歌の踏まえ方が一段、高度になっています。2行目は本歌「Just let your love surround her」→アンサー「When he puts his arms around me」、3行目は「Paint a rainbow all around her」→「Memories of you surround me」というように、surroundとaroundの置き場所を入れ替えてあるのです。

さすがはジェリー・ゴーフィン、ただ語り手を男から女へと替えるだけでなく、ふたつの曲を横断して詩の形式美も追求するという力業を披露しています。こういうところがこの人の才能であり、キャロル・キングが一山いくらの凡人に見えるほどの世紀の大ソングライターだったと考える所以です。

つづいてブリッジ。

When you were untrue
I said goodbye to you
But darling can't you see
You let me go too easily

あんなに簡単にあきらめることはないじゃない、となじられた男はまた泣いちゃうでしょうな。それにしても、いまのボーイフレンドがなんとも可哀想な展開ですw

ラスト・ヴァース。

He takes good care of your baby
Just like you wanted him to do
He tries to make me happy
But how can I be happy
When my heart knows
I'm still in love with you

技術的にはみごとなもので、ジェリー・ゴーフィン作品として恥ずかしくない仕上がりです。一度はあきらめた彼女にこんなことをいわれたら、男としては矢も楯もたまらない気分になるでしょう。

さりながら、あたくしは年寄りなので、いろいろな男女関係を見てきたわけでして、こういうケースでは、はからずもよけい者となってしまった男のほうにシンパシーがわきます。おまえら、勝手に別れて、勝手に縒りを戻そうとしやがって、それが人の道か、などと道学者じみた言葉が喉元まで迫り上がってきてしまうわけですな。

まあ、所詮、フィクションのなかの他人の色恋、ほうっておくことにして、本歌のほうのカヴァーを貼りつけましょう。

まず、いまやTake Good Care of My Babyのもっとも有名なヴァージョンになりつつあるこの人たちのものを。

The Beatles - Take Good Care of My Baby


うーむ。べつに悪いとはいいませんが、ジョージがリードですし、あの時代のビートルズですから、ハリウッドの精鋭がプレイしたボビー・ヴィー・ヴァージョンと比較しては失礼でしょう。いまだから、逆算して、魅力があるように錯覚するだけです。この曲を歌うならジョンでしょうに。

そろそろ時間切れ、つぎのヴァージョンでおしまいにします。

Dion & The Belmonts - Take Good Care of My Baby


ふたつ聴いて、ボビー・ヴィーのヴァージョンのレベルの高さを深く噛みしめました。アール・パーマーがいることのすごさ!


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ボビー・ヴィー
Very Best of Bobby Vee
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キャロル・キング
Brill Building Legends
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by songsf4s | 2012-02-09 23:59 | 60年代
ジェリー・ラゴヴォイ・ストーリー Stay With MeとStop(ロレイン・エリソン、ハワード・テイト)
 
同じ材料でつづけて記事を書いていると飽きてしまい、気分はよそに流れ出ていくのがつねです。今日はリック・ネルソンを流していました。いろいろ考えるべき材料のある人で、聴けば聴くほど、あれこれと調べることを思いつきます。

また、Cleopatra: The Movie That Changed Hollywoodなんていう映画の冒頭のほうもツイッターをメモがわりにしながら見ました。これまたリック・ネルソンのキャリア同様、ハリウッドの歴史そのもので、リッキーの歌と60年代はじめの廃墟のようなハリウッド映画産業が頭のなかで交錯しました。

『クレオパトラ』の公開は1963年、すなわち、フィル・スペクターがBe My Babyをリリースした年です。世紀の大失敗作と世紀の傑作が交錯したこの決定的な年を境に、ハリウッドは撮影所の廃墟となり、音楽の都としての相貌を顕かにします。

ついでにいえば、リック・ネルソンはこの年、デッカに移籍し、Fools Rush Inをヒットさせます。そういうことを考えながら、映画を見、音楽を聴くと、次元がひとつ加わって、愉しみが立体的になります。

そういう観点から、「クレオパトラ:ハリウッドを変えた映画」のことはいずれ当ブログに書くつもりです。

◆ Stay With Me ◆◆
今回はジェリー・ラゴヴォイ・シリーズの最終回なので、雑纂のような状態になるでしょうが、メインは、What a Wonderful Worldで知られるジョージ・デイヴィッド・ワイスと共作したこの曲です。

Lorraine Ellison - Stay With Me


「メロディーのあるブルーズ」と名づけたくなるような曲で、そういう風合いのある曲はジェリー・ラゴヴォイのカタログのなかで有力な集団を形成しています。すでに取り上げたものでは、Time Is on My SideCry Babyもこのタイプに分類できます。

このタイプの色合いを明瞭にするために、もうひとつ同系統の曲を。

Carl Hall - You Don't Know Nothing About Love


大束な言い様になってしまいますが、ジャニス・ジョプリンが歌いそうな曲、という円周の描き方もできそうです。ミディアム・スロウで、シンプルな構成のなかに、ちょっと引っかかるコードがクルトンのように放り込んであり、中間部でドカーンと盛り上げるタイプの曲、なんていう定義が可能でしょう。

ひとつだけ、Stay with Meのカヴァー、ウォーカー・ブラザーズ盤をを貼りつけておきます。

The Walker Brothers - Stay With Me Baby


スコット・ウォーカーにはロレイン・エリソンのような声量がないのですが、盛り上げるのはオーケストラにまかせ、ヴォーカルはクールにやるというウォーカーズの行き方も、それはそれでけっこうかと思います。

◆ Stop ◆◆
これはThe Jerry Ragovoy Story: Time is on my side 1952-2003というアルバムには収録されていないのですが、楽曲一覧を見ていて、あれもそうだったか、と思いだしたのは、ハワード・テイトのこの曲。モート・シューマンとの共作です。

Howard Tate - Stop


むろん、わたしがこの曲を知ったのは、ハワード・テイトのヴァージョンではなく、有名なこのカヴァーでのことでした。

Mike Bloomfield & Al Kooper - Stop


このSuper Session収録のインスト・ヴァージョンで入ったので、のちにハワード・テイトのヴォーカル・ヴァージョンを聴いたときは、妙な感じがしたものです。

それにしても、改めてエディー・ホーはいいドラマーだったなあ、と感じ入りました。タイムが端正で、聴いていて間然とするところがありません。

あまりいいヴァージョンではありませんが、この人もやっているということで、こちらのカヴァーも。

Jimi Hendrix - Stop


これはバンド・オヴ・ジプシーズのときなので、ドラム(ヴォーカルも?)はバディー・マイルズでしょうか、やっぱりミッチ・ミッチェルのほうが好みだなあ、とため息が出ました。

最後にもうひとつ、やや後年のものを。

Dionne Warwick - Move Me No Mountain


なんだか、バリー・ホワイトかラヴ・アンリミティッドの70年代スケベ・ソウルみたいだなあ、と思った人は正解。そっちのヴァージョンもあります。

Love Unlimited - Move Me No Mountain


意外にもきっちりやっていて、センジュアルな雰囲気ではありません。これはこれで懐かしい音です。

以上、長々と引っ張りましたが、これにてジェリー・ラゴヴォイ・ストーリーは完了です。並べて聴いたことのなかったソングライターなので、なかなか面白い経験でした。どうもお退屈様。


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ジェリー・ラゴヴォイ
Jerry Ragovoy Story: Time Is on My Side
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アル・クーパー、マイク・ブルームフィールド、スティーヴ・スティルズ
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by songsf4s | 2012-02-08 23:59 | ソング・ブック
ジェリー・ラゴヴォイ・ストーリー Pata PataとTry (Just a Little Bit Harder)(ミリアム・マケバ、ジャニス・ジョプリン、ロレイン・エリソン)
 
以前から、成瀬巳喜男監督『めし』は検索キーワードの上位にくることがよくあったのですが、今月は奇態な現象が起き、目をむいています。

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なにがどうしてこうなったのか、さっぱりわかりませんが、成瀬巳喜男の盛名日々高まるなのね、と解釈しておきます。どなたにでもお勧めできるタイプの映画を撮った人ではありませんが、やるだけのことはきちんとやっているので、いつまでも価値の減じないものが多い、ということはいってよいでしょう。

◆ Pata Pata ◆◆
さて、思ったより長引いてしまったジェリー・ラゴヴォイ・ストーリー、本日は比較的人口に膾炙したものを二種聴きます。まずは南アフリカの女王、なんていうとジョン・ヒューストンの映画か、はたまた、ライダー・ハガードのアラン・クォーターメイン・シリーズみたいですが!

Miriam Makeba - Pata Pata


ソングライター・クレジットは、ジェリー・ラゴヴォイとミリアム・マケバの二人になっています。もともとの曲はミリアム・マケバが書き、それをアメリカ市場向けにジェリー・ラゴヴォイが手直しした、なんてあたりの可能性もありますし、そもそも、原曲はDorothy Masukaという人が書いたのだとしているソースもあります。

シンプルなのに、不思議に飽きが来ないのは、やはりグッド・グルーヴのおかげでしょう。タイムはすこし早めですが、このドラムは、チューニング、サウンドまで含めておおいに好みです。

かなりの数を聴いてみたのですが、あまりいいカヴァーはないので、ミリアム・マケバ自身のライヴを。

Miriam Makeba - Pata Pata (live)


ふーむ、やはり音楽は聴いてみないとわからないものだなあ、と感じ入りました。バンドのタイムは早くて、うわあ、どうしよう、というグルーヴなのですが、ミリアム・マケバのタイムというのは独特で、この状態でもソリッドに聞こえます。「頑丈な」と表現したくなるグルーヴ。

こういうのは好みが分かれるので、善し悪しはいいませんが、ここにもいる、あそこにもいる、というタイプのシンガーではないことだけははっきりしています。

気になるので、もうひとつ、ミリアム・マケバのライヴ。

Miriam Makeba - Pata Pata (live)


こちらはバンドもソリッドで安心して聴けます。安定したタイムで聴いていて思うのは、ひょっとして、この人は裏拍を裏拍とは感じていないのか、ということです。裏拍のほうが、われわれにとっての表拍のようなものだから、裏を強調した、シンコペート感覚の強い歌い方をしても、どっしりとしたグルーヴになるのかもしれません。

すこし他人のヴァージョンも。ディスコなので、お嫌いな方はご注意。

Osibisa - (I Feel) Pata Pata


もうひとついきます。ルクレチア(ボルジア家か!)というのはキューバのシンガーのようです。あたくしはそちら方面はいたって不調法で、よく知りませんが、どちらかというと、オシビサより好みに合います。2007年のアルバムに収録されたもののようです。

Lucrecia - Pata Pata


二度、移調をするのが効果的です。これより音質のいいクリップがあったのですが、こちらを貼りつけたのは、山下公園で猫が魚を釣る合成写真がでてくるからにすぎません! 猫より女性のほうがいいという方は、ユーチューブで検索すれば、そちらを発見できるでしょう。

◆ Try (Just a Little Bit Harder) ◆◆
もう一曲、こちらは簡単に。まずは有名なカヴァーのほうから。わたしもこちらから入りました。

Janis Joplin - Try (Just a Little Bit Harder)


ジャニス・ジョプリンのバンドはみな苦手なのですが、この曲のプレイは容認できる範囲内です。いや、すぐれている、とはいいませんけれどね。もうすこしうしろに重心をおいてくれると助かるのですがねえ。

ヴォーカルのことは好みの問題と棚上げしていうなら、オリジナルのロレイン・エリソン盤のサウンドのほうが楽しめるのではないでしょうか。

サンプル Lorraine Ellison "Try (Just a Little Bit Harder)"

スネアのチューニング、サウンドはあまり好みではありませんが、グルーヴはけっこう。グッド・フィーリンがあります。

次回、このロレイン・エリソンのヒット曲をフィーチャーして、引っぱりすぎたジェリー・ラゴヴォイ・シリーズを終える予定です。


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ジェリー・ラゴヴォイ
Jerry Ragovoy Story: Time Is on My Side
Jerry Ragovoy Story: Time Is on My Side


ミリアム・マケバ
In Concert/Pata Pata/Makeba
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オシビサ
The Very Best of
The Very Best of


ジャニス・ジョプリン
Pearl (Exp)
Pearl (Exp)


チップ・テイラー・ソングブック(ロレイン・エリソンのTryを収録)
Wild Thing: The Songs of Chip Taylor
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by songsf4s | 2012-02-07 00:06 | ソング・ブック