<   2012年 01月 ( 23 )   > この月の画像一覧
ジェリー・ラゴヴォイ・ストーリー Cry Baby篇(ガーネット・ミムズ、ジャニス・ジョプリン)
 
前々回の「ジェリー・ラゴヴォイ・ストーリー Good Lovinl'篇」で取り上げたGood Lovin'について、トミー・ジェイムズ&ザ・ションデルズのヴァージョンがあるというご指摘を受けたことは、前回の記事に書きました。

わたしはトミー・ジェイムズのヴァージョンをもっていないと記したところ、その後、ファイルのご喜捨を受けましたので、ありがたく頂戴し、そのお裾分けとして、サンプルをアップしました。

サンプル Tommy James & the Shondells "Good Lovin'"

お聴きになればおわかりのように、やはりヤング・ラスカルズ・ヴァージョンに強い影響を受けたものです。トミー・ジェイムズはこのとき高校生だったそうで、その若々しさが魅力的です。

こういう系統の曲を聴くと、Hanky Pankyのヒットはむしろ想定外というべきのような気がしてきます。つぎの大ヒット、Mony Monyのほうが、メイン・ラインといえるのではないでしょうか。いや、自分がそっちのほうを好んだというだけですが。Crimson and CloverやCrystal Blue Persuasionといった、サイケデリック・ポップも好きでしたけれどね。

以上、Kさん、大変お世話になりました。あらためてお礼申し上げます。

さて、ジェリー・ラゴヴォイの三曲目は、ガーネット・ミムズ&ディ・エンチャンターズのヒット、Cry Babyです。しかし、まともなクリップがなくて、いきなりけつまずきました。

ということで、オルタナティヴに逃げます。どちらかといえば、ガーネット・ミムズより、こちらのヴァージョンでご存知の方が多いのではないでしょうか。

Janis Joplin - Cry Baby


サウンドのほうに耳を引っ張られる人間なので、ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニーも、フルティルト・ブギー・バンドも、なんとかかんとかも、ジャニス・ジョプリンのバンドはみな気に入らなくて、当時はあまり熱心に聴かず、寮なるものに住んでいたので、だれかの盤を脇から聴くのみでした。

いま聴いても、高校生のバンドみたいで、あまり好きになれませんが、ジョニスについては立派なレンディションだと感じます。このアンバランスはどうにかならんのか、です。

わたしの好みはあっさり軽いシンギング・スタイルなので、こういうスタイルがとくに好きなわけではありませんが、しかし、好みを離れていえば、たいしたものだとは思います。冷たい褒め方で相済みませぬ。

じつは、今日の記事は、ゲーリー・チェスターの特集のうち、バート・バーンズ篇とほとんど同じなのです。Cry Babyはジェリー・ラゴヴォイとバート・バーンズの共作だからです。

したがって、じつは、もうあまり書くことがないのですが、以前の記事はクリップが壊滅状態なので(実質的に検閲である。クリップが削除されたわけではなく、日本では視聴できないように設定されている。いやはや、日本国は北朝鮮を目標に日々堕落中ですな)、サンプルをあげることで、同じような記事になるのを正当化することにさせていただきます。

サンプル Garnet Mimms & the Enchanters "Cry Baby"

Cry Babyという曲は、検索すると山ほど転げ出てくるのですが、ジェリー・ラゴヴォイとバート・バーンズが共作したCry Babyは、わが家にはガーネット・ミムズとジャニス・ジョプリンのヴァージョンしかありません。

したがって、ここでこの記事はおしまい、といってもいいのですが、いちおう、もう一曲、ジェリー・ラゴヴォイとバート・バーンズの共作をあげておきます。これまた、以前のバート・バーンズとゲーリー・チェスターの記事で貼りつけた曲ですが。

Erma Franklin - Piece of My Heart


この曲もまた、ジャニス・ジョプリンのヴァージョンのほうが有名かもしれませんが、サウンド、プレイに関するかぎり、アーマ・フランクリンの圧勝で、とくにジャニスが好きなわけではないわたしは、歌についてもアーマ・フランクリンのほうが好きです。

どうでもいい話なのですが、Cry Babyを検索してみて、途方に暮れました。Cry Like a Babyとか、Baby Don't Cryとか、Cry Baby Cryとか、I Cry for My Babyとか、無関係なものが山ほどヒットするばかりでなく、はてはCrystalsのThere's No Other Like My Babyなんていうのまでヒットしてしまうのです(Crystalsにはcryが隠れている!)。

さらにやっかいなのは、Cry Babyというタイトルの曲もたくさんあることです。パーシー・メイフィールドのも、モジョ・メンのも、ファイアボールズのも、デニス・ヨースト&ザ・クラシックス4のも、ジョニー・オーティスのも、みんな同題異曲なのです。むろん、全部確認しました!

というわけで、二番煎じ(そういえば、ちょうど時候なので、三笑亭可楽の「二番煎じ」が聴きたくなってきた)のCry BabyとPiece of My Heartは、なんだかひまそうな記事になってしまいました。

考えてみると、前回のバート・バーンズの記事は、ゲーリー・チェスターが叩いたトラックにかぎるという枷をはめたもので、もうすこし丁寧に書くべきでした。いずれ、きちんとバート・バーンズ・ソングブックをやり直したいと思います。いや、そのまえにジェリー・ラゴヴォイ、次回ぐらいで締めくくる心づもりです。


Click and follow Songs for 4 Seasons/metalside on Twitter
metalsideをフォローしましょう



ジェリー・ラゴヴォイ
Jerry Ragovoy Story: Time Is on My Side
Jerry Ragovoy Story: Time Is on My Side


ガーネット・ミムズ&ザ・エンチャンターズ
Cry Baby
Cry Baby


ジャニス・ジョプリン
Pearl (Exp)
Pearl (Exp)


ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニー
Cheap Thrills
Cheap Thrills


アーマ・フランクリン
Piece of Her Heart: The Epic and Shout Years
Piece of Her Heart: The Epic and Shout Years


トミー・ジェイムズ
Hanky Panky / Mony Mony
Hanky Panky / Mony Mony
[PR]
by songsf4s | 2012-01-31 23:57 | ソング・ブック
ジェリー・ラゴヴォイ・ストーリー Time Is on My Side篇(アーマ・トーマス、タイガース他)
 
昨日の記事をアップしてから、ツイッターで、トミー・ジェイムズ&ザ・ションデルズもGood Lovin'をやっているというご指摘を受けました。

調べたら、アルバムHanky Pankyに収録されていましたが、わたしはこの盤をもっていないので検索に引っかからず、ユーチューブにもあがっていなかったために見落としてしまいました。ここにサンプルをおけるといいのですが、手元にないので、どうかあしからず。

ジェリー・ラゴヴォイの曲で、Good Lovin'と並んで有名なのは、ソングブックのタイトルにもなっている、Time Is on My Sideでしょう(ノーマン・ミードの別名でクレジットされている)。この曲がいまでも知られているのは、主としてストーンズのおかげです。

The Rolling Stones - Time Is on My Side (45 ver.)


わたしが本格的に聴きはじめる以前のことなので気づいていませんでしたが、チャート・ブックを見たら、Time Is on My Sideは、ストーンズにとってはじめてのビルボード・トップ10ヒット(6位)でした。

いちばんよく聴いたのは、歓声ばかりで音楽があまり聞こえないGot Live If You Want It収録のライヴ・ヴァージョンでした。以下はGot Live If You Want It丸ごとクリップの真ん中の部分で、Time Is on My Sideは8:40からはじまります。

The Rolling Stones - Got Live if You Want It (Part 2)


こっちで聴いていたという方もいらっしゃるでしょうから、念のためにギター・イントロ・ヴァージョンも貼りつけておきます。

The Rolling Stones - Time Is on My Side (guitar intro ver.)


The Jerry Ragovoy Story: Time Is on My Side 1953-2003には、オリジナルである、トロンボーン・プレイヤーのカイ・ワインディングのヴァージョンが収録されています。

Kai Winding - Time Is on My Side


トロンボーン・インストというのは、なんだか据わりが悪く感じますが、大仰なサウンドはなかなか楽しめます。

このジェリー・ラゴヴォイ・シリーズのあとのほうで、ラゴヴォイの特徴を検討するつもりですが、このようにミディアム・テンポでドラマティックに盛り上げるのが、彼の好みのひとつだったのだろうと思います。

トロンボーン・インストのままでは、この曲が生き残るのはむずかしかったでしょう。歌ものTime Is on My Sideは、アーマ・トーマス盤が最初だったのだと思われます。

ライヴばかりたくさんあって、まともなのがないので、イントロに妙なアナウンスがかぶさった汚いクリップを貼りつけます。あしからず。

Irma Thomas - Time Is on My Side


お聴きになれば一目瞭然、ストーンズはアーマ・トーマス盤をコピーしたようなもので、ギターのサウンドやラインまで似ています。

さすがに女声コーラスまではコピーしていませんが、このコーラスが後年のYou Can't Always Get What You Wantに遠くこだましてしまったような気がしなくもありません。あれはアル・クーパーのアレンジでしたが。

わが家にはほかにウィルソン・ピケットのヴァージョンがありますが、クリップは見あたらないし、とくにどうという出来でもないので、サンプルもあげずにおきます。

イギリスでは、ストーンズ盤のヒットを受けて、ムーディー・ブルーズがデビュー・アルバムでカヴァーしています。

The Moody Blues - Time Is On My Side


Go Nowをご存知の方なら大丈夫ですが、Night in White Satin以降しか知らない方は、こういう初期のシンプル&ストレートフォーワードなムーディー・ブルーズは、違和感があるかもしれません。

日本のローカル盤では、なんといっても、タイガースのカヴァーが記憶に残っています。しかし、スタジオ録音のクリップはないので(はじめから存在しない?)、ライヴ・クリップを貼りつけます。

ザ・タイガース - Time Is on My Side (live)


わたしはタイガースのファンではなかったのですが、いまになってこういうものを聴くと、若干の感懐なきにしもあらずです。けっこうまじめにやっているし、なんていっては、失礼かも知れませんが!

ジェリー・ラゴヴォイは、バート・バーンズと共作しているほどで、ジェリー・リーバーとマイク・ストーラーを源流とする、「ブルー・アイド・ソウル・ソングライター」(自前造語失礼)ですが、ここまでは、オリジナルや初期のR&Bヴァージョンではヒットせず、白人のカヴァーでヒットしたものばかりでした。次回は、黒いままでヒットした曲を、と思っています。


Click and follow Songs for 4 Seasons/metalside on Twitter
metalsideをフォローしましょう



ジェリー・ラゴヴォイ
Jerry Ragovoy Story: Time Is on My Side
Jerry Ragovoy Story: Time Is on My Side


ローリング・ストーンズ
12x5
12x5


ローリング・ストーンズ
Got Live If You Want It
Got Live If You Want It


アーマ・トーマス
Time Is on My Side
Time Is on My Side


ムーディー・ブルーズ
Introduction to the Moody Blues
Introduction to the Moody Blues


タイガース
レア&モア・コレクションI LIVEヒストリー編
レア&モア・コレクションI LIVEヒストリー編


トミー・ジェイムズ
Hanky Panky / Mony Mony
Hanky Panky / Mony Mony
[PR]
by songsf4s | 2012-01-30 23:57 | ソング・ブック
ジェリー・ラゴヴォイ・ストーリー Good Lovinl'篇(ラスカルズ、グレイトフル・デッド他)
 
今日はThe Jerry Ragovoy Story: Time Is on My Side 1953-2003という、ジェリー・ラゴヴォイ(どこのサイトでも発音を発見できない難読姓。ご存知の方がいらしたら乞御教示)のソングブックを聴いていました。

子どものころからもっとも親しんだジェリー・ラゴヴォイの曲といえば、当然、これ。

The Young Rascals - Good Lovin'


日本ではシングルのリリースがものすごく遅れて、Once Upon a Dreamのときでした。B面はそのOnce Upon a DreamからアメリカではシングルA面としてカットされたIt's Wonderfulだったのだから、これだけでどれくらい遅れたかがおわかりでしょう。

このシングルは、たしか、1969年の学園祭の打ち上げで、好奇心から飲んだ酒のせいで(小生十六歳でしたな)、みんなで寮の四階から「かわらけ投げ」をすることになり、そのとき聴いていたシングル盤を片端からぶん投げているあいだに、なくしてしまいました。

わたしはせこい人間なので、酔眼朦朧としながらも、ちゃんとレーベルを確認して、「なに? テンプスのBeauty Is Only Skin Deep? 俺んじゃねえからいいや」てな調子で、自分のだいじな盤は投げないように、注意深くやっていたのですが、だれか(たぶんテンプスの持ち主!)に隙を見て投げられてしまったようです、って、どうでもいい話でした!

気になる曲のオリジナルはできるだけ集めてきたのですが、Good Lovin'はどういうわけか遭遇せず、オリンピックスのヴァージョンを聴いたのは比較的最近のことです。

スタジオ録音より先にテレビ・ライヴが見つかったので、出来がいいそちらのほうを。オルガンはビリー・プレストンと表示されています。

The Olympics - Good Lovin'


なんだか、カッコいいのだかわるいのだか、とっさには判断しかねますが、力強いノリは買えます。

大ヒット曲のわりにはカヴァーがすくなく、わが家にあるものでクリップが見つかったのは、山ほどあるグレイトフル・デッド盤をのぞけば、これぐらいでした。

Jay & the Americans - Good Lovin'


ジェイ&ディ・アメリカンズなので、当然のごとくラテン・フィールが入ってきます。ジェイ・ブラックの声が嫌いでなければ、悪くないヴァージョンでしょう(残念ながらわたしは不得手。ただし、これくらいのヴォイス・コントロールなら、嫌いというほどではない。カンツォーネ風の曲にめげるだけ)。

デッドのGood Lovin'は、スタジオ録音が二種、ライヴは両手の指と両足の指を足してもまだ不足というぐらいの数があります。メイジャー・デビュー以前からレパートリーだったのですが、Shekedown Street以後のアレンジがいいと思います。

まずは、そのShakedown Street収録ヴァージョンを。ただし、近年のCDにボーナスとして入っている、ボブ・ウィアのかわりに、プロデューサーのローウェル・ジョージがリード・ヴォーカルをとったアウトテイクをサンプルとして。

サンプル Grateful Dead feat. Lowell George "Good Lovin'"

つぎもほぼ同じものですが、ペダル・スティールなどは入っていない、グレイトフル・デッドのオフィシャル・リリースト・ヴァージョン。こちらのヴォーカルはボブ・ウィア。まだピアノはキース・ゴッドショーなので安心してお聴きあれ。

Grateful Dead - Good Lovin' (Studio Version)


同じ時期のライヴ録音も貼りつけます。78年のエジプト・ツアーのピラミッド・ライヴ(スフィンクス・ライヴだったか?)から。こちらもまだゴッドショー在籍です。

Grateful Dead - Good Lovin' - Egypt 9-16-78


エジプト・ライヴは評判がよくないのですが、この曲に関するかぎり、ボロクソにいうほどじゃないじゃんか、です。キース・ゴッドショーとしてはグランド・ピアノで弾きたかったでしょうが、なんせ砂漠のど真ん中ですからね。

もう残り時間僅少なので、これを最後の曲にします。モータウンのエルジンズのカヴァー。なかなかけっこうな出来です。

サンプル The Elgins "Good Lovin'"

駆け足でGood Lovin'だけ聴きましたが、ジェリー・ラゴヴォイの代表作はこれ一曲というわけではないので、次回はたぶんこのつづきをやることになるでしょう。


Click and follow Songs for 4 Seasons/metalside on Twitter
metalsideをフォローしましょう


ジェリー・ラゴヴォイ
Jerry Ragovoy Story: Time Is on My Side
Jerry Ragovoy Story: Time Is on My Side


ラスカルズ
Original Album Series
Original Album Series


グレイトフル・デッド
Shakedown Street (Dig)
Shakedown Street (Dig)


ジェイ&ディ・アメリカンズ
Jay & The Americans / Sunday & Me
Jay & The Americans / Sunday & Me


エルジンズ
Motown Anthology
Motown Anthology
[PR]
by songsf4s | 2012-01-29 23:55 | ソング・ブック
サーチャーズとクリス・カーティスのドラミング、選曲眼、そしてヴォーカル
 
今朝、ツイッターのタイムラインを見ていたら、ある方が「恋のマジック・ポーション」という曲のことをツイートしていて、似たようなタイトルのべつの曲を思い浮かべました。

The Searchers - Magic Potion


マジック・ポーション309番と、だいぶヴァージョン番号(?)は進んでいますが、もちろんこの曲はサーチャーズにとってはアメリカでのブレイクスルーになった大ヒット、Love Potion No. 9の続編です。

もっとも、正編のほうはアメリカのドゥーワップ・グループ、クローヴァーズのヒット(作者はジェリー・リーバーとマイク・ストーラー)がオリジナルだったの対して、こちらはルー・ジョンソンがオリジナルです(作者はバート・バカラックとハル・デイヴィッド)。

なぜ、続編が正編とは異なるライターによって書かれ、関係のないシンガーによって歌われたのか、そのへんの事情は知りません。しかし、歌詞を聴けば、どう考えても、Love Potion No. 9の続編であることは明かです。

Lou Johnson - Magic Potion


I'm keep on mixing that magic potion to stimulate her emotionという脚韻を踏んだラインがなかなかキュートな歌詞です。

以前、オフィシャル・キャロル・ケイ・ウェブサイトの「顧客リスト」(?)に、サーチャーズの名前があるのを見て、ちょっと先入観をもってしまったため、本気で検討したことがなかったのですが、Magic Potionを聴いていて、再び、ドラムはだれだったのかというのが気になってきました。

メイジャー・デビューのときのドラマーはクリス・カーティスという人です。デビュー・ヒットのSweet for My Sweet(ドリフターズのヒットのカヴァー)は正しいクリップがないので(近年の再録音やライヴばかり)、そのつぎのヒット、ジャッキー・デシャノンのカヴァー。

The Searchers - Needles and Pins


Magic Potion同様、精確なショットばかりで、文句なしのドラミングです。半小節分のフィルの使い方もMagic Potionに似ていて、同一のドラマーと措定して矛盾を感じません。

ドラムを叩いたことのない人は、手数の多いプレイヤーを「うまい」と思う傾向があるようですが、わたしはそうは思いません。ドラムはタイム・キーピングが第一の仕事です。昔のドラマーの多くは、走るか突っ込むかするもので、そういう人はどれほど速く叩けようと二流です。正しくないビートは、いくら数を積み重ねても、正しいビートには変換できないのです。

めったにいませんが(ドラマーに限らず、たいていのプレイヤーはタイムが早い)、タイムが遅れるのは最悪で、そういう人は三流ないしは論外です(ザ・バンドのドラマーが代表。異常に遅くて待ちきれず、気分が悪くなる。凡人はライヴでは心拍数があがり、タイムが少し早くなるので、ザ・バンドの場合、ライヴ盤はタイムが改善されている。めったにない奇怪な現象!)。

さらにいうと、ハード・ヒットに慣れたリスナー(わたしもそのひとり)は、ソフトなバックビートを聴くと、なんとなくうまくないような印象をもってしまう傾向もあるようです。

しかし、じっさいには逆です。たしかメル・テイラーが、はじめてヴェンチャーズのセッションで叩いたとき、ハード・ヒットはするなといわれて、むずかしかったといった趣旨のことをいっていましたが、ある程度の強さで叩いたほうがタイム・キーピングが楽で、弱く叩くとミスをしやすいものです。

後年のハード&へヴィーなドラミングの時代から振り返ると、サーチャーズのドラムはうまくないように感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、タイムの面でミス・ショットがほとんどない精確なプレイで、同時代のイギリスやアメリカのバンドのドラマーの多くよりずっとすぐれていると考えます。

The Searchers - Don't Throw Your Love Away


Searchers - Someday We're Gonna Love Again


ここまでの四曲、わたしにはすべて同一のドラマーのプレイに思われます。クリス・カーティスが在籍した66年までのシングル曲に関するかぎり、違和感のあるトラックはありません。改めて、このタイムの安定感が、サーチャーズの魅力的ハーモニーの土台だったのだと、強く感じました。つねに、グッド・フィーリンがあるのは、安定したタイムの賜物です。

あれこれクリップを漁っていて、BBCライヴに遭遇しました。これでサーチャーズのドラマーに関する疑問は消えました。エンベッド不可クリップではあるし、アップローダーのコメントをご覧になっていただきたいので、ご面倒でもユーチューブのほうにいらしていただくしかありません。

The Searchers - Magic Potion (live, Chris Curtis on lead vocal)

この「ChrisCurtisFan」というハンドルのアップローダーのコメントによれば、1960年から66年まで、クリス・カーティスはサーチャーズのリーダーであり、シングルA面曲の選択をおこない、B面曲の多くを書き、アレンジでも中心的役割を果たした、のだそうです。そして、サーチャーズのアイデンティファイアともいえる、あのハイ・ハーモニーを歌っていたのも、クリス・カーティスだというのです。

リーダー兼ドラマーといっても、チャレンジャーズのリチャード・デルヴィーのように、ドラムはハル・ブレインに任せて、プロデュースに専念した人もいますが、ライヴを聴いても、タイムは安定していて、クリス・カーティスはスタジオでもプレイしたと、今回、改めて検討して、結論を出しました。

ブリティッシュ・ビートの第一波集団で比較すると、カーティスのタイムはトップでしょう。60年代中盤にはB・J・ウィルソンが登場しますが、タイムだけで云うなら、BJと比較しても、カーティスのほうが精確です。

サーチャーズ・ファンの多くは、彼らの安定感、品のよいサウンド、すばらしい選曲、そして、独特のハーモニーに魅力を感じているはずです。こうしてみると、結局、それは、クリス・カーティスのキャラクターだったのだという結論になります。

ということで、サーチャーズのハーモニーの特徴がよくあらわれた曲を。

The Searchers - It's In Her Kiss


このハイ・ハーモニーはわがフェイヴなのですが、クリス・カーティスの声だったわけです。そのへんのことをよくわかっていなかったのだから、我ながら驚き、また恥じ入りますが。

ライヴ・クリップを少々。

The Searchers - When I Get Home


なるほど、でした。この曲の場合、おおむねマイク・ペンダーとクリス・カーティスのデュエットで、ハイ・パートはカーティスが歌っています。

16分はすこし寸詰まる傾向がありますが(アール・パーマーといっしょで、「それがスタイル」という感じ)、よけいな力を入れず、リラックスして安定したバックビートを叩いていて、この時代のバンドのドラマーとしては異例といっていいでしょう。

The Searchers - Farmer John/Don't Throw Your Love Away (live)


クリス・カーティスは、ハーモニーでフラットしていますし(モニターがないうえに、ドラムを叩いているのだから、同情の余地はおおいにある)、ドラミングは、やはり16分ですこし拍を食っている(とくにストップからの戻りのフィルインの入りが微妙に早い)のがすこし気になりますが、当時のレベルでいえば、そんなのは小さな、小さなキズにすぎず、安定感のある、いいグルーヴをつくっています。

サーチャーズは子どものころに知っていたのはLove Potion No.9だけで、LPは後年の再発で買ったので、後追いなのですが、それにしてももう30年以上聴いてきたことになります。不思議なことに、その間ずっと、音だけで満足し、きちんと歴史を調べたことがありませんでした。

調べてみれば、サーチャーズの魅力というのは、じつは、マイク・ペンダーではなく、クリス・カーティスが中心になって生みだされたものだということがよくわかりました。無精はよろしくありません。

66年にサーチャーズを離れたあと、クリス・カーティスはジョン・ロードと親しくなり、サーチャーズのときのように、卓越した選曲眼を発揮することになります。

ジョン・ロードがディープ・パープルをつくり、この曲をカヴァーすることになったのは、クリス・カーティスの示唆によるものなのだというので、またまた驚きました。

Deep Purple - Hush


自分のバンドがなくなっても、まだ選曲眼のよさは十全に発揮していたわけで、「ぶれない」というのは、国民のすべてがウソだと見破っているいることを承知で、一貫してぶれずにデタラメを言い続けている大うそつき親玉政治屋ではなく、クリス・カーティスのような人に使うべき言葉でしょう。


Click and follow Songs for 4 Seasons/metalside on Twitter
metalsideをフォローしましょう



サーチャーズ(3枚組)
Definitive Pye Collection
Definitive Pye Collection


サーチャーズ
Sounds Like Searchers
Sounds Like Searchers


ルー・ジョンソン
Incomparable Soul Vocalist Big Top Recordings
Incomparable Soul Vocalist Big Top Recordings


ディープ・パープル
ハッシュ(K2HD/紙ジャケット仕様)
ハッシュ(K2HD/紙ジャケット仕様)
[PR]
by songsf4s | 2012-01-26 23:50 | ブリティシュ・インヴェイジョン
ロマン・ポランスキー監督『The Ninth Gate』(ザ・ナインス・ゲイト)と隠秘への衝動
 
年初に、今年は映画のほうに力を入れようと思ったのですが、やはり音楽よりずっと手間がかかり、また、予定外の出来事もあって、そちらの記事を書いたりと、なかなか思うようにいきません。

それでも、見る本数は増えていて、これから取り上げるつもりの映画のリストだけはどんどん長くなっています。それを消化するために、またいっぽうで、いつも映画の記事がとてつもなく長くなるのをなんとかしたくもあって、今年は一本の映画に割く紙数(ウェブ上では「バイト数」とでもいっておくのが妥当だろうが)も減らしたいと思っています。具体的には、記事を割らずに、一回で書き終わることが目標です。

週末、ふと、ロマン・ポランスキーの『ザ・ナインス・ゲイト』(配給会社の表記は「ナインスゲート」だが、まったく気にくわない。一単語ではないのだから、区切り記号をつけるべきである。どうせ邦題はアイデンティファイアではない、つまりほんとうの意味でのタイトルではないので、ここでは無視する。正確なタイトルはThe Ninth Gateである)を再見したくなりました。

『ザ・ナインス・ゲイト』予告編


ロマン・ポランスキー、ジョニー・デップ、フランク・ランジェラのコメント


はじめにお断りしておきますが、オカルティズム、なかでもとくにサタニズムを題材とした映画ですし、人はたくさん死にますが、ホラー映画ではないので、流血はごく微量、近年のアクション映画の百分の一にもならないでしょう。むろん、首が転がったり、はらわたが流れ出たりすることもありません。

稀覯書専門のせどり業者、ディーン・コルソー(ジョニー・デップ)は、出版社経営者にして名高い収書家のボリス・ボールカン(フランク・ランジェラ)に呼ばれ、一冊の本を示されます。

コルソーは表紙を一瞥するや、アリスティード・トルキア著「影の王国の九つの門」(The Nine Gates of the Kingdom of Shadows)、1666年(こういうゾロ目というのはしばしば邪悪なものであると考えられている)ヴェニスで刊、異端審問で焚書となり、もはや三冊しか現存しない、現在の所有者はファーガス、ケスラー、テルファーの三人、と即座にいいます。

ボールカンは、そのうち一冊だけが本物だと主張します。そして、彼の手元にあるものはテルファーが所有していた巻で、彼の家族が売ってくれた、そして、テルファーはその翌日に自殺した(アヴァン・タイトルでその自殺が描かれている)といいます。

f0147840_2345352.jpg

f0147840_2345112.jpg

f0147840_2345249.jpg

f0147840_23453531.jpg

ボールカンは「デロメラニコン」(Delomelanicon)という書物を知っているか、と尋ねます。悪魔が書いたと云われる本だろう、伝説にすぎない、というコルソーに、ボールカンは、いや、実在した、トルキアは「デロメラニコン」をもっていた、そして彼の「影の王国の九つの門」に収録された挿絵版画は、「デロメラニコン」から引用したものだ、といいます。

ボールカンは、自分が所有している巻が真正だと信じているが、ポルトガルとフランスに行って、他の二種と厳密に比較し、もしも他の巻が真正だとわかったら、なにがなんでもそれを手に入れて欲しい、とコルソーに依頼します。

かくして、コルソーは探索の旅に出発し、謎と部分的解決と殺人とミステリアスな女に遭遇します。

なにを語るかが重要な映画もありますが、ロマン・ポランスキーはスタイルの人なので、上掲のインタヴューで「雰囲気がなにより重要だ」といっているとおり、この映画の最大の美点は、開巻からエンディングまであるムードで貫かれ、それが終始崩れないことです。

長いので、頭の四分ほどをご覧になっていただければ十分ですが、ポランスキーのいうアトモスフィアとはどういうものかを実例で。英語版クリップは埋め込み不可なので、ドイツ語吹き替えクリップを貼りつけます。

The Ninth Gateドイツ語版パート9


これは、コルソーがパリに行き、ケスラー男爵夫人(バーバラ・ジェフォード)の所有する三冊目の「影の王国の九つの門」を調査するシーンです。

隣の部屋にいる男爵夫人の姿を横移動で捉えるショットと、そのあと、ふたたび同じような横移動で、こんどは男爵夫人の不在を捉えるところは、微妙なキャメラの動かし方に感銘を受けました。

そして、気絶したコルソーが意識を取り戻すと、モーターとなにかがぶつかる音が聞こえ、電動車椅子に坐った男爵夫人のうしろ姿が見え、車椅子の引っかかりがはずれると、一気に燃え上がる隣の部屋に突っ込んでいくところなど、じつにうまい演出で、やっぱり一流の人はちがう、と思わせます。

このシークェンスにかぎらず、『ザ・ナインス・ゲイト』は、全体を通して、セット、色調、撮影、編集、音楽、演技、あらゆるピースがきちんと目的にかなっていて、間然とするところがありません。

とりわけ好きなのは色調とキャメラの動かし方です。上掲クリップでは、ゆっくりとした、かすかな横移動が印象的ですが、映画全体としては、ポイント、ポイントで登場する前方への移動が効果的で、それが雰囲気を決定しているとすら感じます。

f0147840_23482789.jpg

f0147840_23483710.jpg

f0147840_23484370.jpg

『ザ・ナインス・ゲイト』は、古書にまつわる謎を探求する旅の物語です。キャメラも、前へと、そして、細部へとゆるやかに近づきます。それがわれわれ観客の視線と意識を前方の暗がりへと運んでいきます。

古書を求めてヨーロッパを旅する物語にふさわしく、全体の色調も、革装の古書のように赤茶けているし、音楽もそれにマッチしたサウンドで、ロマン・ポランスキー監督がいう「観客が映画館にいることを忘れるような雰囲気を醸成する」という意図は百パーセント実現されています。

そのサウンドトラックから一曲。ジョニー・デップ演じるディーン・コルソーが、移動している場面などで何度か流れるものです。

The Ninth Gate - 3. Corso


これがもっともポップな曲といっていいでしょう。あとはほとんど古典の風合いの強いオーケストラ曲で、そちらのタイプの曲も、当然ながらキャメラ・ワークや色調、そしてナラティヴ総体によくマッチしています。

ジョニー・デップは、善でもなければ、悪でもなく、この世のノーマルなルールの埒外にあるキャラクターを自然に演じられる俳優ですが(その意味で『パイレーツ・オヴ・カリビアン』の海賊役はよかった)、この映画のディーン・コルソーは、まさしくそのような、正義の味方でもなければ、邪悪な人間でもなく、われわれと同じように欲の皮を突っ張らせながら、同時に、ものごとを探求する心ももち、しかもそのいっぽうで、ルールの埒外にあるキャラクターで、デップの持ち味によく合っています。

f0147840_23523518.jpg

f0147840_23524439.jpg

f0147840_2353287.jpg

オカルティズムは日本語では「隠秘学」という語をあてます。occultという語の本来の意味が「秘し隠す」だからです。隠されたものを追い求め、明るみに出したい、あるいは密かに実態にふれたいという衝動は、濃度の違いはあっても、われわれのだれもがもっているものでしょう。

『ザ・ナインス・ゲイト』は、サタニズムに関する稀覯書をひとつひとつ調べていくうちに、手がかりが浮かび、そのたびに謎が深まり、人が死に、そして書物が失われてきます。

ジョニー・デップ扮する稀覯書ブローカーが、ビジネスとしてとりかかったはずの探求に、やがて取り憑かれていくように、われわれ観客もゆっくりと対象に近づくキャメラに導かれて、隠秘された謎の深く暗く狭い穴を覗きこむことになります。

そのようにして、われわれを探求という空間に幽閉する、ロマン・ポランスキーの手腕には感銘を受けました。たぶん、隠されたものを暴きたいという欲求は、われわれの心の奥深くから湧きあがるものであり、それが知識の集積としての書物を生んだのでしょう。

書物は「隠蔽」と「暴露」という、一対になった、あるいは相反する概念を同時に体現する「装置」です。そして、映画もまた、なんらかの意味で謎解きです。

映画という謎のなかに、書物という謎を埋め込んだ『ザ・ナインス・ゲイト』は、「隠秘されたもの」を暴露したいというわれわれの本然的欲求についての物語であり、同時に、その暴露欲求がわれわれの心に深く根ざしていることを観客に強く意識させる、じつにミステリアスで魅力的な映画です。


Click and follow Songs for 4 Seasons/metalside on Twitter
metalsideをフォローしましょう


ブルーレイ
ナインスゲート ―デジタル・レストア・バージョン― [Blu-ray]
ナインスゲート ―デジタル・レストア・バージョン― [Blu-ray]


DVD(旧版、オリジナルに近い)
ナインスゲート デラックス版 [DVD]
ナインスゲート デラックス版 [DVD]


OST CD
The Ninth Gate
The Ninth Gate
[PR]
by songsf4s | 2012-01-25 00:01 | 映画
A Night with Felix Cavaliere フィーリクス・カヴァリーア・ナイト
 
今日は、最近、再見した映画のことを書こうと思っていたのですが、どう書くかで、ああでもないこうでもないとこねくりまわしているうちに、時間は飛び去ってしまいました。

ふと、ラスカルズのボックスのことを思いだし、難波のセンセに質問していて、そちらのほうが気になってきました。そこでラスカルズをやる、なんていっても、そう簡単にはいかないので、ちょっとずらして、ラスカルズが壊れて以後のFelix Cavaliereの曲を、いくつか聴いてみます。

後追いの方たちは違う見方をしているでしょうが、昔からのラスカルズ・ファン(といってもわたしの周囲にはそれほど多くないのだが)のあいだでは、ソロ・デビューだけが好まれ、あとは、よくいって「我慢できる」、悪くすると「ゴミ」「割ったろうかと思った」という盤が多いのですが、まあ、割りたいような盤でも、悪くない曲がないわけでもないのでありまして、愛ゆえの憎しみみたいなものなのです。あはは。

では、ボロボロ、ガタガタのラスカルズ末期より、ずっといいじゃないかと、当時は大歓迎した、ソロ・デビューからまず一曲。

Felix Cavaliere - Everlasting Love


カヴァリーアのソロ・デビュー盤は、彼自身とトッド・ラングレンの共同プロデュースで、トッドのレーベルでもあったベアズヴィルからリリースされました。つぎの曲は、トッドのヴォーカルが載っていても不思議はないタイプのサウンドです。

Felix Cavaliere - A High Price to Pay


もう一曲、Everlasting Love同様、ラテン・フィールのある曲を。ただし、ドラマーはこちらのほうがマシです。

Felix Cavaliere - Summer in El Barrio


この曲については、かつて「Summer In El Barrio by Felix Cavaliere」という記事で、歌詞まで含めて詳細に書いたので、ファーザー・リーディングをお望みの方はそちらをどうぞ。

セカンド・アルバムのDesitinyは失望でした。デビュー盤ほど楽曲にいいものがなく、サウンドもかなりファンクが入ってきて、好みではありませんでした。

いかにもカヴァリーアらしいと感じるのはこの曲ぐらいでしょう。ご当人および会社もそう思ったのではないでしょうか。これはシングル・カットされました。

Felix Cavaliere - Never Felt Love Before


Destinyは、いかにも最後のアルバムになるデスティニーを背負って生まれたような雰囲気がありますが、フィーリクスのことは忘れたまま長い時間が過ぎ、いつのまにか80年代に入っていました。

そして、惰性でつけっぱなしにしていたFENから、よく知っている声が流れてきました。

Felix Cavaliere - Only a Lonely Heart See


わたしは、懐かしい声だなあ、と思ったのですが、ラスカルズ仲間の友人に会ったとき、このアルバムの話になり、割ったろうかと思わなかった? といわれて、ああ、そういいたくなる気持ちもわかるな、と思いました。

なにがいけないかといえば、サウンドです。時期はずれのディスコ・サウンドのトラックがアホらしく、マヌケな狸の腹鼓のようなシンドラムのタムタムに、證誠寺じゃねえぞ、バカヤローと、わたしもムッとなったからです。

しかし、サウンドさえまともなら、楽曲としては粒がそろっていて、なんでちゃんとつくらなかったんだ、ドアホ、というフラストレーションが生まれ、それが友だちに「割りたくなったろ?」といわせたのです。

クリップがないので、サンプルをアップしました。楽曲は粒ぞろい、サウンドはむかっ腹が立ったアルバム、Castle in the Airの、我慢できるサウンドのオープナー。

サンプル Felix Cavaliere "Good to Have Love Back"

楽曲としては、いかにもフィーリクスらしいもので、おおいに好みですが、サウンドは、ベースが不愉快で、なんでカヴァリーアがこんなプレイヤーと、と思いました。時代に合わせて変わろうとして、それがはずれて大コケにコケる、というのがフィーリクス・カヴァリーアのソロ・キャリアだった、といっていいでしょう。

ソロ・シンガーとしてのフィーリクス・カヴァリーアはふたたび忘却の彼方へと消え、ラスカルズしか聴かなくなったころになって、またアルバムが出ました。クリップはゼロのようです。かといって、あえてアップするほどのものでもないのですが、まあ、いちおうどんな雰囲気かだけ伝える意味で、一曲だけ。

サンプル Felix Cavaliere "If Not for You"

楽曲もあまりみるべきものがなく、サウンドもどうでもいい代物で、もううんざりだ、と思いました。こういうドラムのバランシングが嫌いで、同時代の音を聴かなくなったわけで、上にだれの声が載っていようが、やはり不快なものは不快です。

いま、ずっとこのアルバムを聴いていて、一曲、当時、それなりに好きだった曲があったのを思いだしたのですが、今夜はbox.netへのアップロードが異常に遅くて、間に合わないので、あとで交換することにします。

やっとアップできたので、Dreams in Motionで唯一気に入ったその曲を。

サンプル Felix Cavaliere "Look Who's Alone Tonight"

以上、駆け足のFelix Cavaliere Nightでした。

(追記 いま、Castle in the Airをさらに聴いていて、おや、と思いました。記憶にあるより、シンドラムの混入率は高くないのです。目立つのはDancing the Night Awayぐらいでしょうか。シンドラムに腹を立てたのもたしかですが、それよりも、たんにタムタムのチューニングとサウンドが気に入らなかっただけのようです。)


Click and follow Songs for 4 Seasons/metalside on Twitter
metalsideをフォローしましょう



フィーリクス・カヴァリーア
フェリックス・キャヴァリエ+1(K2HD/紙ジャケット仕様)
フェリックス・キャヴァリエ+1(K2HD/紙ジャケット仕様)


フィーリクス・カヴァリーア
デスティニー(K2HD/紙ジャケット仕様)
デスティニー(K2HD/紙ジャケット仕様)
[PR]
by songsf4s | 2012-01-23 23:54 | その他
追悼 エタ・ジェイムズ 後編
 
エタ・ジェイムズの父親はだれだかわからないのだそうですが、彼女自身はプール・プレイヤーのミネソタ・ファッツ(映画『ハスラー』では、ジャッキー・グリーソンが演じた。柄の合ったはまり役だった)だと云っていたそうです。だとしたら、すごい血筋ですが!

また、真偽のほどはわかりませんが、若いころにB・B・キングと付き合っていて、キングのSweet Sixteenは、彼女のことを歌ったものだと、エタ・ジェイムズ自身は信じていたといわれます。

B.B. King - Sweet Sixteen


さて、エタ・ジェイムズのメインラインの上澄みは前回の記事で並べたので、今回はチェス後期のオブスキュアな曲を選んでみます。

前回はすべてクリップでまかなえたのですが、オブスキュアなものになったとたん、クリップがなくなって、いきなりサンプルです。タイトルはSlow and Easyですが、じっさいの音はスロウでもイージーでもありません。

サンプル Etta James "Slow and Easy"

ドラムがちょっと鈍くさいのですが、こういうタイプのサウンドは好みですし、エタ・ジェイムズにも合っているのではないでしょうか。

もうひとつ同系統の曲を。

Etta James - Miss Pitiful


今度はちょっとテンポを落としたものを。

Etta James - Finders Keepers, Losers Weepers


ちょっとアーマ・フランクリンのPiece of My Heartを想起させる曲で(じっさい、この曲も歌ったみたらよかったのにと思う)、こういうのも悪くありません。泣いたり叫んだりしないのも好みです。こういうタイプで絶叫というのはよくあるパターンですが、勘弁してもらいたいものです。

やや外道趣味ですが、つぎは、こういう人が真っ白な曲を歌うとどうなるか、という興味で選びました。ランディー・ニューマンの代表作。

サンプル Etta James "Sail Away"

さすがに、年をとっても、エラ・フィッツジェラルドやジョニ・ミッチェルやアン・マレイのような、地獄の業火もかくやという悪夢の魔女声にならなかっただけあって、シャウトも控えめで嫌味がなく、わるくないレンディションです。

この曲のドラマーはだれだかわかりませんが、けっこうなタイム、けっこうなプレイで、好みです。これは73年の録音ですが、チェスも70年代に入ると洗練されたプレイヤーを使うようになったようです。シカゴの音には聞こえませんが。

ランディー・ニューマンのオリジナル・スタジオ・レコーディングはクリップがないので、スタジオ・ライヴを。

Randy Newman - Sail Away


まあ、ランディー・ニューマンですから、歌いあげたりする気遣いだけはぜったいにないのでありましてな!

最後は、ドン・コヴェイとスティーヴ・クロッパーが書き、コヴェイが最初に歌った曲。

サンプル Etta James "Sookie Sookie/Shotgun"

ドン・コヴェイがオリジナルではあるのですが、エタ・ジェイムズ盤が参照したのはコヴェイ盤ではなく、こちらのヴァージョンのような気がします。

Steppenwolf - Sookie, Sookie


これはステッペンウルフのデビュー・アルバムのオープナーで、中学生のわたしはおおいに感銘を受け、自分のバンドでやろうとした記憶があります。

なんてことはどうでもよくて、エタ・ジェイムズ盤のギターやオルガンの扱いは、ドン・コヴェイではなく、ステッペンウルフ盤に由来するものでしょう。

メドレーの後半、ショットガンについては、ヴァニラ・ファッジのカヴァーを踏襲した、などと断定する材料はなく、素直にジュニア・ウォーカー&ザ・オール・スターズのオリジナルからもってきたのかもしれません。

準備段階で選んだ曲は以上でおしまい。初期にもどって、お気楽な曲をおいておわかれとします。

Etta James - Come What May


年をとると、強いサウンドより、こういうもののほうが好ましく感じられるようになる、かどうかは、いまだに自分でも決めかねていますが。

エタ・ジェイムズに安らかな眠りを。


Click and follow Songs for 4 Seasons/metalside on Twitter
metalsideをフォローしましょう



ジョニー・オーティス
Midnight at the Barrelhouse: 1945-57
Midnight at the Barrelhouse: 1945-57


エタ・ジェイムズ
The Complete Modern & Kent Recordings
Complete Modern & Kent Recordings


エタ・ジェイムズ(チェス時代のボックス)
Chess Box
Chess Box


エタ・ジェイムズ(レーベルを横断するボックス)
Heart & Soul/Retrospective
Heart & Soul/Retrospective


エタ・ジェイムズ
Tell Mama: The Complete Muscle Shoals Sessions
Tell Mama: Comp Muscle Shoals Sessions


エタ・ジェイムズ
Her Best : The Chess 50th Anniversary Collection
Her Best : The Chess 50th Anniversary Collection


ランディー・ニューマン
Sail Away
Sail Away


B・B・キング
ロック・ミー・ベイビー ザ・ヴェリー・ベスト [日本独自企画ベスト盤]
ロック・ミー・ベイビー ザ・ヴェリー・ベスト [日本独自企画ベスト盤]


ステッペンウルフ
Steppenwolf (BORN TO BE WILD)
Steppenwolf (BORN TO BE WILD)
[PR]
by songsf4s | 2012-01-22 23:58 | 追悼
追悼 エタ・ジェイムズ 前編
 
昨日は、ジョニー・オーティス追悼を書いて、眠って起きたら、今朝は、そのジョニー・オーティスの後押しでデビューしたエタ・ジェイムズの訃報を読むことになりました。

以前から具合が悪いと伝えられていたので、大意外事というわけではないのですが、タイミングがタイミングなので、先日、玉木宏樹氏と別宮貞雄氏の訃報が重なったときと同様、こういうこともあるのだな、と慨嘆しました。

追悼記事ばかりで恐縮ですが、やはり、昨日の今日なので、エタ・ジェイムズのほうも書かないと寝覚めが悪いような気がします。

主として、以下の三種のアルバムから曲を選ぶことにします。初期の録音を網羅したThe Complete Modern & Kent Recordings、チェス時代の編集盤The Chess Box、同じくチェス時代のアルバム、Tell Mama: The Complete Muscle Shoals Sessions。

昨日はジョニー・オーティスの記事でエタ・ジェイムズの初期の代表作であるWallflower (Roll with Me Henry)のクリップは貼りつけたので、それは略して、初期の録音から好みのものを。

Etta James - Good Rockin' Daddy


Wallflower同様、いかにも初期R&Bらしい性的暗喩(というか、直喩といいたくなるが!)を用いた曲です。

ひとつ、昨日の記事で記憶違いがありました。Wallflower (Roll with Me Henry)のほうが、ハンク・バラード(とジョニー・オーティスが書いた)のWork With Me, Annieのアンサー・ソングだったということです。昨日の記事では逆のように書いてしまいました。陳謝。

ジョニー・オーティスにスカウトされたとき、エタ・ジェイムズはまだ14歳だったそうです。歌を聴くかぎり、とてもそうは思えませんが、まあ、シャンテルズのアーリーン・スミスなども、とうてい年齢相応の歌には思えず、そういうタイプのシンガーもいる、というだけのことでしょう。

1960年、エタ・ジェイムズはチェスと契約します。うまみのある白人市場を強く意識したのか、レナード・チェスはエタ・ジェイムズをバラッド・シンガーとして扱います。そういうのはまったく趣味ではないので、チェス初期は丸ごとオミットして、すこし時間を飛ばします。

シュガー・パイ・デサントとの強力なデュオによる、1965年の疑似モータウン・サウンド。

Etta James & Sugar Pie DeSanto - Do I Make Myself Clear?


この時期のエタ・ジェイムズはどこで録音していたのでしょうか。チェスだから、ふつうに考えればシカゴということになりますが、彼女はLA生まれ、デビューもLAのジョニー・オーティスによって、ですから、ちょっと悩ましいところです。なんにしても、けっこうなグルーヴで、これならマッスル・ショールズにいくまでもなかったのに、と思わせます。

フェイク・モータウンのつぎは、フェイク・スタックスといってみましょう。タイトルからわかるように、ウィルソン・ピケットの634-5789のアンサー・ソングです。

Etta James - 842-3089 (Call My Name)


音を聴いても、やはりウィルソン・ピケットのヒットを下敷きにしているのは明白です。せっかくだから、ウィルソン・ピケットの本歌のほうも貼りつけます。ライターはエディー・フロイドとスティーヴ・クロッパー。

Wilson Pickett - 634-5789 (Soulsville, USA)


このあと、エタ・ジェイムズはマッスル・ショールズで録音することになります。つまり、ロジャー・ホーキンズとデイヴ・フッドのグルーヴで歌う、ということです。そして、彼女の代表作が生まれました。

Etta James - Tell Mama


ロジャー・ホーキンズもアヴェレージ以上のプレイをしていますが、この曲で目立つのはデイヴ・フッドのベースのほうです。バンドのグルーヴがいいと、すぐれたシンガーはストレートに反応するもので、それがこの秀作を生んだと感じます。

つぎはマッスル・ショールズ・セッションが生み出したもうひとつのヒット曲。Tell Mamaと同様のメンバーによる録音です。

Etta James - Security


この「ゆるめのタイト」という矛盾した表現をしたくなる独特のグルーヴがロジャー・ホーキンズの味で、なんともいえない魅力があります。タイトな人はいくらでもいるのですが、ルースそうでタイト、タイトそうでルースという、微妙なグルーヴをもつドラマーは、ほんの一握りしかいないでしょう。

さらにマッスル・ショールズ録音から。近年のリマスター盤で陽の目を見た未発表曲。

Etta James - You Got It


一曲ぐらいはバラッドを入れないとまずいかもしれないので、マッスル・ショールズで録ったこのスタンダードを。これまた当時はアルバムからオミットされたトラックです。

Etta James - Misty


途中から4ビートになるのですが、NYやハリウッドの4ビートとはずいぶんちがっていて、あはは、です。ロジャー・ホーキンズも4ビートにしては左手が重すぎるし、管も妙なアクセントで、やっぱりここは南部だなあ、と思います。

上記の二曲についてはパーソネルがはっきりしないようですが、他のトラックと同じく、ドラムとベースに関してはロジャー・ホーキンズとデイヴ・フッドと見て大丈夫でしょう。

この稿を書きはじめる前にリストアップしたものはあと五曲残っていて、とうてい全部はやれそうもないので、残りは次回ということにして、本日はこれまで。


Click and follow Songs for 4 Seasons/metalside on Twitter
metalsideをフォローしましょう


ジョニー・オーティス
Midnight at the Barrelhouse: 1945-57
Midnight at the Barrelhouse: 1945-57


エタ・ジェイムズ
The Complete Modern & Kent Recordings
Complete Modern & Kent Recordings


エタ・ジェイムズ(チェス時代のボックス)
Chess Box
Chess Box


エタ・ジェイムズ(レーベルを横断するボックス)
Heart & Soul/Retrospective
Heart & Soul/Retrospective


エタ・ジェイムズ
Tell Mama: The Complete Muscle Shoals Sessions
Tell Mama: Comp Muscle Shoals Sessions


エタ・ジェイムズ
Her Best : The Chess 50th Anniversary Collection
Her Best : The Chess 50th Anniversary Collection


ウィルソン・ピケット
Original Album Series
Original Album Series
[PR]
by songsf4s | 2012-01-21 23:57 | 追悼
追悼 ジョニー・オーティスとR&Bの誕生
 
今朝、起きる早々、ジョニー・オーティスの訃報を読みました。R&Bが誕生した場所は一カ所に限定することはできませんが、LAのR&B、現在ではセントラル・アヴェニューR&Bといわれているものに関するかぎり、ジョニー・オーティスは生みの親のひとりといっていいでしょう。

以前、オーティスのキャリアをまとめたことがあるので、それをここに貼りつけるつもりですが、そのまえにすこし音を聴きます。まずは、もっとも人口に膾炙したジョニー・オーティス作の曲から。

The Johnny Otis Show - Willie and the Hand Jive


3コードでグルーヴのほうに眼目があるという、いかにもドラマーが書きそうな曲です。典型的なボー・ディドリー・ビートで、当然ながら、ご本尊のボー・ディドリーもカヴァーしています。

でも、そちらは当たり前すぎて面白くないので、べつのカヴァーを。このバンドについてはなにも知りません。検索で遭遇しただけです。

Moongooners - Willie and the Hand Jive


うちのHDDを検索すると、ヤングブラッズ、クリフ・リチャード&ザ・シャドウズ、グレイトフル・デッド、ニュー・ライダーズ、ジョニー・リヴァーズほかのヴァージョンがあります。

以下にペーストするのは、以前、某書肆の求めに応じて書いた、『音楽都市ハリウッドの黄金時代――ヒット曲はいかに「製造」されたか』と題した、ハリウッド音楽史の草稿の、ジョニー・オーティスの節です。

その後、先方の事情が変わって、いまだ上梓には至っていません。したがって、再利用ではありますが、未発表のテキストです。

それでは、『音楽都市ハリウッドの黄金時代――ヒット曲はいかに「製造」されたか』の「第一章の4 セントラル・アヴェニューに帰る」より。


▽ジョニー・オーティス――ジャズからR&Bへ
 一九四〇年代、五〇年代にあっては、ジャズとリズム&ブルースの境界は後年ほど明確ではないし、プレイヤーも両分野を横断して活動していることが多い。コード・チェンジを無視するので使いものにならなかったらしいが、オーネット・コールマンですらR&Bバンドでツアーをしたという。
 セントラル・アヴェニューはカリフォルニアのジャズの揺籃だっただけでなく、R&B誕生の地とされることもあるほどで、ここでもジャズとR&Bは深く交叉していた。リズム&ブルースというのは「ビートを強調した都市のブルース」であると同時に、「リズム・パターンとコードを単純化したジャズ」と見ることもできるのだ。
 ジャズ・プレイヤーとして出発しながら、R&Bの分野で活躍した人は、たとえばビッグ・ジェイ・マクニーリー、ジョー・リギンズ、ロイ・ミルトン、ジュウェル・グラント、ジョニー・オーティスなどをはじめ、枚挙にいとまがない。ジャズ・プレイヤーの側から見ると、R&B(そしてポップ)は「できるか否か」ではなく、「やるつもりがあるか否か」の問題だった。その気さえあれば、技術的には問題なくプレイできたのである。ただし、オーネット・コールマンはこのかぎりにあらず、だが!
 セントラル・アヴェニューR&Bの興隆を側面から促したのは、戦中戦後につぎつぎと生まれた、アラディン、モダン、スペシャルティー、インペリアルといったLAの独立レーベルである。こうしたレーベルはロイ・ミルトン、ジョー・リギンズ、エイモス・ミルバーン、リトル・エスター・フィリップス(のちに「リトル」がとれて、ジャズに転ずる)などなどのアーティストを発掘し、ヒット曲を生み出した。
 独立レーベルがR&Bに群がったのは、単純な理由による。クラシックはもちろん、白人のポピュラー音楽も、昔から大手レーベルが押さえていた。しかし、「レイス・ミュージック」と見下されていた黒人の音楽は、「小銭稼ぎ」にしかならないと考えられ、また「レイス」という言葉が示すように、人種差別もあったため、大手がまだ買いあさっていなかったのである。だから、新興独立レーベルがこの「食べ残し」に集まったのだ。
 残念ながら、エルヴィス・プレスリーの登場が巻き起こしたロックンロール・ブームの時期に、この分野の大スターが輩出しなかったため、LAがR&Bの中心地であったことは見過ごされがちだが、この時代に胚胎した芽は、のちに大きく開花することになる。四〇年代、五〇年代のセントラル・アヴェニューR&Bが、六〇年代ハリウッド・ポップの苗床のひとつであったことはまちがいないのである。
 ドラマー、ヴァイブラフォン奏者、クラブ・オーナー、DJ、プロモーターとして活躍し(さらにいえば、近年は画家であり、クック・ブックを出版した料理人でもある)、〈ウィリー&ザ・ハンド・ジャイヴ〉(Willie & The Hand Jive)のライターとして知られるバンドリーダーのジョニー・オーティスは、第二次大戦中のビッグ・バンドの時代にキャリアをスタートし、スタン・ケントン、イリノイ・ジャクェー、レスター・ヤングなどのバンドでドラムを叩き、やがて独立して自分のバンドをもった。
 戦後、ビッグ・バンドが経済的に立ちいかなくなると(カウント・ベイシーやデューク・エリントンですら苦しくなったという)、4リズムに、トランペット1、サックス2、トロンボーン1という小編成のバンドに組み直した。現代のわれわれにはいたってノーマルな編成に思えるが、オーティスにとっては、これは「押しつぶされたビッグ・バンド」であり、コードにテンションをつけられる最低限の編成だった。
 オーティスはいち早くR&Bへとシフトして、この時期に〈ハーレム・ノクターン〉Harlem Nocturnのヒットを得た(このスロウ・ダウンしたオーティス・ヴァージョンが世界中のストリッパーに利用されることになる)。このときのメンバーにはカーティス・カウンスやビル・ドゲットがいた。


Johnny Otis - Harlem Nocturne


 オーティスは、R&B興隆の理由を、ビッグ・バンドが経済的に立ちいかなくなったことにあるとしている。四管編成では、ビッグ・バンドの豊かなアンサンブルに敵するはずもなく、いきおい、ひとつひとつの楽器の音を大きくせざるをえなくなり、それまではコードを弾くだけだったギターもソロをとるようになって、自然にワイルドな音に向かっていったのだという。
 一九四八年、オーティスはセントラルに接するワッツ地区に、「バレル・ハウス」というクラブを開いた。このクラブの出演者を選び、アマチュア・ナイトを開くうちに、オーティスはタレント・スカウトとしての才能を発揮するようになり、リトル・エスター・フィリップス、ハンク・バラード&ザ・ミッドナイターズ、ジャッキー・ウィルソンなどを見いだして、レコーディング契約をとり、独立プロデューサーとして録音をおこなった。


同じ章のべつの節から引用します。


 一九五二年、ジョニー・オーティスは、若いソングライター・チーム、ジェリー・リーバーとマイク・ストーラーに、彼がプロデュースしていたウィリー・メー・“ビッグ・ママ”・ソーントンのために曲を書くように依頼した。そして生まれたのが、〈ハウンド・ドッグ〉Hound Dogだった。この曲が永遠の命を獲得するのは、五六年にエルヴィスがカヴァーしてナンバー1ヒットになったおかげだが、ビッグ・ママのオリジナルも、五三年にR&Bチャート・トッパーになっている。
(中略)
 リーバーとストーラーは、ビッグ・ママの〈ハウンド・ドッグ〉セッションで、はじめてプロデュースの真似事をした。ジョニー・オーティス・バンドのドラマーが気に入らず、二人がドラマーでもあるオーティスにストゥールに坐るように頼み、かわってリーバーがブースから指示を出すことになったのである。史上初めて、盤にプロデューサー・クレジットを明記されたといわれるチームの、A&Rとしての初仕事だった。


ということで、そのウィリー・メー・“ビッグ・ママ”・ソーントンのクリップを。

Willie Mae Big Mama Thornton - Hound Dog


史上初めて盤にProduced byというクレジットを入れたといわれるジェリー・リーバーとマイク・ストーラーのプロデューサー・チームが、はじめて事実上のプロデュースをおこなった盤であり、ジョニー・オーティスがドラム・ストゥールに坐った、というオマケもつき、最後に、エルヴィス・プレスリーのビルボード・チャート・トッパーというとどめがあるのだから、なんともはや、じつににぎやかなことです。

エルヴィスのカヴァーだって、クリーンとはいえず、ナスティーであったのがヒットの理由のひとつでしょうが、オリジナルになると、一段とナスティー度が高く、すげえな、と思います。まあ、日本ではあまり好まれないタイプのサウンドですが。

ジョニー・オーティスの歴史的重要性は、彼自身のバンドのパフォーマンスより、上述のように、セントラル・アヴェニューにバレルハウス・クラブを開き、多くの才能を見いだしたこと、また、週末のダンス・ナイトで彼らに活躍の場を与え、R&Bの勃興をうながしたことにあります。

それを確認、強調しておいたうえで、さらにいくつか音を並べます。

Johnny Otis - Ain't Nuthin' Shakin'


この時期のジョニー・オーティスのシンガーはだれかわかりませんが、さすがはセントラルにこの人ありといわれた伯楽、なかなかけっこうなレンディションです。むろん、バンドのパフォーマンスも味があります。

ギターが非常に魅力的なプレイをしていますが、調べてみると、知らないプレイヤーでした。jazzdisco.orgのサヴォイ・レコード・ディスコグラフィーの該当項目をコピーします。

Johnny Otis And His Orchestra
Lee Graves, Don Johnson (tp -2/5) George Washington (tb -2/5) Lorenzo Holden, James Von Streeter (ts -2/5) Walter Henry (bars) Devonia Williams (p) Gene Phillips (Hawaiian g -2/5) Pete Lewis (g) two unknown (g -1) Mario Delagarde (b) Leard Bell (d) Little Esther, Redd Lyte, Junior Ryder (vo -2/5) The Robins: Ty Terrell (tenor vo) Roy Richards, Billy Richards (baritone vo) Bobby Nunn (lead bass vo) (vocal group -2/5) Johnny Otis (dir -1, vib, d -2/5)
Los Angeles, CA, November 10, 19491. SLA4443 Boogie Guitar Savoy SJL 2230
2. SLA4444-3 Ain't Nothin' Shakin' Savoy 731
3. SLA4445 There's Rain In My Eyes Savoy 752, SJL 2230
4. SLA4446-1 Hangover Blues Savoy 787; Regent 1036; Savoy SJL 2230
5. SLA4447-2 Get Together Blues Savoy 824

ということは、この曲のヴォーカルはジュニア・ライダー、ギターはピーター・ルイス(といっても、むろん、モビー・グレイプのピーター・ルイスではない。あちらはこの曲が録音された1949年にはまだ四歳!)ということのようです。

ジョニー・オーティスのプロデューサーとしての代表作はこれではないでしょうか。エタ・ジェイムズもオーティスが世に送り出したシンガーのひとりです。ジョニー・オーティス、ハンク・バラード、エタ・ジェイムズの共作。

Etta James - Wallflower (Roll with Me Henry)


あたしと転がろうよ、ヘンリー、というタイトルが示すように、セックスの暗示が強すぎて問題になった曲ですが、続編やらアンサー・ソングやら、いろいろなものが生まれて、R&B勃興記を代表する楽曲のひとつとなりました。

1950年代後半、ジョニー・オーティスはキャピトルと契約します。白いものばかりつくっていたキャピトルが、黒っぽい方面の音がほしくなり、少なくともバンド・リーダーは黒人ではないジョニー・オーティス・ショウは、このレーベルに好都合だったからではないでしょうか。

キャピトル時代のジョニー・オーティスの録音では、しばしばアール・パーマーがドラム・ストゥールに坐りました。ギターがジミー・ノーランであったり、サックスがジャッキー・ケルソーであったりと、なかなか興味深い名前が並んでいます。

Johnny Otis - Good Golly


大丈夫、これはアール・パーマーのプレイにちがいありません。ジョニー・オーティスはドラマーとして出発しますが、のちにはしばしばヴァイブラフォーンをプレイしています。この曲にはヴァイブが入っているので、オーティスはそちらをプレイしたのでしょう。

人生、いろいろあるので、赤の他人に簡単にまとめられたくはないでしょうが、回想記も読んだ人間としては、結局、死の床で、面白かったなあ、もうちょっと遊びたかったなあ、とつぶやいたのではないか、と想像します。精一杯、楽しむだけ楽しんだ九十の大往生だった、と傍目には思えます。

ジョニー・オーティスに合掌。


Click and follow Songs for 4 Seasons/metalside on Twitter
metalsideをフォローしましょう


ジョニー・オーティス
Midnight at the Barrelhouse: 1945-57
Midnight at the Barrelhouse: 1945-57


ジョニー・オーティス
The Greatest Johnny Otis Show
The Greatest Johnny Otis Show


ジョニー・オーティス
The Capitol Years
The Capitol Years


ウィリー・メー・“ビッグ・ママ”・ソーントン
Ball N' Chain
Ball N' Chain


エタ・ジェイムズ
Complete Modern & Kent Recordings
Complete Modern & Kent Recordings


書籍
Midnight at the Barrelhouse: The Johnny Otis Story
Midnight at the Barrelhouse: The Johnny Otis Story
[PR]
by songsf4s | 2012-01-20 23:57 | 追悼
石田勝心監督、鏑木創音楽監督『東京湾炎上』(東宝、1975年)の疑似エスニック・スコア
 
1960年代なかばまでは、東宝特撮映画は、もれなく見ていたのですが、中学に入ったころから足が遠のきはじめ、70年代以降、一時はほとんど見なくなりました。

1975年の石田勝心監督『東京湾炎上』も、田中光二の原作『爆発の臨界』は読んだものの、映画のほうは封切で見ることはなく、テレビでも見ませんでした。

f0147840_041021.jpg

原作は、70年代にはじまった「インターナショナル・コンスピラシー・ノヴェル」、いわゆる国際陰謀小説の流れを受けたものであり、東宝特撮としてはかなり異質なプロットの映画です。いや、「東宝特撮」といわないほうがいいのかもしれません。

当時は見なかったくせに、いまになって見てみようかと思ったのは、音楽監督の鏑木創が、どういう音をあてていったのかが気になったためです。

ひとつだけクリップがあったので貼りつけます。前半の歌の部分がオープニング・クレジットで流れるテーマ曲、後半は映画ではだいぶあとのほう、石油備蓄基地の爆破場面で流れるスコアです。

鏑木創『東京湾炎上』オープニングほか


はっきりいって、コケました。絵と音がまったく水と油だったのです。動画じゃないとわかりにくいでしょうが、いちおうこの音楽が流れる場面のスクリーン・ショットを並べてみます。

f0147840_064342.jpg

f0147840_065262.jpg

f0147840_074660.jpg

f0147840_075564.jpg

f0147840_08788.jpg

f0147840_083563.jpg

f0147840_084482.jpg

f0147840_085477.jpg

凡庸な考えで申し訳ないのですが、でも、ふつうなら、ここはオーケストラによる大きなサウンドのインストゥルメンタルでしょう。歌謡曲を流す場面ではありません。

しかし、ここが人間の感覚のおかしなところですが、あまりにも絵と音が合っていないので、途中から面白くなってしまいました。いや、監督の意図したことではなく、こちらが勝手に結果ナット・オーライを、キャンプな感覚で興がっているだけで、失礼といえば失礼なのですが。これはないでしょう、と腹が立ったのに、しだいに面白くなってしまいました。

オープニング・クレジットを見て、イヤな予感がしました。テレビで見ているなら、さっさと消してベッドに入るような始まり方(最初の15分を見てダメだと思ったら、あっさりやめることにしている)です。そして、予想通り、映画自体の出来はあまり感心しませんでした。

20万トンの原油を積んで東京湾に入ろうとしていた巨大タンカーが、テロリスト集団にシージャックされ、油槽に爆弾をしかけられる、という設定です。九州の石油備蓄基地を破壊するか、さもなくば、このタンカーを東京湾内で爆破し、沿岸部の都市に壊滅的打撃を与える、というテロリストたちに、日本政府と、タンカーの人々がどう対処するか、というのが話の眼目です。

当然、プロットばかりではなく、サスペンスを醸成する演出力が映画の出来を決定することになるわけですが、かなり鈍な演出ですし、意味不明のところもあって、あらあら、でした。

開巻直後、藤岡弘と金沢碧のラヴ・シーンが二度も挿入されるのは、なんだったのでしょうか。プロットに関係してくるのかと思ったのですが、最後までいっても、ぜんぜん無関係なので、びっくりしました。女の裸を出せ、という会社の命令でもあったのでしょうか。

ひとつだけ、爆弾が仕掛けられた場所をたしかめに、藤岡弘がタンカーの甲板を疾駆するところを横移動で捉えたショットだけは、目が覚めました。あとは、これでいいのかなあ、の連続で、ただ溜息あるのみ。

タイトル・バックの音楽が奇妙だったので、スコアも鏑木創としては失敗作か、といやな予感がしたのですが、このミスマッチは監督ないしは会社の注文があったためだったのか、全体としては、オーケストラとタブラとダルシマーらしき楽器を組み合わせた無国籍サウンドが、なかなか楽しめました。

サンプル 鏑木創「ラスト・シーン」(東宝映画『東京湾炎上』より)

テロリスト集団はアフリカのどこかの国から来たらしいのですが、インドやアラブ系の楽器と西洋音楽的オーケストレーションの組み合わせで、エスニックなムードをつくっているという、ちょっとインチキなところが映画音楽らしくて、思わず頬がゆるみました。この雑食性が日本映画のスコアの大きな魅力のひとつだと思います。


Click and follow Songs for 4 Seasons/metalside on Twitter
metalsideをフォローしましょう


DVD
東京湾炎上 [DVD]
東京湾炎上 [DVD]


CDボックス
ミュージックファイルシリーズ 東宝映画サントラコレクション・リミテッドエディション「東宝特撮チャンピオンまつり」
ミュージックファイルシリーズ 東宝映画サントラコレクション・リミテッドエディション「東宝特撮チャンピオンまつり」
[PR]
by songsf4s | 2012-01-19 23:57 | 映画・TV音楽