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2011年7~9月の記事タイトル一覧

ラロ・シフリン・フィルモグラフィー1 ピーター・イエイツ監督『ブリット』前篇
ラロ・シフリン・フィルモグラフィー1 ピーター・イエイツ監督『ブリット』中篇
ラロ・シフリン・フィルモグラフィー1 ピーター・イエイツ監督『ブリット』後篇
ラロ・シフリン・フィルモグラフィー2 ヘンリー・レヴィン監督『サイレンサー殺人部隊』前篇
ラロ・シフリン・フィルモグラフィー2 ヘンリー・レヴィン監督『サイレンサー殺人部隊』中篇
ラロ・シフリン・フィルモグラフィー2 ヘンリー・レヴィン監督『サイレンサー殺人部隊』後篇
Do the Zombie Juke: The Zombies Remembered
『乳母車』なのか、芦川いづみなのか?
増補ハル・ブレイン・ディスコグラフィー読解 その1 The BuckinghamsとSpanky & Our Gang
増補ハル・ブレイン・ディスコグラフィー読解 その2 The Everly Brothers
The Not-So-Memorable Beach Boys
増補ハル・ブレイン・ディスコグラフィー読解 その3 Nino Tempo & April Stevens
増補ハル・ブレイン・ディスコグラフィー読解 その4 The Righteous BrothersおよびThe Fleetwoods
増補ハル・ブレイン・ディスコグラフィー読解 その5 John Lennon
増補ハル・ブレイン・ディスコグラフィー読解 その6 The Defranco FamilyとThe Partridge Family
増補ハル・ブレイン・ディスコグラフィー読解 その8 (きっと)Bobbie Gentryと(たぶん)Julie London
増補ハル・ブレイン・ディスコグラフィー読解 その9 続(きっと)Bobbie Gentryと(たぶん)Julie London
Hal Blaine Takes You to Surfin' Vol. 1
Hal Blaine Takes You to Surfin' Vol. 2
Hal Blaine Takes You to Surfin' Vol. 3
Hal Blaine Takes You to Surfin' Vol. 4
Hal Blaine Takes You to Surfin' Vol. 5
Hal Blaine Takes You to Surfin' Vol. 6
Hal Blaine Takes You to Surfin' Vol. 7
Now Listening スティーヴ・ミラー・バンド、スピリット、ミリアム・マケバ
Surf'n'Rod WITHOUT (or mistakingly WITH) Hal Blaine Vol. 1
Surf'n'Rod WITHOUT (or mistakingly WITH) Hal Blaine Vol. 2
Now Listening プロコール・ハルム「All This and More」ボックス
Surf'n'Rod WITHOUT (or mistakingly WITH) Hal Blaine Vol. 3
エレクトリック・シタール・クレイズ 前編 1960年代
エレクトリック・シタール・クレイズ 後編 1970年代+α
気に染まぬ風もあろうに柳かな、とはいえ、俺は柳ではなし
Cool guitars for a hot summer night
Cool guitars for a hot summer night II
エレクトリック・シタール・クレイズ ヴィニー・ベル篇
それはどの避暑地の出来事だったのか Theme from "A Summer Place"巡り前編
それはどの避暑地の出来事だったのか Theme from "A Summer Place"巡り後編
クライム・ギターズ: 60年代スパイ、クライム映画音楽
一歩遅れて「佃祭」(古今亭志ん生、志ん朝親子)
「千両みかん」(柳家小三治および立川談志)と「三味線ラ・クンパルシータ」(三味線豊吉)
須磨の浦風(四代目三遊亭圓馬)
七代目金原亭馬生(すなわち五代目古今亭志ん生)の「氏子中」
Quick Look At 御馴染ジキル&ハイド焼き直し物 ニール・バーガー監督『リミットレス』(Limitless)
ジェイムズ・ボンド・テーマはだれがつくったのか: ヴィック・フリック・ストーリー
続ジェイムズ・ボンド・テーマはだれがつくったのか: モンティー・ノーマンによる原曲(のようなもの
The Instrumental Dave Clark Five ドゥエイン・エディーの落とし子としてのDC5
The Better of the Dave Clark Five オブスキュア・トラックから見たDC5 その1
The Better of the Dave Clark Five オブスキュア・トラックから見たDC5 その2
The Better of the Dave Clark Five オブスキュア・トラックから見たDC5 その3
The Better of the Dave Clark Five オブスキュア・トラックから見たDC5 その4
The Better of the Dave Clark Five 最後はベスト・オヴ
ハーマンズ・ハーミッツとは誰のことだったのか: ピーター・ヌーンとバリー・ウィットワムの論争 前編
ハーマンズ・ハーミッツとは誰のことだったのか: ピーター・ヌーンとバリー・ウィットワムの論争 後編
関連ありやなしや 夜霧のしのび逢い~霧のカレリア~ブーベの恋人
アダモの「ブルー・ジーンと皮ジャンパー」は青江三奈を予見したか
蔵原惟繕監督、佐藤勝音楽監督『俺は待ってるぜ』(日活
蔵原惟繕監督、佐藤勝音楽監督『俺は待ってるぜ』(日活) その2
蔵原惟繕監督、佐藤勝音楽監督『俺は待ってるぜ』(日活) その3
蔵原惟繕監督、佐藤勝音楽監督『俺は待ってるぜ』(日活) その4
蔵原惟繕監督、佐藤勝音楽監督『俺は待ってるぜ』(日活) その5
蔵原惟繕監督、佐藤勝音楽監督『俺は待ってるぜ』(日活) その6
39年目の続編 グレイトフル・デッドのEurope '72 vol. 2
蔵原惟繕監督『俺は待ってるぜ』補足 ロケ地へ

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by songsf4s | 2011-09-30 23:59 | その他
蔵原惟繕監督『俺は待ってるぜ』補足 ロケ地へ
 
Midnight Eyeという、日本映画を扱っている英文のサイトがあって、ときおり見ているのですが、今日は、エースのジョーと舛田利雄監督のインタヴューを読みました。イタリアのウディネという町での映画祭をお二方が訪れた際のものだそうです。

とくに突っ込んだ話はないのですが、舛田利雄監督の東映任侠映画と日活のやくざ映画との違いの定義は、簡潔明快で、なるほどと思いました。

「東映任侠映画、たとえば高倉健を主役にしたものと、日活アクション映画はまったく異なるものだった。日活は基本的には若者をめぐるヒューマン・ストーリー、つまり「青春映画」の会社であり、それがときにやくざのキャラクターやその世界を背景にすることがあったというだけだ。それに対して東映は、本物のやくざの映画をつくった。東映の俊藤浩滋プロデューサーはやくざといってよい人物だった。だから、彼らはやくざの現実とその美学を映画にしようとした。したがって観客もまったく異なった。東映の観客はやくざ映画を好んだが、日活の観客はドラマを見るために映画館へ行った」

東映映画を語るというより、日活映画を語ったわけですが、日活は青春映画の会社だというのは、当事者の共通の認識だったようです。以前、ご紹介しましたが、鈴木清順監督も、『野獣の青春』はなぜあんなタイトルになったのだときかれて、さあねえ、と笑いながら「まあ、日活は若者のための映画をつくっていたから」と答えていました。

大人のための映画をつくっていた、とは云えないし、よその会社のように、夏休みの子ども向け映画などもなかったようで、たしかに日活は「若者のための映画」をつくっていました。

でも、「青春映画」といわれると、それは吉永小百合と浜田光夫の担当であって(舟木一夫主演の映画もいくつか見た記憶があるが)、といいそうになり、いやまあ、大きく見れば、日活アクションもまた「青春映画」だったのか、と考え直したりしました。

さらに考えると、つまり、アクションも青春映画も均等にやった石原裕次郎は、日活映画の全スペクトルをカヴァーした、というか、つまり、裕次郎こそが日活だったのか、という落着でいいような気がしてきました。

今村昌平のような芸術映画の監督と、アクション映画の監督の関係、といった興味深い話題がほかにもありますが、それはまたいずれということに。

◆ ロケ地再訪 ◆◆
連休中に、『俺は待ってるぜ』のロケ地に行き、少し写真を撮りました。しかし、以前書いたように、レストラン「リーフ」のセットが組まれた場所はいまでは観光地になっていて、そういう場所に連休中などというタイミングでいったものだから、写真を撮るどころではなく、這々の体のヒット&ランになりました。

しかし、せっかく撮ったものを使わないのも癪だ、というケチくさい根性が頭をもたげ、また、つぎになにをやるかが決まらないため、観光地の混雑を写しただけの写真を並べることにしました。

写真を撮ったのは二カ所(ロケ地を特定できたのは二カ所だけだから当然だが)で、新港のほかに、裕次郎が証人を捜して歩きまわるシーンに出てきた花咲町の通りも行って来ました。

まずは、新港のロケ地から。どこにセットが建てられたかは、以前の記事で明らかにしていますが、もう一度、同じ地図を貼りつけます。真ん中やや上の青い丸がセットの位置です。

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それではロケ地、というより、観光地の写真というべきものへ。

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鉄橋の上から赤煉瓦倉庫を臨む。この方向のショットはラスト・シーンにしか登場しない。

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映画では桟橋があった「リーフ」のわきの斜面。左手に見える大型客船は飛鳥II、そのむこうのあたりに大桟橋がある。

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こういうアングルで撮りたかったのだが、あれこれ障害物はあるし、人通りも多く、そうはいかなかった。

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このように、かつては大小二種類のトラスがあったのだが、現在では左側に見える小さいほうしか残っていない。

つづいて花咲町の写真を。もうすこし庇が残っていると思ったのですが、いまや一カ所だけしかありませんでした。

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JR桜木町駅のプラットフォーム。昔とはだいぶ様子が異なる。

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逆方向に切り返し、JR桜木町駅を背にして京急日ノ出町駅方向にむかって撮影。庇はここしか残っていない。

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以上、たった二カ所のロケ地再訪でした。町は変わるようで変わらず、変わらないようで変わってしまう、というような気分です。まあ、丸ごと残っていたら、かえって興趣が薄いでしょうけれど……。


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by songsf4s | 2011-09-30 21:44 | 映画
39年目の続編 グレイトフル・デッドのEurope '72 vol. 2
 
前回、つぎの記事で千件目だということは書いたので、本日はファンファーレなし、はい、これで千件です。

ずいぶん休んでしまい、失礼いたしました。体調が悪かったわけではなく、連休中は元気に歩きまわっていました。だんだん長距離を歩きやすい季節になってくるので、これからも歩きが忙しくて休むことはしばしばあると思います。暑いあいだは10キロ程度しか歩かなかったので、また30キロ歩ける足に戻さないといかんな、と思っています。

世間の連休後はブログ連休を利用して、映画を見ていました。黒澤明関係のドキュメンタリーが二本、瀧本智行監督『犯人に告ぐ』、原田眞人監督『クライマーズ・ハイ』、堤幸彦監督『20世紀少年 最終章 ぼくらの旗』、林海象監督『THE CODE/暗号』、三池崇史監督『神様のパズル』といった本編にプラスすることの、水谷俊之演出『ルパンの消息』というテレフィーチャー(最近は使わないか。劇場用長編映画すなわち「本編」=フィーチャー・フィルムに対して、本編並の長さのあるテレビドラマをテレフィーチャーといった)が一本です。

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『犯人に告ぐ』より横浜の夜景。

このリストをひとめ見ればおわかりのように、この十年ぐらいの日本映画を見ようと意図的に選んだものです。むろん、個々に副次的な理由(最近の宍戸錠が見たい、馴染みの場所でロケしたものが見たい、遠藤憲一の行く末を占いたいなど)がありますし、シリアス・ドラマは不得手なので、ミステリー、サスペンス、サイファイを選んでいます。

ほかにも『青島要塞爆撃命令』や『独立愚連隊』や『修羅雪姫』など、古い映画も見ているのですが、それはわたしにとっては日常にすぎず、特筆するようなことではないのです。

日本映画がどうなるかは気になるので、この数年は、新しいものも見ろよ、と自分に言い聞かせています。いまや日本を代表する監督となった例のあの人や、例のこの人の映画が苦手なもので(あんなもの、ほんとうにみんな面白いと思っているの?)、ついネグッてしまうのです。

上述の映画は、いずれもそれなりに楽しめました。バカヤロー、とか、なんなのこれは、どういう意味? なんてことは思いませんでした。まあ、シリアス・ドラマだとしばしばそういうことになるので、犯人はだれだ、とか、どうやって捕まえるか、なんていう確実な愉しみのあるものを選んだのですがね。それでもなお、林海象作品については、ちょっと、というか、たくさん留保するものがあります。

もっとも印象に残ったのは、『クライマーズ・ハイ』での遠藤憲一です。五年後がすごく楽しみだ、と興奮しました。年をとってからがほんとうの俳優人生、というタイプに見えます。逆に『ルパンの消息』の遠藤憲一は、すごく違和感がありました。いいものとよくないものの差がこれほど大きい人は、やはり注目に値します。

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『クライマーズ・ハイ』の遠藤憲一。

以上、思ったより長くなってしまった枕おしまい。

◆ 時が真実を告げる ◆◆
たしか、比較的最近の記事でふれたのではないかと思いますが、グレイトフル・デッドの(セールス的にではなく、音楽的に)もっとも実りの多かったツアー、1972年のヨーロッパ・ツアーのすべてのステージを収めたコンプリート・ボックスが先年リリースされ、すぐになくなったので、このあいだ追加リリースがありました。

猫も興味津々のコンプリート・ボックスのデザイン紹介(BGMはGreatest Story Ever ToldとSugaree)

(膨大な機材の運搬のためか、デッドは客船でヨーロッパに向かった。このデザインはそれを踏まえて、長期旅行用の衣裳用大型トランクのミニチュアになっている)

わたしは1968年のセカンド・アルバム以来のデッドヘッドですが、なにもかも集めるという行為は、デッドにかぎらず、まったく関心がないので、このモンスター・ボックスはもちろん見送りました。

しかし、デッドのライヴ盤でどれが好きかとなると、やはりEurope '72です。ビル・クルツマンのピークだった、ミッキー・ハートがいないシングル・ドラムの時期だった、キース・ゴッドショーが加わった、デッドの録音における試行錯誤が透明で重さのない独特のサウンドとして結実した、などの理由によります。

これはアルバムEurope '72には収録されていませんが、このツアーでのビル・クルツマンのスネアの音がもっともよくわかるクリップをあげておきます。

Grateful Dead - China Cat Sunflower Jam - I Know You Rider


つぎは、絵はありませんが、アルバムEurope '72のオープナーで、もっとも好ましい出来の曲のひとつ。

Grateful Dead - Cumberland Blues


デッドのグルーヴの独自性と魅力が端的にあらわれたトラックです。キース・ゴッドショーは大リーガー、ブレント・ミドランドはリトル・リーグの補欠というぐらいの差があったことが、はっきりとこのプレイで証明されています。ミドランドがいた80年代のデッドなんてアホらしくて聴けませんよ。

当時、Live/Deadというアルバムがあまりにも有名で、デッドのライヴ盤というと自動的にLive/Deadが指折られていましたが、わたしはEurope '72のほうが好きでした。

ドラムはひとりのほうがいいし、いなくなったドラマーがミッキー・ハートで、残ったドラマーがビル・クルツマンだったのだから、そして、彼の絶頂期は1970年から72年までだったのだから、当然、Live/DeadよりEurope '72のほうがいいに決まっています。

Live/Deadの前後のトラックも最近ではたくさん聴けるようになりましたが、それはべつに「Live/Dead II」といったような形でのリリースではありません。

しかし、Europe '72は、いまではデッドヘッズがもっとも愛するアルバムのひとつという評価が定まり、Europe '72 Plusなんていうファン・コンピレーションが出回ったりしていますし、ヨーロッパ・ツアーの盤は個別にリリースされてもいます。

そして、つい先日、Europe '72の「正規の続編」とでもいうべき、Europe '72 vol.2がライノからリリースされました。

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すぐれた作品の続編なんていうのは、あまりたいしたものにならないのが通弊ですが、Europe '72 vol.2は、続編とはいいながら、まったく異なった編集方針をとっていることが、トラック・リスティングスを見ただけでわかります。

Disc One:
1. Bertha - Tivolis Koncertsal,Copenhagen (4/14/72)
2. Me and My Uncle - Wembley Empire Pool, Wembley (4/7/72)
3. Chinatown Shuffle - Tivolis Koncertsal, Copenhagen (4/14/72)
4. Sugaree - Olympia Theatre, Paris (5/3/72)
5. Beat It On Down the Line - Theatre Hall, Luxembourg (5/16/72)
6. Loser - Tivolis Koncertsal, Copenhagen (4/14/72)
7. Next Time You See Me - Olympia Theatre, Paris (5/4/72)
8. Black-Throated Wind - Tivolis Koncertsal, Copenhagen (4/14/72)
9. Dire Wolf - Jahrhundert Halle, Frankfurt (4/26/72)
10. Greatest Story Ever Told - Olympia Theatre, Paris (5/3/72)
11. Deal - Olympia Theatre, Paris (5/4/72)
12. Good Lovin’ - Jahrhundert Halle, Frankfurt (4/26/72)
13. Playing In the Band - StrandLyceum, London (5/24/72)

Disc Two:
1. Dark Star > - Bickershaw Festival, Wigan (5/7/72)
2. Drums > - Bickershaw Festival, Wigan (5/7/72)
3. The Other One > - Bickershaw Festival, Wigan (5/7/72)
4. Sing Me Back Home - Strand Lyceum, London (5/26/72)
5. Not Fade Away > - Wembley Empire Pool, Wembley (4/7/72)
6. Goin’ Down the Road Feeling Bad > - Wembley Empire Pool, Wembley (4/7/72)
7. Not Fade Away - Wembley Empire Pool, Wembley (4/7/72)
(タイトルの末尾にある「>」はメドレーでつぎのトラックに接続されていることを示す)

最初のEurope '72は、Jack Straw、Brown Eyed Woman、Ramble On Rose、Tennessee Jedというように、どういうわけか、封切りの曲が山ほどありました。後年、ジェリー・ガルシアが、リファレンスとしてスタジオ録音もしておくべきだった、とボヤいたほどです。

それに対して、もちろん、続編では、新曲封切りなどありえないため、おなじみの曲のヨーロッパ・ツアー・ヴァージョンが並んでいます。めずらしいのは、Next Time You See Meぐらいではないでしょうか(マイケル・ブルームフィールドをはじめ、相当数のカヴァーがあるブルースで、ピグペンがリードをとっている)。

また、同時期にリリースされたジェリー・ガルシアとボブ・ウィアのそれぞれのソロ・アルバムからの曲も、当時はむろん、スタジオ盤のリリースが接近しすぎていてライヴ盤に収録するわけにはいかなかったのが、今回のヴォリューム2では、そういう配慮は無用なので、収録されています(Sugaree、Deal、Loser、Greatest Story Ever Told)。

まだリリースされて間がないため、ユーチューブにはクリップがないので、一曲だけ、サンプルにしました。

サンプル Grateful Dead "Greatest Story Ever Told"

Greatest Story Ever Toldはボブ・ウィアの曲で、1972年に彼のはじめてのソロ・アルバムAceで発表されたばかりでした。Aceはキース・ゴッドショーがデッドに加わって最初のスタジオ録音でもあり、なかなかいいアルバムでした。

この曲はAceのアルバム・オープナーで、デッドにしてはめずらしいアップテンポのホットな曲だったこともあって、その後、ライヴではおなじみのレパートリーになりました。

しかし、とくに出来のいいものはなく、いずれも隔靴掻痒というぐあいで、今回のEurope '72 vol. 2で、やっといいライヴ・ヴァージョンを聴けました。

トラック単位でいうなら、BerthaはSkull and Rosesヴァージョンほどではないにしても、十分に楽しめる出来ですし(こちらはキース・ゴッドショーのピアノが入っているすぐれたヴァージョンという特色がある)、Black-Throated Windも、わたしが知るかぎりで、もっともいいヴァージョンです。

Loserもこのヴァージョンがベスト、Sugareeも上々の出来、Dire Wolfは、Dick's Picks vol. 8収録のアコースティック・ヴァージョンは別格として、エレクトリック・ヴァージョンとしては今回のものがベストです。

ディスク2のDark Starからドラム・ソロ、The Other Oneという接続は、ちょっとしたものです。ドラム・ソロの最後にThe Other Oneのタムタム・パターンが出てきて、ええ、まさかそのつなぎはしないでしょ、と思っていたら、ちゃんとThe Other Oneが出てきて、おお、本気かよ、でした。このパターンは二度とやっていないのではないでしょうか。大作と大作をつなげる豪快さは、若さあってのことのように感じます。総プレイング・タイムは52分30秒! 聴くのも楽じゃありません。

Good Lovin'はウォーロックス時代からの古いレパートリーで、デッドは何度も盤にしていますが、Europe '72 vol. 2のものは微妙にニュアンスがちがい、「クール・ヴァージョン」とでもいう趣です。これはこれでけっこう。キース・ゴッドショーのピアノのせいでニュアンスが変化したのかもしれません。

という調子で、39年目の続編は正編を上まわりかねない出来です。デッドは低音をカットする傾向があるのですが、そのもっとも甚だしいのがEurope '72でした。今回の続編でも、基本的には同じ音で、邪魔な低音の重さはありません。

しかし、ビル・クルツマンのドラミングは、続編のほうがずっといい音になっています。スネアもタムタム(正編よりすこし重めのミックスになった)もライド・シンバルも、じつにいい音になっていて、俺がドラマーだったら、こういう風に録音し、マスタリングしてもらいたい、と思うほどです。

いま、この記事をアップしようとして、ツイッターで杉浦直樹没を知りました。うっかりしていましたが、ついこのあいだまで長々と書いた『俺は待ってるぜ』は、杉浦直樹のデビュー作だったことを知りました。合掌。


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グレイトフル・デッド
Europe '72
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グレイトフル・デッド
Vol. 2-Europe '72
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by songsf4s | 2011-09-29 23:46
蔵原惟繕監督、佐藤勝音楽監督『俺は待ってるぜ』(日活) その6
 
お客さん方にはあまり意味のないことですが、これは、当家の999本目の記事です。

体調不良でしばらく休みます、といったお知らせまで含めた本数ですが、5本の10本のといったオーダーならいざ知らず、ここまでくれば、そういったものまで含めてしまっても、かまわないでしょう。

よくまあ、飽きもせずに(いや、じっさいには何度も飽きて投げ出しそうになったのだが)、999本も書いたものです。あたくしという人間は、ちょっとどこかが足りないか、あまっているかするのでしょう。

「シェヘラザードも楽ではなかっただろうなあ」なんて大束なことをいえる資格を得たような気分なのですが、1000本目になにか特別企画を用意しているわけではありません。1000本記念総額一千万円大懸賞なんていうのはないので、期待しないでください。

◆ 日活キャバレー創生期 ◆◆
かつて、日活だけを他のスタジオと区別して特別扱いしたのは、大映、東映、東宝、松竹がスクェアだったのに対し、日活だけは、今風にいえばkewlだったからです。

その特異性は、むろん、人物設定、世界、プロットに表現されるのですが、当然ながら、ロケーション、セット・デザイン、衣裳といった視覚的な面でも、音楽や効果音といった聴覚的な面でも表現されました。

人物設定やストーリーから意味を読みとって、映画を云々するのがオーソドクシーなのでしょうが、根がオーソドクスではないもので、当家の映画記事はつねに、視覚的ディテールや音楽へと傾斜していきます。映画というのは、意味である以前に、テクスチャーなのだと考えているからです。

とまあ、よけいなゴタクを書きましたが、今回はまだふれていないセットのデザインを見ます。敵役である柴田(二谷英明)が経営し、ヒロイン・早枝子がつとめるキャバレー「地中海」のデザインです。

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「地中海」という店なので、アルジェだチュニスだといった文字が見える。

というぐあいで、のちの日活アクションの酒場、たとえば、木村威夫デザインの二つのナイトクラブ(『霧笛が俺を呼んでいる』『東京流れ者』)にくらべると、だいぶスケールが小さいのですが、しかし、ディテールには日活らしさがすでに濃厚にあらわれています。

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ステージの背後にのぞき窓があり、フロアを見渡せるようになっている。

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のぞき窓の向こうは事務所で、マンサード屋根の片側であるかのように壁面が斜めになっている。このような設定とデザインもいい。

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昼間、同じ場所でのショット。

このように事務所からクラブのフロアを見えるようにする構造は、日活アクションではおなじみで、たとえば、前述の『霧笛が俺を呼んでいる』ではさらに凝った構造で登場しますし、鈴木清順の『野獣の青春』では、『霧笛』のミクロコスモス化とは反対方向へとスケールアップしています。

このような視覚の多重化については、一度まじめに考えなければいけないとは思っているのですが、そういう理論化はじつにもって不得手というか、生来ものぐさなので、いつか、いい思案が浮かんだときにやろう、と先送りにしています。清順映画の解読には不可欠の道具なのですが。

◆ 家伝の対位法 ◆◆
今回で『俺は待ってるぜ』はおしまいなので、残った音楽の棚浚えをします。

まず、柴田が経営するクラブ「地中海」で、早枝子が歌う曲と、そのあとの4ビートのインストゥルメンタル曲を切らずにつづけていきます。北原三枝のスタンドインで歌っているのはマーサ三宅であると、佐藤勝作品集のライナーにあります。

サンプル 佐藤勝「地中海」(唄・マーサ三宅)

このマーサ三宅が歌う曲だけは佐藤勝作品集にも収録されているのですが、とくにタイトルはつけられていません。むろん、その後の4ビートの曲も同じで、「地中海」というのはわたしがつけた仮題です。

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いや、それにしても、当時の流行だったとはいえ、しっかりウェスト・コースト・ジャズしているところに、改めて感心しました。同時代性というのは恐ろしいものです。いや、それらしくになっているというだけでなく、ハイ・レベルでいいプレイなのです。

あまり話の底を割りたくないので、ちょっと人物関係を曖昧にします。つぎの曲は、いかさま博打でもめて、殺人に発展する無言劇で流れるものです。

サンプル 佐藤勝「Beat to Death」

佐藤勝の師匠、早坂文雄と黒澤明は対位法のことを繰り返しいっています。この曲もまさに対位法の実践で、陰鬱な殺人の場面に、明るく軽快なラテン・スタイルのサウンドをはめ込んでいます。

『俺は待ってるぜ』を収録した『佐藤勝作品集 第8集』のライナーには、蔵原惟繕の佐藤勝回想が収録されています。そこから引用します。ちょっとまわりくどい文章ですが、短いので。文中、「27歳」といっているのは、『俺は待ってるぜ』製作時の年齢です。

「勝さんの音楽的深みは27歳と云う若さを越えたものであったことに驚いた事を今鮮明に憶い出す。多分、それは、映画音楽の師、早坂文雄氏の晩年の仕事ぶりを間近に共にしていた事が大きかったのではなかろうかと思う。喀血しながら作曲を続けた師の後ろで、血の始末や、汚れを取り替え、写符を続けながら学んだことにある様な気がする」

早坂文雄が結核だったことは知っていましたが、その現実というのは考えてみたことがありませんでした。いや、弟子としてどう働いたとか、そのような「修行」がどうだといったことを思うわけではありません。たんに、佐藤勝というのは「そういう人物」だったと理解しただけです。そのキャラクターは彼がつくった音楽の力強い雑食性にそのまま反映されていると思います。

最後の一曲は、日活映画恒例、主役が歌うエンディング・テーマです。その直前のスコアからつなげてあります。

サンプル 佐藤勝「End Title」(唄・石原裕次郎)

◆ 日活的世界 ◆◆
『俺は待ってるぜ』がつくられたのは、石原裕次郎の人気が爆発しようとしていたときであり、『嵐を呼ぶ男』と『陽のあたる坂道』で地位が確立される直前のことです。

したがって、まだ「日活無国籍アクション」はパターン化していません。しかし、港町、エキゾティズム、流れ者(ないしは根無し草)のヒーロー、その「自己回復」の物語、暗黒街の住人たちといった主要な要素は、この映画でほぼ出揃い、のちのパターン化の準備が整えられています。

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日活は製作再開から数年に及ぶ苦闘の時期を脱し、石原裕次郎によっておおいに潤う時代を迎えるのですが、それと同時に、こうすれば客が入る、というヒット・レシピを見つけたことも、裕次郎と同様に重要だったでしょう。

自我の挫折とその回復、ないしは、個の確立といった渡辺武信のいうような、物語にこめられたものにも、もちろん相応の重要性がありましたが、わたしにとっては、視覚的、聴覚的な非日本性のほうがつねにプライオリティーが高く、その意味で『俺は待ってるぜ』はおおいなる愉楽をあたえてくれる映画であり、いま見ても、日活映画の頂点にある作品のひとつと感じます。


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by songsf4s | 2011-09-22 23:54 | 映画
蔵原惟繕監督、佐藤勝音楽監督『俺は待ってるぜ』(日活) その5
 
前回のつづきで、今回も50年代横浜散歩です。

警察で当時の事情をたしかめたところ、ケンカで兄を殺したテツという男はすでに死んでいたことがわかり、島木は、そのテツを殺した「川上一家の竹田」という男(草薙幸二郎)に当たってみようと、まず竹田が根城にしているという「花咲町の白雪という寿司屋」に向かいます。

花咲町というのは、JR根岸線桜木町駅を指呼の間に見る場所で、したがって、みなとみらい地区(この時代にはまだそうは呼ばれていないが)にも近く、当然、レストラン「リーフ」のある新港からもそれほど遠くありません。

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真ん中上のピンクの部分が桜木町駅。この地図では見えないが、さらに上、すなわち北がみなとみらい地区。右側を流れるのは大岡川。南が上流、北が下流でまもなく海にそそぐ。

また、厳密には野毛町ではないのですが、「野毛の飲み屋街」といったときに、花咲町まで含めて思い浮かべる人のほうが多いでしょう。

野毛坂から都橋、吉田橋に至る野毛本通りと、それと直交する平戸桜木道路という二本の表通りから、中通りにいたるまで、飲食店が櫛比し、昼間よりも夜のほうがにぎやかな、猥雑な雰囲気のある界隈です。

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島木が寿司屋にいくと、川上一家の若い者(柳瀬志郎と黒田剛。ギャングのメンツはそろいつつある!)がいて、竹田は近ごろ寄りつかない、といわれますが、店の女の子に、ビリヤード屋へ行ってみたらと教えられます。

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最初に寿司屋に行く。左は柳瀬志郎。

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ここは現在「平戸桜木道路」といっている、桜木町駅から野毛坂下のほうにつづく道の、桜木町駅に近い場所だということが、あとのショットで確認できる。いまでもこのショットのような雰囲気が残っている。変わらない町というのもあるらしい。

いっぽうで、竹田が危険な存在だと感じた柴田も、手下たちに、竹田を見つけて連れてこい、と命じ、島木と鉢合わせしそうな動きで、彼らのほうも竹田を追いはじめます。

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竹田を追う柴田の子分たち。杉浦直樹(中)と青木富夫(右)。「銀座マーケット」といわれても、もはやわからない。中通りか。

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島木がビリヤード屋から出てきたのと入れ違いに、柴田の配下がやってくる。向こうに桜木町駅のプラットフォームが見えるので、ここはピンポイントで場所を特定できる。駅のほうに行ってはなにもないので、島木はすぐに右に曲がることになるだろう。

はじめのうちは島木が先行しているのですが、行きつけのバーの発見が遅れて、先を越されてしまいます。

まだ竹田追跡行はつづきますが、ここで、このモンタージュを生彩あるものにしている、佐藤勝のサウンド・コラージュをお聴きいただきましょう。長いシークェンスですが、丸ごと切り出しました。

サンプル 佐藤勝「Searchin'」

絵の出来がいいと自然に音のほうも出来がよくなるもので、テンポの速いモンタージュに合わせて、どのようにサウンド・コラージュをつくればよいかという、教科書といえるようなものになっています。

2分すぎに登場するハワイアンは、かつて佐藤勝が石原裕次郎のために書いた「狂った果実」のインストゥルメンタル・ヴァージョンでしょう。時間の節約のために再利用したのかもしれませんが、楽しい楽屋落ちになっています。

それでは竹田探索行をつづけます。

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雀荘

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竹田追跡隊。左から榎木兵衛、杉浦直樹、深江章喜、杉浦の背後に隠れているのは青木富夫。

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島木より先に、柴田の配下は竹田の女がつとめるバーにたどりつく。四人がカウンターにさっと腰を下ろすと、間髪を入れずにグラスが並ぶ。ギャングたちも、すぐに移動しなければならないと承知しているので、寸暇を惜しんで素早くタダ酒を飲みはじめるのがじつに可笑しい。日活ギャングたちもこういうときはおおいに乗って演じたのだろう。いやまったく、日活映画はこういうところが楽しい。

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竹田探しがはじまったときはまだ明るかったが、すっかり日が落ちて、ついにギャングたちは武田のすぐ背後に迫った。

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ホテル内部。なかなか雰囲気があるが、ほんの3、4ショットのためにセットをつくるとは思えず、ロケか、他の映画のセットの借用ではないだろうか。

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飛んで火に入る夏の虫、追っ手がきょろきょろしているところに、ことを終わった竹田(草薙幸二郎)が階段を降りてきた。

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ちょっと顔を貸してもらおうじゃないか、というルーティン。ホテル玄関付近も雰囲気があるが、これはロケ地に看板を持ち込んで飾りつけるパターンではないだろうか。

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遅かりし由良之助、そのころ島木は、やっと竹田の女がつとめるバー「キール」にたどり着いた。この酒場も海の縁語で命名されている。

柴田一味につかまった竹田の運命やいかに、と紙芝居じみてしまいますが、そこは書かずにおかないと、差しさわりがありそうです。

このモンタージュは非常に狭い範囲で動いているのですが、編集も手際がよく、場所に合わせて歌謡曲、ハワイアン、ラテン、ジャズと切り替わる音楽も楽しく、この映画のひとつの見せ場になっています。

ひょっとしたら、蔵原惟繕も、高村倉太郎も、そして佐藤勝も、黒澤明の『野良犬』を意識していたのかもしれません。とりわけ佐藤勝は、師匠・早坂文雄が『野良犬』のモンタージュをどう処理したかを意識して、このサウンド・コラージュをつくりあげたのだろうと推測します。

ディゾルヴやオーヴァーラップなどは使わず、「ドライに」カットをつないでいますが(一箇所だけ、島木が駅方向にむかうところでワイプが使われている)、それがこの映画のトーンに合った、きびきびとしたリズムをつくっていて、その面でも非常に好ましいシークェンスです。

次回、いくつかセットを見、あと二曲ほどサンプルを並べて、『俺は待ってるぜ』を完了する予定です。


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by songsf4s | 2011-09-21 23:57 | 映画
蔵原惟繕監督、佐藤勝音楽監督『俺は待ってるぜ』(日活) その4
 
いやはや、いろいろなミスをやるもので、前回の記事をアップしている最中、『赤いハンカチ』の記事から写真のアドレスをコピーしているうちに、その記事を消してしまいました。

そちらの記事の復元に手間取った関係で、新しい記事のほうに手がまわらず、ろくに文字校もしないまま、キャプションも抜けた状態で公開することになってしまいました。

いちおう格好がついたのは今日の午後なので、それ以前にいらしてしまい、スクリーン・ショットの意味がわからず、気になるという方は、公開から半日後にできた現在の版をごらんいただけたらと思います。

◆ 中盤のプロット ◆◆
『俺は待ってるぜ』には、二度、横浜の町の長いモンタージュが登場します。ひとつは、前々回のプロットですでに書いた、石原裕次郎と北原三枝が町に遊ぶシーンです。

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もうひとつのモンタージュに行く前にプロットの残りを書いてしまいます。どこまで書くかはまだ決めていませんが、ここから先はミステリー的要素が入ってきて、それが主眼ではないにしても、形式上は謎解きになるので、近々ぜひ見てみたいなどと思っている方は、読まないほうがよろしいでしょう。スクリーン・ショットを片目でチラッと見る程度にしておかれるように警告します。

早枝子(北原三枝)に襲いかかって逆に花瓶で殴られた柴田(波多野憲)は、町で島木と歩く早枝子を見かけて連れ戻そうとしますが、島木に軽くあしらわれてしまいます。柴田は再び島木を見かけたときに、子分にあとをつけさせ、レストラン「リーフ」を突き止めます。

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日本交通公社すなわち現在のJTBの関内周辺の支店というと、尾上町一丁目にあるようだが、1957年にも同じ場所に店舗があったかどうかは不明。

前々回に書いたように、島木には兄がいて、先にブラジルに渡り、準備ができしだい弟を呼び寄せる手はずになっていました。しかし、ブラジルの兄からは一向に連絡がなく、いっぽう、島木が兄に送った手紙はみな宛先人不明で送り返されてきます。

ある日、島木が外出から帰ると、柴田の兄(二谷英明、このときは若くて顔に険があり、ギャングのボスがさまになっている)以下、弟や子分たちが店を占領していて、まだ契約が残っているので早枝子を返してもらおうと島木に迫ります。ちょっと小競り合いになりますが、そこに早枝子が帰ってきて、クラブに戻ることを承知し、その場は収まります。

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左から杉浦直樹、石原裕次郎、榎木兵衛、深江章喜、波多野憲、二谷英明(背中を向けている)の面々。日活らしいアンサンブルがすでに形成されつつある。みな若い!

しかし、島木は、この小競り合いのときに、柴田の子分(青木富夫。この映画は日活ギャングの中核が揃いはじめていたことを示している!)がもっていたメダルが気になります。

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島木は、兄が土地を買う約束をしていた売主に問い合わせの手紙を送ったところ、約束の日になっても兄上はやってこず、その後、連絡もない、という返事を受け取り、愕然とします。

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入国管理事務所に行って調べてみると、兄が日本を出た形跡のないことがわかります。しかし、荷物は乗る予定だった船にそのまま積まれて南米まで行き、送り返されていました。そして、警察で、兄が出発するはずだった前の晩に酒場のケンカで死んだ人間がいることがわかり、その現場写真によって、兄が死んだことが判明し、正当防衛ということで相手はお咎めなしと、すでに事件は片付いていたことを島木は知ります。

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その酒場は「地中海」と名前が変わったものの、じつは早枝子がつとめる、柴田の兄が経営する店だったことがわかり、島木は早枝子に、柴田の子分が持っているメダルの刻印を確かめてくれないかと依頼します。それは、彼がボクシングの新人王になったときのメダルで、出発前に兄に渡したものに思えたのです。

早枝子の助けで、それが兄に渡したメダルであったことを確認した島木は、それをもっていた柴田の子分(青木富夫)をしめあげて、どこでどう手に入れたかをいわせます。

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早枝子は青木富夫をだましてナイフを借り、口紅を使ってその飾りになっていたメダルの拓本をとる。

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裕次郎が青木富夫を待ち伏せするのは、ひょっとしたら海岸通3丁目の日本郵船の付近か。

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青木富夫にメダルをやった男はケンカで兄を殴り殺した男だったのですが、彼はすでに死んでいたことがわかり、こんどはその男を殺した相手(草薙幸二郎)に当たってみようと、裕次郎が町を歩きまわる、というところで、また長い横浜のモンタージュになります。

◆ 50年代横浜散歩 ◆◆
ということで、蔵原惟繕と高村倉太郎が、どのように1957年の横浜の町を捉えたかをすこし見ていきます。まず、序盤のデイト・シークェンスから。

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デイト・シークェンスのファースト・ショットからして場所がわからない。「横浜会館」という文字が見えるのだが、ウェブの検索ではそのようなビルは発見できなかった。あてずっぽうをいうと、羽衣町(伊勢佐木町のとなりの筋にあたる大通り)あたりではないだろうか。

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平和堂薬局という文字が見えるが、現在の関内周辺にはそういう名前の薬局は見つからない。伊勢佐木町通ではないだろうか。昔はアーケイドがあった。

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このように角を切ったところというと、長者町五丁目の交叉点が思い浮かぶ。伊勢佐木町四丁目の交叉点のとなりにあたる。古い横浜日活には入った記憶がないが、あの建物からなら、長者町五丁目の交叉点がこのように俯瞰できた可能性がある。

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Acme Dry Goods Companyというのがテキサスにあったらしい。その横浜支店だったのだろうか? といっても、それがどこにあったのか、調べがつかなかったのだが。

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以上は映画館内部。撮影の都合から、伊勢佐木町の横浜日活を使った可能性が高い。窓に味がある。

べつのシークェンスも見るつもりだったのですが、デイトのみで時間切れとなりました。以下、次回へ。


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by songsf4s | 2011-09-20 21:36 | 映画
蔵原惟繕監督、佐藤勝音楽監督『俺は待ってるぜ』(日活) その3
 
ほかのスタジオの映画もそうですが、とりわけ日活アクションには、しばしば引込線が登場しました。すでに取り上げた映画でいうと、舛田利雄の『赤いハンカチ』は横浜の貨物駅のシークェンスで幕を開けます。

ギャングの取引には好都合な場所だからということなのかもしれませんし、車輌の動きや足元が見えてしまう遮蔽物としての面白さ、そして凶器になりうることなどから、映画的効果を生みやすいということもあるのでしょう。

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以上三葉は『赤いハンカチ』冒頭の、石原裕次郎、二谷英明が榎木兵衛を追う貨物駅のシークェンスより。

前回の記事のコメント欄に書いたのですが、子どものころから引込線が好きでした。そのことは散歩ブログの「神奈川臨海鉄道本牧線の旅、とはいかなかったが──続・日活アクション的横浜インダストリアル散歩」という記事にも書きました。

映画をつくる側としては、いろいろ好都合なことがあって引込線を使うのでしょうが、見る側が引込線に魅力を感じるのはなぜなのだろうと思いました。最初に思いついた答えは、非日常性です。

子どものとき、引込線の線路の上を歩いていたときに感じたのは、非日常の喜びだったのだといま振り返って思います。「これはふつうならできない遊びだ」と感じていました。旅客を運んでいる鉄道の線路を歩くなど、まずできないことですから。

また、旅客を運ばない、いわば「プライヴェートな鉄道」であることも、子どもにはひどく面白く感じられました。言い換えると、ちょっと大げさですが、「この世の埒外にあるもの」としての深い魅力をたたえていたから、子どものとき、引込線のそばにいくたびに、その上を歩かずにはいられなかったのだろうと思います。

蔵原惟繕が、『俺は待ってるぜ』で、レストランのセットを「横浜市中区新港町埠頭構内」などという、無番地の奇妙な場所においただけでなく、線路の「砂かぶり」とでもいうべき近さに引込線があるという設定にしたのは、たんなる視覚的な面白さだけでなく、二重三重に主人公をこの世の外、といって大げさなら、「日本の日常の外」におきたかったからではないか、と想像しました。

◆ 外部の異界と内部の異界 ◆◆
『俺は待ってるぜ』のレストランのセットが置かれた位置については、前回、くどくどと書いたので、今回はセットそのもののことを少々書きます。

レストラン「リーフ」は、全体に西部劇の酒場のようなムードでデザインされています。とくにファサードを横から見たショットでは、ポーチのせいで西部劇のセットそのものに見えます。

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二、三段の階段を上がってポーチの上に立つと、ドアがあります。このドアも内部の床面より高いところにあり、二、三段の短い階段を降りて内部に入るようになっています。つまり、ポーチの階段を上がり、ドアをくぐると、こんどは階段を降りるという、考えようによっては無駄な構造になっているのです。

このような構造にした意味は、ひとつには視覚的効果の問題でしょう。いくつか、じっさいにそのようなショットがあるのですが、室内から見て、店に入ってきた人間を「奥」に配置しながら、なおかつ、その存在を強調することができるのです。

ドアから入ってきた人物は、やや高いところに立つことになるので、ちょうどステージに上がったように、室内の人間や調度のなかに沈まないのです。

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また、人物が水平移動するのは、見るものの視覚運動が小さいのですが、垂直方向に移動すると、目玉の運動量が増大し、映像に躍動感が生まれます。そのあたりの効果も狙ってのものでしょう。

もうひとつは、視覚的な意味ではなく、「界」と「界」の境を越える動作を強調し、レストラン「リーフ」の内部を「異界化」するためでしょう。リーフの位置自体が「異界」だということはすでに書きましたが、いわばその念押しとして、二重の異界化を、この松山崇のデザインになるセットはおこなっているのだと考えます。

ドアをくぐって店内に入ると、左手に長めのコントワールがあります。昼間はコーヒーや紅茶が、夜は酒が供されるのでしょう。このカウンターの両端には大型のコーヒーミルとラジオが見えます。正面奥の左側は調理場で、短めのカウンターがあり、できあがった料理がおかれます。

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開巻直後、石原裕次郎に誘われ、北原三枝がレストラン「リーフ」にやってきて、ドアのところに立ったたきの、彼女の「見た目」のショット。ドアが高いところにあるので、左手のコントワールの向こうにいる裕次郎を見下ろす格好になる。

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調理場内部からドアのほうを見たショット。右側にはコントワールの端が見え、その上にコーヒーミルが置かれている。

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こちらは逆方向からのショット。石原裕次郎の頭の向こうに調理場がある。そのむかって右はプライヴェート・スペースで、北原三枝がそこから出てきたところ。

調理場のむかって右にはドアがあり、その向こうには店主の私室があります。松山崇は、ここでも部屋と部屋の境に段差をつけました。私室には、店から二段ほどの階段を降りて入るようになっているのです。

この場合も、店の入口の階段と同じ視覚的効果を狙ってのデザインでしょう。部屋の奥からドアを狙ったたショットでは、手前のベッドに腰掛ける人物と、ドアから入ってきた人物に重みの差をつけずに、均等に見せることができます。

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そして、メタフィジカルなレベルにおいては、このプライヴェートな「奥の院」は、日本から遠くへ、遠くへと進むこのセット・デザインにおいて、最遠の地であり、もっとも異界性が強い場所として設計されています。

主人公がこの部屋のベッドに寝転がって、タバコを吸いながら思うのは、兄から手紙が届き、この日本を、心だけでなく、肉体としても離れ、ブラジルに渡るときのことにちがいありません。「ここではないどこか」で「自分ではない誰か」として生きる夢です。

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その想念のささやかな道具立てとして、壁には南米の地図が張られています。ここには日本を思わせるものはなにもなく、「異界性」は極限に達しています。

二十歳ぐらいのときにこの映画を再見して感じたのは、日本からの解放でした。いま改めてセットがおかれた場所と内部デザインを検討して思うのも、やはりそのことです。

1957年ほどには、あるいは、わたしがこの映画を再見した1970年代半ばほどには、いまは日本脱出願望というのは大きくありません。経済状態の好転とともに、むしろ日本肯定の気分が広がっていったのを、わたしは他人事のような遠さで見ていました。

しかし、大震災とその後の政治、経済、メディアを見ていて、1957年となにも変わっていない、あるいはさらに悪化したのではないかと思えてきました。

われわれはやはり、荒涼たる土地のはずれに小屋掛けし、その奥まった狭い一室に追い詰められ、いつか、この日本ではないどこかで、我慢のならない日本的政治風土から遠く離れ、それまでの自分とは異なる人間として暮らす夢を見ているような気がします。

今回は横浜の町のショットも検討すると予告したのですが、それは次回にさせていただき、本日はここまで。


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by songsf4s | 2011-09-19 23:33 | 映画
蔵原惟繕監督、佐藤勝音楽監督『俺は待ってるぜ』(日活) その2
 
スコアとロケーションを中心に『俺は待ってるぜ』を見る、と書きながら、前回はスコアのほうに必死になってしまい、肝心のロケーションにはふれられませんでした。

もっとも重要な舞台である、島木譲次(石原裕次郎)のレストランは、横浜港の新港埠頭、赤煉瓦倉庫と税関の中間くらいの場所に設定されています。レストランと線路と海と税関の位置関係から、そう判断できます。

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北原三枝の背後に横浜税関の塔が見える。この角度と、引き込み線の鉄橋(写真右端にわずかに見える)の位置で、オープンセットがつくられた場所がわかる。

税関のファサード(陸に背を向け、海に向かって建っている)をこのように真横から見るかっこうになり、線路と海に接する場所、というと、新港のはずれしかないという結論になります。

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ここはみなとみらい地区に接する場所で、みなとみらい同様、港湾施設としては無用になり、同時期に再開発されて(そのお披露目が横浜博覧会だった)、ご本尊の赤煉瓦倉庫(設計者の妻木頼黄=つまきよりなかは日本橋や横浜正金銀行、すなわち現在の神奈川県立博物館も設計した。国会議事堂を巡る辰野金吾との確執をはじめ、その事績は非常に興味深い)はショッピング・モール化し、付近も公園などになって、週末ともなるとおおいににぎわい、まさに隔世の感に打たれます。

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若かりし日、ガールフレンドと話し込んでいて、うっかり曲がるべき場所を通り過ぎてしまい、新港へと渡る万国橋にさしかかったとき、数人の港湾労働者に、そっちにいったって、なにもないぞ、いや、ひと気がなくていいけどな、と笑われました。

70年代はじめ、新港地区はふつうの人間が立ち入る場所ではなく、まだ正真正銘の港湾施設であり、それ以外のなにものでもありませんでした。『俺は待ってるぜ』が撮影された1957年と本質的な違いはなかったのです。現在の本牧のB、C、D埠頭あたりと同じようなものです。それがいまや横浜でも指折りのデート・コースとなり、日々若いカップルがうじゃうじゃ往来しているのだから、呆気にとられます。

もうひとつ、前回ふれたシーンで、ロケ地がわかるのは、早枝子(北原三枝)がたたずんでいた場所です。あれは山下公園に二カ所ある、テラスのように海に突き出した半円形のところでしょう。ただし、現在は、海に降りる階段はないので、ひょっとしたら、べつの場所かもしれませんが。

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したがって、そのシーンの直前、石原裕次郎が歩む道は、山下公園外の銀杏並木の下と想像されますが、こちらについては、そう断定できる視覚的手がかりは画面には登場しません。

舞台の説明はこのへんにして、以下、前回は冒頭だけになってしまったプロットを追います。

◆ ボクサーくずれにオペラ歌手くずれ ◆◆
人を殺したかもしれないという早枝子を、明日の新聞を見てから判断したほうがいい、と島木は諭し、彼女をレストランに泊まらせます。

翌日の朝刊にも夕刊にも殺人の記事はなく、早枝子は安心し、島木のレストランに仮寓することになる様子が、彼女が料理をテーブルに運び、調理の手伝いをするショットなどのモンタージュのなかで描かれます。

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翌日、あるいは翌々日ぐらいの設定でしょうか、二人は横浜の町に出かけ、ボクシングを見たり、(明白には描かれないが、たぶん)映画を見たりします。

早枝子に襲いかかろうとして花瓶でなぐられた男(波多野憲)が、二人を見かけてあとをつけ、早枝子が化粧室でひとりになったところを脅しますが、島木に見つかって、あっさり追い払われます。

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「横浜日」と読める。「横浜日劇」という映画館もあったが、これは日活映画だから「横浜日活」にちがいない。横浜日活は伊勢佐木町5丁目にあった。あのあたりには数軒の映画館があったが、ピカデリーでさえマンションになってしまい、昔日の面影はまったくなくなった。

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島木、早枝子それぞれの言葉の端々や、レストランの常連客である内山医師(小杉勇)の話から、徐々に二人の状況がわかってきます。

島木は元プロボクサーで、酒場でのケンカで相手を殴り殺した過去をもっています。兄が農園を経営するために二年前にブラジルに渡っていて、兄からの連絡がありしだい、彼も日本を離れようとしています。

いっぽう、早枝子は、オペラ歌手だったのですが、病気で喉を傷めてから声が出なくなり、そのとたんに、師であり、恋人であった男に弊履のごとく捨て去られ、いまはクラブ・シンガーをしています。彼女が花瓶で殴り倒した男は、そのクラブの経営者の弟でした。

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以上が前半のプロットというか、状況設定というべきでしょうか。こういう背景のなかから、後半にいたって一気に話は動きはじめます。

後半のプロットは次回ということにして、ここまでのところで、気になることを少々書きます。

◆ 横浜番外地 ◆◆
はじめに戻ってしまいますが、主人公の棲処、レストラン「リーフ」の位置は、じつにいいところを選びました。

現実には、『赤いハンカチ』の屋台のおでん屋同様、こんなところに店はつくれないでしょうし、たとえやっても、採算がとれないだろうと思いますが、しかし、物語世界としてはすばらしい選択でした。

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手紙の上書きは「横浜市中区新港町埠頭構内 レストラン・リーフ内 島木譲次」と読める。港湾施設などは、このように無番地であることがめずらしくない。

この世の外にヒーローを置き、同時にわれわれ観客を、日本ではない架空の場所、現実と地続きではない「ここではないどこか」へと連れて行くのは、ある種の映画の常套手段です。

小林旭の「渡り鳥」シリーズのように、あるいはそのインスピレーションとなった『シェーン』のように、たまたまある場所に仮寓した流れ者、というのは典型的なパターンですが(典型だからよくない、という意味ではない)、この『俺は待ってるぜ』は、その「仮寓」の仕掛けをじつに巧みに作り上げています。

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背中は港、タグボートやランチが近くを行き交い、貨物船が遠くに見えます。目の前は港への引き込み線で、しじゅう店の前を汽車(ディーゼルではないのに驚く。映画のための演出だったのか、それとも現実にもまだ汽車があのあたりを走っていたのか?)が貨車を引いて行き来しています。これほど浪漫的設定はちょっとほかに考えられないほどです。

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もうひとつ、主人公は日本には用はない、兄から連絡がありしだい、ブラジルに渡ると宣言しています。これによって、ヒーローは二重に日本の外に置かれることになります。

こういう仕掛けがなぜ必要だったのか、ということは、こうした歌舞伎でいうところの「世界」が好ましく感じられる人には説明不要でしょう。あの時代の日本の息苦しさに対する批評として、このような非日本的道具立てを、フランス映画のような映像で表現したにちがいありません。

いまでもそうかもしれませんが、とりわけあの時代には、観客に大いなる開放感、解放感を与えたに違いありません。70年代にテレビで再見したときでも、やはり「ここではないどこか」に遊ぶ感覚が、この映画の最大の魅力でした。

そうなるだろうとは予想していましたが、なかなか進まないまま、本日もそろそろ制限時間いっぱいです。

今回も、映画から切り出したスコアのサンプルをおきます。レストランで早枝子が働く姿をとらえたモンタージュの背景で流れる音楽です。この曲を聴いて、そうか、ウェスト・コースト・ジャズの時代だったか、と思いました。

サンプル 佐藤勝「Cookin'」

次回は、レストランのセットの構造と、今回ふれた横浜の町を歩くシークェンスの個々のショットを見る予定です。


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by songsf4s | 2011-09-17 23:37 | 映画
蔵原惟繕監督、佐藤勝音楽監督『俺は待ってるぜ』(日活)
 
しばらくご無沙汰していた日活アクションですが、今日から数回に分けて、蔵原惟繕の監督デビュー作『俺は待ってるぜ』を、音楽とロケーションを中心に見ていくことにします。

主演は石原裕次郎と北原三枝、jmdbによると、裕次郎にとっては14作目の映画出演、主演としては10作目ぐらいでしょうか。この前が『鷲と鷹』、このつぎが『嵐を呼ぶ男』(該当記事へのリンク一覧はこのページの一番下にもあり)となっています。裕次郎はもっともいい時代のとば口に立っていました。

日活アクションを取り上げるたびに、絵と音の両面でどれほどこのスタジオの産物が非日本的であったかということを書いていますが、その日活アクションのなかでも、この映画ほど日本を全面的に排除したものは、ほかに知りません。

蔵原惟繕はこのとき何歳だったのでしょうか、若い監督の衒い、気取りがファースト・ショットからみなぎって、見るものを圧倒します。

ひとつ間違うと悲惨なことになりかねないほど気負った絵作りですが、石原裕次郎、北原三枝という主役の柄と、横浜港周辺というロケ地のおかげで、みごとに「世界」を作り上げています。

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はじめのうち、水たまりが揺れていて、雨が降っているのだな、と思うのですが、「監督 蔵原惟繕」の文字とともに、揺れが収まります。雨がやんだのです。

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そして、さっきまで不定形の光の揺らめきであったものが、はじめて意味のある像を結ぶと、そこに「Restraurant Reef」というネオンサインの鏡像が浮かびます。高村倉太郎撮影監督による、蔵原監督のデビューへのお祝いではないでしょうか。

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つぎのショットは、大人になって一回目のとき(子どものときに見ているが、なにも記憶がない)、ギョッとしました。

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レストランと汽車とカメラの位置関係のせいでしょうか、すばらしい量塊感(massiveness)にため息が出ます。

このタイトルで流れる石原裕次郎唄う主題歌「俺は待ってるぜ」は、盤のものとは異なるので、サンプルにしました。

サンプル 石原裕次郎「俺は待ってるぜ」(映画ヴァージョン)

横浜港でレストランをやっている元ボクサーの島木(石原裕次郎)は、手紙を投函しにいった帰りに、夜ふけの海に向かってたたずむ女、早枝子(北原三枝)を見かけ、自殺ではないかと疑い、自分の店に連れ帰ります。

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早枝子は、問われるままに、わたしは人を殺したかもしれないと語りはじめます(殺しそうなった相手は、あとで、彼女のつとめるクラブの支配人で、ギャングのボスの弟とわかる)。

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この殺人無言劇の背景に流れる音楽もサンプルにしました。例によってフル・スコア盤は存在せず(佐藤勝作品集に一曲だけ挿入歌が収録されている)、したがってタイトルはわたしが恣意的につけたものですし、モノ・エンコーディングです。

サンプル 佐藤勝「Must Have Killed」

裕次郎のこのつぎの映画、『嵐を呼ぶ男』は、映画としての出来はさておき、スコアは驚くべきものだということを以前書きました。しかし、その直前に、もう、これだけの4ビート・スコアをやっていたわけで、日活畏るべし、というか、佐藤勝畏るべしというか、たいしたものです。

本日は、スコアの切り出しに時間を食われてしまったため、まだ物語は動いていませんが、残りは次回に。


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by songsf4s | 2011-09-16 23:59 | 映画
アダモの「ブルー・ジーンと皮ジャンパー」は青江三奈を予見したか
 
前回の「関連ありやなしや 夜霧のしのび逢い~霧のカレリア~ブーベの恋人」からのつづきで、まだヨーロッパ三界をさまよっています。今日はサルヴァトーレ・アダモです。

フランスの、といおうとしたのですが、それはたんなる印象で、イタリア生まれのベルギーのシンガー・ソングライター、と表現しているところがありました。シチリア島生まれだそうです。フランス語で歌い、フランスを中心に活躍したために、フランスのシンガーのように思っていましたが。

もっとも印象に残っているアダモの歌。

Adamo - Inch Allah


当時の雑誌に「アラーの御心のままに」てな意味であると書かれていました。いちおう調べましたが、やはりそのような意味らしく、昔の音楽雑誌もたまには本当のことを書いたようです。

ちょっと話は飛びますが、多くの方がご記憶であろう、60年代に大ヒットした歌謡曲があります。

青江三奈 - 伊勢佐木町ブルース


あたくしが記憶している歌謡曲はこのへんまでで、あとはうちの母親のR&Bの知識といい勝負ができる程度のことしか知りません。いや、べつに昔の歌謡曲のほうがよかったとか、そういう意味ではなく、知っているか否かというニュートラルなことをいっているだけです。

それで、伊勢佐木町ブルースを聴いたときに、なんだかはじめてのような気がしなくて、どこで聴いたのだろうかと考え込みました。当時は解答にたどり着けず、ずっとあとになって、そうか、と思ったのがこの曲。

Salvatore Adamo - En Blues Jeans et Blouson de cuir(ブルー・ジーンと皮ジャンバー)


法廷での争いになったら勝負は写真判定かもしれませんが、似ているの、似ていないのという無責任な評定なら、そっくりじゃん、と断定していいでしょう。

「伊勢佐木町ブルース」というのは、12小節のbluesではなく、淡谷のり子の、というか、服部良一の「別れのブルース」あたりに端を発する、日本歌謡界でいうところの「ブルース」の典型のように感じるのですが、それがストレートにシチリア生まれでフランスで活躍したベルギーの歌手の大ヒット曲に接続してしまうというのは、なんとも奇妙というか、当然というか、不可解です。

これは「いただいた」とかなんとかいう卑小なレベルを超えて、民族のメンタリティーの近縁性として捉えるべきのような気がします。ふつうにやっていても、似てしまうのだ、と。

いえ、ここで改宗しちゃったりはしません。ロックンロールは奇蹟だったのだ、あれがなければ、われわれは哀愁マイナー世界しか知らずに儚い一生をすごすはめになったであろう、なんというリトル・リチャードの恩寵、畏るべきチャック・ベリーの祝福、インシャラー、と思うわけです。

ここから先は付けたりです。さらに後年、スタンダード化した有名曲のオリジナル・ヴァージョンにたどり着いたとき、おや、と思いました。

Little Willie John - Fever


うっそー、アメリカにも伊勢佐木町ブルースがあったのかよ、と思いましたね。いや、アホな話ですみません。べつにどうだというのではなく、そう思ったというだけのことでした。


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by songsf4s | 2011-09-14 23:59 | 60年代