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2011年4~6月の記事タイトル一覧
加山雄三「ブーメラン・ベイビー」映画ヴァージョン(東宝映画『海の若大将』より)[2011-04-01]
シャーラーララララ、リヴ・フォー・トゥデイ、アンド・ドン・ウォーリー・バウ・トゥマロウ[2011-04-02]
更新のお知らせ(追記1、追記2アリ)[2011-04-05]
A Little Girl from Little Rock(ハワード・ホークス監督『紳士は金髪がお好き』より)[2011-04-06]
散歩ブログ更新[2011-04-08]
オーヴァーサンプルのUncle John's Bandをダウンサンプルする[2011-04-15]
HDCD版のFriend of the DevilとBrokedown Palace[2011-04-16]
フェンダー・ベース・プレイの夜明け その1──コニー・スミスとジョー・オズボーン [2011-04-18]
フェンダー・ベース・プレイの夜明け その2──ジョー・オズボーン[2011-04-19]
フェンダー・ベース・プレイの夜明け その3──ジョー・オズボーン[2011-04-21]
フェンダー・ベース・プレイの夜明け その4──ジェット・ハリス[2011-04-22]
Bye Bye, Baby (ハワード・ホークス監督『紳士は金髪がお好き』 その2)[2011-04-23]
リニューアル作業のお知らせとグレイトフル・デッドのルーツ、ではなく、ブランチ探し序曲[2011-04-27]
グレイトフル・デッドのブランチ探し その2 I Foght the Law[2011-04-28]
グレイトフル・デッドのブランチ探し その3 デッド、ビートルズを歌う[2011-05-02]
ハンク・マーヴィンと十人のインディアン(にはちょっと足りなかった)[2011-05-04]
更新のお知らせ[2011-05-05]
グレイトフル・デッドのブランチ探し その4 It's All Over Now[2011-05-07]
グレイトフル・デッドのブランチ探し その5 I've Got a Mind to Give Up Living [2011-05-08]
京南大学入学──東宝映画『エレキの若大将』のスコア[2011-05-11]
To Ryan Seとは俺のことかと「通りゃんせ」いい──ポール・マークのエキゾティカ・ジャポネ[2011-05-12]
宵待ち草のやるせなさ、といって、俺のことではなし[2011-05-13]
フジヤマ・ママが芸者ツイストを歌うとき[2011-05-15]
カール・スティーヴンズ(チャック・セイグル)のロッキン・オーケストラ[2011-05-17]
Remembering Tommy Tedesco 1: WhisperingおよびFrenesi[2011-05-18]
ここに幸あり、どこにあり──再びポール・マークのエキゾティカ・ジャポネ[2011-05-19]
更新のお知らせとトミー・テデスコ少々[2011-05-21]
Remembering Tommy Tedesco 2: Out of Limits (The Marketts)[2011-05-22]
更新のお知らせをしながらバターフィールド・ブルーズ・バンドを聴く[2011-05-24]
散歩ブログ更新のお知らせ+now listening: Hal Blaine[2011-05-26]
Dancing in the Street伝説とヒッツヴィル・スタジオの床[2011-05-27]
宵待草、ラテンでやるせなさも中ぐらい哉──またもエキゾティカ・ジャポネ[2011-05-28]
祝 オフィシャル・ゲーリー・チェスター・ウェブサイト誕生[2011-05-29]
人もすなるグランド・ファンクなるものを吾もせむとや[2011-05-30]
Dancing in the Streetの各種音源まとめ、および、ラウド&へヴィーはバブルガムの荒野を目指すか?[2011-05-31]
グレイトフル・デッドの早死にトラック群 その1 Live/Deadの生き死にの問題[2011-06-01]
グレイトフル・デッドの早死にトラック群 その2 Europe '72のクールな熱さ[2011-06-02]
グレイトフル・デッドの早死にトラック群 その3 死者の見る音の夢 Europe '72からWake of the Floodへ[2011-06-03]
グレイトフル・デッドのブランチ探し その6 Rockin' Pneumonia and the Boogie Woogie Flu[2011-06-04]
祝 オフィシャル・ゲーリー・チェスター・ウェブサイト誕生 その2[2011-06-10]
トラフィックのLive at Santa Monicaを聴く[2011-06-12]
トラフィックのベース・プレイヤーとしてのスティーヴ・ウィンウッドのタイム[2011-06-13]
いまだに見つからないアンドルーズ・シスターズを確実に聴く方法[2011-06-14]
祝オフィシャル・ゲーリー・チェスター・ウェブサイト誕生 その3 Going Out of My HeadとBrown Eyed Girl[2011-06-18]
祝 オフィシャル・ゲーリー・チェスター・ウェブサイト誕生 その4 ニール・セダカ篇[2011-06-19]
祝 オフィシャル・ゲーリー・チェスター・ウェブサイト誕生 その5 ブリル・ビルディング周辺[2011-06-20]
祝 オフィシャル・ゲーリー・チェスター・ウェブサイト誕生 その6 リーバー&ストーラー篇[2011-06-21]
祝 オフィシャル・ゲーリー・チェスター・ウェブサイト誕生 その7 ガール・グループス&シンガー[2011-06-23]
祝 オフィシャル・ゲーリー・チェスター・ウェブサイト誕生 その8 フィル・スペクター/クリスタルズ篇[2011-06-24]
祝 オフィシャル・ゲーリー・チェスター・ウェブサイト誕生 その9 バート・バーンズ篇[2011-06-25]
祝 オフィシャル・ゲーリー・チェスター・ウェブサイト誕生 その10 インストゥルメンタル篇[2011-06-27]
祝 オフィシャル・ゲーリー・チェスター・ウェブサイト誕生 その11 ドゥーワップ篇[2011-06-28]
祝 オフィシャル・ゲーリー・チェスター・ウェブサイト誕生 その12 ジョン・デンヴァーとジム・クロウチ[2011-06-29]
ギター・オン・ギター11 アンドルー・ゴールド篇[2011-06-30]

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by songsf4s | 2011-06-30 23:59 | その他
ギター・オン・ギター11 アンドルー・ゴールド篇

同じものばかりやっていると疲れるので、今日はまた箸休めとして、久しぶりに「ギター・オン・ギター」シリーズを引っ張り出します。

ご存知ない方のために駄言を弄すると、「ギター・オン・ギター」シリーズとは、読んで字の如し、ギター・アンサンブルの面白いものを並べてみようというだけのものです。

もうすこしスペシファイすると、ジャズのほうでは、リズム・ギターないしはセカンド・ギターというものを使わないのがふつうですが、あえて複数のギターでやっているトラックを探す、というのがひとつ。ジョニー・スミスやタル・ファーロウのトラックはそういう趣旨で選びました。

ポップ/ロック系では、複数のギターを使うのは当たり前なので、きちんとアレンジされたギター・アンサンブルを選ぶというのが原則です。もっとも、オールマンズなどは、ドゥエイン・オールマンが生きていた時代にはゆるいアレンジしかしていませんでしたが、そのあたりは、わたしの好みに合うか否かという問題にすぎないので、ほっといてくれ、です。

なお、過去の「ギター・オン・ギター」については、このページのいちばん下のメニューをご覧ください。

◆ セッション・ワーク ◆◆
今回はアンドルー・ゴールドです。以前、このシリーズでとりあげたトッド・ラングレンと並ぶオールラウンド・プレイヤーであり、そのせいなのか、あるいは関係ないのか、トッド同様、アンドルー・ゴールドもギターを重ねることを好みます。

では露払いとして、アンドルー・ゴールドの代表的セッション・ワーク、てえんで、リンダ・ロンシュタットのあれこれをもってこようとしたのですが、愕いたことに、スタジオ録音はほとんどなくて、かろうじてこの曲だけ発見しました。オリジナルはむろんバディー・ホリー、クォリーメン時代のジョン・レノンのカヴァーもいまではおなじみです。

リンダ・ロンシュタット That'll Be the Day


アンドルー・ゴールドとワディー・ワクテルがリードをシェアしています(と記憶している。もう手元に盤がないので確認できない)。残念ながら、どっちがどっちかはわかりません。ソロで先に行くほうがゴールドだろうと思いますが。

これだけではあんまりなので、やむをえず、サンプルをアップしました。そんな面倒なことをしないですむだろうという見込みだったのですがねえ。

サンプル Linda Ronstadt "When Will I Be Loved" (feat. Andrew Gold on guitars)

これも手元に盤がないのですが、リードはアンドルー・ゴールドのダブルだったと思います。ひょっとしたら、すべてのギターがゴールドのプレイだったかもしれません。五本ぐらいでしょうか。ソロだけでなく、裏でちょっと鳴らしているオブリガートなんかも、アンドルー・ゴールドのアレンジャーとしてのセンスがあらわれています。こういう現場監督がいると、プロデューサーは左団扇でしょう。わたしでも務まってしまうにちがいありません。「よきにはからえ」といっていれば、シングル曲がin the canです。

わたしもその仲間ですが、基本的に女性シンガーは聴かない、なんていう方がいらっしゃいます。しかし、ギターに関するかぎり、リンダ・ロンシュタットの盤は、ボビー・ジェントリーのつぎぐらいに面白いと思います。ドラムがウームのものが多いのが珠に瑕ですが……。

◆ ソロ・ワーク ◆◆
アンドルー・ゴールドのアルバム・トラックなど、クリップがあるかと心配だったのですが、ひとつだけ候補にあげていたものがありました。モーリス・ウィリアムズ&ザ・ゾディアックスの大ヒットにしてスタンダード。わたしはホリーズのカヴァーから入りましたが、70年代にはジャクソン・ブラウンのカヴァーもありました。

アンドルー・ゴールド Stay


Lonely Boyでとんでもないアクロバットをやって、わたくしをして、驚愕の記事を書かしめた人なので、この曲の間奏も、たんにギター・プレイとして面白いだけでなく、リズム・アレンジがシャープで、ハッとさせられます。ギターもピアノも非常にパーカッシヴに扱っていて、指と脳をきちんと連携させて音楽を作っていたこの人の特徴があらわれています。指を動かせば音楽になると思ったら大間違いなんだぜ>エ×ッ×・ク×プ×ン。

予定していたもう一曲はクリップがないようなので、サンプルで。こんどはエクサイターズのカヴァーというか、やはりマンフレッド・マンのビルボード・チャート・トッパーのカヴァーというべきでしょうね。

サンプル Andrew Gold "Doo Wah Diddy Diddy"

すごく短い間奏ですが、プレイで聞かせるつもりは毛頭なく、ギターを重ねたサウンドのよさを前面に押し立てています。間奏のあとのコーラスの尻尾で、また一瞬だけギター・オン・ギターを使っています。こういうぐあいに、手間を惜しまず、ディテールに凝る人は大好きです。

ギター・オン・ギターではないのですが、ついでなので、前述したLonely Boyのライヴを貼り付けておきます。

アンドルー・ゴールド Lonely Boy (live)


ワッハッハ。ギターがおっかなびっくりで弾いていて、大笑いしました。彼はこの曲のトリックを知っているから、用心に用心を重ね、つねにリズムを意識して体を揺らしているにちがいありません。

なにが問題かというと、この曲で表拍に聞こえるものはじつは裏拍で、裏拍に聞こえるのはじつは表拍なのです。コーラスのあとで、それが明らかになるので、そのときに裏表ひっくり返して弾いたりすると、すごくみっともないことになります。

ピアノ・コードは一見すると表拍を弾いているように聞こえますが、これは裏です。同様に裏を弾いているように聴こえるスネアのサイドスティックとギター・カッティングは表です。だから、彼は裏表を間違えないように必死になっているのです。油断すると、ピアノに引きずられて簡単にひっくり返ってしまいますから。なんとも厄介な曲です。

リンダ・ロンシュタットのトラックにはまだいくつか、アンドルー・ゴールドのギター・オン・ギターがフィーチャーされているのですが、そのあたりはご自分の耳でどうぞ。


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リンダ・ロンシュタット
Greatest Hits 1 & 2
Greatest Hits 1 & 2


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by songsf4s | 2011-06-30 23:43 | Guitar Instro
祝 オフィシャル・ゲーリー・チェスター・ウェブサイト誕生 その12 ジョン・デンヴァーとジム・クロウチ
 
ゲーリー・チェスターにドラムを学んだボブ・シアンチという人の本に、たしか、70年代に入ってチェスターは、セッション・ワークが少なくなり、ドラム教師のほうに重心を移したと書かれていました。

管ではプラズ・ジョンソン、ギターではトミー・テデスコのように、数十年にわたって第一線で活躍したプレイヤーがいますが、ドラムは時代の流れに足をとられる楽器で、どれほどすごいプレイヤーでも、ファースト・コールでいられる期間は十数年というところではないでしょうか。

階段を上ってスタジオに場所を得、長いツアーから解放されたのもつかの間、スタジオ・エースの座を若いプレイヤーに奪われたドラマーは、ふたたびツアーに出ることになります。アール・パーマーもハル・ブレインも、エースではなくなってからツアーで日本を訪れています。

トミー・テデスコは、自作の歌(!)で、何人かのプレイヤーの実名をあげ、俺は生き残ったといっていましたが、その曲(I Used to Be a Kingというようなタイトルだったと思う)のなかで「ハワード・ロバーツはギター教師になった」といっていました。つまり、第一線から退いたのだというニュアンスです。テデスコとしては、スタジオにいてこそ、という思いが強かったのでしょう。

ゲーリー・チェスターも、ハワード・ロバーツ同様、スタジオ・プレイヤーとしての仕事が減っていき、結局、教師になる道を選んだのでしょう。今日は、彼のプレイヤーとしての晩年の仕事を少々聴きます。

ハル・ブレインに引導を渡し、スタジオからツアー人生へと逆戻りさせた張本人であるジョン・デンヴァーは、初期はNYでゲーリー・チェスターのドラムで歌っていました。Sunshine on My ShoulderやCountry RoadやRocky Mountain Highといったヒット曲は、チェスターの時期に録音されていますが、ドラムは入っていないので、べつの曲をどうぞ。

ジョン・デンヴァー The Prisoners


いくらアコースティックな曲であっても、そこはやはり70年代の録音、50年代終わりや60年代はじめの「叩かせてもらえない」状態とはずいぶんちがいます。こういうタイプの曲でもスネアのハードヒットが当たり前になったことに、時代の違いが如実にあらわれています。

もうひとつ、アルバム・トラックを。

ジョン・デンヴァー Season Suite: Spring


ジョン・デンヴァーという人は、思いのほか、ドラマーを意識していたのかもしれません。ハリウッドに行って録音することにした動機の一部はハル・ブレインではないかという気がします。ざっとディスコグラフィーを見たかぎりでは、全盛期には、ダメなドラマーのアルバムはありません。

Annie's Songのアルバムから、ハル・ブレインやジム・ゴードンが参加し、やがて高いギャランティーを払ってハルをスタジオから引きずり出します。トラップにはすでにハーブ・ラヴェルがいたので、当初、ハルはパーカッションをプレイしました。じつにぜいたくなバンドです。

こういうツアー・バンドを組み、やがて、ロン・タットのいたエルヴィスのバンドを居抜きで継承するのだから、ドラマーの趣味が一貫しています。そういう人のアルバムは聴いていて飽きないものです。いえ、わたしはジョン・デンヴァーのファンではないので、知りはしません。聴いてみようかな、と思っただけです。

◆ Badder than bad bad Leroy Brown ◆◆
同じ時期に、いくぶんかサウンドに近似するものがあった(といっても、アコースティック・ギターを多用したところが似ているだけだが)ジム・クロウチも、しばしばゲーリー・チェスターをストゥールに迎えています。

ジム・クロウチ Bad Bad Leroy Brown


イントロから文句なしのグルーヴで、トラックに関するかぎり、間然とするところのない出来です。ジョン・デンヴァーは買ったことがありませんでしたが、この曲が収録されたジム・クロウチのアルバム、Life and Timesはリリース当時、以前、詳しく書いたことがある、1973年の「LP大密輸作戦」で買いました。

なんせ密輸品なので、邦貨にしてわずか750円程度と安いものだから、あまり面白くない数枚は友だちにあげてしまいました。その一枚がこれでした。いま聴いても、バンドには問題がなく、要するに歌が気に入らなかったのです。もっとスペシフィックにいえば、ジム・クロウチの発声スタイルが、じつに非ツボにはまり、これはあかんと思ったのでした。

とくに、Leroy Brownのときの発声は好みません。バンドはいいのに! チェスターも文句ありませんが、このベース(三人が併記されていて、だれだかわからないが)は、彼が組んだプレイヤーのなかでもっともタイムがいいのではないかと思います。ピアノもうまくて、ほんとうにみごとなバッキング・トラックです。

つぎの曲のほうが、チェスターはあまり聞かせどころがありませんが、歌い方としては容認できます。

ジム・クロウチ Operator


ギターがめっぽううまくて、惚れます。ドイツ系なのでしょうか、読めないのですが、Maury Muehleisenという人がリードのようです。このOperatorが収録されたサード・アルバム、You Don't Mess Around with Jimは、幸いにしてベースはひとりしか名前が挙がっていません。このトミー・ウェストというベースもけっこうなタイムです。

ちょうどこのころから、ラス・カンケルやジョン・グェランといったタイムの悪いドラマーがハリウッドのスタジオを闊歩するようになり、質の悪い音楽をたくさん生み出すようになりますが、いっぽうでNYではルネサンスがはじまっていたのだなと、今にして思います。

ジム・クロウチの5枚目のアルバムでは、リック・マロッタもプレイしていて、ハリウッドよりずっとマシです。まあ、スティーヴ・ガッドなんかラス・カンケルとおっつかっつで不快きわまりありませんが、マロッタのタイムは精確です。この時期、ジム・ゴードンかジム・ケルトナーを呼べなかったら、次善はマロッタでしょう。わたしだったら、この三人以外のドラマーではスタジオに入りません。

ドラムは、極論するならテクニックなどどうでもいい楽器です。だいじなのはグルーヴだけです。むろん、しばしばいいグルーヴとテクニックが同居することは、ジム・ゴードンやジム・ケルトナーを見れば明らかですが、でも、純理論的には、テクニックはなくてもオーケイ、グルーヴがダメならテクニックなどまったくの無意味なのです。タイムの悪いドラマーがめったやたらにスティックを振り回せる運動能力をもっているというのは、最悪の人格結合というべきでしょう。

ジャズのほうに多いのですが、小手先のテクニックにだけ着目して、名ドラマーなどというから、話がわからなくなるのであって、ドラムの根幹はリズムの表現にあります。チェスターはめったにテクニックを披瀝することはありませんが、スタジオ・エースになるためのもっとも重要な条件である、すぐれたタイムをもっていることが、ジョン・デンヴァーやジム・クロウチのトラックに刻み込まれています。

当時は、この曲がいちばん嫌な感じがしませんでした(変な表現で申し訳ないが、つまり、どれも好きではないなかで、これはあまり不快ではなかったにすぎないということ)。

ジム・クロウチ One Less Set of Footsteps


この曲もギターとベースがうまくて、ううむ、です。録音もけっこうで、やはり、NYが長い低迷から脱したことがひしひしと感じられます。あたくしは、あのころ、NY産の音楽にはあまり興味がなかったのですが。

ジム・クロウチ I'll Have to Say I Love You in a Song


この曲も、喉の奥で声がつぶれた瞬間の発声がやはり苦手ですが、でも、トラックはすばらしいの一言。年をとって、こういうドラム・サウンドとプレイが好きになりました。子どものころならそんなことは考えませんでしたが、いまなら、スネアはこういう風に鳴らしたいと思います。

ベースのタイムとチェスターのキックのタイムも、きれいなマッチングで、こういう風にプレイできたら楽しいだろうと思います。羽織の裏地に凝るような、地味なうまさにうなりました。こういう風に感じるのは年をとったおかげだなあ、とがっかりしつつ、今回はおしまい。


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ジョン・デンヴァー
Rocky Mountain High
Rocky Mountain High


ジム・クロウチ
Bad, Bad Leroy Brown -The Definitive Collection
Bad, Bad Leroy Brown -The Definitive Collection
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by songsf4s | 2011-06-29 23:25 | ドラマー特集
祝 オフィシャル・ゲーリー・チェスター・ウェブサイト誕生 その11 ドゥーワップ篇
 
まずは、前回のインストゥルメンタル篇に入れておくべきだったトラックを補足しておきます。

ウィリー・ボボ Hip Monkey


ウィリー・ボボはパーカッション・プレイヤーなので、チェスターはトラップのみをプレイしているのでしょう。チェスターのドラミングはなかなかけっこうなのですが、全体のサウンドとしては味が足りない、不満の残るトラックです。

同じアルバムからもうひとつクリップがあがっていたのでそれも貼り付けておきます。

ウィリー・ボボ Tell Like It Is


◆ ブラック・ドゥーワップ ◆◆
このゲーリー・チェスター・シリーズの7回目、ガール・グループの巻で、ガール・グループはチェスターの主たる仕事場のひとつだと書きましたが、ガール・グループが勃興する以前の彼の主たるフィールドは、ドゥーワップだったといっていいでしょう。

まずは、ドゥーワップ・アンソロジーにはかならずといっていいほど採られる大ヒットにしてスタンダード。ただし、ドラムはメトロノーム状態ですが。

クレスツ Sixteen Candles


つぎもまた大ヒットですが、またしてもドラムはタイム・キーピングをするだけといったプレイです。

ファイヴ・サテンズ In the Still of the Night


こういうミディアム・スロウの曲というのは、ほかにやりようがないのでしょう。

つぎはヒット曲ではありませんんが、ドラムを聴くならやっぱりアップテンポでなくては、といいたくなります。

エドセルズ Shake Shake Sherry


◆ ライフタイム・ベスト・トラック ◆◆
ドゥーワップというのは、通常、コーラス・グループによるものですが、次の曲なんぞは、ソロ・シンガーによるホワイト・ドゥーワップといっていいのではないでしょうか。子供のとき、大好きだった曲です。

ジョニー・シンバル Mr. Bass Man


ベースを歌っているのはロニー・ブライトというシンガーです。いくつかのドゥーワップ・グループで歌い、60年代終わりにはコースターズに加わったということです。

この曲がヒットした1963年、わたしは小学校四年生でしたが、いかにもそれくらいの年齢の子どもが好みそうな曲だと、久しぶりに聴いて思いました。

あとになって、子どものときに好きだった曲のドラマーは、ハル・ブレインだったり(サム・クックのAnother Saturday Night)、アール・パーマーだった(ボビー・ヴィーのRubber Ball)ことがわかって、なんだ、まったく進歩していないのか、と呆れます。だから、Mr. Bass Manのドラムがチェスターであっても、これはもう神の摂理、やっぱりな、です。

しかし、今回、多数のトラックを再聴しましたが、これはチェスターのライフタイム・ベストといっていいのではないでしょうか。三つの次元ですばらしいプレイだと思います。

第一の次元はグルーヴ。子どもが聴いても年寄りが聴いても、じつに気分が昂揚するノリで文句がありません。フラム(左右のスティックを微妙にずらして、ほぼ同時にヒットするプレイ)によってグルーヴを作っていると感じます。

そういうプリミティヴなレベルより一段上のメタなレベル、ドラミング設計については、このシリーズで聴いたトラックのなかでもっとも複雑で、譜面として非常にすぐれています。

チェスターは、うまいだけでは十分ではない、創造的でなければだめだ、といっていたそうですが、それを完璧に実践したのはハル・ブレインのほうです。ハルが生み出したドラム・イディオムは無数にあり、将来、歴史的跡づけが精緻になれば、彼がオリジネイターだったことが証明されるリックが山ほどあるでしょう。プレイよりもドラム譜作曲者としての才能を評価される可能性が高いと思います。彼よりうまいドラマーはその後たくさん出現したけれど、これほど多くのドラム・イディオムを創造した変革者は空前絶後だということです。

それに対して、おそらくNYのプロデューサーが保守的だったからでしょうが、チェスターはメトロノームのようにシンプルなプレイばかりやらされています。ハル・ブレインのようなリック創造者の側面は感じません。

そのなかで、唯一、このMr. Bass Manは、譜面だけでも面白いと感じます。むろん、ヴァースの空の小節のプレイではありません。何度も出てくるストップ・タイムでのスネアとタムタムのコンビネーション・プレイのことです。

ハル・ブレインはじつに無数のパターンを考案していますが、こういうものはハルもやっていません。ヴォーカルのリズムに合わせた結果でしょうが、たぶん、チューニングの異なる二つのタムタムを使ったフラムが非常にいい響きですし(ハル・ブレインはこれを「ドップラー効果」といった)、プレイもきっちりやっていて、響きの面白さを十全に生かしています。

最後に、すでに述べたも同然ですが、チューニング、サウンドについても、文句がありません。ドラムにかぎらず、下手な人は音の出が悪いものです。うまいドラマーはチューニングがよく、かてて加えて、スティックワークがいいので、きれいな音が出るものなのです。

置き場所がなくなってしまったのですが、せっかくリストアップしておいたので、ディオン抜きのベルモンツのトラックを、コーダとして貼りつけておきます。

ベルモンツ Diddle Dee Dum (What Happens When Your Love Has Gone)



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ウィリー・ボボ Let's Go Bobo
レッツ・ゴー・ボボ
レッツ・ゴー・ボボ


ジョニー・シンバル(MP3ダウンロード)
Mr. Bassman (Alternate)
Mr. Bassman (Alternate)


ジョニー・マエストロ&ザ・クレスツ
Johnny Maestro & The Crests For Collectors Only
Johnny Maestro & The Crests For Collectors Only


ファイヴ・サテンズ
Five Satins Sing Their Greatest Hits
Five Satins Sing Their Greatest Hits


ライノ・ドゥーワップ・ボックス
Doo Wop Box
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by songsf4s | 2011-06-28 23:48 | ドラマー特集
祝 オフィシャル・ゲーリー・チェスター・ウェブサイト誕生 その10 インストゥルメンタル篇
 
震災からこのかた、映画をやっていないので、とりあえず、スコアのほうに重心をおく形でなにかやってみようと、重い腰を持ち上げ、一本だけ見ました。あと二、三本みたら、そのシリーズにとりかかろうと思っています。伝統的なオーケストラ・スコアのパラダイムからの脱出がポイントです。

また、何回にも分けて微細に検討したりするせいで、気楽に映画のことを書けなくなるので、軽い映画を一、二回でさっと軽く書く、というのもやろうかと考えています。そのようなレベルのものなら、見るのも楽ですし。

このところずっと、アクセス・キーワードは成瀬巳喜男関係が多く、リクエストをされているかのごとくなので、『稲妻』『女が階段を上るとき』『放浪記』『山の音』のうちのいずれかを書こうとも考えています。

あとは白木マリの映画、そして、久しぶりの日活アクションも控えています。やはり、日活を書くのがいちばん気分が昂揚します。

◆ ファランテ&タイチャー ◆◆
ゲーリー・チェスター・シリーズは、このところ、大物がつづいたので、今日は箸休めとしてインストゥルメンタルものを並べます。

まずはスウィング時代からの生き残り、トランペット・プレイヤーにしてビッグ・バンド・リーダー、レス・エルガートが時代に合わせて若向きにシフトしたトゥイスト・アルバム、The Twist Goes to Collegeから。

レス・エルガート Frenesi


Frenesiには山ほどヴァージョンがありますが、当家ではかつて、トミー・テデスコのものをサンプルとしてアップしました。それを再度、貼り付けておきます。

サンプル Tommy Tedesco "Frenesi"

もう一曲、レス・エルガートの同じアルバムから、これまたおなじみの曲のトゥイスト・アレンジ。

レス・エルガート In the Mood Twist


1962年のエルガートのヴァージョンは、おそらく、1959年のアーニー・フィールズのロックンロール・ヴァージョンに刺激を受けたものでしょう。そちらも貼り付けておきます。

アーニー・フィールズ・オーケストラ In The Mood


こちらのアレンジとドラムはアール・パーマーです。じっさい、アーニー・フィールズは名前だけで、主体となったのは、アール・パーマー、プラズ・ジョンソン、ルネ・ホールといった、あの時代のハリウッドのエース・スタジオ・プレイヤーたちだったようです。

◆ ヴィニー・ベル ◆◆
ちょっと時期が跳んで、つぎは1969年のヒットです。Exodus(映画『栄光への脱出』)のテーマのカヴァーで知られるピアノ・デュオ、ファランテ&タイチャーのもうひとつの大ヒット曲。これまたOSTをさしおいてのヒットでした。

ファランテ&タイチャー(ヴィニー・ベル=シタール・ギター) Midnight Cowboy


映画では、ギターになにかイフェクトをかけてやっていますが、ファランテ&タイチャーのカヴァーでは、ヴィニー(ヴィンセント)・ベルがエレクトリック・シタールをプレイしています。シタール・ギターの音もヒットの要因になったのでしょう。

そのヴィニー・ベルのエレクトリック・シタールをフィーチャーしたアルバム、Pop Goes Electric Sitarの全曲を、ほんのすこしずつダイジェストしたむちゃくちゃなクリップがあったので貼り付けておきます。

ヴィンセント・ベル digest from Pop Goes Electric Sitar


これではドラムを聴くというわけにはいかないので、このアルバムからサンプルをひとつアップしました。リー・ヘイズルウッド作で、1966年にシナトラ親子が歌ってビルボード・チャート・トッパーになったあの曲。

サンプル Vincent Bell "Somethin' Stupid"

オリジナルのシナトラ盤ではドラムはハル・ブレインでした。同じ時代を生きたというだけのことなのですが、チェスターの仕事はやはり、いやでもアール・パーマーやハル・ブレインと比較されてしまいます。

◆ アル・カイオラとスリー・サンズ ◆◆
ヴィニー・ベルより前の世代のNYのエース・セッション・ギタリスト、アル・カイオラのトラックでも、当然、ゲーリー・チェスターはプレイしています。もっとたくさんあるはずですが、ディスコグラフィーにはほんの一握りしかリストアップされていないので、この曲を。

サンプル Al Caiola "Never on Sunday"

このTuff Guitars Tijuana Styleというアルバムでは、カイオラはほとんどすべてのトラックでレズリー・ギターをプレイしています。いつものカイオラのトーンのほうがいいと思うのですが、どんなアーティストも、ときにはチェンジアップが必要なので、やむをえないところです。

最後の曲。スリー・サンズはギター・バンドではありませんが、リード楽器のひとつはギターです。

サンプル The Three Suns "Love Letters in the Sand"

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スリー・サンズの初代ギタリストは、のちにドン・カーシュナーとオールドン・ミュージックを設立するアル・ネヴィンズですが、このときはだれかのべつの人でしょう。ネヴィンズがプレイしなくなってからは、バッキー・ピザレリやほかならぬヴィニー・ベルなど、さまざまなプレイヤーが入れ替わり立ち変わり録音したようです。

NYのギター・インストというと、もうひとり、トニー・モトーラという大物がいます。モトーラのトラックでもチェスターはプレイしているはずですが、いまのところ、どのアルバムでプレイしたかは判明しません。いずれわかるのではないかと期待しています。


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ファランテ&タイチャー
Ferrante & Teicher - Greatest Hits
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by songsf4s | 2011-06-27 23:48 | ドラマー特集
祝 オフィシャル・ゲーリー・チェスター・ウェブサイト誕生 その9 バート・バーンズ篇
 
例によって、散歩ブログも更新しました。

若いツバメ、ウェディング・ドレス仕立てのアジサイ、ねむの木

どうやら、このようにお知らせすると、当家のお客さんの50人におひとりぐらいはあちらを訪問してくださるようで、ありがたいことです。

◆ Shake It Up Baby ◆◆
バート・バーンズ(またはラッセル・バーンズ、バート・ラッセルなど)の名前をご存知ない方でも、この曲はご存知でしょう。

アイズリー・ブラザーズ Twist and Shout


トップノーツによるオリジナルはフィル・スペクターがプロデュースしましたが、作者自身がプロデュースしたこのアイズリーズ・ヴァージョンではゲーリー・チェスターがストゥールに坐りました。

わたしはビートルズのヴァージョンから入ったので、あとからこれを聴いたときは、かなりがっかりしました。この程度かよ、とジョン・レノンのレンディションがすばらしかったことを再認識しました。あたりまえです。先行ヴァージョンのほうがすごかったら、そちらがビートルズ以上にビッグになっていたにきまっています。

しかし、公平にいって、ビートルズより数段軽いアイズリーズ・ヴァージョンは、フィル・スペクターがプロデュースしたオリジナルにくらべればずっとビートが重いのです。

トップ・ノーツ Twist and Shout


改めて並べてみて、これはフィル・スペクターにとって、ちょっとしたレッスンになったのではないかと思いました。この落差による位置エネルギーの蓄積が、ハル・ブレインという豪腕健脚に出会って、ロネッツのBe My Babyのビートを生む結果になったのではないでしょうか。わたしが二十一歳で、フィル・スペクターだったら、この失敗を肝に銘じ、いつの日か、ヘヴィー・バックビートで捲土重来を果たすと誓ったでしょう。

耳タコでしょうが、この2ヴァージョンを聴いたあとでは、また異なった展望が開けるにちがいないので、THE REAL THINGも貼り付けておきます。

ビートルズ Twist and Shout (remastered stereo)


十二歳の子どもがショックを受けるのはどのヴァージョンか、考えるまでもないでしょう。どのヴァージョンがもっともソウルフルであるかも同断。

◆ Tell Him ◆◆
バート・バーンズがどういう人物かをご紹介するために、有名な曲のたいしたことのないヴァージョンから入ることになってしまいましたが、つぎは大ヒット曲です。この日のために、「祝 オフィシャル・ゲーリー・チェスター・ウェブサイト誕生 その6 リーバー&ストーラー篇」のときも、「その7 ガール・グループス&シンガー」のときも、取り上げずにすませたのです。

バート・バーンズ作、ジェリー・リーバー&マイク・ストーラー・プロデュース、ゲーリー・チェスター・オン・ドラムズ。

エクサイターズ Tell Him


山ほどある同じクリップのなかから最善のものを選びました。ほかはノイジーです。ヴィデオGirl Groupsでも、このプロモーション・フィルムが使われていました。なんで白熊なんだよー、ですが。

チェスターのプレイがどうのという以前に、いかにもこの時代のNYのグルーヴという感じで、わたしの場合、このあたりは後追いなのですが、無意識のうちにこういう音が体に染み込んでいたのだなと思います。わたしよりちょっと上の世代なら、こういうのは無条件でOKでしょう。

チェスターは一小節おきに四拍目をロールさせるというunusualなプレイをしています。いまでもちょっと耳を引っ張られるくらいなので、オーソドクシーの時代にはいいフックになったでしょう。エンディング近くでハイ・トーンを入れるところも含め、このアップライト・ベースも好みのプレイヤーです。名前知りたし。

◆ 心のかけらはさておき、せめてセンスのかけらを ◆◆
つぎの曲は、ジャニス・ジョプリンのヴァージョンで知ったのですが、あとからオリジナルを聴いて、そちらのほうを好きになりました。バート・バーンズ作およびプロデュース、ゲーリー・チェスター・オン・ドラムズ。

ガーネット・ミムズ&ディ・エンチャンターズ Cry Baby


こういうオーソドクスなR&B風味のほうが、わたしにはずっと好ましいものに感じられます。このガーネット・ミムズ盤がリリースされたのと同じ1963年、ハル・ブレインはフィル・スペクターのクリスマス・アルバムで、ブラシによるヘヴィー・ヒットを多用しますが、この曲ではチェスターもブラシでヘヴィー・バックビートを叩いています。たんなる偶然でしょうけれど。

ゲーリー・チェスターは関係ないのですが、いちおうジャニス・ジョプリンのヴァージョンも貼り付けておきます。

ジャニス・ジョプリン Cry Baby


わたしはジャニス・ジョプリンのファンではないので、うまいとは思うのですが、あまりなじめません。ホールディング・カンパニーにも、フルティルト・ブギー・バンドにも、子どものころから、なんなのこいつら、と怒っていました。タイムが合わないと、生理的嫌悪が先に立ってしまうものです。

ジャニス・ジョプリンの代表作は、もちろんまたしてもチェスターとは関係ありませんが、やはりバート・バーンズの曲です。ドラムとベースには耳をふさいだほうがいいと警告しておきます。って、無理か。

ジャニス・ジョプリン Piece of My Heart


こういうドラマーに対しては殺人衝動が起きます。口直しにオリジナル・ヴァージョンを貼り付けます。バート・バーンズ作&プロデュース。

アーマ・フランクリン Piece of My Heart


人はスターのみにて生くるものにあらず、サウンドも同等またはそれ以上に重要です。わたしは、ヴォーカルが出鱈目でも、アレンジとサウンドがよければそれで十分、逆に歌がすばらしくても、バンドがヘボならまったく聴く気になりません。ジャニス・ジョプリンというシンガーに、ついに興味をもたなかった所以であります。

なにが悲しくて、あんなバンドを聴かなければいけないのだ、これほど無数にすぐれたドラマーのトラックがあるというのに、と英作文の試験問題のようなことを思うのでした。

バート・バーンズとゲーリー・チェスターのトラックはまだ相当数あるのですが、本日はここまで。改めて後篇をやるなり、雑纂篇で他と入れ込みにするなりで、補足する可能性もなくはありませんが、ネグってしまうかもしれません。


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バート・バーンズ
Twist and Shout: The Bert Berns Story Vol. 1 (1960-1964)
Twist and Shout: The Bert Berns Story Vol. 1 (1960-1964)

バート・バーンズ
Bert Berns Story Mr Succes 2: 1964-1967
Bert Berns Story Mr Succes 2: 1964-1967


フィル・スペクター(トップ・ノーツのTwist and Shoutを収録)
Early Productions
Early Productions


ライノ・ガール・グループス・アンソロジー(Tell Him収録)
The Best Of The Girl Groups, Vol. 2
The Best Of The Girl Groups, Vol. 2


ガーネット・ミムズ&ディ・エンチャンターズ
Cry Baby
Cry Baby


アーマ・フランクリン
Golden Classics Edition
Golden Classics Edition
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by songsf4s | 2011-06-25 23:57 | ドラマー特集
祝 オフィシャル・ゲーリー・チェスター・ウェブサイト誕生 その8 フィル・スペクター/クリスタルズ篇
 
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「泰山木(タイサンボク)を見下ろす、とまではいかなかったが」

◆ スペクターぶりのドラミング ◆◆
本日のゲーリー・チェスター・トラックス、フィル・スペクター篇と銘打ったはいいのですが、羊頭狗肉の感無きにしも非ずです。まあ、スペクター・ファンなら、NYのトラックにはそれほどすごいものがないのはよくご承知なので、タイトルを見た瞬間、当方の苦衷をお察しくださったでしょうが。

フィル・スペクターは、才能ある若者に惚れやすいレスター・シルのおかげで、NYに行き、ジェリー・リーバーとマイク・ストーラーに弟子入りすることになります。リーバーとストーラーもまた、シルのおかげで世に出たのであり、彼らはビジネス・パートナーでもありました。

NYでのスペクターは、あまりいいことはいわれていないようですが、それは問題ではありません。問題は、どこからどう見てもまごうかたなきスペクター・サウンドといえるものができあがるのは、NYではなく、ハリウッドでのことだったという点です。NYのスペクターはまだ試行錯誤をしていたように見えます。

一家を成してからもときおりNYで録音していたようですが、そうしたトラックにとくに見るべきものはないようです。わたしが知るかぎり、重要な盤はすべてハリウッドで録音され、ロネッツのデビュー以後、NYからはスペクターのヒットは生まれていません。

フィル・スペクターがNYで録音した、唯一のヒットらしいヒットであるこの曲(いや、There's No Other Liker My Babyだってチャート・ヒットではあるのだが)では、ゲーリー・チェスターがドラム・ストゥールに坐った、らしいのですが……。シンシア・ワイルとバリー・マン作。

クリスタルズ Uptown


ゲーリー・チェスターはスネアだけでプレイしたようで、キックも入れていないように聞こえます。まあ、プロだから、そんなことでめげたりはしないでしょうが、でも、楽しくもなかったでしょう! それにスペクターの仕事としても、中途半端に感じます。

アルバム・トラックにすぎませんが、つぎはエコーの使い方にスペクターらしさが仄見えるトラックです。

クリスタルズ Gee Whiz


こちらのほうが、のちのスペクター・サウンドにつながる音作りで、チェスターのドラミングも、フィルインとしてではなく、空の小節の基本パターンにタムタムの8分4打を織り込むという、ハル・ブレインがやりそうなスタイルになっています。

クリスタルズ Look in My Eyes


これまたのちにハル・ブレインがロネッツのSo Youngでやったようなドラミングです。いや、おそろしくオーソドクスなドラミングで、似るとか似ないとかいうようなものではありませんが。いちおう、比較対照してみます。

ロネッツ So Young (Hal Blaine on drums)


まあ、オーソドクスなドラミングをしても、ハル・ブレインは派手です。いや、そもそも、途中からオーソドクスとはいいかねるドラミングに変化するのですが!

しかし、このように東西の録音を並べてみると、フィル・スペクターという人は、やはりドラミングに関して明白な好みをもっていたことが伝わってきます。

チェスターの拡大版ディスコグラフィーに書かれているクリスタルズのSeventeenとは、この曲のことでしょう。

クリスタルズ What a Nice Way to Turn Seventeen


これまたLook in My Eyesのようなドラミングで、オーソドクスの極致ですが、しかし、バックビートを叩けたのはラッキー、というのも変ですが、このシリーズをずっとお読みになっている方ならおわかりのように、大昔のドラマーはほとんど仕事をさせてもらえないこともめずらしくなかったのでして、こういう曲はいいほうなのです。

ゲーリー・チェスターのディスコグラフィーにリストアップされているクリスタルズのトラックは、もうひとつ、Frankenstein Twistというのがありますが、これはクリップが見つかりませんでした。手元にはあるのですが、わざわざアップするほどのものでもないので、これは略させていただき、羊頭狗肉フィル・スペクター篇はこれにて完。


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クリスタルズ
Da Doo Ron Ron: the Very Best of the Crystals
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ロネッツ
Be My Baby: the Very Best of the Ronettes
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by songsf4s | 2011-06-24 22:29 | ドラマー特集
祝 オフィシャル・ゲーリー・チェスター・ウェブサイト誕生 その7 ガール・グループス&シンガー
 
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われわれを見張る街中の魔物たち

◆ ミスのような、そうでもないような ◆◆
ゲーリー・チェスターの拡大版ディスコグラフィーを眺めていて、自分が微妙なミスをしていたことに気づきました。

前々回の「祝 オフィシャル・ゲーリー・チェスター・ウェブサイト誕生 その5 ブリル・ビルディング周辺」という記事で、ボビー・ダーリンのDream Loverについて、わたしはつぎのように書きました。

「じっさい、これはあまりアール・パーマーの雰囲気がない、というか、ハリウッドらしくも聞こえません。アトランティック・ディスコグラフィーというサイトで見ても、録音場所、パーソネル、ともに記載がありません。(略)この曲もNY録音ではないでしょうか」

いいえ、これがまちがっていたわけではありません。NY録音であっただけでなく、ボビー・ダーリンのオリジナルでも、ゲーリー・チェスターがストゥールに坐ったことが、上記、拡大版ディスコグラフィーでわかったのです。

問題は、ゲーリー・チェスターの話をしているときに、チェスターの曲をあげておきながら、それがチェスターのプレイと気づかなかったことです。ハル・ブレインやジム・ゴードンやアール・パーマーの場合なら、こういうことはありません。まだ「チェスターが聞こえる」耳にはなっていないということです。じっと静かに歌伴をやりつづけたのだから、じつにやっかいな相手です。

◆ シレルズ ◆◆
今回は、チェスターの主たるフィールドのひとつだったガール・グループです。といっても、たとえば、「祝 オフィシャル・ゲーリー・チェスター・ウェブサイト誕生 その2」での、エンジェルズの"My Boyfriend's Back"のように、すでに典型的なガール・グループの曲を取り上げていますが、こういうのは便宜的な枠組であり、曲を並べやすくする方便なので、細かいことは抜き、ということでよろしくお願いします。

「ガール・グループ」というのは歴としたテクニカル・タームであり、女の子のグループならなんでもいいというものではなく、特定の時期のアメリカン・ポップ・ミュージックのカテゴリーにつけられた名称です。ブリティッシュ・ガール・グループというものですら、ちょっとちがうだろう、と思います。

がちがちにgenuineでauthenticな、狭さも狭し、狭義の「ガール・グループ・サウンド」がどの曲で誕生したかは、すでに疑問の余地なく定まっています。

シレルズ Will You Love Me Tomorrow


シレルズにとっても、セプター・レコードにとっても、そしてなによりも、ジェリー・ゴーフィンとキャロル・キングというチームにとっても、この曲は最初のビルボード・チャート・トッパーでした。このWill You Love Me Tomorrowによって「ガール・グループの時代」がはじまったわけで、これほど多重的な転回点になった曲は、そうたくさんはないでしょう。

ガール・グループという言葉を狭くとらえるべきだと考えるのは、1960年にこうしたヒット曲が生まれ、以後、シレルズに似たタイプのシンギング・グループが多数輩出した背景には、アメリカ社会の変化があったと考えるからですが、そういう面倒な話は、もちろん、ここでは脇におきます。

なお、勘違いしている人が世界中に山ほどいて、このクリップ自体もみごとに間違えていますし、盤ですらまちがっていることがありますが、この曲のタイトルはWill You Love Me Tomorrowです。歌詞ではStiiを入れていますが、タイトルにはありません。もっとも頻繁にタイトルを間違えられている曲は、きっとこのWill You Love Me Tomorrowでしょう。

ゲーリー・チェスターがドラム・ストゥールに坐ったシレルズの曲をもうひとつ。プレイが地味なだけでなく、アルバム・トラックにすぎませんが、ちょっとチャーミングなのです。ヴァン・マコーイとシレルズのプロデューサーであるルーサー・ディクソンの共作。

シレルズ What's The Matter Baby?


例によってメトロノームのようなプレイですが、うまい人がやればしっくりと来るグルーヴになり、すんなりと聴けるという典型です。

◆ ジョーニー・サマーズ ◆◆
つぎはジョーニー・サマーズです(Joanieなので、「ジョーン」の愛称であり、しばしば盤に書かれている「ジョニー」の表記は見当違いもはなはだしい。シュープリームスだってちゃんとスプリームズと正されたのだし、フライング・バリット・ブラザーズもフライング・ブリトー・ブラザーズになったのだから、Joanie Sommersもそろそろ改めてしかるべき。大昔のレコード配給会社の無知な社員の勘違いをいつまでも放置するべきではない。「ソマーズ」もまったく賛成できない)。

キャリアの長いシンガーで、非ポップ系のアルバムもたくさんある人ですが、ビルボード・チャートの節穴を通して世界を眺めているわたしのような人間にとっては、ジョーニー・サマーズといえば、この曲しかありません。ハル・デイヴィッドとシャーマン・エドワーズ作。

ジョーニー・サマーズ Johnny Get Angry


もう数テイクとれば、チェスターのブラシとアコースティックのストロークが融合して、もっと気持のいいグルーヴになったでしょうが、ヒットを妨げはしなかったのだから、このテイクでもOKだったのだ、といえることになります。いや、もっときっちりつくっておけば、もういくつか上の順位にもっていけただろうとは思いますが。

◆ シャングリラーズ ◆◆
もう一曲、これまたガール・グループの時代を代表するシャングリラーズ。シレルズがルーサー・ディクソン抜きでは考えられないように、シャングリラーズもジョージ・“シャドウ”・モートン抜きでは考えられませんでした。そのシャドウ・モートン作の曲。

シャングリラーズ Remember (Walking in the Sand)


このクリップには出てきませんが、まるで『避暑地の出来事』の一シーンかと思うような、メロドラマティックなプロモーション・フィルム(あの時代はヴィデオではなく、16ミリだった。アレン・ダヴィオウのように、プロモーション・フィルムでトレーニングを積んだ撮影監督もいる)もありました。

シャドウ・モートンという人の体質なのでしょうが、シャングリラーズは、しばしばこういうムードの、むやみに芝居がかった、ケレンの塊のような曲を歌っています。もう一曲の大ヒット、Leader of the Packも、作者はモートンではなく、ジェフ・バリーとエリー・グリニッジですが、やはりメロドラマティックです。

ひとつだけ、Remember (Walking in the Sand)のカヴァーを貼り付けておきます。よりによってジェフ・ベックのものです。

ジェフ・ベック&イメルダ・メイ Remember (Walking in the Sand)


還暦をとうにすぎているのですが、ジェフ・ベックは死ぬまでジェフ・ベックをつづけるのでしょう。ジジイのストーンズのような不快感はなく、いや、衰えないねえ、と感心してしまいました。ちょっと気がふれかかったムードを漂わせるギター小僧、という意味で、ヤードバーズの時代から、よきにつけ、悪しきにつけ、まったく変わっていません。

◆ ジョージ・シャドウ・モートンの影 ◆◆
今日もちょっとだけ、ゲーリー・チェスターの本道から脇に入ります。音としては、「ちょっと」どころではなく、ずいぶん距離があるのですが。こんな音です。

ヴァニラ・ファッジ Ticket to Ride


十五歳のときにヴァニラ・ファッジを聴いた子どもは、これは革命的サウンドだとひっくり返りました。しかし、「革命」と「革命的」のあいだには無限の距離がありますし、子どものいうことなので、おおいなる見当違いだったようです。

そもそも、根本的な勘違いがありました。子どものわたしが「革命的」と考えたのは、トータルな意味でのサウンド(そのなかには、アレンジ、構成、プレイも包含される)です。あとから落ち着いて考えると、その「サウンド」は、彼らのものではなかった可能性があります。

ヴァニラの後期からしてすでに面白くなかったのですが、その後、彼らがどうなったかと、カクタスやベック・ボガート&アピースなども聴いてみました(呆れたことに、後者は武道館まで見に行った。なにを考えていたのやら!)。それなりに面白く感じた面もありましたが、ヴァニラのデビュー盤やRenaissanceに感じたような興奮はついに戻ってきませんでした。

もちろん、時代やコンテクストの違いも大きいのですが、それよりも、「こいつらってこんなにパアだったの?」という失望を強く感じました。ヴァニラの初期には「おおいなる知的操作がおこなわれた結果としてのサウンド構築」を感じたのですが、カクタスも、BB&Aも、知性などまったくお呼びでないサウンドでした。

ここから導き出される結論は、ティム・ボガートとカーマイン・アピースにはヴィジョンはなかった。知性があったとしたら、それ以外の誰かの脳中にである、ということです。したがって、それをマーク・スティーンやヴィンス・マーテルに求めてもいいのですが、わたしはこの二人もボガートやアピースと大差はなかったのだろうと考えています。

それはシャドウ・モートンがプロデュースしたシャングリラーズのむやみにドラマティックな曲作りとサウンドメイキングを知ったがゆえにであり、シャドウ・モートンはヴァニラ・ファッジのプロデューサーでもあったのです。

知性うんぬんは子どもの勘違いとして、ひとまず脇に退けておくことにし、「ポップ・ミュージックはケレンだ!」という強い主張が感じられるという意味で、シャングリラーズとヴァニラ・ファッジは地続きです。一見、なんのつながりもないように思えるのに、ジョージ・“シャドウ”・モートンという要素を中間においてみると、二者のあいだに明白な一貫性が浮かび上がってくるのです。だとしたら、モートンこそが立役者だったと考えるほうが自然でしょう。

ヴァニラ・ファッジ Bang Bang


だから、わたしは、マーク・スティーンやヴィンス・マーテルがどういう音楽性をもっていたかは検討するまでもない、これはシャドウ・モートンのヴィジョンが生んだ音なのだと考えています。

しいていうなら、モートンのヴィジョンは、ヴァニラの四人、とりわけ、マーク・スティーンには肌に合うものだったのかもしれません。

ヴァニラ・ファッジ You Keep Me Hanging On(ライヴ)


なんだか、六方を踏み、大見得を切るようなプレイ・スタイルで、当時は知らず、ずっと後年、はじめてライヴでの動きを見たわたしは、大笑いしてしまいました。なによりもケレンが大事、ということに関しては、このアーティストとプロデューサーのあいだには完全な合意ができていたのでしょう。


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シレルズ(Will You Love Me Tomorrowを収録)
Tonight's the Night/Sing to Tr
Tonight's the Night/Sing to Tr


シレルズ(What's the Matter Babyを収録)
Shirelles - Foolish Little Girl/Sing Their Hits From It's A Mad Mad Mad World CD
Foolish Little Girl / Sing Their Hits From It's
Foolish Little Girl / Sing Their Hits From It's


ライノ・ガール・グループス・アンソロジー(Will You Love Me Tomorrow収録)
The Best Of The Girl Groups, Vol. 1
The Best Of The Girl Groups, Vol. 1


ライノ・ガール・グループス・アンソロジー(Johnny Get Angry収録)
The Best Of The Girl Groups, Vol. 2
The Best Of The Girl Groups, Vol. 2


ジョーニー・サマーズ
内気なジョニー
内気なジョニー


シャングリラーズ
Shangri-Las Remember
Shangri-Las Remember


ヴァニラ・ファッジ
Vanilla Fudge
Vanilla Fudge


ヴァニラ・ファッジ(2オン1)
Vanilla Fudge / Beat Goes on
Vanilla Fudge / Beat Goes on
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by songsf4s | 2011-06-23 22:50 | ドラマー特集
祝 オフィシャル・ゲーリー・チェスター・ウェブサイト誕生 その6 リーバー&ストーラー篇
 
プレイヤーをセッションに手配するのは、「コントラクター」といわれる人々です。コントラクターには専業の人もいれば、プレイヤーが兼務する場合もあったようです。

AFM(American Federation of Musicians=アメリカ音楽家組合)の伝票を見ると、どうやら、コントラクターは、プレイヤーの1スケールと同じ料金をとったようです。スケールというのは、組合が定めた金額の一単位で、インターヴァルはわかりませんが、ときおり更新されて、実額が変わりました。60年代中期のハリウッドの場合、1スケールは50ドル前後だったと思われます。

プレイヤーは3時間セッションを一回するたびに、最低限1スケールのギャランティーを得ます。売れっ子になると、ダブル・スケール、トリプル・スケールというケースもあったようです。つまり、仮に1スケールが50ドルなら、ダブルでは3時間で100ドル、トリプルなら150ドルのギャランティーということです。

仮にトリプル・スケールの人がコントラクターを兼務すると、1スケールプラスされて4スケールになります。また、たとえばギター・プレイヤーが、オーヴァーダブ・セッションでパーカッションをプレイすると、規定によって1スケール加えられました。

ハル・ブレインは、トミー・テデスコと、一回のセッションでどれだけのスケールを得られるか競争したことがあると回想しています。いろいろな楽器をやれば、スケールはどんどん増えていくからです。

あるアーティスト、プロデューサー、アレンジャーが、特定のプレイヤーと組むのは珍しくないことに思われますが、これは結果と考えたほうがいいようです。コントラクターにはそれぞれ得意先があり、特定のプロデューサーの仕事を請け負うから、ということのようです。

とはいえ、プロデューサーにも好みがあるので、当然、コントラクターに注文をつけることがあり、プロデューサーの要求とコントラクターの考えの総和として、あるセッションのメンバーが決定した、と考えるのが、もっともニュートラルといえるでしょう。

◆ コースターズ ◆◆
「ロックンロールを作った」とまで評されたこともある、ジェリー・リーバーとマイク・ストーラーというソングライター/プロデューサー・チームが「われわれのドラマー」と考えていたのは、ゲーリー・チェスターだったようです。リーバー&ストーラーがプロデュースした盤では、しばしばチェスターの名前が登場します。

それではまず、リーバー&ストーラーといっしょにLAからNYに移ってきたグループの曲を。

コースターズ Little Egypt


コースターズは本来、ウェストコースターズという意味で、ロビンズと名乗っていた時代と、コースターズへと名前が変わった直後は、ハリウッドで録音していました。初期のヒット、Down in Mexicoでは、バーニー・ケッセルがリードを弾いています。Youngblood、Searchin'などもハリウッド録音です。

後期のヒット、Poison Ivy、Three Cool Cats(デッカのオーディションでは、ジョージ・ハリソンがリードで、この曲も録音されたのはご存知のとおり)などはNY録音ですが、パーソネルは不明です。ライノの二枚組アンソロジーでは、リーバーとストーラーの記憶に頼ってパーソネルを復元していましたが、チェスターのディスコグラフィーでは、そのうち、ほんの一握りしかリストアップされていません。ご本人はとうの昔に亡くなっているので、資料による裏づけのないものは採用できなかったのでしょう。

リトル・エジプトというのは実在のベリー・ダンサーのステージ・ネームで、あまりにも有名になったために、偽者がたくさん生まれたのだそうですが、この歌詞で歌われているのも本物のほうではなく、偽者のひとりという想定でしょう。

ジェリー・リーバーの歌詞にはしばしばサゲがありますが、この曲では、語り手はダンスに幻惑されてリトル・エジプトと結婚してしまい、結局、いまでは彼女はただの主婦になっている、という、Big Bad Bill Is Sweet William Nowと同じパターンにもっていっています。

一曲だけ、Little Egyptのカヴァーをあげておきます。

エルヴィス・プレスリー Little Egypt


映画『Roustabout』からのシーンで、こちらのドラマーはハル・ブレインです。エルヴィスのものは、映画としては困ったものが多いのですが、歌のシーンはやはり魅力的なものがあり、ミュージック・ヴィデオだと思えば楽しめるものが少なからずあります。

◆ ドリフターズ ◆◆
リーバー&ストーラーといえばドリフターズ、という印象をもっていますが、ゲーリー・チェスターのディスコグラフィーにあるドリフターズのトラックで、リーバーとストーラーがプロデュースしたものは、いずれも地味なプレイで、ドラマーの代表作にあげるわけにはいかないようなものばかりです。

そうしたメトロノーム的プレイの曲ですが、とにかくどうぞ。ドク・ポーマス&モート・シューマン作。

ドリフターズ I Count the Tears


もうひとつ同じ時期のものを。バート・バカラック&ボブ・ヒリアード作。

ドリフターズ Please Stay


ドリフターズのヒットのなかでもとくに好きな曲のひとつですが、ドラミングは地味の極致。「お仕事」です。

同じリーバー&ストーラーがプロデュースしていたブラック・コーラス・グループではあるものの、コースターズがR&Bテイストを濃厚にもっているのに対し、ドリフターズはきわめてポップ寄りで、それがドラミングにも反映されたと感じます。前者はリーバー&ストーラーが自分たちで曲を書いたのに対し、後者はジェリー・ゴーフィンとキャロル・キング、ドク・ポーマスとモート・シューマンといったポップ系のソングライターの曲を歌っていることにもそれがあらわれています。

やはりチェスターは活躍しませんが、かぎりなく白に近い黒の極めつけをいってみます。日本でもまったくべつのニュアンスでよく歌われた曲です。

ドリフターズ Save the Last Dance for Me


作者はドク・ポーマスとモート・シューマン。後者はのちにフランスに渡ってシャンソンを歌い、日本では「モルト・シュルマン」などと表記されることになりますが、こういう曲を書いていたのだから、それも当然だな、です。

◆ ベン・E・キング ◆◆
ドリフターズの二代目(という勘定でいいのかどうか自信がないが)リード・テナーだったベニー・キングは、独立してからも、やはりリーバー&ストーラーと組んで大ヒットを生みます。

そして、因果なことに、ゲーリー・チェスターは、引きつづき、じっと我慢の子のメトロノーム役をつづけるハメになります。

ベニー・キング Stand by Me


ハル・ブレインは、パーカッションの仕事もディスコグラフィーにあげていて、ときおり腑分けに苦しんでしまいますが、チェスターのディスコグラフィーにもいくつかパーカッションのトラックが入っています。これもそうでしょう。トラップ・ドラムの音は聞こえません。ギロかトライアングルか、そのあたりをプレイしたのではないでしょうか。でも、プレイヤーにとって、大ヒット曲にかかわっておくのは重要なことで、そういう意味ではこの曲も「代表作」というべきかもしれません。

また似たようなパターンですが。

ベニー・キング Spanish Harlem


ミューティッド・トライアングルか、他のラテン・パーカッションか、判断はできませんが、この曲もまたチェスターがプレイしたのはトラップ・ドラムではないでしょう。

「ドラミング」とはいえませんが、ロックバンドのドラムセットの向こうに坐っている芸能人ではなく、ほんもののプロのドラマーの日常が、こうした楽曲にうかがえます。

◆ I used to drink, I used to smoke ◆◆
「ヘッド・アレンジ」で組み上げた曲の並びはすべて消化したのですが、パーカッションのトラックが二つでおしまいというのは、なんだかしまらないので、ちゃんとトラップ・ドラムのプレイで締めくくりたいと思います。

かぎりなく白に近い黒ではブラシやパーカッションのプレイですが、かぎりなく黒に近い黒の曲では、ストレートなドラミングが聴けます。そして、そういうときは、年少のソングライターたちの曲ではなく、自分たちで書くのがリーバー&ストーラーのやり方でした。

ラヴァーン・ベイカー Saved


モータウンのサウンドは黒人のものだなどというデトロイト・ショーヴィニストがいますが、こういう白人スタッフによるかぎりなく黒に近いサウンドは、やっぱりああいう人たちにはお気に召さないのでしょうな。

わたしの趣味からすると、ちょっと黒すぎるのですが、しかし、こういうグリージーなサウンドも、たまには悪くないと思います。

ただ、しいていうなら、このグルーヴは北部的、都会的であって、南部のプレイヤーにいわせればスリックすぎるかもしれません。早すぎたり不安定だったりするのは生理的に気色が悪いので、わたしはこれくらいのタイムのほうが好きですが。

いま、ゲーリー・チェスターのディスコグラフィーをつらつら眺めてみましたが、まだ二回や三回はやるだけの材料があるようです。


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コースターズ
Yakety Yak: The Platinum Collection
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コースターズ(4CD)
There's a Riot Goin' On: The Coasters on Atco
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ドリフターズ
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ドリフターズ(5CD ORIGINAL ALBUMシリーズ)
5CD ORIGINAL ALBUM SERIES BOX SET
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ベニー・キング(5CD ORIGINAL ALBUMシリーズ)
Original Album Series
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ラヴァーン・ベイカー
Soul on Fire: Best of (Mcup)
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エルヴィス・プレスリー
Roustabout
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by songsf4s | 2011-06-21 23:32 | ドラマー特集
祝 オフィシャル・ゲーリー・チェスター・ウェブサイト誕生 その5 ブリル・ビルディング周辺
 
時間のないときに、ブリル・ビルディング・サウンドなどという大きなものを持ち上げると、ぎっくり腰になる恐れがありますが、ほかのことの準備をする時間もないので、「ブリル・ビル」を既定の事実としてブラック・ボックス化し、中身には踏み込まずにやります。

つまり、「世間でいわれるブリル・ビル」の概念にしたがう、という意味です。ドク・ポーマスがいっていた、じっさいにブリル・ビルに部屋をもっていたのは、旧弊な、いわゆる「ティン・パン・アリー」のソングライターたちのほうであり、世に「ブリル・ビルのソングライターたち」といわれる人々は、ブリル・ビルにはオフィスをもっていなかった、という話はとりあえず棚に上げます。

さて、だれを代表にもってくるか、となると、当然、アル・ネヴィンズとドン・カーシュナーのオールドン・ミュージックのライターたちとなるわけで、そのなかで、ゲーリー・チェスターがプレイしたトラックとして、比較的初期のものをまずいきます。バリー・マンとシンシア・ワイル作。

トニー・オーランド Bless You


1961年の歌伴というと、こんなものなのだろうと思います。基本的にはしっかりタイムをキープすることがドラマーの仕事だったわけで、歌伴で派手なドラミングをするなどということをはじめたのはハル・ブレインなのだとわたしは考えています。61年のハルはまだスタジオ世界の暗い底辺を這いまわって仕事を拾っていたわけで、これが「夜明け前」のサウンドでしょう。

つぎは、同じトニー・オーランドの同じ時期の曲ですが、作者はブリル・ビルのライターとはいいにくいボビー・ダーリン、彼自身の歌で大ヒットした曲のカヴァーです。

トニー・オーランド Dream Lover


こちらのほうは、ちょっと楽しめるドラミングです。前回も書きましたが、やはりそこはかとなくアール・パーマーを思い起こします。

ボビー・ダーリンのハリウッド録音ではしばしばアール・パーマーがストゥールに坐ったから、ということとは関係なく、たんにオリジナルだからというだけの意味で、彼のDream Loverも貼り付けておきます。Mack the Knifeはもちろん論外ですが、Splish Splashとくらべても、わたしはこちらのほうが好きです。彼の代表作でしょう。

ボビー・ダーリン Dream Lover


じっさい、これはあまりアール・パーマーの雰囲気がない、というか、ハリウッドらしくも聞こえません。アトランティック・ディスコグラフィーというサイトで見ても、録音場所、パーソネル、ともに記載がありません。ハリウッドは、というか、ローカル47(アメリカ音楽家組合ロサンジェルス支部)は、比較的書類をきちんと保存していますが、NYはまるでなっていなくて、あとから記録を調べてもなにも出てこないことが多いようです。この曲もNY録音ではないでしょうか。

ドーン以前(英語で書くとbefore Dawn「夜明け前」になるのであった!)のソロ時代のトニー・オーランドの代表作というと、ジェリー・ゴーフィンとキャロル・キングのHalfway to Paradiseもあげたくなりますが、ゲーリー・チェスターがこの曲でプレイしたかどうかはわかりません。ディスコグラフィーにはリストアップされていませんし、ブラシのプレイなので、ブラインドで判断するのも困難です。

◆ シフォーンズとフレディー・スコット ◆◆
つぎは、ジョージ・ハリソンが盗作で訴えられることになった曲。

シフォーンズ He's So Fine


チェスターがあおっているのですが、他のメンバーがヘボで、チェスターのグルーヴに乗っていくことができない、という雰囲気の、ちょっといらつくトラックです。ベースも、ピアノも、いやになるような鈍くささ。チェスターの派手なフィルインでブリッジに入るところはいいのですが、その直後に勢いがなくなってしまいます。ブリッジからの出口のほうは少しマシなグルーヴですが。

一説によると、He's So Fineのピアノはキャロル・キングだそうで、じゃーしょーがねーな、です。同じシフォーンズのOne Fine Dayで出鱈目なタイムのプレイをして、あまりのひどさゆえに、一度聴いたら忘れられず、かえってヒットの要因になったってくらいのことをしでかした人ですから。

シフォーンズ One Fine Day


これだけタイムを揺らすのは、やれといわれても、おいそれとできることではありません。チャーリー・ワッツのドラミングを聴いているようで、船酔いを起こしそうです。にもかかわらず、あるいはそれゆえに、これがフックになっちゃたというのだから、やはりチャートは恐るべき魔界、なにが幸いするかわかったものではありません。

つぎはジェリー・ゴーフィンとキャロル・キングの曲ですが、このチームとしてはちょっと紫外領域に踏み込んだブルージーな味わいがあり、バリー・マンとシンシア・ワイルが書きそうなムードの曲です。

フレディー・スコット Hey Girl


プロデューサーがだれか知らないのですが、やはりジェリー・ゴーフィンとキャロル・キングでしょうか。みごとなサウンドで、全体の音像までふくめた総合的なレベルでは、このチームのもっとも好きな曲です。コード進行もちょっとだけ変則的で、いいチェンジアップになっています。

しかし、ドラマーとしては、もう少し見せ場を作りたいところでしょう。歌伴はお仕事だから、としかいいようがありません。ただ、少し視野を広げてみると、これは結局、NYがハリウッドに敗れる最初の兆候だったのかもしれないと感じます。ビートの弱さこそがNYの最大の弱点でした。それはドラマーの責任というより、ベンチのセンスが時代からズレていったためでしょう。この曲は1963年のリリース、そろそろドラムを前に出したサウンドが好まれはじめる時期です。

だれでも思うことでしょうが、Hey Girlは、ライチャウス・ブラザーズのような雰囲気の楽曲であり、サウンドです。ライチャウスの二人もそう考えたようです。

ライチャウス・ブラザーズ Hey Girl


ハリウッド音楽の本質はやはりビートだった、と我田引水をしそうになります。ライチャウスのドラマーは主としてアール・パーマーでした。この曲もアールのプレイのように聞こえます。

もはや、ゲーリー・チェスターとは関係がありませんが、過去の音楽の遺産、とりわけ60年代前半のNY産ポップ・チューンの歴史の上に自分の音楽を作ったと思われる人のカヴァーを最後に置いておきます。

ビリー・ジョエル Hey Girl


これも例のリバティー・デヴィートーというドラマー(どの記事だったか、以前、ラスカルズのディノ・ダネリとの対談をご紹介した)のプレイでしょうか。なかなかけっこうなバックビートです。

次回は、またしてもメトロノーム化したチェスターで、すこしリーバー&ストーラーの曲を聴いてみようと思っています。


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by songsf4s | 2011-06-20 23:56 | ドラマー特集