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ニルソンのJust One Look/Baby I'm Yours、その根と枝葉 前篇

なんの脈絡もないのですが、いま開いたファイルにメモが書いてあり、思いだしたので、それを貼りつけます。姿かたちの可愛い猫は山ほどいますが、この猫は、姿かたち、声、しぐさ、三位一体のスーパー猫。

お願い猫

この猫は空腹になるといつもこういうことをするのなら、記録できたのも当然ですが、たまたまこのときだけだったのなら、なんという天の廃材、じゃなくて、配剤、よくぞ撮影した、です。そういえば、ペンギンが他のペンギンを思いきり張り倒すクリップはどこへいってしまったのやら。あれも爆笑の瞬間芸でした。

◆ ホリーズのカヴァーから ◆◆
枕のほうもも脈絡なしですが、本文もやはり脈絡なんかありません。ヨーロッパ・シリーズはちょっと疲れたので、いま聴いている曲のことを書くだけで、いってみれば、140文字の制限がないツイッターみたいなものです。ほら、now listeningとして、コメントなしで、いま聴いている曲のタイトルやクリップのリンクを書いている人がよくいるでしょう? あれと大差なしです。

タイトルのとおり、本能寺はニルソン・ヴァージョンですが、わたしが最初に聴いたJust One Lookはホリーズのものでした。

ホリーズ Just One Look


ごく初期のヒットで、さすがのボビー・エリオットもこの時点ではフィルインで突っ込んだりしています。でも、いかにもブリティッシュ・ビートらしく若さ溌溂で、子供の耳にはおおいに魅力的なトラックでした。

NMEのときのライヴがあったので、そちらもいってみます。

ホリーズ Just One Look(ライヴ)


68年の日本ツアーでもそうでしたが、グレアム・ナッシュは「だてギター」、マイクなしでアコースティックを弾いています。中学三年のわたしがホリーズを見ていちばん感心したのはその点でした。リズム・ギターなしというか、リードがほとんどコードを刻んでいるような状態でも(このクリップではだれかサポートメンバーがいて、ひとり多いのだが)、グルーヴがタイトで、ヴォーカルがしっかりしていれば、充実したサウンドになるのだ、ということです。66年のビーチボーイズとは正反対の印象でした。

◆ オリジナルとその後継者たち ◆◆
オリジナルは作者であるドリス・トロイです。

ドリス・トロイ Just One Look


ピアノの使い方にはそれなりに魅力がありますが、どこか味の足りないヴァージョンに感じられます。そもそも、これはデモだったのに、アトランティックがそのままリリースしたとかで、アレンジに手をかけていないのはそのせいのように思われます。

しかし、ホリーズは例外中の大例外で、後続の多くのヴァージョンがドリス・トロイのオリジナル・ヴァージョンに追随することになります。

リンダ・ロンシュタット Just One Look


このときのギターはだれでしょうか。アンドルー・ゴールド? 魅力的なトーンでカッティングしていて心ひかれます。エンディング近くのちょっとひずませたトーンのギターのオブリガートもクール。しかし、グルーヴは、うーん、ですし、リンダ・ロンシュタットのレンディションもやや違和感があります。ベンチの仕事が不十分。キーの設定にも考慮の余地があったでしょう。

ルル Just One Look


ルルのヴァージョンはもっていなくて、この記事のためにクリップを調べていてぶつかりました。ちょっとした拾いもので、モノのぐしゃっとした音塊状態がなによりも60年代的魅力を発散していますし、ドラムなんか、ハル・ブレイン・フレーズ連発で、好きなのねえ、です。リンダ・ロンシュタット盤より数段上の出来。

◆ ニルソン・スタイル ◆◆
ホリーズのカヴァーが、オリジナルからもっとも遠いヴァージョンだと思いますが、今日の看板にしたニルソン盤もまた、大きく手触りの異なるアレンジ、サウンドになっています。

サンプル Nilsson "Just One Look/Baby I'm Yours"

これが収録されたThat's the Way It Isというのは、もう黄昏てしまった時期のアルバムなのですが、腐っても鯛、いいトラックも少しあり、とりわけ、このメドレーはさすがはニルソンという大きな造りで、没落のなかに栄光ありのおもむきです。まあ、いい曲が書けなくなっていくというのが、黄昏の黄昏たるゆえんなのですが。

なんといっても、まずイントロが好きです。グイと引きこまれるサウンドです。あれ、ちょっと用事があって中断していたあいだに時間切れ。キリのいいところまでいけませんでしたが、どちらにしろメドレーの後半、Baby I'm Yoursは次回まわしのつもりだったので、今日はここまでとさせていただきます。


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ニルソン That's the Way It Is
ハリーの真相(紙ジャケット仕様)
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ホリーズ
エッセンシャル・コレクション
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ドリス・トロイ
I'll Do Anything: the Doris Troy Anthology
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リンダ・ロンシュタット オリジナル・アルバム5パック
5CD ORIGINAL ALBUM SERIES BOX SET
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リンダ・ロンシュタット Living In The USA
Living in the Usa
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リンダ・ロンシュタット Greatest Hits
Greatest Hits 1 & 2
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by songsf4s | 2011-02-28 23:47
欧州ローカル線の旅 その5ドイツ レインボウズのBalla BallaからHippy Hippy Shakeへ
 
このシリーズをはじめたときに予定していたのは6曲、すくなくともそれだけはやっておこう、というわけで、今日はドイツに移動です。

のちにクラフトワークなんていうグループが輩出したドイツ(厳密には西ドイツ)ですが、わたしが子どものころに知っていたドイツのポップ・ミュージックはただ一曲でした。

レインボウズ Balla Balla


こんなステージ・スタイルだったとは知りませんでしたが、この曲にビルトインされた馬鹿馬鹿しさは、スタジオ録音を聴くより、このライヴを見るほうがストレートに伝わってきます。

盤では、欠点をなんとか押し隠しているのですが(しかし、これだけタイムが不安定なギターもめずらしい。ジョージ・ハリソンは遅れるだけだが、レインボウズのギタリストは遅れたり走ったり忙しく、ノッキングする車の如し)、当時のバンドは、やはりライヴになると、うひゃあ、です。

てなわけで、いちおうスタジオ録音もいってみましょうか。われわれの記憶にあるのはこちらのほうですし。

サンプル The Rainbows "Balla Balla"

ドイツと日本以外の国ではこの曲がヒットした形跡は見当たりません。イギリスのソロウズのヴァージョンとしてアップされているクリップがありましたが、クリップのコメントにあるように、わたしの耳にもレインボウズ盤のマスタリング違いに聞こえました。

唯一のカヴァーは、イギリスのスコーピオンズという、わたしは知らなかったグループのものです(70年代に活躍するドイツのスコーピオンズとは無関係。マンチェスター出身だとか)。

スコーピオンズ


こちらのほうが、レインボウズよりさらに馬鹿馬鹿しいレンディションで、この曲にふさわしいかもしれません。コンボ・オルガンのチープな音が泣かせます。サム・ザ・シャム&ファラオーズか、クエスチョン・マーク&ザ・ミステリアンズか、というムードです。

サム・ザ・シャム&ザ・ファラオーズ Wooly Bully


いやあ、歌の馬鹿馬鹿しさを凌駕するヴィデオの圧倒的な馬鹿馬鹿しさは感動もの!

?&ザ・ミステリアンズ 96 Tears


自分で貼りつけておいて、こういうことを云うのもなんですが、馬鹿馬鹿しくて、最後まで聴く気が起きませんなあ。しかし、absurdityへの情熱というのが、ロックンロールと他の音楽形式を区別するもっとも重要な要素であることも間違いありません。ポール・マッカトニーもabsurdityへの執着を繰り返し強調していました。

ビートルズ You Know My Name


◆ 源流 ◆◆
愚劣さへの降下はそれくらいにして、こんどは水平に時間をさかのぼります。Balla Ballaの原型はこの曲に違いありません。

スウィンギング・ブルー・ジーンズ Hippy Hippy Shake


日本ではBalla Ballaはうんざりするような大ヒットになりましたが、スウィンギング・ブルー・ジーンズのHippy Hippy Shakeが大ヒットしたなどという記憶はありません。これは、Balla Ballaの大ヒットは、ひとつには歌詞の馬鹿馬鹿しさ、単調さに支えられたものだったことの証左のような気もします。

レインボウズはスウィンギング・ブルー・ジーンズのアレンジ、サウンドを模倣したのであって、楽曲の類似は結果に過ぎないと思います。Hippy Hippy Shakeも、オリジナルまでいくと、Balla Ballaとの縁戚関係は薄くなります。

チャン・ロメロ Hippy Hippy Shake


チャン・ロメロのHippy Hippy Shakeは、リッチー・ヴァレンズのLa Bambaと並ぶチカーノ・ロックの代表曲ということになっています。いわれると、まあ、共通項があるかなあ、とは思うのですが、プレイしているのはあの時代の他の音楽もやっていた一線級で、ドラムはアール・パーマーです。出典は失念しましたが、ギターはルネ・ホール(サム・クックのアレンジャー)だったという記憶があります。つまり、リッチー・ヴァレンズのLa Bambaと同様のメンバーで録音されたわけで、サウンドが似たのはそのせいにすぎず、チカーノ・ロック云々は関係ないような気もします。

リッチー・ヴァレンズ La Bamba


こちらのほうはメンバーがほぼ明らかになっています。ドラムズ=アール・パーマー、ダンエレクトロ6弦ベース=ルネ・ホール、ギター(ソロを含む)=リッチー・ヴァレンズ、リズム・ギター=キャロル・ケイ、ベースがはっきりしないのですが、ジョージ・“レッド”・カレンダーだという説があります。また、ミックス・アウトされていますが、アーニー・フリーマンはこのセッションでピアノをプレイしたと主張していたそうです。

どうであれ、二種類のHippy Hippy Shakeを並べると、ブリティッシュ・ビート・グループが、アメリカ音楽にどのような加工を施して世界を席巻したかがわかります。大雑把に云えばビートの強調なのですが、さらにいえば、(主としてリズム・)ギターのドライヴの強調です。ささやかなトーンとバランスの変化にすぎないのですが、それが時代の感覚の違いを如実に反映していたと思います。

◆ シンプル&愚劣派の形成 ◆◆
こんどは同じ水平移動でも、同時代の曲です。

トミー・ジェイムズ&ザ・ションデルズ Hanky Panky


日本では、Balla BallaとHanky Pankyは同じころにヒットしたような記憶があります。どちらも、シンプルなコードと呪文のようなラインの繰り返しからなる歌詞という、「愚劣さの魅力」で売れたもので、「そういう時代」だったのかもしれないと思います。

いや、つまり、ビートルズがシリアスで複雑な方向にシフトし、それに引きずられたアーティストが続出するという流れがいっぽうにあり、その反作用として、痴呆的な音楽に対する嗜好が生まれた、という印象でした。

Balla BallaもHanky Pankyも、おそろしく簡単なので、プロ、アマ問わず、あの時代のバンドはこぞってコピーしました。この「あの時代のバンド」には、われわれの中学のバンドも含まれていたわけで、やれやれ、というしかありません! 耳タコなんか通り越して、意識遮断、流れても、ぜんぜん聞こえないふりをしました。

それにしても、いまだにBalla Ballaとはなんなのかということを知らないのですが、どなたかご存知でしょうか? Babyのあとにくるのだから、女性名と考えたくなりますが、ドイツは地理も言語もまったく不案内なのでした。

なお、Hanky Pankyについては、わたしの別のブログの「エリー・グリニッチ追悼 その10 トミー・ジェイムズ&ザ・ションデルズ“ハンキー・パンキー”」という記事で詳細に検討していますので、ご興味のある方はそちらをどうぞ。


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ビートルズ
パスト・マスターズ vol.1&2
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スウィンギング・ブルー・ジーンズ MP3アルバム
The EMI Years - Best Of The Swinging Blue Jeans
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スウィンギング・ブルー・ジーンズ CD
25 Greatest Hits
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リッチー・ヴァレンズ
The Complete Ritchie Valens: Donna, La Bamba & the Origin
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チャン・ロメロ
Hippy Hippy Shake
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サム・ザ・シャム&ザ・ファラオーズ CD
Mgm Singles
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サム・ザ・シャム&ザ・ファラオーズ LP
Mgm Singles [Analog]
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?&ザ・ミステリアンズ
Best of 1966-1967
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トミー・ジェイムズ&ザ・ションデルズ
Tommy James & The Shondells 40 Years 1966-2006
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by songsf4s | 2011-02-24 23:52
欧州ローカル線の旅 その4またしてもイギリス Elevator by Grapefruit
 
(2月23日朝 空リンクを修正しました。どうも失礼しました。)

つぎは再度フランスか、はたまたドイツかと思ったのですが、書くことがあまりない曲ばかりで苦慮しているうちに、連想が迷走しはじめ、60年代終わりの曲が束になって頭のなかを駈け巡りはじめました。

今日は、その混沌のなかから、あの曲は好きだったなあ、とつくづくと懐かしいグレイプフルーツのElevatorにしました。またイギリスに戻るのは本意ではなかったのですが、音楽は乗り、気分が乗れば、そっちへと。

グレイプフルーツ Elevator


厳密に云うと、このシリーズの定義からははずれるのですが、ビルボードにチャートインしたといってもバブリング・アンダー・チャート(101位以下)ですから、まけといてください。いや、日本ではヒットしたとは云いがたいし、ひょっとしたらイギリスでもヒットとまではいかなかったかもしれませんが!

◆ プロト・パワー・ポップ ◆◆
わたしはこの手の、ビートの強い、アップテンポのポップ・チューンというものに固着があります。その固着の原点はホリーズのような気がします。いやまあ、それをいうなら、やはりおおもとはビートルズですが、ここではよりスペシフィックにいっているわけでして。

ホリーズ Look Through Any Window


後年、ナックのMy Sharonaがヒットしたとき、「パワー・ポップ」という言葉が使われましたが、ホリーズは元祖パワー・ポップでした。ホリーズ・ファンの中学生は成人してもまだパワー・ポップが好きでした。

ラズベリーズ Go All the Way/I Wanna Be with You スタジオ・ライヴ


年をとってああだこうだと理屈をこねるようになりましたが、わたしの三つ子の魂はこのあたりのシンプル&ストレートフォーワードな、4ピースのギター・バンドにあります。ドラムをぶっ叩きながら、オウ、アイ・ウォナ・ビー・ウィズ・ユーなんて叫ぶのはすごく気持いいにちがいありません。

ラズベリーズは「堕落したフー」といった趣のグループで、ドラムが前に出るのに、そのくせ曲はメロディックという、ありそうでいて、じつはあまりないタイプのバンドでした。やはりビートルズをワーキング・モデルにして、よりハード・ドライヴィングな方向付けをしたのでしょう。エリック・カーメンもこの時点ではけっこうバリバリで、後年のAll by Myselfのようなオカマっぽさはありませんでした。

エリック・カーメン、オカマ化への最初の一歩はこの曲だったかもしれません。

ラズベリーズ Baby Let's Pretend


とはいえ、わたしがラズベリーズのドラマーだったら、この曲も喜んでプレイします。これくらいのテンポで、いろいろなフィルインを入れるのは楽しいにちがいありません。もちろん、ブーム・マイクでウーアー・コーラスにも参加します。断じて歌います。ドラムを叩きながらリードというのは好きではありませんが(カーマイン・アピースとか。Be My Babyなんか歌うなよ!)、ウーアー・コーラスは楽しいに違いありません。

それにしても、このドラマー、スタジオ録音ではタイムが安定しているのに、ライヴになると、フィルインはミス連発だし、突っ込んでいるところもありますなあ。いや、影武者ではないだろうと思うのですが……。スタジオ録音のほうを聴いてみますか? こっちなら、このドラマー、わがフェイヴァリット・プレイヤーに算入するんですがねえ。

サンプル Tha Raspberries "I Wanna Be with You"

いやあ、自分でやるなら、こういうのがいちばん好き! できれば、ディノ・ダネリみたいに、イントロでスティック・トワーリングをやりたいところです。

ディノ・ダネリのスティック・トワーリング
ヤング・ラスカルズ Good Lovin'


わっはっは。叩きまくっていますなあ。ときおり、アクセントとして、左手でハイハットをシバくところが無茶苦茶クール。惚れ直します。プレスコではなく、本チャンのスタジオ・ライヴに思えるのですが(ダネリの動きでわかる)、マイクもあたっていないドラムの音ばかりが聞こえるキッカイさ! 手も足も目いっぱい使う人だから、オープン・マイクが拾ってしまう音だけで十分なのでしょうか。

ラスカルズもプロト・パワー・ポップ・グループといえるかもしれませんが、そちらの文脈でいうと、ギターがダメダメなのが弱いと感じます。ドラムと一緒にギターもドライヴしないと、パワー・ポップの風味が出ません。ラスカルズはホワイト・ポップR&B、あたりではないでしょうか。

パワー・ポップと書いているうちに、そうか、と思うところがありましたが、それは最後にまわします。

◆ グレイプフルーツはリンゴではない ◆◆
グレイプフルーツに話を戻します。すでにツイッターで書いたことですが、わたしはずいぶん記憶違いをしていて、あらら、と思いました。

ひとつは、グレイプフルーツの名付け親のこと。小野洋子が命名したのだと思っていたのですが、調べると、小野洋子の本のタイトルを借用して、ジョン・レノンが命名したのだそうです。うん、そういわれれば、そうだったような……。

もうひとつ、グレイプフルーツはアップル・レコードのアーティストだと思っていたのですが、左にあらず、RCAとEquinoxから45回転盤がリリースされたそうです。証拠写真をそろえたブログをご覧あれ。

ツイッターでそんなことをぶつぶついっていたら、Sさんが資料を調べてくださり、「日本ではVictorレーベルで「いとしのデライラ」「エレベーター」、RCAで「ディープ・ウォーター」、Statesideで「カモン・マリアンヌ」「ラウンド・ゴーイング・ラウンド」と出たようです」と知らせてくださいました。どうもありがとうございました>Sさん。

ということで、グレイプフルーツのデビュー曲でも聴いてみますか。

グレイプフルーツ Dear Delilah


わたしはこういう曲を連想します。いや、ちがうだろ、というご意見もございましょうが。

タイガース 花の首飾り


サイケデリック時代には、ストリングスを使ったバラッドもけっこうありましたなあ。「ビューティフル・サイケ・ポップ」とでもいいましょうか。むろん、これまたビートルズが敷いた路線に乗っているわけですが。

◆ 「ハード・ポップ宣言」とかいって ◆◆
ソフトロックという日本語英語が嫌いです。ロックンロールはドラムをぶっ叩いてナンボの音楽であり、ソフトというのは、トニー・ベネットみたいなもののことです。それをリトル・リチャードやエルヴィス・プレスリーを始祖に持つ音楽であるロックンロールとつなげて、概念を混乱させないでほしいものです。

アメリカ人がいうSunshine Popのほうが、石っころという言葉が使われていないだけまだマシです。これなら、ロックンロール・スピリットの欠如したヘナチョコ音楽に使っても概念衝突を起こしませんし、リトル・リチャードやエルヴィスははじめから除外していることも明白です。意味のわからない造語は大嫌いですが、サンシャイン・ポップなら、見た瞬間にイメージがわきます。たとえば、ラスカルズのBeautiful Morningが聞えてくるわけですよ。

ラスカルズ Beautiful Morning


じゃあ、わたしは「ハード・ロック」が好きなのか、というと、これまたノーです。「ハード・ロック」が、たとえば、ディープ・パープルやカクタス(わっはっは)を指すのなら、ですがね。

となると必然的に「パワー・ポップ」か、ですが、ナックのMy Sharonaを思い浮かべると、あれはメロディックとはいえず、どちらかというと、腰砕けハード・ロックという手触りでした。

ナック My Sharona


そもそも、70年代終わりの音楽なんか、わたしは好きではありませんでした。この時期、いいと思ったロック系の曲は(あろうことか)ゼップのFool in the Rainぐらいです。

レッド・ゼッペリン


この曲のジョン・ボーナムのプレイには興奮しました。ドラム好きなら、だれだって、このノリの複雑な味わいに、おや、と思うでしょう。ほかのことはほうっておくとして(つまり、嫌いないしは無関心だと婉曲にいったのだが)、ボーナムはやっぱりいいドラマーでした。はじめてGood Times Bad Timesを聴いたときは、子どもだからひっくり返りましたよ。

で、グレイプフルーツにはじまって、「わがホームグラウンド」の音楽をあれこれ聴いているうちに思ったのです。ヨーロッパのローカル・ヒットというテーマより、「ハード・ポップ」なんてテーマのほうが楽しいのではないだろうか、とね。

ということで、今回はどんどん脱線して、あちこちにジャンプしてみました。いずれやるかもしれない「ハード・ポップ」シリーズの序曲のつもりです。


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グレイプフルーツ
Around Grapefruit
Around Grapefruit


グレイプフルーツ BBC音源
アラウンド・ザ・BBC
アラウンド・ザ・BBC


ホリーズ
ベスト・オブ・ホリーズ(紙ジャケット仕様)
ベスト・オブ・ホリーズ(紙ジャケット仕様)


ラズベリーズ
Greatest
Greatest


ヤング・ラスカルズ デビュー盤
Young Rascals
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ラスカルズ ベスト盤
Very Best of
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ナック
Best of
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レッド・ゼッペリン
イン・スルー・ジ・アウト・ドア(紙ジャケット)
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by songsf4s | 2011-02-22 23:55
欧州ローカル線の旅 その3フランス シルヴィー・ヴァルタンの「アイドルを探せ」
 
また野暮天のエクサイトに文字を減らせとか云われたので、正しいタイトルをあげておきます。

欧州ローカル線の旅 その3フランス シルヴィー・ヴァルタンのLa Plus Belle pour Aller Danser(「アイドルを探せ」)

このシリーズでは、ビルボードにはチャートインしなかったけれど、日本ではヒットした60年代のヨーロッパのヒット曲をとりあげています。スウェーデンだ、デンマークだなんていうのならいいのですが、イギリス、フランス、イタリアとなると、この定義に当てはまる曲は山ほどあります。いや、じつは、あるのだと推測しているだけです。幼かったせいもあって、わたし自身が記憶しているのは一握りにすぎません。

60年代前半までは、日本の洋楽チャートは後年のように英米一辺倒ではなく、雑食的で、世界各国のヒット曲が混在していた、といわれますし、わたしもそのように認識していました。しかし、やはりアメリカの影響力は巨大です。

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その最大の証拠がビートルズです。1963年、イギリスでビートルマニアの嵐が吹き荒れたとき、日本ではなにも起こりませんでした。日本でビートルズがブームになったのは、1964年のアメリカでのビートルマニアの結果です。日本のチャートがヨーロッパに目配りしていたといっても、ビートルマニアの嵐にも反応しない程度のひどく鈍いものだったことになります。

その背景はなんとなく想像がつきます。ヨーロッパの音楽というのは非ロックンロール的で、女性シンガーが圧倒的に強かった、というのが第一点。日本のヨーロッパ大衆音楽通は、たぶん、ロックンロールなどには関心がなかったのです。

例外はクリフ・リチャードぐらいじゃないでしょうか。クリフにしたって日本でヒットしたのは「まっちにゆこーよサマーホリデイ」ですからね。エルヴィスのコピー商品だということすらわかりませんよ、あの曲では。いや、好きですけれどね。

クリフ・リチャード Summer Holiday(映画ヴァージョン)


もうひとつ、同じことの言い換えみたいなものですが、あの時代の日本人は、R&Bの臭みがあるものをあまり好まなかったということもいえるでしょう。エルヴィスを聴くのでも、Jailhouse RockやHound Dogよりも、Love Me Tenderだったわけで、ロック系といってもせいぜいReturn to Senderどまりでしょう。

わが愚兄は、わたしのようなヘヴィー・リスナーではなく、車にサイモン&ガーファンクルのCDをおいておくようなフツーの人ですが、そのフツーのリスナーが高校のころに買ってきた45の多くは、仏伊の女性シンガーの「歌謡曲」でした。

そのなかで(愚兄ではなく)「わたしが」もっともよく聴いたのは、当時を知る人なら、それが当たり前だというにちがいない、シルヴィー・ヴァルタンでした。

シルヴィー・ヴァルタン 映画『アイドルを探せ』よりLa Plus Belle pour Aller Danser


いま聴いてもやっぱり歌謡曲だと思いますが、でも、やはりイントロがすばらしいと感じます。子どものときは、このアップライト・ベースとキック・ドラムのコンビネーションがつくりだす深い音が大好きでした。

いまの耳で聴いても、タイムは精確、フィルインのパラディドルでもぜんぜん突っ込んでいなくて、フランスのセッション・ドラマーのキングなのではないかと感じさせます。このプレイヤーなら、ハリウッドでも一流になれたでしょう。アール・パーマー、ハル・ブレイン、ジム・ゴードン、ジム・ケルトナーには及びませんが、NYのゲーリー・チェスターとは互角、ジョン・グェランやラス・カンケルなどより数段上の技術を持っています。まあ、アメリカではもっとロック的なプレイ・スタイルを求められるので、現実にはタイム以外のことも重要ですが。

◆ 映画『アイドルを探せ』 ◆◆
わたしと同世代ないしは上の方はご記憶であろうように、『アイドルを探せ』という映画があり、ヴァルタンの同題の曲は、少なくとも日本ではその主題歌としてリリースされました。

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じつは、小学校六年のときだったと思いますが、わたしは『アイドルを探せ』を見ました。しかし、ガムでギターに宝石を貼りつけることと、ジョニー・アリデイってどこがいいんだろう、むちゃくちゃにカッコ悪いじゃん、と思ったこと以外、ほとんど記憶がありません。

さっき思いついて、裏から手をまわして劣悪なTVリップを手に入れ、急いで早送りで見ただけですが、馬鹿映画ではあるものの、悪くはないことを確認しました。いや、間違えないでくださいよ。確実に馬鹿映画です。でも、馬鹿映画が好きな人にとっては楽しいフィルムであろうといっているだけで、馬鹿映画が嫌いな人が見たら怒ります。保証します。

ある男が馬鹿女にそそのかされて宝石泥棒をしたはいいけれど、警官に追われて楽器屋に飛び込み、セミアコのギターのボディーのなかに、ガムを使って宝石を貼りつけて逃げます。これだけですでに馬鹿映画らしさ横溢です。

翌日、馬鹿女が宝石をとりに楽器屋に行くと、すでにギターは売れていて、宝石はギターとともに消えたとわかります。男のほうは、愚かだったと反省し(当たり前だろ!)、宝石を持ち主に返そうと考え、ギター/宝石探しに出かけます。という設定で、つぎつぎに「アイドル」に会い、ギターのFホールのなかを探るという設定なので、その行脚にしたがって、じゃんじゃん歌が流れるというしだいです。

話としてはどうということはなく、国を問わず、あのころはよくあった低予算若者音楽映画に共通する手触りがありますが、おおむね音楽が楽しいので、それなりに面白く感じられます(いい映画などとは一言も云っていないので、そのへん、お間違えなきよう)。

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いうまでもなくシルヴィー・ヴァルタンの曲はけっこうなのですが、ほかにも面白い曲がありますし、スコアも悪くありません。いや、まあ、フランス語って、どうしてこう8ビートとケンカするのだろうと呆れますけれどね。昔、日本語は「ロック」には乗らないと断言し、はっぴいえんどに喧嘩を売った人がいましたが、フランス語のほうがよほど不似合いです。喧嘩を売るなら、相手はジョニー・アリデイにしておけばよかったのに。

TVリップから切り出したのでひどい音質ですが、オーケストラによるメイン・タイトルをサンプルとしてアップしました。「アイドルを探せ」にはじまって、複数の曲をつなげたメドレーになっています。ミュージカルの序曲によくある、これから登場する曲のコラージュという趣向なのだと思います。ほかの曲を知らないので、あてずっぽうで云っているだけですが。

サンプル OST "Cherchez l'idole"

ジェリー・リー・ルイスとアーサー・ブラウンとドラキュラを足して三で割ったようなシンガーも出てきて、パンクなパフォーマンスを見せ、ほうほう、と思いますが、どこかちぐはぐで、垢抜けません。フランスはやっぱり女性シンガーのほうが圧倒的に面白くて、男は願い下げだとつくづく思います。日本ではヴァルタンは大人気だったいっぽうで、ジョニー・アリデイは無視されたのも当然です。とにかく、女性陣はみなそれなりの魅力があるので、OST盤を探してみようという気になりました。

昔は客観的な見方はできませんでしたが、いまになると、フランスも結局、イギリスや日本と同じ、アメリカ文化の圧倒的な影響のもとにあったのだと確認できる映画でもあります。

60年代前半、日本の音楽シーンにはアメリカ音楽のコピー商品があふれていましたが、『アイドルを探せ』を見ていると、わが身を見るようで、気恥ずかしくなるほどアメリカ文化のコピーだらけです。カウボーイ映画の撮影シーンなんていうのがあって、(フランス的におそろしくバイアスのかかった)カントリー・ミュージック風のものが流れたりするんですからね。

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そういえば、ジョニー・アリデイがカウボーイの格好をする映画を見たことを思い出しました(相手役はたぶんシルヴィー・ヴァルタンで、それが理由で見たのだと思う)。あれは小林旭のノリだったことになりますな。

なんとなく、「だからわたしはフランス文化に興味がない」みたいな記事になってしまいました。アリデイ大嫌い、でも、ヴァルタン大好き、なのですが、中学に入学するとともにフランス音楽に対する関心はほぼゼロになり、ヴァルタンもフランス・ギャルもシェイラも忘却の彼方へと去って行ったのでした。


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シルヴィー・ヴァルタン
ベスト・オブ・シルヴィ・バルタン
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映画『アイドルを探せ』
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by songsf4s | 2011-02-21 23:38
欧州ローカル線の旅その2 スウェーデン Stop the Music by Lenne & the Lee Kings
 
この「欧州ローカル線の旅」シリーズは、いまさらのように説明すると、ヨーロッパの一部と日本ではヒットしたけれど、ビルボード・チャートには影も形もない60年代の曲を聴こうというものです。二回目の今日はスウェーデンのLenne & Lee Kingsの1965年のヒット、Stop the Musicです。

日本の盤の表記は「レーン&ザ・リー・キングス」でしたが、例によって、きわめて疑わしいと思います。固有名詞発音辞典は、どこの国を起源とした場合かを指定していませんが、Lenneの最後のEにアクセントをつけ、「ラネイ」としています。どなたか、テレビ出演時などの紹介つきのクリップか何かをご存知なら、ご教示ください。

ごたくはこれくらいにして、オールドタイマーには懐かしいであろう現物をいってみましょう。

ラネイ&ザ・リー・キングス


わっはっは。昔も、なんだか歌謡曲みたいだなあと思いましたが、いま聴くと、鶴岡雅義と東京ロマンチカがカヴァーすればベスト・マッチだったのに、と感じます。歌謡曲を通り越して、ほとんど演歌。

リー・キングスはいまでもやっているのか、新しめのライヴ・クリップがありました。

リー・キングス ライヴ


ほら、ストックホルム・ロマンチカてな哀調を帯びた演歌じゃないですか。

それはさておき、いま振り返って、これがヨーロッパや日本でヒットしたのはよくわかりますし、そのコインの裏側として、アメリカではまったくウケないであろうことは、リリースするまでもなく明白です。

ただし、ドラムのタイムやプレイはまずまずで、たとえば、明日のレコーディングに呼べるドラマーはチャーリー・ワッツかジンジャー・ベイカーかリー・キングスのドラマーしかいないといわれたら、わたしは躊躇せずにリー・キングスのドラマーを選びます。

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それから、ギターの低音弦のサウンドもおおいに魅力的です。子どものころは、こういうちょっとしたところのサウンドにすごく惹かれて、こんな音が出せたらいいのになあ、と憧れたものでした。

◆ カヴァー各種 ◆◆
日本でも複数のグループ・サウンズがカヴァーしていたと思いますが、調べてみるとぞろぞろ出てきて、少々めげました。なんたって、今夜は時間がなくてあせっているのです!

まず、同じ北欧のデンマークへと移動しましょうか。

ヒットメイカーズ


リー・キングスは鄙には稀なタイムの安定ぶりでしたが、ヒットメイカーズを聴くと、やっぱり、あれは稀、こっちがふつうか、という感じの不安定なビートで、むしろ納得です。

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つづいてイギリスのディック・ジョーダンを。日本では知られていないシンガーで、以前、O旦那にStop the Music各種を聴かせていただいたときにはじめて知りました。

Dick Jordan - Stop the Music


このドラム、すごくうまいというほどではないのですが、4ビートの出身ではないかと思わせる雰囲気でグッド・フィーリンがあります。ギターの使い方も好ましく、なかなかけっこうなカヴァーだと思います。

オリジナルのリー・キングス盤がかなり湿り気を帯びているのに対して、ヒットメイカーズ、ディック・ジョーダン、方向性はロンパリ(じゃなくて、片やストックホルムだから、「ロンスト」か)ですが、湿り気を除く方向にシフトしたという意味では同じです。しかし、日本はむしろ湿度を増大させる方向だったような記憶があります。今回は現物を聴けなかったので、思い過ごしかもしれませんが。

時間切れなので、ほかに拾っておいた最近のものを二種あげて終わりとします。最初はわたしの守備範囲外のアーティストなのでなにも知りません。つぎの岡本信は、えーと、ジャガーズのヴォーカル、でよかったんでしたっけ? 昔、何度か横須賀駅ですれちがったのに!

Kiau



岡本信



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リー・キングス
The Lee Kings Best Of
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by songsf4s | 2011-02-19 23:49
ビリー・メイのスコアとランディー・ニューマンの挿入歌(映画『トニー・ローム/殺しの追跡』その2)
 
『トニー・ローム 殺しの追跡』は、映画評論家的なものいいをすると、あまりいい言葉で語られないのではないかと思います。

私立探偵もの、ハードボイルド・ミステリーは、本格ミステリーとはちがうのですが、それでも、究極において、秀作、傑作といわれるものは、やはり、謎解きの側面においてもすぐれているものがほとんどでしょう。

『トニー・ローム』の欠点は、謎解きないしは犯人探しを物語展開の原動力としながら、ミステリー的興趣がうすいこと、そして、やはりフランク・シナトラはアクション映画の身のこなしは得手ではないということです。

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いや、アクションの基本の中の基本である立ち姿がまったく無様なハリソン・フォードが、何本もアクション映画をやっているのだから、ごまかす方法がないわけではないのですが、ハードボイルド的な台詞の味に頼りすぎて、キャメラワークや編集でシナトラの動きのキレのなさを補うことを怠ったように感じます。

しかし、1967年あるいは68年という時期の自分の映画館における姿を思い浮かべ、この程度の出来なら、こんなものか、と思って映画館を出ただろうと思いました。「寛大」という表現でいいのかどうか微妙なところですが、すごい映画にぶつかるなどということを期待していなかったのだと思います。

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たとえていえば、昔はテレビドラマを見るような、日常的な感覚で映画館に行っていたので、傑作ではないテレビドラマを見ても怒ったりしないように、すごい、とはいえない映画を見ても、とくにムッとなったりはしませんでした。

たぶん、料金が安かったことと、大量に見ていたことが影響しているのでしょうが、極論するなら、映画の出来不出来以前に、映画館にいること自体が好きだったし、そもそもこちらはまだ子ども、映画の出来がいいの悪いのという審美眼の持ち合わせはありませんでした。すべてはフレッシュで、なにを見てもそれなりに得るものがあったり、それなりに楽しかったのでしょう。

『トニー・ローム』は、そういう自分の小学校から中学にいたる時期の気分が思い出されるような、「ほどほどの映画」だと感じます。あのころは、こういうほどほどの映画をとくに選ばずに、いま、そこの映画館にかかっているからというだけの理由で、大量に見たものでした。たぶん、つくるほうだって、力まずに、そこそこの利益を上げればよいと思って、深く考えずに撮っていたのだろうと思います。

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◆ ビリー・メイのスコア ◆◆
サウンドトラックのほうも、あの時代はそれほど注目されていなかったし、いまのようになんでもかんでも盤になり、大作になると、すぐに完全盤ボックスセットが出るなんてことはまったくなかったので、力まずに、リラックスしたものになっています。

前回ふれたように、『トニー・ローム』の主題歌を書いたのはリー・ヘイズルウッドですが、スコアはキャピトル時代を中心に、シナトラのアルバムをたくさんアレンジしたビリー・メイが書いています。

メイの仕事の中心はフランク・シナトラやナット・キング・コールのようなシンガーの盤のアレンジであり、いっぽうでテレビ・シリーズのスコアを書いていますが、本編のスコアはほとんどありません。『トニー・ローム』はメイにとっては数少ないフィーチャー映画のスコアなのです。シナトラの要求ではないでしょうか。

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フランク・シナトラとビリー・メイ。よけいなことだが、シナトラの背中の横に見える、顔を下に向けたチェリストは、肝っ玉母さんエリナー・スラトキンのような気がする。

とりあえず一曲いってみましょう。今回のサンプルはすべて映画から切り出したものなので、音質はとくによくありませんし、台詞がかぶっていることが多く、モノーラルです。もちろん、タイトルもわたしが区別の便宜につけたものにすぎません。

サンプル You Got a Luck

主題歌はべつにあるため、インストゥルメンタルのテーマははっきりしないのですが、この曲の冒頭のメロディーがライトモティーフのように何度か、異なったアレンジのコンテクストで登場します。

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テレビを中心に仕事をしていたということとは関係なく、『トニー・ローム』のスコアを聴いていて、70年代のアメリカ製テレビドラマのスコアを思いだしました。場面転換に特徴があると感じます。

もう一曲、こんどはアクション・シーンから、その後のゆるいテンポのシーンという流れを。

サンプル Never Saw

◆ ランディー・ニューマン=ビリー・メイの挿入歌 ◆◆
スコアのほかに、二曲のヴォーカル曲もあります。クレジットはランディー・ニューマンとビリー・メイの共作となっていますが、どちらもシンプルなポップ・チューンで、ランデュー・ニューマンが書いた曲に、音楽監督としてビリー・メイが副次的にクレジットを得たのだろうと想像しています。

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一曲目のSomething Here Inside Meは、繰り返しギャグのように三回登場します。シナトラが住んでいるボートと同じ桟橋に繋留したボートで、ハネムーンをすごしているカップルがあり、シナトラが通りかかるたびに、新婦が亭主を甘い声で呼んでいるのが聞こえるのですが、そのボートから流れてくる「現実音」の曲です。短いので、直前のアクション・シーンのスコアとつながったままにしてあります。

サンプル Gunshot-Something Here Inside Me

なんというか、クリシェの塊みたいな、あまりにもどこにでもありそうな曲で、かえって可笑しくなってしまいます。この時期のランディー・ニューマンは、まだ後年のような皮肉屋にはなっていないと思うのですが、彼のアーティスト・イメージに、こちらの耳も狂わされます。

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飛んだり跳ねたり、滑ったり転んだりは、フランク・シナトラのレパートリーにはなかったのかもしれないが、それでもなお、一度、シナトラにフィリップ・マーロウを演じさせたかったと思う。

もう一曲もラジオから流れてくる現実音という設定です。

サンプル Hard Times

これまた、リラックスしすぎというか、ダレているというか、やる気のないところがなんとも可笑しい曲、という風に聞こえてしまいます。たんに手を抜いただけにすぎず、こちらの考えすぎでしょうが! でも、じつにキャンプな味わいがあり、まじめに聴いたりするのは変態だと、笑いがこみ上げてきます。

冒頭、だれかがタイミングを間違えていますが(シンガーかドラマーか?)、そのままにして、リテイクしていないところも、なんだか、わざと投げやりにやっているのではないかと思ってしまいます。考えすぎ!

ナンシー・シナトラ歌う主題歌は、どこからどう見てもハル・ブレインですが、スコアや挿入歌にはハル・ブレインと断定できるものはありません。ジャズ系のセッション・ドラマーだと思います。ただし、このHard Timesだけは微妙なところがあります。でも、ハルである可能性はやはりかなり低いでしょう。

以上でトニー・ローム・シリーズの第一作はおしまいです。第二作も「積読」になっていて、すぐに見ればいいのでしょうが、そうは問屋がおろさないでしょうから、またギターものをはさんだりで、ちょっと間をおくことにします。

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ナンシー・シナトラ
Nancy in London
Nancy in London


映画DVD
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by songsf4s | 2011-02-18 23:09 | 映画・TV音楽
Tony Rome by Nancy Sinatra(映画『トニー・ローム/殺しの追跡』主題歌)
 
このところお客さんが多いのに、わたしのほうは書く気力に満ちているとはいえず、ツイッターでちょっと書いてしまうと、もう十分という気になってしまいます。

近ごろ見た映画も、聴いた音楽も、だいたいツイッターのほうに、その場で書いてしまうので、それでいわば「ガス抜き」になり、もう書くのが面倒になってしまう、という傾向があります。

しかし、明日は時間がとれず、今日更新しておかないとまずいだろうと思い、すでにツイッターでとりあげ、書くべきことは書いてしまったのですが、当家のお客さんの数より、ツイッターでわたしをフォローなさっている方はずっと少ないので、わたしをフォローなさっている方にはご容赦を願うことにして、フランク・シナトラ主演の『トニー・ローム』について再度駄言を弄させていただきます。

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◆ ナンシーと彼女のドラマー ◆◆
たとえば『オーシャンと十一人の仲間』だとか『クイーン・メリー号襲撃』だとか『上流社会』だとか『波も涙もあたたかい』だとか、シナトラの映画はかなり見ているのですが、60年代のものはあまり見ていないので、まとめて見てみようと思い立ちました。

あまりアクションが向いているとは思えないのですが、フランク・シナトラも私立探偵ものをやっています。この「トニー・ローム」シリーズは二本つくられていますが、今回はまず第一作目の『トニー・ローム』です。

映画Tony Rome パート1

開巻いきなり、ハル・ブレイン丸出しのキック・ドラムが鳴り響き、オッと、となります。ナンシー・シナトラ歌うトニー・ロームのテーマです。

ナンシー・シナトラ Tony Rome


いやはや、ハル・ブレインという人は、しばしばハル・ブレイン丸出しのプレイをするのですが、これほど露骨にハル・ブレインしていると、やはり大笑いしてしまいます。気持よくタムタムを叩きまくっていて、ハル・ブレインはやっぱりこうでなくちゃな、です。

音楽関係のクレジットはやや複雑です。

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ということで、主題歌はナンシー・シナトラだから、彼女の「座付きソングライター」であるリー・ヘイズルウッドが書いていますが、スコアは「シナトラのアレンジャー」であるビリー・メイが書いています。さらに、まだ駆け出しだったランディー・ニューマンも一曲提供していますが、このあたりはどういう経緯でそうなったかは寡聞にして知りません。

まだ7のほうに音声トラックだけを切り出すソフトウェアを入れていないため、今日はスコアの切り出しはしません。できれば、次回にやってみようと思います。2000にもどってやったほうが早そうですが!

いずれにしても、スコアを細かく検討したわけではないので、切り出しの環境が整っていても、今日は無理なのですが。それで終わりでは愛想がないような気もするので、高音質のTony Romeをサンプルにしました。

サンプル Nancy Sinatra "Tony Rome"

◆ ダーティー・ビジネス ◆◆
私立探偵ものというのは、小説でも映画でも、台詞がひとつの魅力になることが多いものです。『トニー・ローム』は、フランク・シナトラに派手なアクションをさせられない欠点を、台詞で補うような形になっていて、何度かけらけら笑いました。

以下はフランク・シナトラとジル・セイント・ジョンの会話。

"I never met a private detective before. Kind of a dirty business, isn't it?"
"Maybe. Only thing worse is the people who hire them."
"How'd you get into it?"
"Well, there's a compulsion among the lower classes to get money to eat once in a while. Maybe you heard the rumor about it."
"All right. So I'm rich. Why get mad at me?"
"Because it's not nice manners to tell a man who's in a dirty business that he's in the dirty business."

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「探偵さんなんてはじめて会ったわ。ちょっと汚いお仕事なんでしょ?」
「かもしれない。探偵より汚いのは探偵の雇い主だけだ」
「どうしてそんなお仕事をはじめたの」
「下層階級の人間は、ときおりなにか食べるために金を手に入れようという抑えがたい衝動に駆られることがあるものでね。きみもそういう話を小耳に挟んだことがあるかもしれないけれど」
「わかったわよ。そう、あたしは金持ちよ。だからってそんなに怒らなくてもいいでしょ」
「汚い仕事をしている人間に向かって、汚い仕事をしているのね、なんていうのは礼儀正しいこととはいえないじゃないか」

◆ It took me tree ◆◆
もうひとついきましょうか。同じくフランク・シナトラとジル・セイント・ジョンの会話。今度はもう少し親しくなってからの、ナイタリーでの会話です。

"You weren't very choosy, were you?"
"Women can't afford to be. I learned that early. I started out wanting to marry a man...who was handsome, rich and witty. I got all of it. It took me three husbands to do it."

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「きみはあまりえり好みしないんだな」
「女はそんな贅沢をいってられないの。若いころに思い知ったわ。最初はね、ハンサムで、お金持ちで、話の面白い人と結婚したかったの。三つとも全部かなったわよ。三人の男が必要だったけどね」

余談。ジル・セイント・ジョンのほかに、ハードボイルドもののおきまり、金持のわがまま娘も登場します。これが『ロリータ』のSue Lyon。このスペルを見れば、ふつう、だれだって「スー・ライアン」または「ライオン」と読むはずですが、映画輸入会社は特殊な美学をもっているので、『ロリータ』では「スー・リオン」と表記されました。

ということで、「ライアン」なのだという証拠を貼り付けます。日本でいえば「私は誰でしょう」みたいなテレビ番組(いや、「笑っていいとも」でもそんなコーナーがかつてあったけれど)にスー・ライアンが出演したときのクリップです。

スー・ライアン


ユーチューブには比較的最近のスー・リオン=ライアンのインタヴューがあるのですが、なかなか知的な女性だということがわかりました。彼女が女優として成功しなかった理由が語られています。

スー・リオン=ライアン・インタヴュー


次回は、がんばって、ビリー・メイのスコアを切り出す予定です。


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ナンシー・シナトラ
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by songsf4s | 2011-02-15 23:44 | 映画・TV音楽
欧州ローカル線の旅 デイヴィッド・マクウィリアムズのThe Days of Pearly Spencer
 
昨日、60年代終わりの曲を聴いていて、そこから少しスライドし、デイヴィッド・マクウィリアムズのThe Days of Pearly Spencerのことを思い出しました。

あの時代にはよくわかっていませんでしたが、この曲はイギリスの、ないしはヨーロッパだけのローカル・ヒットで、アメリカでは影も形もありません。リリースしたのかもしれませんが、ビルボード・チャートにはかすっていないのです。

80年代に昔の盤を集めはじめたとき、思い出して、買おうとしたのですが、まったく見当たりませんでした。やはりビルボード・チャート圏外というのは、リイシューでは非常に弱いのです。

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しかし、そういう苦労というのはいつかは終わるもので、横浜のウリー・ブーリーという店で再会しました。あの店には長くつづいてほしいので、宣伝しちゃいますが、中区曙町になるのか、伊勢佐木町の裏手、中郵便局の斜向かいぐらいにあるバー&カフェです。店が開くのは日暮れごろですが、アルコール、ノンアルコールどちらもオーケイです。店内を飾るLPと45のスリーヴを見ているだけでも楽しくなること請け合いです。

ウリー・ブーリーで聴けたときは、やれやれ、やっと見つけたと思いましたが、その後、ユーチューブなんてものが生まれたし、CDリイシューもあったりで、昔の苦労いまいずこです。

デイヴィッド・マクウィリアムズ


大づかみに云って好きだったのは二点。ストリング・アレンジメント、メガフォンを通したような声で歌われるコーラス、このふたつです。弦は、オブリガートというより、メロディーといっていいほどで、ヴォーカルのラインよりよほどメロディックにつくってあります。

大人になって聴きなおしても、そのあたりは変わりませんが、プラス、ドラムとベースのアレンジ、プレイも魅力があると感じます。でも、あの変な時代にふさわしい変な弦で、この曲は勝負に勝ったのでしょう。

それにしても、この歌詞はなんなの、といまになって思います。当時は、The days of Pearly Spencer, the race is almost runしか聞こえていないので、中身なんか気にしていませんでしたけれどね。日本語のカヴァーもあるのですが、意味不明の歌詞はあっさりゴミ箱に叩き込み、凡庸愚劣なラヴ・ソングにして歌っています。

◆ カヴァー各種 ◆◆
80年代にまったく影も形もなくて苦労したことが記憶に焼きついているせいで、こんな曲はもうだれも覚えていないのだろうと思っていたら、あにはからんや、調べたらカヴァーが多いのに愕然としました。ほんとうは、この記事は、ヨーロッパのローカル・ヒットを三つばかり並べるはずだったのに、パーリー・スペンサーが多すぎるせいで、他の曲はオミットせざるをなくなったほどです。

もちろん、オリジナルの段階で門前払いしたアメリカのカヴァーは見当たらず、ヨーロッパと日本(とひょっとしたらラテン・アメリカも)のものです。オリジナル盤はイギリスのみならず、ヨーロッパの複数の国でヒットしたのだろうと想像します。

そのうちいくつかを。

レイモン・ルフェーヴル


ストリングスが印象的な曲ですから、オーケストラのカヴァーがあるのは当然すぎるほど当然です。

フランク・プールセル


ほかにカラヴェリ・ストリングスのものもありますが、わたしの好みにもっとも合うのはレイモン・ルフェーヴル盤です。ストリングスの音がエッジーなところが楽しめます。

それほどいいものがなくてちょっと迷いましたが、ドイツのオルガン・プレイヤー、フランツ・ランベルトのインストをサンプルにしました。いつも地味なのばかりで恐縮至極。

サンプル Franz Rambert "The Days of Pearly Spencer"

もうひとつ、90年代の録音をいってみます。

マーク・アーモンド


これはこれで悪くないような気がします。フランツ・ランベルトはコーダをつけていますが、マーク・アーモンド盤を参考にしたのかもしれません。

この曲がビルボードにチャート・インしなかったのは、なんとなくわかります。ストリングスの扱いがヨーロッパ的で、アメリカのリスナーのマジョリティーの好みには合わなかったのではないでしょうか。ちょっとパセティックで湿度やや高めなのも、非米的です。

しかし、そうはいっても、そうした欧州的臭みは、それほど強いわけではなく、すごく微妙なit's a thin line between love and hateだなあ、と思います。アラン・プライスがついにアメリカではヒットがなかったことに通底しているかもしれません。



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デイヴィッド・マクウィリアムズ
The Days of David McWilliams
The Days of David McWilliams


レイモン・ルフェーヴル
追悼 レイモン・ルフェーヴル 栄光の軌跡
追悼 レイモン・ルフェーヴル 栄光の軌跡


フランツ・ランベルト
Please Don't Go: Die Hits des Jahres 92
Please Don't Go: Die Hits des Jahres 92


マーク・アーモンド
Tenement Symphony
Tenement Symphony
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by songsf4s | 2011-02-12 23:49
鬼子ギター・インスト三種詰め合わせ ライノセラスのApricot Brandyほか
 
とくになにがどうしたというわけではないのですが、ふと、子どものときにラジオで聴いたインスト曲を思い出しました。その曲が、ギター・インストとしてはちょっと外道で、それからそれへと連想で出てきた曲がありました。

ギター・インストといったとき、大多数の人は60年代のギター・コンボを思い浮かべるのではないでしょうか。たとえば、シャドウズとかヴェンチャーズとか、すこしはずれてもスプートニクスとか、アストロノウツとか、アトランティックスとか、そういったタイプのバンドのサウンドです。

◆ 鬼子その1 ジェフ・ベック ◆◆
そのつもりでいたら、ズルッとなった最初はなんだっただろうかと考えたのですが、よくわからないまま、こいつを思い出しました。

ジェフ・ベック Love Is Blue


ラジオからこれが流れてきたときは、うーむ、でした。いま聴いてもやっぱり、うーむ、以外の言葉がなかなか出てきません。面白い、のかなあ。中学生は、ちがうんじゃないだろうか、と首をひねりました。初老になった中学生も、やっぱり、これはベックのキャリアの最大の危機だったかも、なんて思います。でも、不思議なことに、All Shook Upなんかよりは聴く気になったりします。

ジェフ・ベック・グループ All Shook Up


◆ 鬼子その2 ライノセラス ◆◆
ラジオで聴いて、おっ、と身を乗り出したのは、ライノセラスという、まったく未知のグループのApricot Brandyという曲でした。あきれたことに、まだやっているらしく、ユーチューブには最近のライヴしかないため、サンプルをアップしました。

サンプル Rhinoceros "Apricot Brandy"

中学生はこういう音が好きだからなあ、と初老の男は苦笑しながらも、大昔の自分の嗜好にうなずいちゃったりするわけです、こういうギターの歪み方は。ただ、竜頭蛇尾、羊頭狗肉とはこのことで、イントロの勢いがつづかないのが、またまた苦笑いで、それでこの曲はビルボードの下のほうをちょっとウロウロするだけで終わってしまったのでしょう。

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しかし、68年ともなると、もうインストなんかヒットしないのでありまして、そういう意味では、このApricot Brandyは貴重なマイナー・ヒットでした。ギター・インストがこういう方向に向かった並行宇宙があったとしたら、わたしはけっこうヘヴィーなギター・インストのブームに適応しちゃっただろうと思います。もちろん、われわれの宇宙ではそういうことは起きなかったのですが。

◆ 鬼子その3 ポコ ◆◆
翌年のリリースのようですが、わたしが聴いたのはさらにその翌年だろうと思います。こんどはライノセラスとは逆方向のギター・インストが好きになりました。ポコのデビュー盤に収録された曲です。

サンプル Poco "Grand Junction"

ドブロという楽器をよく耳にするようになったのは60年代終わりのことでしょう。なにが最初だったなんていうはっきりした記憶はありませんが、バッファロー・スプリングフィールドのA Child's Claim To Fameあたりかもしれません。プレイしたのはほかならぬジェイムズ・バートンでした。

バッファロー・スプリングフィールド A Child's Claim to Fame


ポコに戻りますが、リッチー・フューレイはいつも好きではなかったので、買ったのはデビュー盤と、大昔に記事にした「LP密輸大作戦」のときに、ものの弾みで邦貨700円相当で入手したGood Feelin' to Knowだけです。

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デビュー盤はまずまずの出来で、三曲だけ、よく聴きました。そのうちのひとつがGrand Junctionです。こういうのばかりだったら、ポコ・ファンになったかもしれませんが。それから、この曲のドラミングは、スネアのチューニングも含めておおいに好みでした。いま聴いても、タイムはちょっと早く、失敗フィルインもありますが、やはり総じていいドラミングだと思います。

つらつら考えれば、まだほかにも道を踏み外したインストというのはあると思うのですが、今日はこの三種しか思い出せませんでした。なにかあれば、続篇をやることにします。


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ジェフ・ベック
Truth (Exp)
Truth (Exp)


ライノセラス
Rhinoceros
Rhinoceros


Various Artists incl. Rhinoceros
Rock Instrumental Classics 3: 70's
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ポコ(ボックス)
Original Album Classic
Original Album Classic


ポコ
Pickin Up the Pieces
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by songsf4s | 2011-02-11 23:50
「♪みんなみんな咲いて散る」 舟木一夫「花咲く乙女たち」のおやおや
 
話があっちこっちに飛んで恐縮ですが、まあ、大人のリスナー(あるいはムーヴィー・ゴーアーでもリーダーでもなんでもいいが)というのは、だいたいむちゃくちゃなもので、年代もジャンルもビロ~ンと広がっちゃっているものです。わたしも例外ではないというだけのこととご理解あられよ。

で、今日は舟木一夫です。といわれても困るでしょうね。ウォーキングでなにがつらいといって、歩道の狭いトンネルほどつらいものはありません。いや、これでは話が早すぎるので、ゆっくりいいます。

元からよく歩いていたのですが、最近は距離を倍増、三倍増させ、熱心に歩いています。で、国道16号線というところをしばしば通ります。16号線というのはもともと軍用道路で、早くから開通したらしいのです。昔にしてはめずらしく広い自動車道だったらしいのですが(上下併せて四車線)、民間に対する配慮はゼロなので、トンネル内部には、人の歩く余裕がほとんどありません。

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典型的な16号線の軍用トンネル「逸見隧道」

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歩道は狭く、人がすれ違うにも体を斜交いにしなければならない。

これが嫌で嫌で、16号のトンネルを避けるルートをいろいろ試したのですが、なかなかいいものがありません。そりゃそうですよ。トンネルというのは、難路を避けるための打開策として掘られるものなのだから、それを避けたら、必然的に遠回りするか、歩きにくい道へ入り込みます。

長距離を歩くときは、アップス&ダウンズを避け、できるだけ平らなルートを通りたくなるものです。上りは体力を大きく消耗させ、下りはすでに傷んでいる足首や膝に大きなストレスを与えます。

そんなしだいで、結局、出発点に舞い戻り、トンネルを迂回しないことも多くなりました。トンネル歩きの苦痛をやわらげる簡単な手段は、大声で歌をうたうことです。やれやれ、やっと音楽につながりました。

それで、あれこれ「いつもの音楽」をうたってみたのです。しかし、歌詞を全部覚えている曲というのは、驚いたことに皆無なのです。わからないところをナンセンス・シラブルで置き換えるっていうのが、じつに悔しいのですよ。わかります?

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こちらは最新鋭トンネル。明るく、広く、エキゾーストの臭気もなし、騒音も抑制されている。

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吸音板なのか、排気取入れ口なのか、無数の穴が開いたパネルが貼りめぐらされている。ここで歌っても、録音スタジオのようにデッドで、残響がない。このトンネルのなかではエンジン音が共鳴することもなく、いやな低周波音に悩まされることもない。

携帯プレイヤーで音楽を聴きながら歩くというのは、わたしはしません。ウォーキングというのはけっこう危険なものです。とくにうしろから来る自転車は恐ろしいので、耳をふさぐのは好ましくないのです。だから、歌詞を参照するためにその曲を聴くということもできません。

となれば、あらかじめ記憶するしかないことになります。やってみました。しかし、驚いたことに、というか、年齢からいって当然というか、記憶というのもなかなかできないのです。El Pasoを記憶しようだなんて法外なことを思ったわけではありませんよ。昔からよく鼻歌にしていたLullaby in Ragtime(ダニー・ケイ盤に関する補足記事もあり)を完璧に覚えようとしただけです。

グレイトフル・デッド El Paso(72年のヨーロッパ・ツアーのクリップ。そんなの見たことないぞ! ほしい! ツアーの三枚組はキース・ゴッドショーのお目見えアルバムだった。ビル・クルツマンのスネアもベストのチューニングに近い。わずかに低くなってしまったが)



思ったよりいい94年のツアーのEl Paso(やっぱりブレント・ミドランドさえいなければデッドは楽しめる。80年代デッドはないものと思い、90年代を聴いたほうがいい)



ついでに聴いた91年のEyes of the Worldの前半(ひとり多いキーボードはだれ、と思ったら、ブルース・ホーンズビーだそうな。ミドランドがいないデッドはいい!)



同じく91年版Eyes of the Worldの後半(この曲はプレイすると全員トランス状態に入るのだろうなあ)



話があらぬほうにいきましたが、結局、もう英語の歌をフル・ヴァース記憶するのはむずかしいと認めざるをえなくなりました。

そこで一気に方向転換、日本語の曲にしようと考えたわけですな。筋が通っているでしょう? 筋が通らないのは、はっぴいえんどかなにかにすればいいのに、いきなり歌謡曲にいってしまったことです。

まず小林旭「ギターを持った渡り鳥」に挑戦。いや、うたえるかどうかよりも、大いなる問題は歌詞を記憶できるかどうかなのです。音なし、メモなし、あくまでも出発前に歌詞を見て記憶し、トンネルを歩きながら記憶だけでうたうわけで、確認と修正を繰り返して、結局、フル・ヴァースを記憶するのに三日かかりました。

つぎが石川セリの「八月の濡れた砂」これはセカンド・ヴァースまでしかないので、二日でOKでした。英語は無理でも、日本語なら、まだ歌詞を記憶できるとわかってホッとしました。

で、つぎになにを記憶しようかとつらつら考えて出てきたのは、ひとつはフランク永井の「夜霧の第二国道」、もうひとつが、そう舟木一夫の「花咲く乙女たち」だったのです。

舟木一夫 花咲く乙女たち


子供のころ、冗談抜きでこの曲が好きでした。間奏が面白いのです。あとになって、ああ、オーギュメントかと納得しましたが、コードの扱いが当時の歌謡曲のなかでは変わっていて耳立ったものです。作曲は遠藤実。

作詞はなんと西條八十! 私が子供のときに、この人がまだ現役だったのかと思うと、なんだか妙な気分です。昭和戦前の人という印象ですから。「高校三年生」と同じく、「花咲く乙女たち」も丘灯至夫かと思っていました。

で、改めて歌詞をまじめに聴いて、えっ、こんなだったっけ、と思いました。

カトレアのようにはでな人
鈴蘭のように愛らしく
また勿忘草の花に似て
ひよわでさみしい目をした娘

みんなみんなどこへ行く
町に花咲く乙女たちよ

あの道の角ですれ違い
高原の旅で歌うたい
また月夜の銀の波の上
並んでボートをこいだ人

みんなみんないまはない
町に花咲く乙女たちよ

黒髪を長くなびかせて
春風のように笑うきみ
ああ、だれもがいつか恋をして
離れて嫁いでゆく人か

みんなみんな咲いて散る
町に花咲く乙女たちよ

ファースト・ヴァース、ファースト・コーラスは丸ごと記憶していました。問題はセカンドとサードのコーラスです。「みんなみんないまはない」って、ないのかよー、とツッコミましたよ。「ない」と断定されちゃうと、「乙女」たちは怒るでしょう。

サード・コーラスだってひどいものです。「みんなみんな咲いて散る」ですよ! 特攻隊じゃあるまいし、散っちゃったらまずいでしょうに。

これって、やはり昔だからシングルにしてオーケイだったのだろうと思います。いまだったら、べつに放送禁止になったりはしないでしょうが、あちこちから、不愉快な歌詞だ、という声があがっただろうと思います。いや、そのまえに、こんな歌詞は書かないし、書いても録音しないし、万が一録音しても、リリースはしないでしょう。

西條八十は「乙女」たちにおおいにモテたという話を昔読んだ記憶があります。そういう人が書いたのだと思って、改めて「花咲く乙女たち」の後半を検討すると、なんだか妙に実感がこもっているなあ、と笑いそうになります。ずいぶんナニしたけれど、結局、すべて一時のこと、気がつけばみな消えているのね、てなもので、まるで定家の「見わたせば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮れ」です。

ということで、つらつら眺めれば貴重な(?)歌詞に思えてきたので、つぎに記憶するのは「花咲く乙女たち」と決めました。いやはや、当家の無数の記事のなかでも、谷底に近いくだらん話で、どうも失礼をばいたしました。恐惶謹言、あらあらかしこ。


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舟木一夫 魅力のすべて
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The Five Pennies
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The Five Pennies
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A Little Touch of Schmilsson in the Night
A Little Touch of Schmilsson in the Night


As Time Goes By
(Schmilsson in the Nightにアウトテイクを加えたもの)
As Time Goes By


マーティー・ロビンズのEl Paso
Essential Marty Robbins 1951-1982
Essential Marty Robbins 1951-1982


グレイトフル・デッドのEl Paso
Steal Your Face
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by songsf4s | 2011-02-10 23:56