<   2011年 01月 ( 16 )   > この月の画像一覧
ローラ・ニーロのR&Bカヴァーとオリジナル8 The Wind
 
アル・クーパーのR&Bカヴァーと異なり、アルバム"Gonna Take a Miracle"でカヴァーされた曲の多くは出所がわかりやすいのですが、例外が二曲だけあります。ひとつはDesiree、もうひとつは今回のThe Windです。

まずはローラ・ニーロのカヴァーから。

ローラ・ニーロ The Wind


これについてはあとで書くことにして、オリジナルへと移動します。

◆ ミッシング・リンク ◆◆
オリジナルはノーラン・ストロング&ザ・ディアブロズというコーラス・グループの1954年の録音です。これにたどり着くまでにエラい手間がかかったのですが、それは愚痴というもの。つべクリップすらあるものに気づかなかったこちらの手際が悪かったのでしょう。

ノーラン・ストロング&ザ・ディアブロズ The Wind


まだドゥーワップという分野ないしはスタイルが確立される前の録音なので、やはり微妙に異なった雰囲気で、「プロト・ドゥーワップ」とでもいうべきスタイルだと感じます。ノーラン・ストロング&ザ・ディアブロズは、ドゥーワップ全盛期にも活躍するので、その時期の録音はやはり中道を行く音になっています。

聴いた瞬間、スモーキー・ロビンソンを思い浮かべました。じっさい、ノーラン・ストロングはデトロイト・ベースのアーティストで、スモーキー・ロビンソンに強い影響を与えたのだそうです。

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さらに興味深いことに、ノーラン・ストロングはクライド・マクファーター(ドリフターズの初代リード・テナー)に強い影響を受けたといわれています。クライド・マクファーターとスモーキー・ロビンソンという、わたしの好きな二人のブラック・シンガーが、ノーラン・ストロングを介してひとつの系譜としてつながり、すっきり気分爽快でした。このつながりは、スタイルの類縁性としてはっきりとあらわれています。

このところ、地味なものばかりで恐縮ですが、ほかのものはみなクリップがあるので、ノーラン・ストロング&ザ・ディアブロズのThe Windの別テイクをサンプルにしました。

サンプル Nolan Strong & the Diablos "The Wind" (outtake)

こちらのほうがリリース・ヴァージョンより微妙にテンポが速くなっています。

◆ ジェスターズ ◆◆
ノーラン・ストロングにたどり着く以前に、これがオリジナルかと誤解したヴァージョンがありました。

ジェスターズ The Wind


ファルセット・ヴォーカルがないのが、ノーラン・ストロング盤との目立った相違で、そのために、オーセンティックなドゥーワップの感覚があります。

もうひとつの大きな違いは、スネアのバックビートです。ノーラン・ストロングとジェスターズのあいだには、リトル・リチャード、チャック・ベリー、エルヴィスという大峡谷が横たわっているのです。

ローラ・ニーロ盤に戻ります。ドゥーワップをカヴァーしたDesiree同様、オリジナルは様式化されているのに対して、ローラ・ニーロのヴァージョンはよりプライヴェートかつインティミットなレンディションになっています。

それがローラ・ニーロのスタイルだともいえますし、視野を広げてみるなら、それが彼女の時代のパラダイムだったともいえます。かつて様式化された歌を書いていたニール・セダカやキャロル・キングでさえ、プライヴェートでインティミットなほうへと移行した時代だったのですから。


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ローラ・ニーロ
Gonna Take a Miracle
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ジェスターズ
Doo Wop Box
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by songsf4s | 2011-01-29 11:11
ローラ・ニーロのR&Bカヴァーとオリジナル7 Jimmy Mack
 
もっともカヴァーの多いSpanish Harlemを切り抜けたので、あとは緩やかな下り坂をのんびり歩いていくようなものだから、ひと安心です。だれも強制しているわけではないのだから、Spanish Harlemのカヴァーだって、全部聴くことはないのだ、と思わなくもなかったのですが、いい加減でテキトーな人間のくせに、遊びとなると、まめで律儀になってしまう傾向があるようです。

さて、本日はトラック7、Jimmy Mackです。まずはローラ・ニーロのカヴァーのクリップから。

ローラ・ニーロ


多くの人がエンジェルズのあの曲を連想するのではないでしょうか。

エンジェルズ My Boyfriend's Back


My Boyfriend's Backでは、彼氏の留守に言い寄る男に向かって、He's kind of big and awful strongだから、better cut out on the doubleだとか、you gonna be sorry you were ever bornなどと(英語学習に非常に有益な数々のフレーズを)いって脅かします。

Jimmy Mackも「脅迫」の歌ですが、脅す相手は、彼氏の留守に言い寄る男ではなく、彼氏自身です。ヘイ、ジミー・マック、いったいいつになったら帰ってくるの、this boy keeps coming around, he's trying to wear my resistance downだとか、Now my heart's just listening to what he has to sayなどと(英語学習にとりわけ有益というわけでもない)数々のフレーズを繰り出して、どこかに行っているジミー・マックに、あたし、もうその気になりかけてるもんね、早く帰ってこないと知らないからね、と最後通牒をつきつけます。

ジミー・マックが今いる場所はヴェトナムだという解釈があるようです。そういう意図でローラ・ニーロがこの曲をカヴァーしたのかどうかはわかりません。わたしは、ちがうだろうと想像していますが、根拠があるわけではありません。

このアルバムでプレイしているフィリーのドラマーを散々こき下ろしましたが、Jimmy Mackは唯一、アップテンポでドラムを容認できる曲です。他のトラックのように、スネアがペタペタと鳥もちのような音を立てないだけで、おおいなる救いです。四分三連の使い方はやはりダサダサで辟易しますが。

◆ いかにもH=D=Hソング ◆◆
Jimmy Mackのオリジナルはすでに見たDancing in the Streetと同じく、マーサ&ザ・ヴァンデラーズです。

マーサ&ザ・ヴァンデラーズ Jimmy Mack(モノ)


モータウンのトラックというのは、よくアーティストがだれかわからないまま録音されたとキャロル・ケイさんにうかがいましたが、このJimmy Mackなんか典型といえます。このままダイアナ・ロスのヴォーカルを載せてもまったくOK。

じっさい、スプリームズ用の曲だったのではないでしょうか。作者は当時のスプリームズの曲を一手に引き受けていたホランド=ドジャー=ホランドです。それがマーサ&ザ・ヴァンデラーズにまわされてしまったのは、スプリームズはつねにチャート・トッパーを義務付けられていたけれど、この曲ではトップ10がギリギリ精いっぱい、なんていう判断では?

実情はよくわかりませんが、この曲の録音は1964年、スプリームズがスターになった年であり、そのときはお蔵入りし、二年後の1966年にリリースされることになったのだそうです。

今日はこれといって適当なものがないので、例によってマーサ&ザ・ヴァンデラーズ盤のトラック・オンリーをサンプルにします。これもやはりバックコーラス入りで、リード・ヴァーカルだけが抜いてあります。

Marth & the Vandellas "Jimmy Mack" (track only)

このトラック・オンリーを繰り返し聴いていて、なんだかギターのストロークはなじみがあるような気がしてきました。キャロル・ケイさんでは? 全体にハリウッド風の音作りであること、彼女は64年ごろからベースをプレイしはじめたということなので、Jimmy Mackのときはまだ端境期、じっさい、64年録音のメアリー・ウェルズのMy Guy(モータウン初のビルボード・チャート・トッパー)では彼女はギターをプレイした、といったささやかな、根拠ともいえないような根拠しかありませんが。

なお、たんなる偶然で、なにも意味はないだろうと思いますが、マーサ&ザ・ヴァンデラーズは、My Boyfriend's Backをカヴァーしています。

◆ 唯一のインスト ◆◆
この曲のもっとも好きなヴァージョンはまたしてもインストゥルメンタルです。ただし、プレイしているのは、あろうことか、ジェイムズ・ブラウン。

ジェイムズ・ブラウン Jimmy Mack


さすがは、というべきか、オルガンを弾いても、グッド・フィーリンがほとばしります。JBのバンドはつねにハイレベルでしたが、このときもベースのグルーヴなんかじつにけっこうで、ニコニコしてしまいます。

それにしても、たんなるマスタリングのちがいですが、うちのLPリップMP3より、このつべクリップのほうが、低音が太くて楽しめます。これが45の音だということかもしれないし、このお父さんが思い切り加工したのかもしれないし、なんとも判断しかねます。

◆ その他のJimmy Mack ◆◆
うちにあるJimmy Mackはすべて吐き出しましたが、ユーチューブにはまだいくつかJimmy Mackがありました。

カレン・カーペンター


うーん、わたしは問題外の不出来と感じます。

つづいてシーナ・イーストン。



こっちのほうがカレン・カーペンターよりはずっとマシだと思いますが、それは相対的な話にすぎず、シーナ・イーストン盤がすばらしいという意味でありません。べつに聴かなくても差し支えはない程度の出来です。


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ローラ・ニーロ
Gonna Take a Miracle
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マーサ&ザ・ヴァンデラーズ
Gold
Gold


ジェイムズ・ブラウン
Singles 4: 1966-1967
Singles 4: 1966-1967
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by songsf4s | 2011-01-27 23:46
ローラ・ニーロのR&Bカヴァーとオリジナル6 Spanish Harlem その5
 
Spanish Harlemの残るインストものを列挙すると、サント&ジョニー、チェット・アトキンズ、アル・カイオラ、パーシー・フェイス、リオン・ラッセル、アッカー・ビルクのものがあります。やはりどれも残りものの雰囲気で、これぞというものはもうありません。

パーシー・フェイス 前半のみ


リオン・ラッセルのものは、なにかべつの曲だったら、こういうサウンドも悪くないと思ったでしょう。でも、Spanish Harlemのメロディーの美しさを引き出す方向ではなく、どちらかというと逆方向へと向かったラテン・アレンジなのです。

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リオン・ラッセルはロックンロール史上もっともすぐれたピアニストのひとりです。Spanish Harlemでのピアノ・プレイは、やっぱりリオンらしいな、とは思うのですが、一小節聴いただけで感嘆した、かつてのキレ、凄味は消えてしまい、丸みのあるプレイをしています。好みでいうなら、わたしは昔のほうをとりますが、ああいう抜き身の刀じみた鋭さ、抜けば玉散る氷の刃みたいなキレより、こちらのほうに温かみを感じる人もいらっしゃるかもしれません。

インストものについては、あとから聴きなおしてもやはりエキゾティック・ギターズとハーブ・アルパートがベストと感じます。どちらもハル・ブレインだからかもしれませんが。

オーケストラものは三種類、あまりはずさないパーシー・フェイスがいちばんつまらなくて、レス・リードとノリー・パラマーは甲乙つけがたく感じます。

いずれにしても、インストは、ヴォーカルもののように即ゴミ箱行きというひどいものはありません。しいて云うと、アッカー・ビルクのヴァージョンは嫌いですが。

◆ 二種類のママズ&パパズ ◆◆
ヴォーカルの残りも列挙でしておきます。ジェイ&ディ・アメリカンズ、トム・ジョーンズ、フレディー・スコット、ニール・ダイアモンド、そしてママズ&ザ・パパズ。

トム・ジョーンズはチープなIt's Not Unusual新録音という感じのアレンジ、サウンドで、だれかがなにかを勘違いしたために起きた事故でしょう。フレディー・スコットはオーソドクスなアレンジですが、声が渋すぎて不似合い、ジェイ&ディ・アメリカンズは元来虫が好きません。

ママズ&ザ・パパズ ライヴ(モンタレー・インターナショナル・ポップ・フェスティヴァル)


うーん、ドラマーがすべてを決める、といいたくなります。イントネーションというものの意味がわかっていないか、または、わかっていても、左手首が硬くて適度な強さでスネアをヒットすることができないのか、まったく困ったものです。ジョー・オズボーンのフェンダー・プレシジョンがブーンとくるところは、やはり楽しいのですが。

ママズ&ザ・パパズは、ほんの十数回だったか、その程度しかステージに立ったことがないそうです。売れに売れたアーティストの強みで、パブリシティーはテレビだけで十分だったのかもしれません。でも、まじめにツアーをやれば、もっと長生きできたような気もします。まあ、それができるならしていたはずで、なにかできない事情があったのでしょう。

このSpanish Harlemを聴けばわかるように、ママズ&ザ・パパズはハーモニーがどうのこうのというほどの力はないグループだったと思われます。歌えるのはキャス・エリオットとデニー・ドーハティーのふたりだけ、ジョンとミシェールのフィリップス夫妻は、枯れ木も山の賑わい程度のことしかしていません。

しかし、それでもなお、単独ではだれもとくに魅力的ではなく、グループとしての集合的な魅力があったのは間違いのないところで、そこがなんとも面妖です。また、ジョン・フィリップスというソングライターがいなければ、どこにも行き着かなかったこともまちがいありません。冷静に考えれば、我慢して四人でやるべきだったと、あとでみな後悔したのではないでしょうか。

さて、やっぱりデニー・ドーハティーとキャス・エリオットの声ばかり耳立つヴァージョンですが、ママズ&ザ・パパズはSpanish Harlemをスタジオでも録音しています。

ママズ&ザ・パパズ Spanish Harlem(スタジオ録音)


ハル・ブレインはいなかったか、いてもパーカッションをプレイしただけでしょうが、ライヴと違って、こちらはなかなかいい出来で、二番目にすぐれた歌ものSpanish Harlemだと思います。やっぱり、デニー・ドーハティーとキャス・エリオットというのはいいコンビだったのかもしれません。

◆ さてナンバー1は? ◆◆
Spanish Harlemのその1のときに、ローラ・ニーロのヴァージョンについての判断は先送りすると書きました。まとめてぜんぶ聴けば、考えが変わる可能性もあると思ったのですが、そういうことはありませんでした。ヴォーカルもののSpanish Harlemとしては、ローラ・ニーロ盤がベストだと、昔から考えています。

その1であげつらったように、歌詞のジェンダーの問題はあるのですが、面倒だから、もうレズビアンの歌だということにしてしまえば、べつに矛盾を感じずに聴くことができます。

歌声と楽曲に乖離がないSpanish Harlemはローラ・ニーロのカヴァー、つぎに居心地が悪くないのはママズ&ザ・パパズ盤、でもやっぱり、エキゾティック・ギターズやハーブ・アルパート&ザ・TJBやレス・リードやノリー・パラマーといったインストのほうがさらに好ましい、というのがわたしの結論です。


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ローラ・ニーロ
Gonna Take a Miracle
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ママズ&ザ・パパズ
If You Can Believe Your Eyes & Ears
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by songsf4s | 2011-01-25 23:51
ローラ・ニーロのR&Bカヴァーとオリジナル6 Spanish Harlem その4
 
年明け早々、恒例のアクセス・キーワード一覧をやりました。そのとき、原節子なんていうキーワードがこの一覧に登場するのは最初で最後だろうと書きました。

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ところがどっこい、予想に反して俵に足がかかったところから持ち直し、その後もずっとトップ10にとどまっているのだから驚きました。昨日の結果では、芦川いづみと原節子に、ジム・ケルトナーがサンドウィッチにされていて、ケッケッケ、うちらしい眺めだなあ、とニヤニヤしてしまいました。

原節子のキーワードで当家にいらしている方、けっこうページをめくらなくてはならず、ご苦労様なことです。そのうち、またなにか原節子の映画を取り上げて、もっと楽に当家の記事にたどりつけるようにしたいと思います。

◆ 歌う十代の帝王 ◆◆
今日はインストの残りをと思ったのですが、インストはクリップがないのです。むやみにサンプルを増やすのは好ましくないので、小休止し、クリップのあるものをランダムで行きます。まずは作者自身のデモ。

フィル・スペクター


あっはっは。芳紀十九歳、フィル・スペクター修行時代の音の肖像。なんとも殊勝に歌っていて、ニヤニヤしてしまいます。デモといっても、リーバー&ストーラーが噛んでいるんだから、できた時点ですでに録音は決まっていたはずで、たんにベニー・キングないしは他の予定されたシンガーに曲のムードをつかんでもらうためだけに録音されたのでしょう。あるいはLAオフィスを通じてハリウッド・ベースのシンガーに売り込もうとしたのかもしれませんが。

◆ Aquella Rosa ◆◆
もうひとつノーマルではないSpanish Harlemをいきます。トリニ・ロペスのスペイン語ヴァージョン。

トリニ・ロペス Aquella Rosa


スパニッシュ・ハーレムだから、スペイン語でやったらどうだろうかという安易な発想は非難しません。芸能界だから、そんなものです。でも、結果はねえ。スペイン語の強いイントネーションが邪魔だと感じます。Spanish is a loving tongueって、ほんとうかねえ、といいたくなります。なんだか叱られているみたいです。The rain in Spain stays mainly in the plainですなあ、と意味不明。

でも、どこがどうだと明快にはいえないのですが、右チャンネルのベーシック・リズム・トラックには不思議な魅力があり、つい、そちらのほうを聴いてしまいます。どこがいいのやら……。

◆ レス・リード ◆◆
なにかサンプルをひとつと思い、つらつらリストを眺めた結果、またしても有名ではなくて恐縮ですが、レス・リード・オーケストラのヴァージョンをアップしました。

サンプル Les Reed & His Orchestra "Spanish Harlme"

世界に冠たるハリウッドの録音には太刀打ちできようはずもありませんが、イギリスにしてはそれなりにスケール感のある音をつくっていますし、右チャンネルのストリングスのラインにはおおいに惹かれるものがあります。

名前を聞いてもわからない人でも、仕事を聞けば、ああ、そういう人か、と思うものです。レス・リードはジョン・バリー・セヴンのピアニストとして出発し、アレンジャー、作曲家、オーケストラ・リーダーとして活躍しました。レス・リードの「名刺」はThere's a Kind of Hushです。

ハーマンズ・ハーミッツ There's Kind of Hush


カーペンターズ There's Kind of Hush


世代によるでしょうが、わたしの場合、やはり「ハーマンズ・ハーミッツの曲」と思っています。カーペンターズ盤がラジオから聞こえてきたときは、ああ、あの曲をカヴァーしたのね、と思いました。こうやって並べてみても、ハーマンズ・ハーミッツのほうが数段出来がいいと感じます。カーペンターズのアレンジは馬鹿っぽくて、うんざりします。

レス・リードのもうひとつの「名刺」は、アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグの長篇『オートバイ』を、マリアンヌ・フェイスフル、アラン・ドロンの共演で映画化した『あの胸にもう一度』のスコアです。



わるくない挿入曲などもあったりして、OST盤がほしくなりました。なお、マリアンヌ・フェイスフルがジャンプ・スーツを脱がされるところがもう一度見たいという方は、自助努力なさるように。わたしが見た数本のクリップには、あのシーンはありませんでした。

長いあいだ滞留してしまったSpanish Harlemですが、次回でたな卸しを完了する予定です。ただアーティスト名を並べただけ、みたいになってしまうかもしれませんが。


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ローラ・ニーロ
Gonna Take a Miracle
Gonna Take a Miracle


フィル・スペクター
The Phil Spector Collection
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トリニ・ロペス
Second Latin Album
Second Latin Album


The Girl on a Motorcycle
あの胸にもういちど HDニューマスター版 [DVD]
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by songsf4s | 2011-01-22 23:52
ローラ・ニーロのR&Bカヴァーとオリジナル6 Spanish Harlem その3
 
このところ、書物と映画に時間を割くようにしているため、ブログを書く時間はとれず、また、いったん腰を下ろすと、なかなか持ち上がらないもので、休み癖がついたこともあって、ローラ・ニーロのGonna Take a Miracleは足踏み状態です。

ツイッターには細かく書いていますが、今年はじめて最後まで読んだ本は、刊行は数年前なのに読みそこねていた矢作俊彦の旧作『ロング・グッドバイ The Wrong Goodbye』です。読みはじめてから、なんだ、あれか、と思いました。

f0147840_023066.jpg矢作俊彦は神奈川県警殺人課の二村永爾を主人公にした長篇を、あろうことか、二度にわたって連載中止しています。ひとつはのちに完成されたタイトルでいうと『真夜中へもう一歩』。まちがいなく彼の代表作です。作家はこういうものをいくつも書けないことになっています。

もうひとつは、彼の得意とする比喩がからまわりして、連載がはじまったときから先が危ぶまれた『横須賀調書』です。これが今世紀になってから『ロング・グッドバイ』として完成されました。

なんたって、いまこの部屋の窓を開ければすぐそこに見える場所を舞台にしていたりするので、ほかの街に住む読者とは読み方がまったくちがうはずです。『狂った果実』や『八月の濡れた砂』より、さらに徹底した「ロケ地」散歩がしたくなります。だれか、映画化してくれないでしょうかね。すばらしい舞台選択をしていて、おおいに楽しみました。

つづいて『定本久生十蘭全集第7巻』にとりかかったので、じつはブログなんか書いている場合ではないのです。ほかならぬ十蘭、それも戦後の充実した時期の作品を収録した巻ですからね。といいつつ、ツイッターにはあれこれ書きましたが。

ブログなんか書くより、音楽を聴いたり、本を読んだり、映画を見たり、ウォーキングをしたりするほうが、残りの人生の過ごし方として有意義のような気もするのですが、業というか性というか、入力をどこかで出力につなげずにはいられないようで、ただ入力だけをつづけていると、自家中毒を起こしてしまいます。

サッカーのゲームがある日に更新なんかしても意味がないのですが、わたし同様、そんなことにはまったく興味のない一握りのお客さんのために更新しようと気を取り直しました。

◆ サウンズ・インコーポレイティッド ◆◆
あと一時間しかないので、二種類ほどインストを駈け足で行きます。まず、イギリスのサウンズ・インコーポレイティッド。「わたしの時代」のグループですが、ライノのブリティッシュ・ビート・アンソロジーで聴くまでは、名前も知りませんでした。

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その程度のグループなので、ユーチューブ(と書くほうがシフトしなくていいので楽!)にはクリップはありませんでした。よって、サンプルにします。って、だれも聴かないでしょうけれど!

サンプル The Sounds Incorporated "Spanish Harlem"

アコースティック12弦が非常に魅力的な音で録れていて、それが最大の魅力、というか、はっきりいって、唯一の魅力です。バンドとしては二流。ドラムも嫌いです。

◆ ノリー・パラマーとクリフ・リチャード ◆◆
わたしが好むようなものは、ほかの人が好まないか知らないために、クリップがなくて困ります。やむをえず、もう一曲、サンプルにします。これまた、だれも聴かないでしょうけれど。

サンプル Norrie Paramor "Spanish Harlem"

ノリー・パラマーといってもご存知ない方が多いでしょうが、EMIでジョージ・マーティンとトップを争ったプロデューサーです。クリフ・リチャード、シャドウズの多くの盤をプロデュースしました。

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ブースのシャドウズとスタッフ 後列右からブルース・ウェルチ、ジョン・ロスティル、ハンク・マーヴィン、ブライアン・ベネット。左端に立っている人物は不明。あるいはアレンジャーのスティーヴ・グレイか。前列右はおそらくエンジニアのピーター・ヴィンス、左はプロデューサーのノリー・パラマー。

そういう人へのボーナスなのでしょう、ノリー・パラマーはオーケストラ・リーダーとして自己名義の盤をいくつかリリースしています。そのうちの一枚、クリフ・リチャードの曲をカヴァーしたLPに(ジョージ・マーティンもビートルズの曲をオーケストラでやった盤をリリースしているのはご存知のとおり)、このSpanish Harlemは収録されています。

Spanish Harlemはクリフ・リチャードの「持ち歌」というわけではないと思うのですが(イギリスではこの曲の代表的ヴァージョンとみなされているのか?)、まあ、とにかく、クリフのSpanish Harlemというのは存在します。



12弦のコードが耳を惹きますし、なるほど、ノリー・パラマーのオーケストレーションなのね、と思うほど、パラマーのヴァージョンに通底するものがあります。

かくして制限時間いっぱい、本日はここまで。Spanish Harlemは次回もまだインストということになるでしょう。


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矢作俊彦
THE WRONG GOODBYE―ロング・グッドバイ (角川文庫)
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矢作俊彦
真夜中へもう一歩 (角川文庫)
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久生十蘭
定本久生十蘭全集第7巻
定本久生十蘭全集第7巻



ローラ・ニーロ
Gonna Take a Miracle
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サウンズ・インコーポレイティッド
Sounds Incorporated
Sounds Incorporated


ノリー・パラマー
Shadows in Latin/Plays theHits of Cliff Richard
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クリフ・リチャード
21 Today/32 Minutes And 17 Seconds With Cliff Richard
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by songsf4s | 2011-01-21 23:32
ローラ・ニーロのR&Bカヴァーとオリジナル6 Spanish Harlem その2
 
以前、われわれの小さなMLでSpanish Harlem特集をしたとき、この曲には決定版は存在しない、だれがやってもどこかで失敗してしまう、という考えを述べました。その後、そのときの倍ぐらいのヴァージョンを聴きましたが、これがあればほかのはいらない、というものにはまだ遭遇していません。

いい曲なのに、なぜどのヴァージョンも不満に感じるのだろうかと、ずっと不思議に思っていました。今回、べらぼうな数のヴァージョンをぶっとおしで聴いて、あれこれ考えているうちに、理屈が浮かんできました。

前回、Spanish Harlemの歌詞はジェンダー・リヴァーシブルではないことにふれました。ヘテロ・セクシャル的観点からは、この曲で歌われている「スパニッシュ・ハーレムの赤い薔薇」は女性としか考えようがないのです。

この点について、もうひとつ考えが浮かびました。歌詞から考えて、この曲は男が歌うべき曲であることは明らかです。しかし、音のほうはどうかというと、わたしは、女が歌うべき曲だと感じます。この歌詞とメロディーのジェンダーの不一致が、だれが歌ってもどこかうまくいっていないと感じる理由だと、やっと自分で納得のいく結論が得られました。性転換手術が必要な曲なのです!

◆ ティファナ・ブラス ◆◆
ということで、今回はジェンダー・フリーなSpanish Harlemのインスト・ヴァージョンを並べてみます。我田引水自画自賛の大馬鹿野郎になってしまいますが、思ったとおり、インストだけに絞ると、はなからダメというヴァージョンはあまりありませんでした。

もうほとんど残り時間がないので、思いついたものを手当たり次第にいきます。まずはハーブ・アルパート&ザ・ティファナ・ブラスのヴァージョン。セカンド・アルバム「Volume 2」(わかりやすいタイトルだ!)に収録されたものです。

ハーブ・アルパート&ザ・ティファナ・ブラス Spanish Harlem


ダブル・ドラム! だれでしょうかね。TJBのファースト・アルバムからのシングル・カットというか、先にシングルを録音して、ヒットしたからアルバムもつくったのですが、The Lonely Bullでは、トラップにはアール・パーマーが坐って、あのすばらしいスネア・ワークをし、ハル・ブレインはティンパニーをプレイしました。

TJBの場合も、もうすこしたつと、ハル・ブレインひとりになってしまうことがはっきりしていますが(A Taste of Honeyはハル)、その中間にあたるセカンド・アルバムはどうでしょうか。

最初のフィルイン、タムから入って逆にスネアに返すパターンのイントネーション、アクセントはハル・ブレインだと思います。このプレイヤーはずっと右チャンネルで装飾音を入れています。

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では、左チャンネルでバックビートを叩いているプレイヤーはだれか? わたしはこちらもハル・ブレインだと思います。すくなくともアール・パーマーのスタイルではありません。

ちらっとミスもありますが、登場した瞬間に音がカラフルにきらめいてしまう、ハル・ブレインだけがもっていた華やかさがあり、楽しいトラックだと思います。

ハル・ブレインが出てくると、その話にばかりなってしまいますが、アコースティック・ギターもおおいに魅力的です。

◆ エキゾティック・ギターズ ◆◆
ハル・ブレインのSpanish Harlemはもうひとつあります。エキゾティック・ギターズというスタジオ・プロジェクトのエポニマス・タイトルのアルバムでも、ハル・ブレインがストゥールに坐っているのです。

これは右のリンクから行けるAdd More Musicの「レア・インスト」ページでLPリップを試聴することができます。レア・インスト・ページにはジャケットがいっぱい並んでいますが、No.35が該当のアルバムです。

AMMのキムラセンセによると、このプロジェクトのリード・ギターはアル・ケイシーとクレジットされているそうです。でも、Exotic Guitarsと複数形になっているように、エレクトリック・リードにいろいろなギターがからんできて、ハリウッドだから、どのプレイヤーもみなうまいのです。

Spanish Harlemでは、イントロからしてアコースティックの高速ランで、むむ、何者、名を名乗れ、と身構えます。第一候補はトミー・テデスコですが、ハリウッドはギター・プレイヤーのメッカ、これくらいの高速ランができる人は、まだ数人はいます。

この曲にかぎらず、エキゾティック・ギター・シリーズでは、ハル・ブレインは借りてきた猫をやっています。でも、軽くキックの踏み込みをやるだけで、頭隠して尻隠さず、すぐに、やっぱりハルだ、と笑ってしまいます。あんなキックの使い方をするプレイヤーはハル・ブレインしかいません。

順番が逆になりましたが、派手なところはまったくないものの(ギターによるエキゾティカ風イージー・リスニングというコンセプトだから、当然、終始一貫ソフト)、いい気分になれるヴァージョンです。

◆ ベニー・キングを乗っ取ったもうひとりのキング ◆◆
つづいて、サックス・プレイヤー、キング・カーティスのヴァージョン。これはクリップがないので、サンプルにしました。

サンプル King Curtis "Spanish Harlem"

ベニー・キングのオリジナル・ヴァージョンをご存知の方は、キング・カーティスのヴァージョンを聴くと、ズルッとなるにちがいありません。ベーシック・リズム・トラックは、ベニー・キング盤を流用しているのです。

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いってみれば、安易な切り貼り細工なのですが、これが結果オーライなのです。いえ、前半はソプラノ・サックスのリードに、さらにソプラノがからんでくる(キング・カーティスのダブルか?)というだけで、うまいなあ、とは思うものの、とくに騒ぐほどのものでもありません。

面白いのは後半、インストだから「間奏」ではないのですが、ヴォーカルものなら間奏にあたるところでストリングスが前に出て、いつものパターンね、と思わせておいてから、すっとギターが入れ替わってソロをとるところがおおいに魅力的です。スーパープレイはしませんが、もちろん、そうとうできるプレイヤーで、音の出そのものにグッド・フィーリンがあります。

同じベーシック・トラックを使っていながら、ベニー・キングのヴォーカルはなんだかしっくりこないのに、ヴォーカルのかわりにサックス、ストリングス、ギターがリードをとったとたん、いいサウンドだなあ、と思うのだから、おかしなものです。

まあ、たんにわたしがインスト好き、歌嫌いというだけかもしれませんが、ひょっとしたら、「Spanish Harlemというのはそういう曲」なのかもしれないと思います。Spanish Harlemの在庫はまだ数ダースあるので、「そういう曲」とは「どういう曲」なのかということは、これから数回をかけて他のヴァージョンを聴き、ゆっくり腑分けしてみます。


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ローラ・ニーロ
Gonna Take a Miracle
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キング・カーティス
Platinum Collection
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ベニー・キング
Original Album Series: Spanish Harlem/Sings for Soulful Lovers/Don't Play That Song/Seven Letters/What Is Soul
Original Album Series: Spanish Harlem/Sings for Soulful Lovers/Don't Play That Song/Seven Letters/What Is Soul
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by songsf4s | 2011-01-18 23:30
ローラ・ニーロのR&Bカヴァーとオリジナル6 Spanish Harlem その1
 
Spanish Harlemもカヴァーの多い曲で、長い枕で寄り道している暇はなさそうです。あるいは、いっそ、どーんと大きくかまえて、一回に1ヴァージョンでいいや、ぐらいのつもりなら、毎度、長枕褥合戦(あ、これはバレだ)ができます。

◆ ローラ・ニーロ ◆◆
毎度同じことばかり云っていますが、まずはローラ・ニーロ・ヴァージョンのクリップから。すでに他の曲とつながって出てくるものを過去の記事で貼り付けていますが、これはSpanish Harlem単独です。



池波正太郎に原稿をもらう編集者は、その場で読まなければならず、これがけっこうつらかったそうです。原稿を読み終わると、編集者は、当然ながら「たいへんけっこうでした。どうもありがとうございました」と頭を下げます。すると大先生は「うん、それで、どこが、どうよかったの」とご下問されるのだそうです。ここから先が毎回、冷汗三斗。見当はずれの感想をいって睨まれたら、つぎからの仕事に差し支えます。

わたしはこの話をうかがっていて、食事の手が止まりました。自分が編集者だったら、担当にはなりたくない作家はたくさんいますが、池波正太郎は三番目にイヤだなと思います。いちばんイヤなのは、いうまでもなく、原稿を一枚一枚、二階の書斎の窓から投げ、下で待機する編集者にキャッチさせた推理小説の大家。ほら、野村芳太郎がたくさん映画化したあの人です。二番目は、ローマがどうしたとか、日本人にとってはなにがどうしようと知ったことではない本を山ほど書いた人。あの人は、いや、やめておきましょう。

で、なんの話をしているかというと、ローラ・ニーロ・ヴァージョンについてその場で感想を書くのはやめておくということです。他のヴァージョンと比較しながら書きます。

◆ ベニー・キング ◆◆
Spanish Harlemは、NYに「留学」したフィル・スペクターが、師匠のひとり、ジェリー・リーバーと共作したものです。つまり、歌詞はリーバーということになります。

スパニッシュ・ハーレムとは、ニューヨークのエル・バリオ(またはイースト・ハーレム)という地区の異名です。エル・バリオについては、当家では過去に、「Summer In El Barrio by Felix Cavaliere」という記事で言及しています。

必要な背景情報はそれくらいでしょう。オリジナルは、当時、リーバー&ストーラーがプロデュースしていたベニー・キングのヴァージョンです。

ベニー・キング Spanish Harlem


うーん、といったきり、意味のある言葉がなかなか出てこないヴァージョンです。いちおうヒットはしていますが、わたしにはいい出来には思えません。ミスキャスト、ミスアレンジ、微妙にはずしたサウンドと感じます。リーバー&ストーラーではなく、じっさいにはフィル・スペクターがプロデュースしたという説もありますが、それでもやはり、ちがうのではないか、と首を傾げます。

◆ アリサ・フランクリン ◆◆
ビルボード・チャート上でもっとも成功したSpanish Harlemは、アリサ・フランクリンのヴァージョンです。

アリサ・フランクリン Spanish Harlem


大間違いのコンコンチキ、最低最悪のSpanish Harlemというべきでしょう。こういうアレンジ、サウンド自体はあっても差し支えありませんが、なにかべつの曲に使ってもらいたいものです。Spanish Harlemをこんな音でやったら、なにもかもぶち壊し。アリサのヴォーカルも暑苦しくて、イライラします。

さらに、音とは関係ない次元での違和感もあります。歌詞を聴けばわかりますが、この曲はジェンダーの壁を乗り越えられないのです。sheをheに言い換えればすむような歌詞ではないのです。赤い薔薇のようだ、なんて男の容貌を褒めたら、完璧にオカマでしょうに。

アリサ・フランクリンはジェンダーを変えず、しかも、薔薇のところで、blackとかなんとか叫んでいるように聞こえます。これだって奇妙です。いつかハーレムに薔薇を摘みに行く、などと女が歌ってどうする気ですか。

性別で混迷に陥ったところで、本日はおしまい。まだまだ、どんどんつづきます。薔薇はダースで勘定するほど残っているのです。ほんとうにあきれるほどたくさんあるのです。


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ローラ・ニーロ
Gonna Take a Miracle
Gonna Take a Miracle


ベニー・キング
Original Album Series: Spanish Harlem/Sings for Soulful Lovers/Don't Play That Song/Seven Letters/What Is Soul
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アリサ・フランクリン
Spanish Harlem
Spanish Harlem
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by songsf4s | 2011-01-17 23:53
ローラ・ニーロのR&Bカヴァーとオリジナル5 You've Really Got a Hold on Me 後篇
 
You've Really Got a Hold on Meの残りはたしか二種類、引っ張らずに、さっと片づけようとプレイヤーを起動したら、四種類も残っていて、がっかりしました。気を取り直して、気張らずに、リラックスしてやってみます。

◆ ゾンビーズ二種 ◆◆
ビートルズ以外のイギリス勢としては、まずゾンビーズのヴァージョンがあります。

ゾンビーズ You've Really Got a Hold on Me(モノ)


昔からゾンビーズは好きなので、点が甘くなりがちだということを明言したうえで云いますが、やはりこの曲でもコリン・ブランストーンはいいなと思います。

昔のイギリスなので、初期はみなモノ・ミックスだったのですが、近年になって、ステレオ・ミックスがリリースされました。といっても、モノでのリリースを想定した録音なので、たいしたことはできません。

幸い、3トラック録音だったらしく、ベーシック・リズム・トラックを左右に振り分け、ヴォーカルをセンターにおいています。2トラックだと、片チャンネルにヴォーカル、もういっぽうにベーシックという、アホらしいステレオ定位になってしまいます。

でも、ヴォーカル以外のものをセンターに定位できず(ベーシックは2トラックで録っているのだから当たり前だが)、ギター、ベース、フェンダーピアノを左、ドラムを右、という完全分離なので、なんだかちょっとすき間の目立つミックスです。やはり、モノ・ミックスを想定した録音は、モノで聴けということでしょう。

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とはいえ、今日はほかに適当なものがないので、この新しいステレオ・ミックスをサンプルにしました。divshareのアップロードが不調のため、久しぶりにbox.netです。

サンプル The Zombies "You've Really Got a Hold on Me-Bringing It on Home to Me"

◆ スティーヴ・マリオット ◆◆
もうひとつのイギリスものは、スモール・フェイシーズのヴァージョンです。

スモール・フェイシーズ You've Really Got a Hold on Me


もうそういう年齢ではなくなってしまいましたが、子どものころだったら、こういう歪んだギターのトーンだけで盛り上がっていたでしょう。スティーヴ・マリオットの声は子供のころから好きなので、わたしはまずまずと感じますが、このヴァージョンは好みが大きく分かれること必定。うちにあるあらゆるYou've Really Got a Hold on Meのなかで、もっともヘヴィーで、もっともロック・ニュアンスの強い音です。

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◆ パーシー・スレッジ、デイヴ平尾とマモル・マヌーのデュエット ◆◆
さて、最後に残ったあまりもの二種。まずはパーシー・スレッジ、とここでクリップを貼りつける予定でしたが、そんなものはありませんでした。じゃあ、サンプルにしたら、というご意見もございましょうが、それほど興味深いヴァージョンではなく、まあまあ、といった程度なのです。

さらにもう一種、ゴールデン・カップスのカヴァーもあります。これはゾンビーズのヴァージョンを参考にしたようで、同じく、Bringing It on Home to Meとのメドレーになっています。しかし、「ゾンビーズ・ヴァージョンのカヴァー」というほど似ているわけでもありません。

うーん。迷いに迷って、結局、ゴールデン・カップスのカヴァーをサンプルにしました。OggファイルからMP3に再変換したもので、理想的な音質ではありません。迷った理由はもうひとつありますが、これは書きづらいので、伏せます。無用のトラブルを避けるため、一週間後の一月二十三日日曜いっぱいでリンクを削除しようと思います。ご興味のある場合は、できるだけ急いでください。

サンプル The Golden Cups "You've Really Got a Hold on Me-Bringing It on Home to Me"

アコースティック12弦やピアノ・コードなどだけでも、「ゾンビーズ・ヴァージョンのコピー」ではないことがわかります。それなりに工夫はしたのです。

ヴォーカル・アレンジにもそれは感じられます。デイヴ・平尾のリードにからんでいるのは、たぶんマモル・マヌーだと思いますが、これも彼らの創意でしょう。似たようなヴァージョンというのは、わが家にはありません。うまくいったとはいいかねますが、でも、意図したこと、目指した音はよくわかります。

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「眼高手低」というと、批判の常套句になってしまいますが、「眼高」であることが、ゴールデン・カップスの美点でした。あの時代、日本のバンドの多くは「眼低手低」で両方とも低かったのですが、ゴールデン・カップスは地元のバンドというだけで好きだったわけではなく、なにがしたいのか、その意図が明瞭に理解できることも魅力的でした。

音からはだれも同種のバンドだなどとはいわないでしょうが、きわめて「眼高」だったという一点において、「ゴールデン・カップスははっぴいえんどの先駆だった」とわたしは考えています。どちらも、同時代のアメリカの音にきわめて敏感に反応したバンドでした。


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ザ・ゴールデン・ボックス
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パーシー・スレッジ
When a Man Loves a Woman: Warm & Tender Soul
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by songsf4s | 2011-01-16 23:00
ローラ・ニーロのR&Bカヴァーとオリジナル5 You've Really Got a Hold on Me 中篇
 
(1月14日9:20追記 サンプルのリンクを修正しました。毎度毎度のチョンボ、平伏陳謝。)

いちおう、タイトルに「後篇」と書いてから本文を書きはじめましたが、You've Really Got a Hold on Meはまだたくさんヴァージョンが残っていて、あとで「中篇」と書き直すことになるかもしれないなあ、と心配しています。

◆ 古いビートルズと新しいビートルズ ◆◆
シングル・カットしたわけではないのですが、You've Really Got a Hold on Meのもっとも人口に膾炙したヴァージョンは、ビートルズのものだといって大丈夫でしょう。

でも、今回は、いくつか聴いてみて、「たしかにビートルズのものが有名だ、でも、どのビートルズだ?」と思いましたね。まず、われわれがなじんできたものに近いビートルズのYou've Really Got a Hold on Meのクリップから。

ビートルズ You've Really Got a Hold on Me(モノ)


じつは、わたしの場合、同世代の方はご記憶でしょうが、ビートルズ来日のときにリリースされた、「ステレオ!これがビートルズだ」という変なタイトルの国内盤With the Beatlesに収録されたヴァージョンをもっともよく聴きました。

どういうヴァージョンかというと、これがもうじつに下品な、音が暴れるワイルドな擬似ステレオだったのです。クロストークびしばしで、ライド・シンバルなんか右にいたかと思えばヴォーカル・チャンネルに割り込み、間奏ではセンターで暴れるという、無茶苦茶なステレオ定位でした。最近は、擬似ステレオでも、呆然とするほどきれいなものがありますが、そんなんじゃなくて、badder than badな極悪ぶりなのです。

しかしですねえ、ここが人間の性倒錯の起源、ダメな音だ、死刑だ、と断罪され、地球上からビートルズの擬似ステレオ盤が一掃されてみると、あれがいちばんワイルドだったなあ、と懐かしんでしまうのです。

もちろん、長いあいだビートルズ・ファンをやっていると、いろいろなエディションを買い、きれいなモノーラルもリアル・ステレオも聴きました。上のクリップのような音が、平均的なYou've Really Got a Hold on Meといっていいだろうと思います。

一昨年のUSBボックスのときに、ビートルズの全カタログのマスタリングが一新されました。つぎのクリップはUSBボックス収録ヴァージョンに近い音です。

ビートルズ You've Really Got a Hold on Me(リマスタード・ステレオ)


わたしはヘッドフォンで聴いていて、USBボックス・ヴァージョンにたどり着いたとき、これってだれのだっけ、と本気で思いました。イントロを聴いて、ビートルズだとわからなかったのです。

ビートルズ・ファンにしか面白くないでしょうが、このYou've Really Got a Hold on MeのflacファイルをMP3に変換したものをサンプルにしました。お手元の古いマスタリングのヴァージョンと並べてお聴きになってみてください。

サンプル The Beatles "You've Really Got a Hold on Me" (2009 remastered stereo)

好みや慣れ不慣れの問題を抜きにして云えば、オーディオ的には新しいマスタリングのほうが格段にすぐれています。ということは、結局、こちらのエディションが将来の「定本」になるのでしょう。古いエディションはわれわれの死とともに絶えることになります。

本日はあまり時間がとれず、心配したとおり、最後まで行き着けませんでした。というか、それどころではなく、ビートルズだけで精いっぱいでした。ジョン・レノンのヴォーカル・レンディションがどうの、リンゴのドラミングがどうの、なんて、書けないこともありませんが、そんなのは所詮、昨日のゲーム結果、すでにわかっていることを反芻するだけのスポーツ紙記事にすぎません。年季の入ったビートルズ・ファンがいまさらそんなものを読みたいはずがないので、割愛します。スモーキー・ロビンソンもいいけれど、やっぱりこの曲はジョンだなあ、と思う、ということぐらいは書いておいてもいいかもしれませんが。

それにしても、前篇、中篇、ときたら、つぎは後篇しかないわけで、あと一回で終わるかなあ、終わらなかったらどうするんだ、四回目は「補遺」しかないなあ、なんてよけいな心配をしています。


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ローラ・ニーロ
Gonna Take a Miracle
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ビートルズ Flac USB
The Beatles [USB]
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ビートルズ ステレオCD
The Beatles (Long Card Box With Bonus DVD)
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ビートルズ モノCD
The Beatles In Mono
The Beatles In Mono

できれば、これからの主流であるLPのボックスもリンクを書いておきたかったが、そんなものはなかった。そろそろ、最先端の流行に合わせて、リッピング用の新しいマスタリングのLPボックスがリリースされるのではないだろうか。もうほかには出すものがないだろうに!
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by songsf4s | 2011-01-13 23:53
ローラ・ニーロのR&Bカヴァーとオリジナル5 You've Really Got a Hold on Me 前篇
 
ピーター・イエイツの訃報を読みました。最初に見たイエイツの映画は『ブリット』だったと思いますが(そのまえに『サマー・ホリデイ』を見ているかもしれない)、いちばん好きなのは『ジョンとメリー』です。

映画『サマー・ホリデイ』


ドナルド・ウェストレイクのドートマンダー・シリーズの一作を映画化した『ホット・ロック』は、原作とはまったく異なるエンディングになっていて、初見のときは、あらら、でした。

ドートマンダー・シリーズは、完璧なプランがちょっとした齟齬から崩壊し、泥沼にはまり込んだ泥棒チームが悪戦苦闘するのを基本パターンとした爆笑のケイパー・ストーリーなのですが、それが成功しちゃうのだから、啞然としました。天才プランナー、ジョン・ドートマンダーが成功した唯一の例でしょう。この映画でドートマンダーを演じたのはロバート・レドフォードでした。

『ホット・ロック』


『ホット・ロック』について、キャロル・ケイさんは、エンド・タイトルに自分の名前が出た唯一の映画だとおっしゃっていました。たしかに、ソングライターまでは事細かにクレジットされますが、プレイヤーがクレジットされることはめったにありません。記憶があいまいですが、音楽監督のクウィンシー・ジョーンズの配慮のおかげだったと記憶しています。

『ブリット』

(こちらのフェンダーベースもやはりCKさんか? 彼女はラロ・シフリンの仕事もたくさんやっている)

◆ You've Really Got a Hold on Me ◆◆
ローラ・ニーロのR&Bカヴァーとオリジナル、今回はYou've Really Got a Hold on Meです。まずはいつものように、ローラ・ニーロのカヴァーのクリップから。

ローラ・ニーロ You've Really Got a Hold on Me


前回、アップテンポは全滅、バラッドは成功またはOKと書きましたが、このトラックはドラムがバタバタするのが癇に障りますし、ヴォーカル・アレンジおよびレンディションも曲に似つかわしくなく(こんなに元気よく歌うのは違和感がある)、このアルバムで唯一失敗したバラッドだと思います。

◆ スモーキー・ロビンソン ◆◆
You've Really Got a Hold on Meのオリジナルは、スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズのヴァージョンです。クリップで。



いかにもスモーキー・ロビンソンらしいミディアム・バラッドで、地味ながら忘れがたいヴァージョンです。

この時期のミラクルズは、まだスモーキーの奥さんが家庭に入っていないので、バックグラウンドの彼女の声が目立つトラックがあり、You've Really Got a Hold on Meでも、それが小さな魅力になっています。

これはモータウンがLAで録音をはじめる以前のもので、ドラムはだれかデトロイトのプレイヤーなのでしょうが、こういうスナップを利かせたバックビートはおおいに好みです。ポップ/ロック系のドラミングではテクニックは重要ではない、キレのいいバックビートこそが命だと思います。

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ポール・ハンフリーは、デトロイトにだってドラマーはいた、ベニー・ベンジャミンだけがモータウンの録音をしていたわけではない、といっているそうです。そりゃ当然でしょうね。だから、初期ならベンジャミン、と自動的に決めつけるわけにはいきませんが、これがベンジャミンのプレイなら、やはりちょっとしたプレイヤーだったのだと思います。

今回もサンプルはトラック・オンリーにしました。歌ってみたい人向けです。

サンプル Smokey Robinson & the Miracles "You've Really Got a Hold on Me" (track only)

◆ ハル・ブレイン参上 ◆◆
モータウンではよくあることですが、この曲も「うちうちの使いまわし」をやっていて、モータウン内部だけでたくさんカヴァーがあります。まずはスプリームズ・ヴァージョン。

スプリームズ You've Really Got a Hold on Me


一粒で二度笑えるヴァージョン、といいたくなります。スプリームズのこのトラックはA Bit of Liverpoolという、ブリティッシュ・ビート・グループのヒット曲をカヴァーしたアルバムに収録されています。他の曲は看板に偽りなしなのですが、You've Really Got a Hold on Meだけは、元来、ミラクルズの曲、でも、ビートルズのヴァージョンが有名だから「イギリスの曲」ということにしてしまったわけです。

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もうひとつ面白いのは、このドラムがハル・ブレインに聞こえることです。60年代のスプリームズのシングル曲は、初期のノンヒット曲をのぞき、ほとんどすべてLA録音だろうと推定しています。しかし、ハル・ブレインがプレイしたトラックはあまりありません。伝え聞くところでは、ハル自身は「初期のマーチ・タイプの曲でプレイした」といっているということで、たぶん、Where Did Our Love GoまたはBaby Love、あるいはこの両方のことをいっているのだろうと思います。

スプリームズ Where Did Our Love Go


スプリームズ Baby Love


どちらもドラムが目立つ曲ではなく、ブラインドでハル・ブレインと断定することはわたしにはできません。それ以外には、ダイアナ・ロスがリードのあいだは、ハル・ブレインがスプリームズの45でプレイした雰囲気は感じません(ジーン・テレルがリードになってからの45やアルバム・トラックにはハル・ブレインやエド・グリーンを感じるものがある)。そうしたなかで、A Bit of Liverpoolは、これはハル・ブレインでしょう、と笑ってしまうトラックが多数収録された例外的なアルバムなのです。

◆ テンプスとジャクソン5 ◆◆
モータウン内部のカヴァーとしては、ほかにテンプテーションズのヴァージョンもあります。

テンプテーションズ You've Really Got a Hold on Me


ベーシック・トラックは、ミラクルズのものを流用したのではないかと思ってしまうほどそっくりですが、ギター、オルガンが追加され、ホーン・ラインも大幅に変更されています。

スプリームズのヴァージョンほどではありませんが、こちらも地味ながらギターがなかなか魅力的なプレイをしています。そういうコードもありなのね、でした。

まだほかにもありますが、モータウン内部カヴァーとしてもうひとつ、ジャクソン5をあげておきます。

ジャクソン5 You've Really Got a Hold on Me


いやはや、うちにあるものだけでも、まだこの倍以上のカヴァーがあります。次回はブリティッシュ・ビート・グループのカヴァーを中心に見ていきます。


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ローラ・ニーロ
Gonna Take a Miracle
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スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズ
35th Anniversary Collection
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ア・ビット・オブ・リヴァプール/TCB
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Temptations Sing Smokey
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ホット・ロック [DVD]
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ジョンとメリー [DVD]
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ブリット スペシャル・エディション [DVD]
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by songsf4s | 2011-01-12 23:54