<   2010年 11月 ( 30 )   > この月の画像一覧
サンプラー キンクスのAutumn Almanac
タイトル
Autumn Almanac
アーティスト
The Kinks
ライター
Ray Davies
収録アルバム
Singles Collection
リリース年
1967年
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十一月も終わりなので、恒例のアクセス・キーワードのリストをご覧いただきます。

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「Christmas comes this time each year」毎年いまごろになるとクリスマスがやってくる、とビーチボーイズも歌っていますが、毎年いまごろになると、当家にもクリスマスソングのお客さんがやってきて、アクセス・キーワードがそっちのほうにシフトします。

ビーチボーイズ Little Saint Nick


Frosty the Snowmanはストーリーのある歌なので、「歌詞」というキーワードが追加されるのでしょう。

先月初登場の「牡丹燈籠 山本薩夫」は、今月も登場。どなたかがブックマークがわりにご利用なのだろうと思うのですが、それにしては回数が多すぎるようでもあり、よくわかりません。

二本柳寛は、初登場ではないのですが、月末まで残ったのは初めてではないでしょうか。わたしは二本柳寛のファンなのですが、そのわりには大々的に取り上げたことはなく、あっちにちょこ、こっちにちょこという調子でパラパラ書いただけにすぎません。そのうちなにかまとまったものを、と思います。

ジム・ゴードンに関しては、国内はもちろん、英語によるものでも、当家ほどくわしく扱っているサイトはないと自負しています。あのときにつくったベスト・オヴ・ジム・ゴードンのファイルは、期間限定公開だったので、メディアファイアに店ざらしになっています。そのうち三度目の再公開をしましょう。クリスマスか正月かな。ひょっとすると、討ち入りの日24時間限定、なんていうナックルボールもあるので、油断召されるるなかれ、おのおのがた。←ここのところ、長谷川一夫の声色で読んでちょうだいね、といっても意味がわからんでしょうな。

つづいて赤木圭一郎! 月末まで赤木圭一郎のキーワードが残ったのははじめて、ちょっと感動的です。たいていは月なかばで圏外に出てしまうのですが、十一月はついに最後まで残りました。赤木圭一郎の映画は、『霧笛が俺を呼んでいる』『拳銃無頼帖 抜き射ちの竜』のどちらもけっこうまじめに書いたので、どこに出しても恥ずかしくない記事と自負しています。これを記念して、もう一本、赤木圭一郎の映画をいきましょうかね。まえまえからやろうと思って、DVDは用意してあるのです。

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Stormy Mondayのコードは単純なんですが、それでも自分でコピーするのは面倒くさいという方がいらっしゃるのでしょうか。まあ、PCもウェブも、横着するためにあるようなものですからね。

『日本のいちばん長い日』もまじめに書きました。問題は、まじめなだけで、あまり面白くはないだろうということです。暑かったですからねえ、あのころは。

「玉木宏樹」というキーワードは痛し痒しですわ。ご本人が検索なさったのではないことを祈っています。万一、ご本人または関係者の方がご覧になったのだとしたら、スキャンについては、パブリシティーということでご了承願えたらと思います。

『娘・妻・母』はつい先日書いたばかりなので、初登場です。思ったよりずっといい映画でした。成瀬巳喜男は嫌い、というわけではないなら、ご覧になっても損はないでしょう。

以上、十一月も検索、ありがとうございました。

◆ Sweep'em in my sack ◆◆
二十四節季があった昔はいざ知らず、現代の日本では月の区切りに季節の区切りを置く考え方が主流のようですが、昔調べたところでは、西洋では冬至までは秋、という考え方が主流のようです。だから、まだ秋の終わりではないのですが、冬至のころにはクリスマスがあって、2007年の季節めぐりでも、秋の歌は十一月中旬で終えていました。

f0147840_23551188.jpgそんなこともあって、いつがいいのかわからないまま、いつのまにか十一月末になってしまったので、ここでキンクスのAutumn Almanacのサンプラーをやっておくことにします。

オリジナル記事はAutumn Almanac by the Kinks その1Autumn Almanac by the Kinks その2です。歌詞もコードも構成も、すべて詳細にわたって検討しています。

この曲に関しては、わが家にはステレオの、別テイクの、といったヴァリエーションはなく、オフィシャル・リリースのモノ・ヴァージョンのみしかありません。ただ、Singles Collectionのマスタリングよりは、Picture Bookというボックス・セットに収録されたもののほうが、輪郭がカチッとしているので、そちらをサンプルにしました。

サンプル The Kinks "Autumn Almanac"

ライヴではなく、リップ・シンクですが、テレビ出演時のクリップがあったので、いちおう貼りつけておきます。衣裳がいかにもあの時代らしくて笑っちゃいますが。



いやはや、それにしても、ポップ・ソングとしては、歌詞も構成もコードも非常に複雑で、ここまでいったらシングル・ヒットは望めない、とあのときにレイモンド・ダグラス自身、承知していたのじゃないでしょうかね。

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いえ、いまでもやはり、Waterloo Sunset同様、レイモンド・ダグラス・デイヴィーズおよびキンクス、そしてイギリス現代音楽を代表する秀作だと思いますが。なによりも、いかにもRDらしい、一筋縄ではいかない、「迂回した叙情性」とでもいうべきものに心惹かれます。


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Singles Collection
Singles Collection


ボックス
Picture Book
Picture Book
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by songsf4s | 2010-11-30 23:58 | 秋の歌
アル・クーパーのポップ・カヴァーとオリジナル ブラッド・スウェット&ティアーズ篇4

ずいぶん昔のことですが、180グラムLPというのを買いました。あのときは、なんだかLPの断末魔みたいに見えましたが、時代はひとめぐりして、CDは死滅し、生き残るのはLPになりそうな雰囲気が出てきて、じつに喜ばしいかぎりです。CDを捨て、LPを買いに町に出よう、盗作也。

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最近のLPというのをちょっと聴いたのですが、リッパーがキッチリ仕事をすると、ものによってはいい音になります。とくに大編成のものは、管でも弦でも、こんな音だったのか、と驚いてしまいます。

それもこれも、PCとディジタル・オーディオの進化のおかげなのだから、不思議なものです。ディジタルが行き着いてみたら、ディジタル・メディアの元祖であるCDは疎外され、アナログ・オーディオの親玉であるLPが浮上したのですからね。リッピングとロスレス圧縮が、この逆転劇の立役者です。

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もうひとつ、ノイズ・リダクション技術の進歩も見逃せません。ついこのあいだまではこれが大いなる問題だったのですが、最近、何人かのリッパーの仕事を聴いて、数万円程度のソフトで劇的に改善されることがよくわかりました。

残された問題は、リッピングの手間、時間、つまりコストです。当家のお客様、南港のセンセのように、引退したらリッピングにいそしむなどという方もいらっしゃいますが、つまり、そういうことなんです。引退したらいそしむとは、すなわち、引退するまではいそしめない、なのです(そのわりには何枚もリップしたなあ、あのセンセは)。

そのへんは世界中のリッパーの協力でなんとかしていただくしかないですね。じっさい、どこのどなたか知りませんが、昨日はよそさんのすばらしいリッピングでムーディー・ブルーズのDays of Future Passedを聴いて、のけぞったばかりです。オーケストラはLPリップにかぎります。

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わたしも、唯一保存しておいた、ボビー・ウィットロックのデビュー盤のWAVファイルをFlacにしてみましょうかね。

◆ So Much Love~Ending ◆◆
さて、終わりなきシリーズ、アル・クーパーのカヴァーとオリジナルも、今回をもって終了です。最後の曲は、BS&TのChild Is Father to the Manのエンディング、So Much Loveです。

サンプル Blood Sweat & Tears "So Much Love"

なによりもハモンドのサウンドが耳を引っ張ります。とくに、中音域から低音域のmenaceなサウンドがすばらしく、レスリー・スピーカーの威力を見せつけています。

高校のとき、部室にハモンドがおいてあったのですが、レスリーがついていないので、なんの役にも立たず、チューニング・メーターとして使っていました。B3やC3ではなく、もっと安いやつでしたが。

その後、お茶の水の楽器屋の店頭に中古のB3があるのを見ましたが、レスリー込みで130万。ギブソンL6だって60万の時代ですよ。すげえな、と思って眺めているうちに、電源ランプが点灯していていることに気づきました。そして、駿河台の喧噪のなかでも、レスリーがジュワーと派手なノイズを出しているのが聞こえてきて、おー、スピーカー回転中だ、てえんでドキッとしました。

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レスリー・スピーカー(ロータリー・スピーカー)構造図。上段で回転しているのはトウィーター、中段にはウーファーがある。下段で回転しているのはスピーカーではなく、ウーファーの「反射板」のようなもの。これでウーファーの音にサイクルをあたえる。

まるで万引きでもするような感じで(移動にフォークリフトが必要な楽器をどうやって万引きするんだ)、そっと手を伸ばして、Cを押したら、レスリー独特の太い音が流れ、うわあ、と叫びそうになりました。プレイしたわけではなく、ただ音を出しただけで感動したのはあのときだけです。いやホント、レスリー・スピーカーは天下無敵の音が出ます。逆にいうと、レスリー抜きのハモンドは純音に近い退屈な音で、スケートリンクのBGMしかつくれません。

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なんの話なのかわからなくなりましたが、アル・クーパーのオルガンのなかで、So Much Loveのサウンドがもっとも好ましい、ということがいいたかっただけです。

◆ またソフトクリーム頭 ◆◆
So Much Loveのオリジナルと思われるのは(前回はまちがえたので、今回は国会答弁のように逃げ道をつくった)、ベン・E・キングのヴァージョンです。あまり好きではないので、できればYouTubeですませたいのですが、残念ながらだれもアップしていないので、自前のサンプルをいきます。

サンプル Ben E. King "So Much Love"

まあ、悪くはないのですが、あのころのNYはこんな音ばかりで、またか、です。ライチャウス的なベースは、頂戴物ではありますが、まあ、いいと思います。気に入らないのは、まずティンパニー。こんな馬鹿デカいバランシングは変でしょうに。

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ドラマーも下手です。ストップタイムからの戻りのスネアがドスンバタンして、思いきりコケました。ベニー・キングのレギュラーはゲーリー・チェスターのはずですが、この日はだれかべつの人だったようです。

先行ヴァージョンとしては、ほかにパーシー・スレッジ盤があるそうですが、これは聴いたことがありません。

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後続ヴァージョンとしては、どういうわけか、Just One Smile同様、ダスティー・スプリングフィールドのものがあります。

しかも、Just One Smileと同じく、Dusty in Memphis収録です。これはどういうことでしょうね。BS&Tのデビュー盤に収録されたカヴァーを2曲もやるというのは、偶然には思えないのですが……。

サンプル Dusty Springfield "So Much Love"

わたしはダスティーのファンではないので、彼女のヴォーカルのことはあれこれいわずにおきます。こういう言い方というのは、もちろん、好きじゃないことの婉曲表現です、なんてよけいなことはいわないほうがいいんだってば>俺。

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トラックについては、悪くないと思います。とくにストリングスのサウンドはちょっとしたものです。ジーン・クリスマンのドラミングもけっこうです。突っ込まないきれいな4分3連が魅力的。

◆ サンプル総集編 ◆◆
めずらしく時間の余裕があるので、サマリーなどやらかしてみます。すなわち、このシリーズでとりあげた曲のなかで、どれがとくに好みであるか、アル・クーパーのカヴァーと、先行ヴァージョンに分けてリストアップしてみようと思うのです。

まずアル・クーパーのカヴァーから。おおむね好きな順に並べました。

サンプル Al Kooper "Medley Oo Wee Baby, I Love You/Love Is a Man's Best Friend"

サンプル Al Kooper "Hey, Western Union Man"

サンプル Al Kooper "Too Busy Thinkin' 'bout My Baby"

サンプル Al Kooper "She Don't Ever Lose Her Groove"

サンプル Blood Sweat & Tears "Without Her"

サンプル Al Kooper "Monkey Time"

サンプル Blood Sweat & Tears "Just One Smile"

サンプル Michael Bloomfield & Al Kooper "Together 'til the End of Time"

サンプル Michael Bloomfield & Al Kooper "That's Alright Mama"

サンプル Al Kooper & Michael Bloomfielf "Stop"

サンプル Al Kooper & Michael Bloomfield "Man's Temptation"

サンプル Michael Bloomfield & Al Kooper "Green Onions"

サンプル Al Kooper "Toe Hold"


つづいて、オリジナルまたは先行ヴァージョンで好きなものを、こちらもだいたい好きな順で。

サンプル Fred Hughes "Oo Wee Baby I Love You"

サンプル Tim Buckley "Morning Glory"

サンプル Marvin Gaye "Too Busy Thinking about My Baby"

サンプル Jerry Butler "Hey, Western Union Man"

サンプル The Spencer Davis Group feat. Steve Winwood "Together 'til the End of Time"

サンプル Major Lance "Monkey Time"

サンプル Howard Tate "Stop"

サンプル Gwen McCrae "He Don't Ever Lose His Groove"

サンプル Wilson Pickett "Toe Hold"

以上、アル・クーパー関連は今回で完了です。次回は……なんにも考えていませんが、この企画からのスピンオフになるかもしれません。


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ブラッド・スウェット&ティアーズ
Child Is Father to the Man (Exp)
Child Is Father to the Man (Exp)


アル・クーパー自伝増補改訂版
Backstage Passes & Backstabbing Bastards: Memoirs of a Rock 'n' Roll Survivor
Backstage Passes & Backstabbing Bastards: Memoirs of a Rock 'n' Roll Survivor


ベニー・キング
Anthology
Anthology


パーシー・スレッジ
When a Man Loves a Woman: Warm & Tender Soul
When a Man Loves a Woman: Warm & Tender Soul


ダスティー・スプリングフィールド
Dusty in Memphis
Dusty in Memphis


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by songsf4s | 2010-11-29 22:22
アル・クーパーのポップ・カヴァーとオリジナル ブラッド・スウェット&ティアーズ篇3

レイ・チャールズの人生を描いた映画『レイ』の前半だけ、早送りガンガンで再見しました。初見のときは音楽の出来と録音ばかりを気にしながら見たので、あとのことは忘れてしまいましたが、I've Got a Womanにからまって、変なシーンがあることを今回の再見で改めて認識しました。

トレイラー


I've Got a Woman(映画『レイ』より)


小さなクラブでレイがI've Got a Womanを歌っていると、客のなかの男が、神を冒瀆する歌だと騒ぎはじめるのです。そういう時代があったのでしょう。わたしはI've Gort a Womanを聴いても、ゴスペルのことなどチラとも考えなかったので、呆れてしまいました。

宗教的抑圧というのはじつにやっかいで、われわれの心性に深く根ざすものだから、どうがんばっても駆除しきれないのかもしれません。いっぽうで、抑圧はしばしば創造の原動力になるのもたしかです。でも、苦しい人生を生きてなにかを生むのと、楽な人生を無為に生きるのと、どっちがいいかといったら、南の島で寝転がってウクレレでも弾いて、眠るように生き、眠るように死ぬ人生のほうがはるかに望ましいですな。

◆ よりによって…… ◆◆
さて、BS&Tのカヴァー曲、Morning GloryWithout Herというこれまでの2曲は、オリジナルも子どものときに手に入れました。比較的入手しやすかったということです。

今日はA面のラスト、ランディー・ニューマン作のJust One Smileです。ランディー・ニューマンの名前は知っていましたが、この曲はいったいどこから出てきたのか、当時は知りませんでした。いまならウェブでたちどころにわかるでしょうが(いや、オリジナルに関しては追求がむずかしいことがしばしばあるが)、昔は大変でしたなあ、おのおのがた。ライナーだって、オリジナルがどうのなんて書かないのはごく当たり前だったほどで、知っているか知らないかのどちらかしかなく、調べる手段なんかろくになかったのでしょう。

それではJust One Smile、まずはBS&Tのカヴァーから。

サンプル Blood Sweat & Tears "Just One Smile"

リズム・トラックのアレンジも、ホーンのアレンジも、どちらもかなりの出来です。それはオリジナルと聴きくらべるとさらに明瞭になります。オリジナルは、アル・クーパーが、紙面から苦笑が漂ってきそうな調子で、「よりによって」と表現したジーン・ピトニーです。

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ジーン・ピトニー(左)とヴィニー・ベル。

なにが「よりによって」なのか? アル・クーパー自伝が書かれた70年代後半、ジーン・ピトニーはダサさもダサし、とんでもないout of dateだったということです。「CSI」のあるエピソードで、被害者の車からニール・ダイアモンドのCDが出てきて、若い捜査官が「ニール・ダイアモンドなんか聴いているから死ぬんだ」と馬鹿にしますが、そういう感覚に似ています。

いえ、子どものころはさておき、いまのわたしはニール・ダイアモンドもOKです。ハル・ブレインの派手なドラミングが聴けますから。スー、スーレイモン、スレ、スレ、スーレイモンなんて、一緒に歌っちゃったりします。人間、どこまで堕落できるか、底が知れませんな。

さて、サンプルにするほどのものではないので、ジーン・ピトニーのオリジナルJust One Smileは、つべクリップで片づけます。

ジーン・ピトニー Just One Smile


これだけ時間がたつと、どっちが古いの、新しいの、といっても五十歩百歩、どっちも古いだけにすぎないから、ほとんど意味を成さないし、古くさいもののほうが新鮮に感じられることさえありますが、当時の感覚としては、ジーン・ピトニーのJust One Smileは、おいおい、いまは1967年だぞ、1957年じゃねーぞ、てなあたりでしょう。アレンジ、サウンド、ヴォーカル・レンディション、すべて好みではありません。

でも、楽曲の出来だけはまずまずで、惜しいと思います。アル・クーパーもそう感じたのではないでしょうか。結果から逆算すると、そのように想像できます。BS&TのJust One Smileは、サウンドとしてはオリジナルと完全に手を切ったところで成立しているからです。

いま、アップする直前に、べつのキーワードで検索したら、あらら、というヴァージョンが転がりでてしまいました。

トークンズ(トーケンズ) Just One Smile


うへえ、マヌケなアレンジ。いや、そんなことよりこれは1965年の録音らしいということです。だとしたら、こちらがオリジナルということになります。アル・クーパーはジーン・ピトニーのことしかいっていないので、トークンズ盤の存在は知らなかったのでしょう。と、アル・クーパーに責任転嫁して、オリジナル盤を誤認したミスをうやむやにして通過。

◆ 駄番犬むなしく吠える夜更けかな ◆◆
BS&Tの後続のヴァージョンとしては、ダスティー・スプリングフィールドのものがあります。クリップがあればそれですませるところですが、見あたらないので、自前のサンプルをアップしました。

サンプル Dusty Springfield "Just One Smile"

べつに悪くはないのですが、子どものころからダスティー・スプリングフィールドがあまり得意ではないので、とくにいいとも思いません。あのソフトクリームの三色大盛りみたいな髪型がねえ、って音楽とは関係ないのですが、子どものときに怖いと思ったものはいまでも怖いのです。

このトラックは、メー盤、メー盤とまたメー盤犬が騒々しく吠えているDusty in Memphisに収録されていますが、どこにメー盤がいるのやら、また駄犬が遠吠えしているだけか、です。だいたい、名盤遠吠えの出所はぶくぶく太った駄犬の親玉Rolling Stoneでしょうに。俗物政治雑誌風情がなにをしゃらくさい。

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ただし、ドラムのタイム、プレイ、サウンドはけっこうです。一瞬、メンフィスなんて建前だろ、マッスルショールズで録ったんじゃねーの、ロジャー・ホーキンズみたいじゃん、と思ったほどで、こういうのにはおおいに惹かれます。

ストゥールに坐ったのはジーン・クリスマン、ハービー・マンのMemphis Undergroundに耐えたドラマーです。まあ、だれだってときにはああいう曲をやらなければならないわけで、アル・ジャクソンもサム&デイヴのHold on (I'm Coming)に耐えました。

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左から、レジー・ヤング(こんな人だったのか!)、トミー・コグビル、ジーン・クリスマン、バディー・エモンズ(いまパーソネルを見て、Memphis Undergroundではオルガンをプレイしたことに気づいた)、オスカー・トニー・ジュニア、ドン・シュレーダー、チップス・モーマン。メンフィスのアメリカン・サウンド・スタジオでの一コマだろう。

それから、予算がそこそこあったのか、水準以上のオーケストレーションをしていて、その点も好感がもてます。アレンジャーはいっぱいクレジットされていて、リズム・セクション、管、弦の区分けもわかりません。

◆ エンシェント・ガールへの先祖返り ◆◆
ほかにシーナ・イーストンのヴァージョンがありましたが、しっとりと歌っちゃっていて気色悪いので、クリップは貼りつけません。気になる方はご自分で検索されよ。Modern Girlみたいにパリッと揚げてくれるとよかったのですがねえ。

懐かしくなって、Modern Girlを聴いてしまいました。



この時期はまだシンセの音がひどいことになっていないし(やっぱりヤマハがいかんと思う)、アルペジオの使い方もうまくて、楽しめます。

日々、年をとったなあ、と思いながら生きているのですが、スロウ・バラッド、とくに女性シンガーのものは苦手、というのは子どものころからまったく変化しません。歌はいじらず、こねらず、まわさず、すっと歌うのが最上。


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ブラッド・スウェット&ティアーズ
Child Is Father to the Man (Exp)
Child Is Father to the Man (Exp)


アル・クーパー自伝増補改訂版
Backstage Passes & Backstabbing Bastards: Memoirs of a Rock 'n' Roll Survivor
Backstage Passes & Backstabbing Bastards: Memoirs of a Rock 'n' Roll Survivor


ジーン・ピトニー
Anthology
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ダスティー・スプリングフィールド
Dusty in Memphis
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by songsf4s | 2010-11-28 23:54
アル・クーパーのポップ・カヴァーとオリジナル ブラッド・スウェット&ティアーズ篇2

前回のMorning Gloryは、スティーヴ・カーツのようなトンチキにしては、ずいぶん渋い曲を選んだものだと不思議に思い、アル・クーパー自伝をぱらぱらやりました。

書いてありました。カーツの分として(Meagan's Gypsy Eyesのほかに)もう一曲必要で、アル・クーパーがティム・バックリーを聴かせ、カーツが気に入ったので、アレンジもアルが書いたそうです。キャリア全体を見渡して、わたしはアル・クーパーの選曲の才能を信頼しているので、やっぱりな、それなら筋が通ると納得しました。カーツにはティム・バックリーに目をつけるセンスはありません。

◆ 暴君対暗殺者 ◆◆
「アル・クーパーの」といいながら、前回のMorning Gloryのリード・ヴォーカルはスティーヴ・カーツという羊頭狗肉でしたが、今回は大丈夫、正真正銘、アル・クーパーのカヴァーです。

しかし、このWithout Herについては、以前、詳述していて、いまさら書き加えるべきことはとくにありません。当然ですが、ギターはカーツではなく、アル・ゴーゴーニがプレイしています。考えてみると、ゴーゴーニに交代することをよくカーツが納得したものです。

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アル・ゴーゴーニ(右)とトレイド・マーティン

のちの内紛、アル・クーパー追放は、案外、こんなところに胚胎していたのかもしれません。アル・クーパー排斥の先頭に立ったのはスティーヴ・カーツとボビー・コロンビーだそうです。アルはその直前に、カーツのギターが進歩しないので首を切ろうとして、逆襲にあったようです。音楽の才能はゼロ付近だけど、政治の才能はあったのね>カーツ。

決定的な敗因は、バンドの顧問弁護士がカーツの兄弟だったことです。まったく、マヌケなことをやったものです。のちにどこでもそうなりますが、だれがバンド名を持っているか、はじめにはっきりしておくべきだったのです。マイケル・クラークにバーズの名前を盗まれたロジャー・マギンも大マヌケですが、アル・クーパーもいい勝負です。

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ブルーズ・プロジェクト。真ん中がスティーヴ・カーツ、その左、ブルーのシャツがアンディー・カルブ。そのうしろにアル・クーパー。アンディー・カルブは走ったり、チューニングが狂ったまま弾いたりしたが、ときおりすばらしいフレーズが飛び出した。タイムは訓練で矯正できるが、無能は矯正できない。アンディー・カルブにしておけばよかったのに!

いや、もっと大きな間違いは、メンバーを選ぶ段階でカーツでかまわないと思ったことです。ギタリストなんて掃いて捨てるほどいるのに、よりによってわたしより下手なプレイヤーを選んだのが、そもそもの間違いだったのです。アンディー・カルブのようなプレイヤーがいては自分の出番がない、カーツなら下手だから、リードは俺がとると出しゃばってもオーケイだ、なんてスケベ根性だったのではないでしょうか。それ以外にカーツにギターをもたせる理由を想像できません。

◆ アル・クーパー盤ほか、各種ヴァージョン詰め合わせ ◆◆
それではBS&T盤のサンプルから。

サンプル Blood Sweat & Tears "Without Her"

オリジナルはニルソンですが、サンプルに行く前にYouTubeのクリップを。

ニルソン Without Her スタジオ・ライヴ/ギター・ヴァージョン


さらにクリップを。

リック・ネルソン Without Her


リックのヴァージョンがあるとは知りませんでした。今回知ったヴァージョンのなかでベスト。もっていないので、欲しくなりました。やっぱりリックはいい声をしています。

グレン・キャンベル Without Her


ジャック・ジョーンズもカヴァーしているとは知りませんでした。弦の扱いのムードなどはニルソン盤を踏襲しています。

ジャック・ジョーンズ Without Her


BS&T盤をのぞけば、オリジナルからもっとも遠いカヴァー、ハーブ・アルパート盤。

ハーブ・アルパート&ザ・ティファナ・ブラス Without Her


ニルソン・トリビュートで録音された、ロバート・ラムとカール・ウィルソンともうひとり知らないシンガーのトリオ。比較的近年のものなので、とくに面白くはありませんが、ビーチカゴ・サブセットという趣の組み合わせが可笑しいので貼りつけておきます。

ロバート・ラム、カール・ウィルソン他 Without Her


◆ ニルソン盤 ◆◆
ニルソンのWithout Herは、ミックスのヴァリエーションを無視していえば、2種類あります。オリジナルとAerial Pandemonium Balletに収録された別テイクです。別テイクのほうは、ニルソンのヴォーカルを重ねていて、このほうがずっと面白いので、サンプルはそちらを。

サンプル Nilsson "Without Her" (remix ver.)

妙なものだと思いますが、アル・クーパーはニルソン盤Without Herのアレンジが気に入っていたようです。にもかかわらず、というか、だからこそ、というべきかもしれませんが、BS&T盤Without Herのアレンジは、ニルソン盤とはおよそ似ても似つかないものになっています。アレンジャーの、同業アレンジャーに対する敬意の表明のように感じます。

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ひるがえって、それ以外の盤はちょっと情けない状態です。譜面を盗んだとまではいえませんが、アル・クーパーが「バロックなストリングス」といっている弦のムードは、ほとんどのカヴァー・ヴァージョンが利用しています。盗み盗まれ切磋琢磨の業界かもしれませんが、プライドはないのか、といいたくなります。

そもそも、アレンジによって楽曲に異なった相貌をあたえることこそ、音楽の快楽の根源にあるもののはずで(つまり表現の問題をいっているのだ)、それを放棄するシンガー、プロデューサー、アレンジャーというのはいったいなんなのだ、という強い疑問を感じます。

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アル・クーパーのアレンジを先に聴き、あとからニルソンのオリジナルを聴いたわたしは、おおいに驚きました。そのときも、そしていまも依然として、Without Herは、アル・クーパーのアレンジ、サウンド・メイキングがベストだと確信しています。

あとは、ニルソンのリミックス・ヴァージョンとリック・ネルソンがあれば、Without Herは十分でしょう。


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ブラッド・スウェット&ティアーズ
Child Is Father to the Man (Exp)
Child Is Father to the Man (Exp)


アル・クーパー自伝増補改訂版
Backstage Passes & Backstabbing Bastards: Memoirs of a Rock 'n' Roll Survivor
Backstage Passes & Backstabbing Bastards: Memoirs of a Rock 'n' Roll Survivor


ニルソン Pandemonium
Aerial Ballet/Pandemonium Shadow Show/Aerial Pandemonium Ballet
Pandemonium


リック・ネルソン
Another Side of Rick / Perspective
Another Side of Rick / Perspective


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by songsf4s | 2010-11-27 23:54
アル・クーパーのポップ・カヴァーとオリジナル ブラッド・スウェット&ティアーズ篇1

12回にわたるアル・クーパーのR&Bカヴァーのシリーズをやりながら、ずっとブラッド・スウェット&ティアーズのChild Is Father to the Manのことが引っかかっていました。気になるのなら、やはりきちんとしておいたほうがいいので、番外編として、このアルバムで取り上げられたカヴァーとオリジナルを検討します。

◆ ノンR&Bカヴァー ◆◆
アル・クーパーのここまでのキャリアをワン・センテンスに縮めるなら、Short Shortsのロイヤル・ティーンズのツアー・メンバーを手はじめに、ソングライターとしてThis Diamond Ringのヒットを得、ディランのHighway 61セッションでLike a Rolling Stoneのオルガンをプレイしたことから、音楽界内部で急速に知られるようになり、いくつかのセッションに呼ばれ、やがてブルーズ・プロジェクトに加わり、数枚のアルバムののちに解散します。

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次になにをやるか、ということで思いついたのが、ギター・コンボではなく、管をフィーチャーしたR&Bバンドのようなロック・グループ、ブラッド・スウェット&ティアーズです(ワーキング・モデルはバッキンガムズだろう)。しかし、奇妙なことに、そのデビュー盤であるChild Is Father to the Manには、R&Bカヴァーは収録されず、それで12回の特集にこのアルバムは登場しないことになりました。

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カヴァーがないわけではないのですが、広い意味でいってもブラック・ミュージックに分類されるものはなく、4曲のカヴァーのどれもが白人の音楽なのです。しかし、この4曲がいずれもよくぞ選んだりで、そういってはなんですが、アル・クーパーのオリジナルより一段上の面白さなのです。このアルバムからカヴァーをとったらずいぶん寂しいものになり、アル・クーパーの代表作という格付けから、「そこそこのアルバム」へと、二段ほど落とさなければならないでしょう。

◆ Morning Glory ◆◆
アルバム収録順に見ていきます。最初から「アル・クーパーのカヴァー」という看板に偽りありになってしまいますが、カヴァーのトップ・バッターはスティーヴ・カーツ(Katz。以前、本気になって調べたら、カッツではないのはもちろん、キャズでもなく、たしか、意外にもカーツだった、という記憶に頼って書いている)のリード・ヴォーカルなのです。

まあ、この人はいてもいなくても大勢に影響がなく(いや、I Love You More Than You'll Ever Knowをはじめて聴いたときは、イントロのゴミみたいなギターにおおいにめげた。だから、いると邪魔なこともある。これなら俺のほうがうまい、と優越感に浸れる、きわめて稀少なギタリストではあるが)、多少とも意味があったといえるのは、Sometimes in Winterという佳曲を書いた(セルジオ・メンデスのカヴァーがよろしい)ことぐらいなので、まあ、無視しましょう。

ヴォーカルを削除してもなお、BS&TのMorning Gloryは聴く価値があります。

ブラッド・スウェット&ティアーズ Morning Glory


ハモンドも好きでしたが、ピアノが軽い音に録れていて、おおいに好みでした。ピアノ・トリオ的な、ダイナミック・レンジの広い、重々しいピアノ・サウンドが苦手で、ピアノは軽く、パーカッシヴに鳴らしてほしいといつも思います。

ボビー・コロンビーはタイムがよく、タムタムもいい音に録れていて、ちょっとしたアクセントがすごく魅力的に響きます。ストップタイムでの、微妙に遅らせ気味のフィルインも好みです。

◆ ティム・バックリーのオリジナル ◆◆
Morning Gloryのオリジナルはティム・バックリーで、セカンド・アルバムのGoodbye and Helloに収録されています。

サンプル Tim Buckley "Morning Glory"

記憶が曖昧ですが、BS&Tヴァージョンを先に聴き、その直後ぐらいに、ティム・バックリー盤を映画『青春の光と影』(原題Changes、1969年7月公開。たしかジュディー・コリンズのBoth Sides Nowが流れ、それで『青春の光と影』になってしまったのだと思う)で聴いたのではないかと思います。Morning Gloryが収録されたアルバム、Goodbye and Helloを手に入れたのはそれから2年後ぐらいのような気がします。

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日本コロムビアからソニーにCBSの配給権が移行する時期に、いろいろなアルバムのリリースが遅れ、あとになってドッと出るという妙なことが起きたのですが、このBS&Tのデビュー盤もそこに引っかかって、リリースが遅れたのだったと思います。

記憶では、先にSuper Session、さらにLive Adventuresも輸入盤で買い(高かった。いまでも忘れられない5000円。アル・クーパー自伝によると、2枚組であっても、倍ではなく、1.5倍程度の廉価版としてリリースしたそうで、日本ではそういうものもみな単純に倍にして売っていた。天網恢々、彼らはいま不誠実な商売のツケを払っている)、そのあとで国内盤でBS&Tを買うという、リリースとは逆の順序になったと思います。

秀作のなんのと騒ぐような代物ではありませんが、『青春の光と影』という映画は、すくなくとも子どもには興味深いもので、とくにMorning Gloryが流れる場面は印象的でした。映画を見たから、ティム・バックリーのヴァージョンも手に入れようと思ったわけで、オリジナルも気に入りました。

よけいなことですが、『青春の光と影』と併映だった『ジョアンナ』(「ジョアナ」なのだが!)というのも、妙に印象に残る映画でした。とくに、はじめて見たドナルド・サザーランドという俳優にビックリして、以後、彼の名前があれば見るようにしました。

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その結果、『戦略大作戦』『マッシュ』のようなわたしにとっては本線のものばかりでなく、『コールガール』や『赤い影』(Don't Look Nowという原題で記憶し、邦題は失念してしまい、いま調べた)なども見ることになりました。『ジョアンナ』(だから「ジョアナ」なのだが!)の映画としての出来には毀誉褒貶いろいろあるでしょうが、いまでもドナルド・サザーランドの代表作のひとつと思っています。

話をティム・バックリーに戻します。あとになって(つまり、ハル・ブレインの回想記を読んで、ハリウッドのスタジオに関する認識が一変して以降)Goodbye and Helloのメンバーを見たら、なかなか興味深い組み合わせで、へえ、といってしまいました。ベースはジミー・ボンドとジム・フィールダー(BS&T)となっていて、前者はアップライト、後者はフェンダーなので、Morning Gloryは自動的にジミー・ボンドのプレイということになります。

f0147840_23165564.jpgピアノはドン・ランディー。この盤を買ったときは、ドン・ランディーがどういう人かなどということは知らないから、記憶するべきチャンスに遭遇しながら、ぜんぜん記憶しませんでした。そんなものです。

ドラムは“ファースト”・エディー・ホー、Super Sessionのドラマーです。この人の名前はむろんSuper Sessionで記憶していましたが、Morning Gloryはドラムが活躍するようなタイプの曲ではないので、ここでは精確なタイムだけを提供しています。

ついでにいうと、アルバムGoodbye and Helloのプロデューサーはジェリー・イエスター、エンジニアはブルース・ボトニック。カリンバとタンバリンでクレジットされているデイヴ・ガードとは、キングストン・トリオのデイヴ・ガード?

BS&T盤Morning Gloryも好きですが、ティム・バックリーのオリジナルのアレンジも大好きで、なんともいえない寂寥感が歌詞にふさわしく、かつてはよく聴きました。サウンドもけっこうだし、歌に関しては云えば、スティーヴ・カーツのどうでもいいヴォーカルとは桁違いに魅力的です。よく恥ずかしげもなく歌ったものだぜ>カーツ。

あと3曲あるのですが、あわてず騒がず、一回の分量を抑えつつ、次回へと。


ティム・バックリー Once I Was(これも好きだった。ドラムもいい!)



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ブラッド・スウェット&ティアーズ
Child Is Father to the Man (Exp)
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アル・クーパー自伝増補改訂版
Backstage Passes & Backstabbing Bastards: Memoirs of a Rock 'n' Roll Survivor
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ティム・バックリー
Goodbye & Hello
Goodbye & Hello


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by songsf4s | 2010-11-26 23:57
アル・クーパーのR&Bカヴァーとオリジナル その12 Kooper Session篇

Live Adventuresの1で、左肩にロゴを入れたCDがあることを書きましたが、あとからまたカヴァーを見ていて、この絵を受け取ったアート・ディレクターは困っただろうな、と思いました(コロンビアの美術部のボスはボブ・ケイトーというちょっと知られた人だったが、このときはすでに代替わりをしていた)。

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原画が最終的なデザインにほぼ近い形なら、タイトルとアーティスト名を置く場所がないのは明らかです。余裕があるならタイトルを置いたはずなので、たぶん、おおむねあの形だったのだろうと想像します。

だとしたら、できることは二つ。絵を縮小またはトリミングして周囲に余白をつくり、そこにネームを置く、または、最終的にそうなったように、タイトルやアーティスト名はファクトリー・シールにステッカーを貼って補うことにし、フロント・カヴァーにはネームを置かない、です。

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素材画像に直接ネームを載せず、余白に置く処理のサンプル。いずれもPP&Mになったことにはとくに意味はない。たまたまそういうジャケットを記憶していただけ。

ノーマン・ロックウェルの生きたのは、なかばグラフィック・デザインの世界といってよく、純粋なファイン・アートの画家とはいえません。ビジネスをよく知っていたはずなのに、どうしてあのような絵にしたのか、考えてみると不思議なことです。どこのアート・ディレクターも、ロックウェルに依頼するときは、ディレクションなどせず、おまかせだったのでしょうか。

ここまで書いて、もうひとつの可能性に思いあたりました。原画はもっと周囲も描かれていたのに、アート・ディレクターの判断であのようにトリミングした、です。だとしたら、すごいファインプレイ。

いずれにしても、画家だけでは製品はできあがらず、素材をどのように生かすかを考える人の力はやはり大きいことを思いました。

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◆ チャイルド・スター ◆◆
なんだか、あとでまた補足が飛び出しそうな気がしないでもありませんが、「アル・クーパーのR&Bカヴァーとオリジナル」シリーズは今回で完了です。

グランド・フィナーレというより、フェイドアウトという感じのアルバムを最後にもってきました。Super SessionLive Adventures of Mike Bloomfield & Al Kooperにつぐ、3枚目のセッションもの、Kooper Sessionです。

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今回のアル・クーパーの相方はシュギー・オーティス、ジョニーの息子です。ジョニー・オーティスの息子なんてやっていると、いろいろなものを目撃したのだろうなあ、と思います。若き日のビリー・ストレンジ御大が、まだぺえぺえでリズム・ギターをプレイしているところなんかも、エル・モンテ・リージョン・スタジアムで見たのでしょう。

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エル・モンテ・リージョン・スタジアム外観。レスリングやボクシングの会場として生まれた。エル・モンテはLA郊外、郡部にあり、LAPDから目をつけられていたジョニー・オーティスの週末のダンス・ナイトは、保安官事務所の管轄であるエル・モンテへと追放された。

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本のカヴァーか。LAロックンロールのルーツと書いてある。じっさい、そうだったのだろう。セントラル・アヴェニューが臨時に引っ越してきたようなものだったと思われる。

いや、仕事場に子どもを連れていかない父親だったのかもしれません。ジェイムズ・エルロイの『わが母なる暗黒』(My Dark Places)によると、リージョン・スタジアムの外では、乱闘なんか毎度のことだったようですから。

ジョニー・オーティスのキャリアなどに踏み込むとまた長い記事になるので、やめておきます。息子のシュギー・オーティスは、父親のようにドラマー、パーカッショニストにはならず、ギタリストになりました。このとき、十五歳だったか、早熟のプレイヤーだったことになりますが、スティーヴ・ウィンウッドも同じ年齢でデビューしているし、ラリー・コリンズはもっとずっと幼いころからプロとしてプレイしています。ギターを離れると、オルガンのビリー・プレストンもお子様タレントでした。

ビリー・プレストンとナット・コールの共演はすばらしいパフォーマンスですが、エンベッドできないので、ご興味があればYouTubeへ。

Nat King Cole with Billy Preston "Blueberry Hill"

さらに時代をさかのぼると、まだ神童がいました。

フランク・“シュガー・チャイル”・ロビンソン with カウント・ベイシー


うへえ。マイケル・ジャクソンとスティーヴィー・ワンダーとスティーヴ・ウィンウッドの3人分ぐらいの才能を合わせたような子どもですなあ。究極のお子様タレント。

◆ 倍かゼロか ◆◆
なんだかずっと枕を書いているようで、なかなか本題に入れませんでしたが、枕は長く、本題は短めに。

Kooper Sessionでカヴァーされた、R&B、ブルーズは3曲。まずインストゥルメンタルから。

サンプル Al Kooper & Shuggie Otis "Double or Nothng"

うーん。コメントを思いつかないまま、オリジナルのMG's盤へ。

サンプル Booker T. & the MG's "Double or Nothing"

オルガンのイントロ・リックを、アル・クーパーが二度ももたついているので、シンプルなフレーズのように見えて、じっさいにはイヤな指の動きなのかと思いましたが、ブッカーTはそういうことは感じさせず、スムーズにプレイしています。

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MG'sとしては、とくにすぐれたトラックとは云えず、そこがカヴァーするには具合よく見えたのかもしれませんが、アル・クーパー=シュギー・オーティス盤がなにかを付け加えたようには思えません。

情け容赦ないことをいうようですが、製品というレベルで比較すると、やはりマイケル・ブルームフィールドのあとでは、シュギー・オーティスは弱すぎます。年齢を考え、これからに期待する、という立派な旦那タイプのお客は必要ですが、わたしはパトロンにはなれない人間なのです。

このアルバムは、当時は友だちから借りて聴き、結局、ずっと後年まで手元には置かなかったのは、つまりは、気に入らなかったということです。いま聴き直しても、やはりSuper Session、Live Adventuresにはおよぶべくもないのは明らかです。

◆ 川のそばで道に迷い…… ◆◆
つぎはブルーズ・シンガーによる曲ですが、それほどブルーズの臭みの強くない、ソウル・バラッド寄りのものです。いや、バラッドだとしたら、ヴァースがなくてコーラスだけみたいな曲ですが。

アル・クーパー=シュギー・オーティス Looking for a Home


オリジナルはリトル・バスター、と知っているようなことをいって、じつはこの曲しか知りません。

リトル・バスター Looking for a Home


寄る辺なさが惻々と迫る哀しいレンディションで、年をとるとこういう曲に親しみを感じるようになるのだな、と妙に納得しました。十代だったら気に入らなかったでしょう。

◆ どこでもない場所から1000マイル ◆◆
最後もまたブルーズ、One Room Country Shackです。アル・クーパー=シュギー・オーティス盤は、呆れ返ったアレンジで、わたしは大嫌いです。サンプルは略そうかと思ったのですが、そういうのにかぎってアクセスが多かったりするので(この席亭にしてこのお客あり! 素直じゃない)、いちおうアップしておきます。

サンプル Al Kooper & Shuggie Otis "One Room Country Shack"

わが家にある先行ヴァージョンはバディー・ガイのものです。

バディー・ガイ One Room Country Shack


こちらのほうがはるかに楽しめます。ブルーズはよくわからないので控えめにいっておきますが、ひょっとしたら、すばらしいというべきかも。オリジナルはだれか知りませんが、とにかく、作者であるマーシー・ディー・ウォールトンのクリップを貼りつけておきます。



昔はブルーズを聴かなかったのに、近ごろは妙に腹に堪えたりして、おかしなものだなと思います。この曲もLooking for a Home同様、なんとも身の置きどころのない歌詞で、おおいにへこたれます。

Sittin' here, thousand miles from nowhere

というファースト・ラインは非常に印象的。2000 Light Years from Homeとどっちが遠いかってくらいですが、こちらは起点がnowhereだから、無限大の遠さ。全体のムードとしては、I've Got a Mind to Give Up Livingを思い起こさせます。

そこから連想が横に流れ、ふと、ブルック・ベントンのRainy Night in Georgiaの寄る辺なさを思いだしました。



これで長々と12回にわたってつづけた「アル・クーパーのR&Bカヴァーとオリジナル」シリーズも完了です。といってすぐに補足があるかもしれませんが、それはそのときのこと、としておきます。


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アル・クーパー&シュギー・オーティス
Kooper Session
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ブッカー・T&ザ・MG's
Hip Hug Her
Hip Hug Her


リトル・バスター
Looking for a Home
Looking for a Home


バディー・ガイ
Complete Vanguard Recordings
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アル・クーパー自伝増補改訂版
Backstage Passes & Backstabbing Bastards: Memoirs of a Rock 'n' Roll Survivor
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by songsf4s | 2010-11-25 20:30
アル・クーパーのR&Bカヴァーとオリジナル その11 Live Adventures of Mike Bloomfield & Al Kooper篇3

長ったらしいこのシリーズも、ようやく「終」の文字がぼんやりフェイドインしてくるのが見えるところまで来ました。とはいえ、どこまでやって終わりにするかはまだ決めかねていて、エンディングを前に、取りこぼしはないか、点検しました。

BS&Tの1枚目には、R&B的な曲(I Love You More Than You'll Ever Know)は入っていますが、R&Bカヴァーはありません。ニルソンやランディー・ニューマンの曲をカヴァーしていたりします。

その前までいくと、一考を要します。ブルーズ・プロジェクトにはR&Bカヴァーがありそうな気がして、ディスコグラフィーを眺めました。オリジナル・アルバムはもっていなくて、アンソロジーしかないので、よくわからないところもありますが、カヴァーはブルーズが大部分で、R&Bと呼べるようなものはないだろうと思います。しいていうと、You Can't Catch Meが境界線上という感じでしょうか。

R&Bカヴァーがあるか否かはべつとして、ずいぶん長いあいだ聴いていなかったので、懐かしく感じました。いちばん好きなのは……。

ブルーズ・プロジェクト No Time Like the Right Time


同率首位という感じで、こちらも好きでした。

ブルーズ・プロジェクト Wake Me, Shake Me


ファンのあいだで人気が高いのは、リリカルなこちらのほうでしょうか、

ブルーズ・プロジェクト Flute Thing


あっはっは。あの時代はいわばロックンロールの思春期で、ちょっと背伸びして大人っぽくやってみたかったのです。そして、われわれ子どもリスナーも、ちょっと背伸びして大人っぽい音が聴きたかったのです。可愛い気取り、ということにしておきましょう。

ブルーズ・プロジェクト Violets of Dawn


ブルーズ・プロジェクトというのは、ついに熟さないまま終わったバンドで、惜しいなあと思います。このViolets of Dawnなんか、アレンジに時間をかけ、トミー・フランダースがもっときちんと歌えば、フォーク・ロック・クラシックに数えられたでしょうに、いかにも雑です。アル・クーパーはのちにライヴでやっていますし、チャド・ミッチェル・トリオの悪くないヴァージョンもあります。

◆ 裏声のような愛 ◆◆
Live Adventuresのディスク2もカヴァーだらけですが、一曲が長いので、トラック数は少なめです。サニー・ボーイ・ウィリアムソンのNo More Lonely Nightsは略し、最後の面に移動します。長いので、頭のほうだけ聴くぐらいのつもりでどうぞ。

サンプル Mike Bloomfield & Al Kooper "Don't Throw Your Love on Me So Strong"

またノイズがでてしまっているところがなんですが、ブルームフィールドのプレイは楽しめます。アル・クーパーが、マイケルは伝統的なギターとヴォーカルのやり取りはうまい、といった、そのタイプのギター=ヴォーカル・インターアクションです。

オリジナルはアルバート・キング。

サンプル Albert King "Don't Throw Your Love on Me So Strong"

この曲で耳を引っ張られるラインは、

Your love is like a falsetto, you can turn it off and on

です。「お前の愛は裏声みたいだ」というのが謎かけのようで、どういう意味だ、と思うと、消したり付けたりできる、というサゲだから笑います。あまりノーマルな発想には思えないのですが、シンガーだからでしょう。もうひとつ、フォールセットという単語の語幹は、フォールス=false=まがい物、偽物だからでしょう。

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不思議なことに、マイケル・ブルームフィールドのトーン、音の出にふれたものは、英語日本語を問わず、読んだことがありません。中学生のわたしは、もちろん、速さに惹かれる愚かなギター小僧でしたが、年をとってもまだブルームフィールドを聴いている理由は、エロティックな艶のあるトーンです。あのすばらしいトーンと、ハイパー・スムーズな高音部のランの二つがそろわなくては、ブルームフィールドのプレイとはいえません。

B・B・キングはトーンに艶のあるほうですが、アルバート・キングになると、老婆の背中みたいにつまらねえ音だなあ、と思います。Don't Throw Your Love on Me So Strongも、だから、ブルームフィールドのほうがずっと好きです。

◆ 再びStop ◆◆
このシリーズの第一回目「Super Session篇」で、ハワード・テイトのStopを取り上げ、テイトのオリジナルと、Super Sessionヴァージョンを並べました。

その直後に見落としに気づいたのですが、填めこむ場所を見つけられなかったヴァージョンがあります。サム&デイヴの片割れ、サム・ムーアのものです。

サンプル Sam Moore "Stop"

これはこれで悪くないと思いますが、MG'sの音ではないようなので、データを見ました。パーソネルはありませんが、プロデューサーはキング・カーティスだから、メンフィス録音ではないでしょう。おそらくNY。

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ひとりになると、なんとなく落ち着きが悪いのもので、サム・ムーアも苦しんだそうです。ポップ・ミュージックの世界ではよくある判断ミスというところ。

デイヴ・ポーターとコンビ別れしたのも問題ですが、MG'sのサウンドから切り離されたのも、いいことではないでしょう。「サム・ムーア」の名前を聞いても、だれそれ、だし、しかも、サウンドを聴いてもなじみがないのだから、ゼロから出発のルーキーです。

まあ、そういうのは結果論。ヒットがでていれば問題なかったのでしょうが、そうはならなかったから、サム・ムーア自身も愚痴をいうし、こちらも一言いってみたりするのです。

次回、たぶんKooper Sessionをやって、このシリーズを完了する心づもりです。


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アル・クーパー&マイケル・ブルームフィールド
Live Adventures of Mike Bloomfield & Al Kooper
Live Adventures of Mike Bloomfield & Al Kooper


アル・クーパー自伝増補改訂版
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アルバート・キング
Complete King & Bobbin Recordings
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サム&デイヴ(ライノ)
Sam & Dave - Sweat & Soul: Anthology
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by songsf4s | 2010-11-24 23:35
アル・クーパーのR&Bカヴァーとオリジナル その10 Live Adventures of Mike Bloomfield & Al Kooper篇2

前回の記事の自己レスのようなものですが、一晩眠ったら、ノーマン・ロックウェルによるもう一枚のアルバム・カヴァーを思いだしました。So this is Christmas.

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フレッド・ウェアリング「'Twas the Night Before Christmas」装画:ノーマン・ロックウェル

Live Adventuresのカヴァーとは異なり、こちらはノーマン・ロックウェルを有名にした、やや様式化したスタイルです。

ロックウェルという人は、詰まるところ「古き良きアメリカのイメージを新たにつくりだした」のだと理解しています。画家はだれでも絵がうまいので、それだけでは売れません。ピカソがキュビズムを必要としたように、ロックウェルは独特の様式化によって、ひとつのペルソナをつくりだし、生きる道を見つけたのでしょう。その意味で、北斎的ではなく、広重的な絵描きです。

しかし、ものをつくる人間は一定の幅で揺れ動くもので、ロックウェルも、ときおり「古き良きアメリカの捏造者」のペルソナを脱ぐことがあるように思います。それがLive Adventuresのカヴァーの、非ロックウェル的簡素さ(いつものような「演出」がない。ロックウェルは本質的に「状況を描く画家」であり、物語作家的画家なのだが、ここでは物語も環境も捨て、顔しか描いていない)であり、ビジネスを離れた彼の地がでたのだと思います。

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ノーマン・ロックウェル画「Barber」 クリスマス・アルバムを探す過程で遭遇した。これはおおいに好み。小さくてわからないだろうが、向こうの部屋ではヴァイオリンやチェロをプレイしている。クリックすると拡大されるのでご自分の目でどうぞ。バーバー・ショップ・カルテットという言葉があるが、あれは素人が4パートのハーモニーを歌うことをいうはずで、楽器をプレイすることはそう呼ばないのではないか? デイモン・ラニアンの短編にバーバー・ショップ・カルテットというか、「バー・カウンター・カルテット」(いまつくったインチキ語)の話がある。ラニアンらしい奇妙なストーリーだったが、タイトルを忘れてしまった。

目に映ったものを解釈し、物語として再構成するといういつもの手続きを捨て、見たものをそのまま描いた美しさが、画家自身によって「Blues Singers」と題されたLive Adventuresの絵にはあります(ただし、アル・クーパーは、実物よりすこし膨らませてくれと頼んだそうな。あのころは痩せすぎていたからだろう)。

◆ 3X7=21 ◆◆
Live AdventuresのR&Bカヴァーはどういうわけかディスク1のB面に集中していて、ここまではトラック順にやっていますし、今日も前回のつぎのトラックからいきます。

サンプル Michael Bloomfield & Al Kooper "That's Alright Mama"

いまはそれほどでもありませんが、これを買った中学3年のときには、イントロのドラム・リックが大好きでした。譜面にすればどうということはないのですが、スネアからタムタム、フロアタムへと流す4分3連をクレッシェンドにしている、つまり、弱く入ってあとのほうにいくほど強くしているのが非常に効果的です。ドラムはタイムの楽器でもありますが、抑揚の楽器でもあるのです。

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ファースト・コーラスが終わって、セカンド・ヴァースへという移行部で、アル・クーパーがミスっていますが、そこはまあライヴということで。

このトラックは結局、だれのプレイがどうこうというより、一体になって突進するところが最大の魅力でしょう。ライヴでは、客を熱くするこういうアップテンポの派手な曲が必要です。Fillmore East: The Lost Concert TapesにもThat's Alright Mamaは収録されていますが、ドラムが下手だと、こういう曲はただバタバタ騒々しいだけで、音楽になりません。

You know 3 times 7, that makes 21

というラインの意味がわからず、ちょっと調べました。聖書からの引用だとすると、21というのは完全性の象徴なのだそうです(いや、21は「完全数」ではないので誤解なきよう)。3と7という素数をかけることにどれほど神秘的な意味があるのやら。もうひとつ、成人のシンボリズムというのも、この歌にあてはめられるかもしれません。いや、ぜんぜん別のことを云っている可能性のほうが高いでしょうね。

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◆ アーサー・クルーダップ ◆◆
That's Alright Mamaのオリジナルはアーサー・ビッグボーイ・クルーダップです。Crudupを「クラダップ」と読んでいる盤があります。見た目からしてクルーダップ以外に読みようがないのですが、それでもまちがえる人がいるのだから、イギリス人男性による発音の例をあげておきます(中段左側の青い小さな三角をクリックする)。まったく、ウェブは楽です。こういうことを調べるのも面倒だし、わかっていることでも、他人を納得させるのは厄介だったりしたのですが、いまや一発です。

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ブルーズマンにはよくあることですが、ビッグボーイ・クルーダップのThat's Alright Mamaは何種類もあるようで、わが家でも2ヴァージョン出てきてしまいました。ステレオは新しすぎるに決まっているので、モノのほうをアップしました。YouTubeで、SP盤をかけているクリップを見ましたが、同じ音だったので、これがオリジナルだと思います。収録している盤もブルーズ研究みたいな、「学術盤」(なんてものはないが)かよ、というセットです。

先にお断りしておきますが、たんなるブルーズにすぎないので、聴いてしまったあとで文句を云わないでください。

サンプル Arthur "Big Boy" Crudup "That's Alright Mama"

この曲を有名にしたのはエルヴィス・プレスリーです。ただし、サン・セッションなので、ドラムレスだから、わたしはそれほど好きではありません。エルヴィスは60年代はじめ、陸軍除隊直後、バディー・ハーマンがストゥールに坐ったトラックがいい、という外道なので、わたしの云うことは気にしないでください。メイクミー、ノーウィット、なんて盛り上がりますぜ。



ビートルズも、ポールのリードで、BBCでやっていますが、それは省きます。うちにあるものでは、マーティー・ロビンズのものも悪くありませんが、ぜひに、というほどでもないので、これもやめておきます。つまるところ、こういう「曲」は楽曲としてどうこうということはなく、どうやるかにほぼすべてがかかっているといえます。ブルームフィールド=クーパー盤だけあれば、わたしには十分。

◆ R&Bインスト ◆◆
思いこみというのは強固なものです。いや、強固だからこそ「思いこみ」と呼ぶのでしょうけれど。当家のこのシリーズに反応して、ツイッターでGreen Onionsをあげた方がいらして、ちょっと虚を衝かれたように感じ、ワンテンポ遅れて、そういやそうだな、と思いました。

わたしはギター・インストが好きなので、ものごとをギター・インスト的に歪めて見る傾向があります。Green Onionsをどこかに分類するとしたら、オルガン・インストかギター・インストに丸を付けると思います。

でも、考えてみると、Soul ShotsというライノのR&B編集盤LPシリーズ(11枚)のインスト篇というのがあって、マーキーズとかバーケイズ(Soul Finger)などと一緒にMG'sもおさまっていました。

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曲はGreen Onionsではなく、Time Is TightとGroovin'でしたが、それはここではどうでもいいことで、問題はR&Bインストゥルメンタルというのは厳として存在するということです。

バーケイズ Soul Finger


バーケイズというバンドが存在したのは事実として、それとは関係なく、この盤を録音したのはMG'sでしょう。これがアル・ジャクソンじゃなかったら、いまここで切腹してみせます。ぜったいに大丈夫だから、強いことをいっちゃいますが、小林正樹の『切腹』みたいに竹光だってかまいませんぜ。

切腹するとまではいいませんが、ギターだってスティーヴ・クロッパー間違いなしです。ベースはダック・ダン、オルガンはブッカーT、って、いやだから、MG'sだっていうのです。MG'sがプレイしたものに、バーケイズの名前をつけただけでしょう。オーティス・レディングのツアー・バンドに箔をつけてやろうという親心か、はたまた、MG'sのだれかが、こんな馬鹿っぽい曲をやったことを知られるのは恥ずかしいといったか、事情は知りませんが、とにかくこれはMG's、ピリオド。

◆ 長ネギのように見えて長ネギにあらず ◆◆
寄り道終わり。元の話。ということで、Green OnionsもR&Bカヴァーに繰り入れることにしました。シンプルな曲で、ジャムにはもってこいですが、それだけにプレイヤーの力がストレートにあらわれます。

サンプル Michael Bloomfield & Al Kooper "Green Onions"

アル・クーパーの基本的な姿勢が「マイケルを前面に押し立てる」なので、やっぱりブルームフィールドがガンガン行きます。高音部で強いピッキングをしているときに、なにやら変なノイズが聞こえます。またケーブルかコネクターでしょうかね。ひょっとしたら、あまり強くピッキングするものだから(弦をしばいている!)、手がブリッジかどこかにぶつかっているのかもしれません。

どうであれ、じつにホットなプレイで、一見不似合いな曲でも、やっぱりマイケル・ブルームフィールドはいつものようにマイケル・ブルームフィールドです。

Green Onionsのオリジナルは、いうまでもなくブッカーT&ザ・MG'sです。



MG'sはいつでも盛り上がります。この日のアル・ジャクソンはむやみにハイ・ピッチのチューニングで、これはこれで「へえ」です。しかし、なんというひどい終わり方。ずっと「巻き」がでていたのでしょうか。

◆ クラウス・オーゲルマン他のカヴァー ◆◆
やや珍かもしれませんが、アントニオ・カルロス・ジョビンやレスリー・ゴアの譜面を書いたアレンジャーのクラウス・オーゲルマンのヴァージョンをサンプルにしてみました。

サンプル Claus Ogerman "Green Onions"

イントロがペギー・リーのFeverみたいで笑いました。オーケストラでやるにしても、オルガンとギターをはずさなかったのは正解だと思います。

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いわれないとわからないライトニン・ホプキンズのヴァージョンなんていうのもありました。なんだか、お座敷芸のような……。



この写真ではギブソンJ-160Eをプレイしています。なんだ、仲間だったのか。

YouTubeにはないものを、と考えると、わが家にはマシュー・フィッシャーのものがあります。

サンプル Mathew Fisher "Green Onions"

盤を手放したのでわからなくなってしまいましたが、British Beat All-Starsとかなんとかいう名前で、お父さんたちが小遣い稼ぎにツアーをやっているようで、そのバンドによるものです。ギターはだれだったか、知っているバンドのプレイヤーでした(意味のないセンテンス!)。プリティー・シングスだったか……。

マシュー・フィッシャーはすばらしいドロウバー・セッティング(言い換えればトーン、サウンド)で売ったプレイヤーですが、このGreen Onionsも、やはり、マシューらしく独特の音色でやっています。ハモンドはドロウバー・セッティングが死命を制します。

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あとはブルース・ジョンストンのものもありますが、これはフェンダー・ピアノでやっているところが変わっていますが、それだけのことで、とくに面白くもないし、ファイン・プレイもありません。

それから、アル・クーパーは近年のアルバム、Black CoffeeにもライヴのGreen Onionsを収録しています。

無理だろうと思っていましたが、やっぱり一曲こぼれてしまったので、もう一回、Live Adventuresをつづけることにします。


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アル・クーパー&マイケル・ブルームフィールド
Live Adventures of Mike Bloomfield & Al Kooper
Live Adventures of Mike Bloomfield & Al Kooper


アル・クーパー自伝増補改訂版
Backstage Passes & Backstabbing Bastards: Memoirs of a Rock 'n' Roll Survivor
Backstage Passes & Backstabbing Bastards: Memoirs of a Rock 'n' Roll Survivor

アーサー・“ビッグ・ボーイ”・クルーダップ
Gonna Be Some Changes 1946-54
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Elvis Presley
エルヴィス・アット・サン
エルヴィス・アット・サン


ビートルズ
Live at the BBC
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マーティー・ロビンズ
Essential Marty Robbins
Essential Marty Robbins


ブッカーT&ザ・MG's
Green Onions
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Time Is Tight
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MG's、マーキーズ他
Stax Instrumentals
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Al Kooper - Black Coffee
ブラック・コーヒー
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by songsf4s | 2010-11-23 23:59
アル・クーパーのR&Bカヴァーとオリジナル その9 Live Adventures of Mike Bloomfield & Al Kooper篇1

アル・クーパーの(早すぎた)自伝『Backstage Passes』が引越荷物から出てきたので、拾い読みしました。

CBSのスタッフ・プロデューサーとしての初仕事、Supper Sessionがゴールドになり、それはめでたかったけれど、ティム・ローズのシングルがフロップしたり(あとで大変なコレクターズ・アイテムになったという。稀少になってしまうほど売れなかった)、あれこれあって、つぎの企画をどうするかで、ヒット作に舞い戻ったといっています。

Super Sessionのエディー・ホーは、マイケル・ブルームフィールドの縁でプレイしたのですが、スキップ・プロコップはアル・クーパーの知り合いで、彼が交渉したそうです。ともにPP&Mのトラックでプレイしたどうしですから、似たような場所を廻遊していて、知り合ったのでしょう。

ピーター・ポール&マリー(with スキップ・プロコップ) I Dig Rock and Roll Music


タイムが安定していて、このプレイヤーなら安心して仕事を頼めます。

のちにジェリー・ガルシアのソロ・プロジェクトの相棒となるジョン・カーンは、サンフランシスコ湾を廻遊しているどうしということなのでしょう、ブルームフィールドの推薦で、クーパーは初対面だったそうです。

Live Adventuresはブルーズの多いアルバムで、リハーサルはほとんどなしかと思いましたが、盤にするための企画だから、そこまで不用意ではなく、三日間のリハーサルをしたそうです。場所を提供したのはロック・スカリー、グレイトフル・デッドのマネージャーです。

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スキップ・プロコップのバンド、ポーパーズ

◆ Lord, I want you by my side ◆◆
ダブル・アルバム、Live Adventures of Mike Bloomfield and Al Kooperは、順番からいえば、Super Sessionのつぎのはずだったのですが、先送りにしました。カヴァーの数が多すぎたからです。

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Live Adventures of Mike Bloomfield and Al Kooperのフロント。ノーマン・ロックウェルがアルバム・カヴァーを描いたものはほかにあるのだろうか。近ごろは左肩に妙なロゴをおいたデザインの盤が出回っているらしいが、やはりオリジナルのほうが落ち着く。ロックウェルに肖像を描いてもらうというのはアル・クーパーのアイディア。「ノーミー」とは気が合ったと自伝でいっている。

もちろん、理由は単純、ワン・ショットのメンバーで2時間のステージをもたせるには、単純な構成の、できれば全員がすでになじんでいる曲をやるのが最善だからです。したがってブルーズが多くなります(マイケル・ブルームフィールドのギター・プレイのヴィークルとしての意味合いも強いが)。

Live Adventuresに収録されたすべてのR&Bおよびブルーズのカヴァーを取り上げていると、とんでもないことになるので、適当に端折りながらやります。最初のブルーズ、I Wonder Who(レイ・チャールズ作)は省き、そのつぎのMary Annへと進みます。

サンプル Michael Bloomfield & Al Kooper "Mary Ann"

残念ながら、マイケル・ブルームフィールドのヴォーカルはすばらしいとはいいかねますし、(さらに悪いことに)「うまくないけれど独特の味わいがある」という方向に逃げるのもちょっとむずかしいでしょう。まあ、It's Not Killing Meなんか、それなりに工夫して、思ったよりちゃんと歌っていましたが。

マイケル・ブルームフィールド Next Time You See Me

(最初はカントリーもやっていることと、曲の短さに戸惑ったが、ずっと後年になって、悪くないアルバムと考えるようになった。この曲がベスト。エレクトリック・フラッグがつづいていれば、こんな感じのところに落ち着いたかもしれない)

マイケル・ブルームフィールド Don't Think About It Baby

(これもすばらしい! しかし、こう渋くては、二十歳そこそこの子どもが戸惑ったのも無理はないといまにして思う)

しかし、マイケル・ブルームフィールドにすばらしいヴォーカルを期待する人はいないから、そのへんはたんなる付帯条項、ギターを聴けばいいだけです。アル・クーパーは、伝統的なギターとヴォーカルのやり取りにおいては、ブルームフィールドはすぐれているとかばっています。

わたしは、歌の伴奏としてギターがあるのではなく、逆に、すばらしいギター・プレイの「伴奏」として歌が必要なだけ、と考えればよいと思っています。じっさい、このMary Annなんかインストゥルメンタル・イントロが、小節数をカウントしたくなるほど長く、ヴォーカルとインストゥルメンタルの構成の比率がひっくり返っています。32小節のヴォーカルのかわりにギター・プレイがあり、8小節の間奏のかわりに歌があるのです。

アル・クーパーのBackstage Passesによると、例によってブルームフィールドの状態は最悪で、リハーサルからずっと不眠症(アル・パチーノの映画のおかげでみな不眠症を英語で「インソムニア」ということを覚えた!)がつづいていたそうですが、それでも独特の艶のあるトーンはちゃんとでています。とくに二度目のソロ、そのままエンディングにつながるパートの高音部のプレイがすばらしい。

オリジナルはこれまたレイ・チャールズ。

サンプル Ray Charles "Mary Ann"

この曲はあまりいじらずにやったことがおわかりでしょう。レイ・チャールズ盤にあるラテン的楽天性は引き継いでいませんが、スキップ・プロコップはサイドスティックとタムタムのコンビネーションで、レイ・チャールズ盤に類似した雰囲気をつくっています。

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ドラマーがスキップ・プロコップだったのは幸運でした。近年、この数カ月後にNYで録音された、Fillmore East: The Lost Concert Tapes 12/13/68という、Live Adventuresの続篇のようなものがリリースされましたが、ドラムのひどさたるや、言語に絶します。

アル・クーパーが、あれをリリースした理由はただひとつ、マイケルのギターだ、といっていたのは、つまり、それ以外の点では話にならない、だから当時はお蔵入りにしたという意味でしょう。

Live Adventuresのような、ちょいちょいとやったステージをダブル・アルバムにして売りまくるとはいい商売だなと思いましたが、Lost Tapesを聴くと、Live Adventuresがすぐれたアルバムだということが改めて実感されます。

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そして、その出来を左右しているのは、ひょっとしたらアル・クーパーやマイケル・ブルームフィールドではなく、スキップ・プロコップとジョン・カーンなのではないかと思いました。ミスはあるし、そのフィルインはちがうのではないかといったプレイ・デザイン上の不満はあるものの、ステージ・プレイヤーとしては、これだけ安定したグルーヴを提供できれば立派なものです。

◆ In a world filled with so much sorrow ◆◆
Mary Annのつぎの曲は、モータウンLAのボス、フランク・ウィルソンが、彼が見つけて契約したモータウンLA最初のアーティスト、ブレンダ・ハロウェイのために書いた曲です。Super SessionのMan's Temptation同様、マイケル・ブルームフィールドのギターである必要のないソウル・バラッド。

サンプル Michael Bloomfield & Al Kooper "Together 'til the End of Time"

なかなかキュートな曲で、モノトーンのブルーズ系統の曲が多いLive Adventuresに色彩をあたえています。アル・クーパーはピアノとオルガンを弾いていますが、ライヴはオルガンのみで、ピアノはオーヴァーダブでしょう。

二種類の先行ヴァージョンを聴くと、アル・クーパーの意図がよくわかります。まずはオリジナルのブレンダ・ハロウェイ。



つぎはスペンサー・デイヴィス・グループ時代のスティーヴ・ウィンウッドのヴァージョン、といって自前サンプルを置くつもりだったのですが、スタジオ・ライヴがあったので、まずそちらをいき、そのあとに自前サンプルをおきます。



これで話の流れが狂ってしまいました。ピート・ヨークがライヴでもきちんと叩いていて、当時のバンドのドラマーとしてはかなりいいほうだったことを確認できました。やっぱり、世代がひとつ上だけのことはある、まだプロフェッショナルが求められる時期にスタートした人だなあと思いました。芸能人である以前に、ミュージシャンなのです。

おかしなことに、スタジオ録音はもっと速いテンポでやっています。テンポの変化は、ふつうは逆なのですが。

サンプル The Spencer Davis Group feat. Steve Winwood "Together 'til the End of Time"

わたしが考えた筋道はこうです。アル・クーパーはスティーヴ・ウィンウッドのファンなので(たくさんカヴァーしている)、オルガンをフィーチャーしたSDG盤Together 'til the End of Timeが気に入ったのでしょう。でも、全体のムードとしては軽すぎるので、テンポはブレンダ・ハロウェイ盤を参考にした、とまあ、そう考えたのですが、スティーヴ・ウィンウッド自身、ライヴではテンポを落としていたので、あら、とコケてしまいました。

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それにしても、Live Adventuresは機材の不調に祟られたアルバムで(どうした、ウォーリー・ハイダー、らしくないぞ!)、この曲のようにクワイアット・パートがあると、ケーブルの不良と思われるノイズが聞こえてしまいます。まあ、それがライヴというものですが、惜しいなあ、と思います。

できれば二回でLive Adventuresを完了したいと思っていますが、いずれにしても、今回はここまで、とにかくディスク1のB面の途中まで来ています!


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アル・クーパー&マイケル・ブルームフィールド
Live Adventures of Mike Bloomfield & Al Kooper
Live Adventures of Mike Bloomfield & Al Kooper


レイ・チャールズ Definitive Soul: Atlantic Years(Mary Ann収録)
Definitive Soul: Atlantic Years
Definitive Soul: Atlantic Years


レイ・チャールズ Pure Genius: Complete Atlantic Recordings 52-59(以前はもうすこしコンパクトなアトランティック時代のボックスがあったが、いまはこれしかない。当然、Mary AnnもI Wonder Whoも、このアル・クーパー特集の他の記事で取り上げたI've Got a Womanなども収録されている)
Pure Genius: Complete Atlantic Recordings 52-59
Pure Genius: Complete Atlantic Recordings 52-59



ブレンダ・ハロウェイ
Greatest Hits & Rare Classics
Greatest Hits & Rare Classics



ザ・スペンサー・デイヴィス・グループ・フィーチャーリング・スティーヴ・ウィンウッド
The Best of The Spencer Davis Group featuring Steve Winwood
Best of Spencer Davis


アル・クーパー自伝増補改訂版
Backstage Passes & Backstabbing Bastards: Memoirs of a Rock 'n' Roll Survivor
Backstage Passes & Backstabbing Bastards: Memoirs of a Rock 'n' Roll Survivor


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by songsf4s | 2010-11-22 23:56
アル・クーパーのR&Bカヴァーとオリジナル その8 Act Like Nothing's Wrong篇

アル・クーパーは、レーナード・スキナードのプロデューサーを降りたことについて、ふだんはいい友人どうしだったが、レコーディングに入るととんでもない諍いになるので、友人でいたほうがマシだろうと考え、仕事の関係を解消したといっています。

レーナード・スキナードの大ファンというわけではなく、Sweet Home Alabamaだけで十分という人間なので、ポスト・アル・クーパーのレーナード・スキナードがどうなったかは知りませんが、いくつか聴いたものは、それほど興味深いものではありませんでした。どちらにしろ事故もあって、もう初期のバンドとは関係ないのでしょうが。

どうであれ、レーナード・スキナードの仕事が一区切りついたことで、アル・クーパーはレコーディング・アーティストとしての活動を再開し、Act Like Nothing's Wrongがリリースされます。

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間髪を入れずに「秀作」と叫ぶことはできないのですが、それなりに好きなアルバムでした。This Diamond Ringのセルフ・カヴァーについては留保するところがありますが(人口に膾炙した古い自作を棚から下ろしてホコリを払うのは、たいていの場合、悪い兆候)、Missing Youはいま聴いてもいい曲だと思いますし、アップテンポでは(Please Not) One More Timeは好みでした。

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◆ She Don't Ever Lose Her Groove ◆◆
Act Like Nothing's Wrongは3曲のR&Bカヴァーを収録しています。アップテンポのオープナーのあとを受ける「2曲目のバラッド」もR&Bカヴァー、She Don't Ever Lose Her Grooveです。

サンプル Al Kooper "She Don't Ever Lose Her Groove"

これはこのアルバムでいちばん好きなトラックで、アル・クーパーのR&Bカヴァー全体を見ても、とくに好ましい一曲です。

当時は南部には無縁だったので(いまも「自分の庭」ではない)、このトラックで聴くまで、リトル・ビーヴァーのことを知らなかったものだから、こりゃいいなあ、と思いました(盤がないので記憶で書くが、オブリガートはレジー・ヤング、ソロはリトル・ビーヴァーだったと思う。ちがう?)。好きなタイプのプレイヤーです。この曲の作者もリトル・ビーヴァー(ウィリー・ヘイル)で、ギターのプレイ・スタイルと直結したムードをもっています。

リトル・ビーヴァー Little Girl Blue


リトル・ビーヴァー I Love the Way You Love Me


リトル・ビーヴァー Groove On


ジョージ・マクレー(with リトル・ビーヴァー) Rock Your Baby


◆ 彼もやっぱりグルーヴを失わない ◆◆
作者リトル・ビーヴァーによるShe Don't Ever Lose Her Grooveは存在しないようで、オリジナルはグウェン・マクレーの(もちろんジェンダーを裏返した)He Don't Ever Lose His Grooveだと思われます。Pillow Talk(危ない歌詞だった)のシルヴィアのヴァージョンもあるようですが、そちらは聴いたことがありません。

サンプル Gwen McCrae "He Don't Ever Lose His Groove"

こちらのヴァージョンにも、作者リトル・ビーヴァーが参加しているのでしょうか。なんだかそういう雰囲気のギターです。

やはりオリジナルまでたどってみるものだと思います。サウンドとしては、圧倒的にアル・クーパー盤のほうがよくできています。グウェン・マクレー盤を聴いて、アル・クーパーがどういう工夫をしたのかがよくわかりました。マクレー盤もキュートで、悪くはありませんが、グルーヴはそこそこにすぎません。

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リリースのときにはタイトルの意味が気になりました。ぜったいにグルーヴを失わないとはなんなのか? 全体を聴くと、keeps my fire burning, keeps my heart yearning for moreなんて、やや露骨なラインが出てくるわけで、こうなるとやはりgrooveも、そちら方向にシフトして解釈せざるをえません。いっそ、閨のあれこれを歌ったものと決めつけてしまったほうが、すっきりと理解できる歌詞です。

なにか適当な日本語を入れてみようかと思いましたが、気のせいか、なんだか下品に響いてしまいそうで……。○×をはずさない、なんていうのを思いついたのです。

関係ないけれど、シルヴィア(・ロビンソン)のPillow Talkも聴いてみますか? ジャケットからして危ないのですが。



「今夜は学校では教えないことを教えてあげるわ」って、おまえは古今亭志ん生か、です。

◆ ウィリアム・ベルとパーシー・スレッジ ◆◆
Act Like Nothing's Wrongにはほかに2曲、R&Bカヴァーが入っていて、どうしたものかと悩んでしまいます。すばらしければ、なにも考えずにサンプルにしますが、微妙な出来で、わたしは「ちょっとなあ」だけど、こういうのは好きという方もいらっしゃるだろうという感じです。

サンプル Al Kooper "I Forgot to Be Your Lover"

アル・クーパーにしてはめずらしく、ほとんどストレート・カヴァーだということが、オリジナルを聴くとわかります。

ウィリアム・ベル I Forgot to Be Your Lover


もう一曲のOut of Left Fieldは、アル・クーパー盤は略します。オリジナルはだれか知りませんが、わが家にあるのはパーシー・スレッジ盤です。

パーシー・スレッジ


カヴァー曲を選ぶにもいろいろな理由があるでしょう。歌詞で選ぶことだっておおいにありえます。プライヴェート・ライフに起きるあれこれ、とりわけ恋愛の結果として特定の曲がカヴァーされることがあるのは、前回の記事で軽くふれました。

この2曲の選択、とりわけOut of Left Fieldは理解できないのですが、ジャケットに登場している女性とからまって出てきた、なんて可能性はあるかもしれません。ヴァン・モリソンがTupelo Honeyのジャケットの女性(妻だったか)のことをアルバム何枚分か引きずったなんて例もありますし。

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このあともアル・クーパーのソロ・キャリアはつづくのですが(今世紀に入っても新譜がある。Black CoffeeとWhite Chocolateの2枚。また、ベストとレアを組み合わせた編集盤はRare and Welldone。ホント、ダジャレが好きなんだから。つぎの盤はGreen Teaにしようか、なんて書いていた。わたしはPink Grapefruitがいいと思う)、当家としてはここまででその方向は終了させていただきます。あと2枚、あとまわしにしたセッションものを検討する予定です。


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Act Like Nothing's Wrong
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Rockin Chair: Let's Straighten It Out
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Platinum Collection
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by songsf4s | 2010-11-21 23:57